このブログを検索

ラベル PsA の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル PsA の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年3月8日木曜日

乾癬 or PsAに対するTNFiの、動脈硬化 & 血管の炎症に与える影響について


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 3, March 2018, pp 408
–416 DOI 10.1002/art.40366

背景
  • 乾癬は、慢性的な免疫介在性皮膚疾患である
    • 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬のうち1/3が発症する
    • 最近、乾癬もしくはPsAの患者における動脈硬化のリスクが注目されている
      • このリスクは、一般的な動脈硬化のリスク因子で調整しても有意であり、乾癬自体が心血管系疾患のリスクであることを示唆している
  • 乾癬において動脈硬化を促進する機序については、あまりわかっていない
    • 乾癬は全身の炎症であり、心血管系疾患の主な原因である動脈硬化も免疫が関与した炎症が影響することは広く認識されている
  • 自然免疫と獲得免疫は、動脈硬化発症において、サイトカインを通じて関与している
    • Th1の活性が増加し、Tregの活性が低下することで、TNFやIFNγなどの炎症性サイトカインが増加することは、動脈硬化・乾癬において共通している
  • また、乾癬患者でよくみられる肥満とそれに関連する代謝異常は、全身性の炎症と強く関連している
    • 脂肪組織は、様々な炎症性サイトカインを産生する
    • 血清TNFの増加は、細胞性免疫を刺激し、動脈硬化に関連する血管内皮細胞の障害へ繋がる
  • 乾癬患者における心血管系疾患へのTNFiの影響は、まだあまりわかっていない
    • いくつかの試験で、TNFiが血管の機能・構造の改善を認めたという報告もあるが、いずれも小規模で観察期間も短い
    • そのため、今回は、subclinicalな動脈硬化の指標(頸動脈プラークや血管の炎症など)をprimary endpointとして用いて、乾癬に対するTNFiのsubclinicalな心血管系疾患に与える影響について調べた

方法
①Study design

  • 2-stage study
    • Stage 1(Toronto cohort)
      • トロント大学にて、乾癬とPsAの患者を、2010-2015年にリクルート
      • prospective
      • baselineと2-3年後に頸動脈エコーでプラークを評価
      • このStage 1の結果によって、乾癬に対するTNFiが血管の炎症に有効かどうか評価するかを決めた
    • Stage 2(NIH cohort)
      • NIHで、prospectiveにフォローしている、34例のPsAを対象にnested cohort analysisをおこなった
      • 内訳は、TNFiを投与されている21例のPsAと、それらのPsA患者と年齢・性別をマッチさせた乾癬に対するsystemic medicationを受けていないPsA 13例
      • baselineと、1年後にFDG-PET/CTを撮影
      • 既知の心血管系疾患、コントロール不良の高血圧、HIV、5年以内に悪性腫瘍の既往がある、活動性感染症のある患者、なんらかの手術後3ヶ月以内の患者は除外
②TNFi therapy exposure
  • IFX, ETN, ADA, GOL, CZPのいずれかを、フォローされている期間のうち半分以上で、使用されている場合を"TNFi therapy exposure"と定義
  • baselineでの評価前にTNFiを開始していても、上記を満たせばOK

③Ultrasound assessment of carotid atherosclerosis.
  • Stage 1において実施
    • 1人のphysicianによって実施
    • a high-resolution ultrasound system for carotid imaging (Esaote MyLab 70 XVision)を使用
    • 両側の頸動脈を、baselineと2-3年後に評価
    • 動脈硬化のプラークの定義(下のいずれか)
      • 周囲の血管壁の厚さより、局所の血管壁が50%以上厚い
      • 局所の血管壁の内膜が1mm以上に肥厚している
    • TPA(Total plaque area)
      • 心血管系疾患の予測因子として知られている
      • 撮影したビデオから計測
④FDG-PET/CT image acquisition and analysis
  • Stage 2において実施
    • 前日夜から禁食
    • baselineと12ヶ月後に撮影
    • 10 mCi dose of 18F-FDGを投与して60分間以内に撮影
    • 64-slice scanner (Siemens Biograph mCT PET/CT scanner)を使用して、1.5mmスライスを作った
    • 大動脈を下の図の通り、5つの領域に分けて評価し、血管の炎症をTarget-to-background ratio(TBR)として計測
      • 1. 上行大動脈、2. 大動脈弓部、3. 下行大動脈、4. 腎動脈上の大動脈、5. 腎動脈下の大動脈
      • TBRは、一般人口において、心血管系イベントを予測すると既報で報告されている



結果
①Stage 1
  • 319人を解析(table1)
    • 平均年齢:54.5才
    • 男性:55.8%
    • 平均観察期間:2.9年
    • 心血管系リスク因子は、特にTNFiとcontrol群で偏りはなさそう
    • baselineで、1つ以上の頸動脈プラークあり:62.1%(198人)



    • baseline TPAは、TNFi群を投与されている男性が、controlより高い(p=0.04)(table2)



  • 性別とTNFiの使用の間において、有意な統計学的相互作用があったため(p=0.03)、男性と女性に分けて解析した(table3)
    • 男性
      • TNFi therapyが、動脈硬化進行を有意に抑制した
        • adjusted β coefficient -2.09 [95% CI -3.32, -0.86], p < 0.001
      • 上記の結果は、心血管系リスク因子と脂質降下薬内服の有無で調整しても、有意だった
        • adjusted β coefficient -2.20 [95% CI -3.41, -1.00], p < 0.001
    • 女性
      • TNFi therapyによる動脈硬化進行の抑制は、単変量解析でも多変量解析でも有意ではなかった(p=0.93, p=0.74)





  • TNFiは、DMARDsと比較して、動脈硬化進行を有意に抑制した
    • adjusted β coefficient -4.1 [95% CI -5.6, -2.5], P < 0.001
  • TNFiは、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行を有意に抑制した
    • adjusted β coefficient -1.4 [95% CI -2.6, -0.1], P = 0.03
  • DMARDsは、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行と有意に関連した
    • adjusted β coefficient 2.7 [95% CI 1.2, 4.2], P < 0.001





②Stage 2

  • 34症例のPsAを解析(baseline characteristicsはTable1)
    • TNFiを投与されている群
      • 男性が多い:57%
      • 平均年齢:49.6才
      • 心血管系リスク因子のスコアであるthe Framingham Risk Scoreは低い:中央値 4
    • systemic anti-psoriatic therapyを受けていない群
      • 年齢、性別をマッチさせた13人のPsA患者
      • 心血管系リスク因子のスコアであるthe Framingham Risk Scoreは低い:中央値 3
    • 血管の炎症は、TNFi群で1年後に有意に改善
      • 平均TBR 1.90 vs 1.76  P = 0.03
    • 心血管リスク因子と脂質降下薬の有無で調整した多変量解析の結果でも、TNFiは、有意に血管の炎症を抑制した(Table4)
      • standardized β coefficient -0.41 [95% CI -0.74, -0.08], P = 0.02
    • FDG-PET/CTを用いたStage 2では、性別による結果の違いはなかった





まとめ
  • 今回の試験によって、TNFiは、古典的な心血管系リスク因子とは独立して、頸動脈プラークの進展を有意に抑制した
    • その効果は、男性でより顕著だった
  • また、TNFiによって、古典的な心血管系リスク因子とは独立して、FDG-PET/CTで評価した血管の炎症を有意に改善した
    • これに関しては、性別による違いはなかった
  • 関節リウマチでは、MTXとTNFiによって、心血管系リスクを低下させることができるということは知られていたが、乾癬ではこれまでこういったデータはなかった
    • 今回、DMARDsが、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行と有意に関連したのは、後者は皮膚や関節炎のみで比較的軽症であることが交絡しているものと推測される
  • 今回の試験では、血管の炎症が動脈硬化に繋がることは別々のstageでそれらを評価しているので、あくまでも血管の炎症を抑制することが動脈硬化進展の抑制に繋がるのは間接的なデータである
    • しかし、別の報告で、18F-FDGの取り込みが血管の石灰化に繋がることが示されており、血管の炎症が動脈硬化進展に繋がると考えることは妥当だろう
    • さらに、TNFiは脂質プロファイルやインスリン抵抗性など古典的な心血管系リスク因子に影響を及ぼすことが報告されている
      • しかしながら、今回の試験では、TNFiによって脂質プロファイル・血圧・血糖は変化しなかった(データ提示なし)ので、それらとは別の経路を介した機序が推測される
  • TNFiが、動脈硬化に与える影響について、男性と女性で異なる原因として、あまり説明できるものが考えられない
    • 血管の炎症に対する効果は、性別による違いがなかったのも事実である
    • 一つ考えられるのは、女性はもともと、baselineにおける動脈プラークが比較的少なく進展もわずかであるために、女性ではあまりTNFiによる影響が出にくかったのもしれない
    • もう一つ考えられるのは、男性と女性で動脈硬化進展の機序が異なるということである。実際にこれはすでに報告されており、性ホルモンが血管系や心血管系リスク因子に作用するというものである。
  • limitation
    • 観察研究であり、交絡因子の除外がしきれていないかもしれない
    • 血管の炎症と、動脈硬化の進展は、異なるcohortで評価している
    • TNFiを使用している患者の大半が、今回の研究開始前に投与開始されているため、TNFiによる早期の有効性を評価できていない
  • strength
    • 乾癬の動脈硬化に対するTNFiの影響に関して、これまでで最も大きいprospectiveな研究である
    • 心血管系リスク因子と疾患活動性に関して、よく評価されている

2018年1月25日木曜日

免疫関連炎症性疾患(IMID)に対するnovel therapy


Baker KF, Isaacs JD. Ann Rheum Dis 2018;77:175–187.  

<背景>
  • CD4陽性T細胞は、innate immunityとadaptive immunityに共通して関与している
    • 当初はTh1、Th2が知られていた
    • Th1:細胞内の微生物に対して、IFNγなどのサイトカインを産生し、細胞性免疫を活性化する
    • Th2:液性免疫を活性化し、IL-4, IL-5, IL-13などを介して寄生虫感染症に反応する
    • 当初はTh1が多くの免疫関連炎症性疾患(IMID)を誘導していると考えられていたが、Th1は必ずしも必須ではないことがわかり、その後発見されたのがTh17である
    • IL-17は、Th17によって産生され、TNFαやIL-1βとともに、好中球を誘導したり軟骨を阻害して骨びらんを起こすことがわかってきた
    • 現在、Th17は、RA, PsA, AS, IBDなど多様な疾患に関与していることが知られており、IL-17を阻害することでTh17分化を抑制する治療が注目されている


<Th17 axis>

IL-17阻害strategy
  • IL-17
    • A-Fの6種類のhomologous サイトカインで構成される(IL-17A-F)
    • IL-17Aが最も豊富に調べられている
  • IL-17受容体
    • A-Eの5種類のサブユニットを有するhomodimer もしくはheterodimerである(IL-17RA-E)
    • それぞれの受容体の種類に関する、親和性、細胞への局在、下流シグナルへの作用の違いは完全にはわかっていない
  • 乾癬に対して、TNFα阻害も有効だが、皮膚への有効性はIL-17阻害のほうが明らかである

  • IL-17阻害薬
    • セクキヌマブ
      • IL-17Aに対する完全ヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • 乾癬、PsA, ASに有効
        • RAへの有効性には乏しい
    • Ixekizumab
      • IL-17Aに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • PsA, 乾癬に対する有効性はセクキヌマブと同等
    • bimekizumab
      • IL-17A, IL-17Fのhomologue epitopeに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • 乾癬とPsAに対するtrialが進行中
    • 他の薬剤は下のTable1参照

    • IL-17阻害は、重症となることはないがカンジダ感染症と関連しており、IL-17の真菌感染症に対する関与が示唆されている

    • IL-17受容体阻害薬
      • ブロダルマブ(ルミセフ®︎)
        • IL-17RAに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
          • IL-17RAには、IL-17A, IL-17F, IL-17A/F, IL-17C, IL-17E(IL-25)が結合してシグナルを伝達する
        • Figure1にあるように、広域にシグナルを阻害する
          • IL-17E(IL-25)を阻害すると、マウス・ヒトIBD患者・ヒトRA患者においてTh2を活性化してTh17分化を抑制することが知られている。
        • 日本では、乾癬に対して承認されている

    • IL-17阻害は、RAと同様に、非感染性炎症性ぶどう膜炎への有効性は限定的である
      • すなわち、病変局所におけるサイトカインの発現は、考えられている病態とは異なるということだろう
    • さらに、セクキヌマブ、ブロダルマブはクローン病を増悪させることが知られており、IL-17Aは炎症性サイトカインとしての要素以外に、腸管免疫に対してはnegative regulatorとしての役割もあるのだろう
      • もしかしたら、IL-17Aは腸内細菌叢や真菌と相互に作用しているのかもしれない

    Th17への分化とIL-12 superfamily
    • naive CD4陽性T細胞の分化には、IL-12 superfamilyであるIL-12, IL-23, IL-27, IL-35が関与している
      • 特にIL-12, IL-23は、Th17分化が関わる病態への治療標的として知られてきた
    • ウステキヌマブ
      • IL-12とIL23に共通の、p40サブユニットに対する完全ヒト化モノクローナル抗体である
      • PsA, クローン病、乾癬に承認されている
        • ASに対してもopen-labelで有効性を認めている
      • IL-17A阻害薬と異なり、クローン病にも有効であり、中等症以上の乾癬への有効性はセクキヌマブに劣る
        • IL-23を介したTh17分化抑制と、IL-17Aそのものを阻害することの違いを反映しているのだろう
          • Th17はIL-17以外のサイトカイン(IL-17F, IL-22)も産生し、IL-17AはTh17以外の細胞からも産生される
    • p19サブユニット阻害を介して、IL-23を選択的に阻害する治療薬が開発中である
      • IL-23選択的に(IL-12/23を共に阻害するのではなく)阻害することで、感染症や悪性腫瘍のリスクを下げることができることが期待されている
      • 実際に、乾癬に対するウステキヌマブの市販後調査で、non-melanoma skin cancerとウステキヌマブの関連が示唆されている
        • これは、おそらく、IL-12を介した細胞性免疫の阻害が原因と考えられる

    head-to-headの結果
    • 乾癬に対する有効性
      • IL-17A阻害薬(ixekizumab)、IL-23阻害薬(guselkumab)> TNFα阻害薬(それぞれETN, ADA)
      • IL-17A阻害薬(セクキヌマブ)、IL-17受容体阻害薬(ブロダルマブ)、IL-23p19阻害薬(risankizumab)> IL-12/23p40阻害薬(ustekinumab )

    <type1 IFN axis>
    • IFNは、免疫を活性化するサイトカインであり、大きくは以下の3つに分類される
      • type1
        • IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκ、IFNω
      • type2
        • IFNγ
      • type3
        • IFNλ

    • type1の中では、IFNαが最も調べられている
    • 通常の場合にはtype1 IFNの産生は検出感度以下にコントロールされているが、ウイルス感染症などの際には急速に産生が亢進する
      • 主にはplasmacytoid DC(pDC)から産生される。
      • pDCには、TLR7やTLR9などの細胞内パターン認識受容体が豊富に存在している
      • type1 IFNが受容体に結合すると、IFN-stimulated genes(ISGs)の発現が増加する。
      • 作用は多様で、樹状細胞の活性化、Th1増加、Th17増加、Treg減少、B細胞活性化され抗体が産生される
    • SLE, SjS, SSc, 一部のRAでISGsが増加している
      • SLEでは、内因性のDNA複合体がpDCsのTLR7/9に結合し、type1 IFNを産生することが病態として考えられている
    • 開発中のtype1 IFN経路への阻害薬は下の表の通り
      • sifalimumab
        • SLEでは、高用量ではplaceboと比較して有効だった
        • IFNαはウイルス感染への防御に関しており、帯状疱疹はdose-dependentに増加した
        • 筋炎では、13種類のIFN signature geneを抑制し、臨床所見の改善と筋力改善を認めた
      • rontalizumab
        • SLEに対してはprimary endpointを満たせず失敗に終わったが、IFNが少ない患者群の方が多い患者群より有効である傾向を認め、ウイルス感染症が増えなかったため、試験デザインが問題であった可能性もある
      • IFNαに対する抗体を誘導する、ワクチンタイプの治療も開発中である
        • IFN-α kinoidを投与することで、IFNαに対する中和抗体を自己で産生させる
    • type1 IFN受容体への阻害薬
      • anifrolumab
    • type1 IFN経路の上流への阻害薬
      • BIIB059  
        • 樹状細胞表面に存在する受容体であるBDAC-2に対するモノクローナル抗体
      • talacotuzumab
        • CD123に対する細胞障害性モノクローナル抗体
        • CD123はpDCsに多く発現している



    type2 IFN阻害
    • type1 IFNが主要なIFN gene signature の誘導因子であるが、type2, 3も同様にこれらを誘導する
    • IFNγシグナルは、type1 IFNとは異なる受容体に結合するが、figure2のように、下流シグナルはいくつかoverlapしている

    • JAK阻害薬はIFNシグナルの阻害薬として期待されている


    <cell adhesionに対する治療>

    インテグリンに対する阻害


    • 接着分子は、循環している免疫細胞を誘導してくるための細胞間相互作用に必要である
    • インテグリンファミリーは、白血球・内皮細胞・粘膜上皮細胞に存在し、細胞外マトリックスや特異的な受容体と結合する
    • 白血球に発現している接着分子は、6種類である
      • LFA-1 (αLβ2)
        • immunological synapseを形成する
      • Mac-1 (αMβ2)
      • αxβ2
      • αdβ2
      • α4β7 
        • 腸管内皮細胞表面に存在するMAdCAM-1と結合することで、腸管特異的リンパ球を引き寄せる
      • αEβ7 
        • 腸管上皮細胞のE-cadherinと結合し、粘膜における白血球の保持に重要
    • Natalizumab
      • 自己免疫疾患に対して使用された最初のインテグリン阻害薬
      • α4インテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
      • 非選択的に、リンパ球の遊走を、脳血液関門(α4β1インテグリン)と腸管(α4β7インテグリン)において阻害する
      • 多発性硬化症とクローン病に対して有効
      • 市販後調査でPMLが発生
    • efalizumab
      • LFA-1のαLインテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
      • 乾癬に有効だが、PML発生により市場から消えた
    • lifitegrast
      • LFA-1阻害薬
      • 乾性結膜炎に対して、眼に局所的に使用することで最近承認された
    • carotegrast methyl、firategrast 
      • ともにα4インテグリン阻害薬
      • それぞれ潰瘍性大腸炎、多発性硬化症に対して承認された
    • 感染症に対するリスクを抑えるために、下の表に示す通り、より選択的なインテグリン阻害薬が開発されている




    <JAK阻害薬>
    →JAK阻害薬:review



    <特異的な細胞への標的治療>



    B細胞標的治療

    • RTXから始まり、下の表にあげたものが開発されてきている
    • ocrelizumab
      • ヒト化抗CD20モノクローナル抗体
      • 多発性硬化症に対して有効
        • RTXは再発寛解を繰り返している場合にのみ有効性が示されているが、ocrelizumabは初回進行性の多発性硬化症でも有効性が示されているが、その違いの原因はわかっていない
      • RA, SLEに対しても試されたが、有害事象により中止となっている
    • obinutuzumab
      • CD20に対するモノクローナル抗体
      • 糖鎖工学に基づき、細胞障害性が改良された
      • 造血器悪性腫瘍に対して市場で使用されており、SLEに対してはphase2が進行中
    • B細胞depletionのみではなく、B細胞の成熟・生存を阻害するアプローチも進んでいる
      • BAFF, APRILは、それぞれB細胞成熟、形質細胞生存・クラススイッチに関して重要な分子である
      • ベリムマブ
        • SLEに対して承認されているが、関節・皮膚病変以外の有効性のデータは限られている
      • tabalumab(可溶性・膜結合型BAFFに対する抗体)、blisibimod(BAFFに対するpeptibody)
        • SLEに対するphase3臨床試験での有効性は不十分だった
      • BAFFとAPRILはtransmembrane activator and calcium-modulator and cyclo- philin ligand interactor (TACI) に結合する
        • TACI:IgG-Fc fusion peptideで、BAFFとAPRILの両者を阻害するataciceptは、感染症のリスクを高める懸念がある
      • RAに対しては、RTXは有効であるものの、BAFF/APRIL阻害の有効性は限定的だった
        • おそらくこの違いの原因は、BregがAPRILを介してIL-10を産生するといった、B細胞のmodulator effectsが関係しているかもしれない




    Treg標的治療

    • Tregを刺激することも考えられている
      • 低用量recombinant IL-2の投与など
        • 高用量で投与するとeffector T細胞が刺激され、これはメラノーマなどで治療として用いられている
        • 低用量で投与すると、Tregが有意に増加する
        • 実際に、C型肝炎関連血管炎、GVHD、SLE、1型糖尿病、円形脱毛症に対してearly phaseの試験で有効性が確認されている
      • TGN-1412
        • 共刺激分子であるCD28に対するsuper-agonist モノクローナル抗体である
        • phase1では健常人に致死的なサイトカインストームを起こした
          • これは、CD28を介して組織に局在するmemory T細胞を活性化したことが原因と考えられている
          • ちなみに、カニクイザルのmemory T細胞にはCD28が存在しないため、preclinical 試験ではサイトカインストームは起きなかった
      • tregalizumab
        • CD4に対するモノクローナル抗体
        • preclinical試験では、他のCD4モノクローナル抗体と異なり、遠位にあるepitopeに結合してTreg特異的に活性化した
          • しかしながら、RAに対するphase2b試験ではplaceboと比較してACR20の有意な改善を示すことはできず、開発は中止された
    • 最近では、Treg epitopes (Tregitopes) が注目を集めている
      • Tregを特異的に活性化する
      • IgG分子内に存在する保存されたアミノ酸配列で、MHCⅡ allele に対して提示され、Tregを特異的に活性化する
      • IVIgがTregを増加させる機序としても考えられている

    2018年1月2日火曜日

    遺伝子による関節炎の分類(成人、小児)


    ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
    Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 7
    –17

    背景

    • 成人と小児のリウマチ膠原病疾患は類似しており、同じ様に検査をして同じ様に治療するが、同じ疾患を見ることはない。
    • 成人の関節炎は多くはRAであり、seropositiveとseronegativeに分かれる。RA以外には、SpAがある。
    • 小児の関節炎には、ILAR(International League of Associations for Rheumatology)の7つのサブカテゴリーがある。それにはJIAが含まれ、JIAは6つに分かれる。それに加えて、7つ目には未分類JIAがある。



    ※小児慢性特定疾患難病情報センターのサイトより


    • これらの用語は、研究にリクルートしたりアルゴリズムに沿った診療を行うのに便利であり、小児JIAのように時系列でその疾患を追うことができる
    • しかしながら、小児の患者が成長して成人のリウマチ科医がみたときに、違う名前であるが同じ疾患だと判明した際に、やはり小児と成人の領域は共同して診療していく必要性があることを感じる
    • 幸いなことに、ここ最近はgeneticsによって、これらの疾患のspectrumのpatternを特定できるようになってきた
    • 今回のreviewでは、これらの研究結果を統合して、関節炎の"big picture"にしてみようかと思う。それによって、用語や領域を超えて、医師がどうやってこれらの疾患に向き合っていくかのヒントになれば良い

    The limits of eminence-based classification
    • 歴史的には、関節炎は臨床所見によって分類されてきており、専門家の意見に基づいた分類をeminence-based medicineと呼ぶこともある
    • eminence-based medicineにも問題がある
      • patternによる分類には限界があり、その最たるものがRAである
        • RFとACPAsによってseropositiveとseronegativeに分かれるが、臨床所見はoverlapしており、これらを臨床的にはっきりと区別するのは困難である
        • しかしながら、これらの違いは遺伝的な違い、関節炎への免疫複合体や補体の関与、滑膜のT細胞populationによって異なるものと考えられる。すなわち、臨床所見が同じだからといって病態も同じかというとそうではないことを示している、良い例がRAである
      • 他の問題としては、医師は、自分がみているものが全てだと考えてしまうことである
        • JIAと成人関節炎の境界線は16歳という年齢であり、病態ではないのである

    The genetics revolution
    • 遺伝学の発展によって、いくつかのclinical phenotypeが共通の遺伝的背景を有することがわかってきた
    • 結果として生じてくるこれまでの身体所見や検査所見とは異なり、遺伝子は病気に先行しているため、原因の解明に繋がる可能性がある
    • 関節炎と遺伝子の関係は、T細胞への抗原提示に関与するHLA領域から始まった
      • RAとHLA-DRB1*04、強直性脊椎炎とHLA-B*27などである
    • GWASによって、発症した人と発症していない人を比較することで、疾患のリスクとなる多くの遺伝子多型が判明した
    • それによって、ASとIL-17経路のように治療に繋がった例もあるが、多くは疾患とその多型の関係は曖昧である
      • 例として、RAにおいて、蛋白の配列が変わってしまうvariantは、リスクとされたハプロタイプの16%のみである
      • そして、GWASでヒットした遺伝子が疾患に与えるリスクはそこまで大きくなく、RAではリスクとなるHLAキャリアのodds ratio(OR)はせいぜい2.8程度であり、JIAに至ってはnon-HLA部位のリスクキャリアのORは1.1-1.4である
    • しかしながら、GWASでは頻度の高い遺伝子多型のみしか調べていない
      • 進化圧(evolutionally pressure)により、頻度の高い多型は、比較的、機能的な影響は小さく、それゆえ疾患への影響も小さいが、その影響の小ささがそのまま遺伝子の重要性を反映しているとも限らない
        • 例としては、HMGCR近傍のnon-coding多型は、コレステロール値への影響は小さいが、スタチンによる治療へ繋がった
        • 同様に、RAではIL-6やCTLA-4/CD28を含む治療ターゲットを明らかにした
      • また、頻度の低いものは評価していないので、それが大きな影響を有している可能性はある
      • そして、遺伝子のvariantが判明しても、それがそのように疾患の発症に関与しているのかも重要である

    Using genetics to help define categories of arthritis
    • Figure1がそれぞれの疾患とリスク遺伝子の関連を示している。
      • AOSDはデータがほぼないが、systemic JIAと臨床所見、IL-6とIL-18増加、末梢血の遺伝子発現signatureが類似しているため、同じStill's spectrumに入ると思われる
    • これによって、疾患の間で共通しているものが見えてくる。
      • しかし、当然、一卵性双生児が両者とも発症する確率は低い(ACPA-positive RA:16%、JIA:25%)ため、遺伝子が全てではない




    • 小児と成人の違いは、発症年齢が違うということであり、これは遺伝子要因と環境要因の比率が発症年齢によって変わってくるということであろう
      • すなわち、同じ疾患でも、40歳で発症する場合と70歳で発症する場合には異なる遺伝子背景を有していると考えられる
    • seropositive RAとRF positive polyarticular JIA(childhood-onset RA, or CORAとも呼ぶ)は、シトルリン化ペプチドを提示しやすいHLA allelesに強く関連している
      • seropositive関節炎は非常に年齢の低い小児には起こりにくく(6歳以下には、むしろRAと関連のあるHLA-DRB1 allelesは関節炎に対して保護的に働く)、JIAの特徴である慢性前部ぶどう膜炎もこのpopulationには起こることは稀であり、drug-free remissionも難しいことも共通している
      • 関節炎の分布なども類似しており、この2疾患は同じclusterにあることが強く示唆される
    • seronegative RA、seronegative oligoarticular(発症後半年間における罹患関節数 < 5) & polyarticular JIA(発症後半年間における罹患関節数 ≧ 5) 
      • 末梢血の遺伝子発現signatureとHLAは、oligo/polyによって分かれるのではなく、発症年齢によって分かれる(6歳未満 or 6歳以上)ため、seronegative JIAは罹患関節炎の数に関係なく"polygoJIA"というほうが適切であるという学者もいる
      • 少なくともHLAに関しては、これらseronegative JIAと、psoriatic JIA、enthesitis related arthritis(ERA)は遺伝子的に多少異なっており、RF positive polyarticular JIAは明らかに異なっている

    ○=遺伝子による分類、□=ILAR分類






    2017年12月12日火曜日

    体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎(主にPsA)に対するT2T:2017 recommendation


    Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:3–17.  


    ※axSpAに関する2016 EULAR-ACR recommendationは既述

    ※PsAに関する評価項目について

    • PASDAS, GRACE, CPDAIをMDA criteriaの代わりにTICOPA studyに当てはめたらどうなるか、という試験はこちら
    • 赤が含まれていない項目、緑が含まれている項目




    DAPSA score


    MDA Criteria 
    – GRAPPA [Ann Rheum Dis. 2010 Jan;69(1):48-53.

    次の基準の7(臨床試験で検証)のうち5つを満たす場合は、MDAを有すると分類 
    1. 圧痛関節数 ≤ 1
    2. 腫脹関節数 ≤ 1
    3. PASI ≤ 1 または BSA ≤ 3 %
    4. 患者疼痛 VAS ≤ 15 mm
    5. 患者全般疾患活動性 VAS ≤ 20 mm
    6. HAQスコア ≤ 0.5
    7. 腱付着部炎箇所 ≤ 1
    • このMDA基準は、ランダム化比較試験と観察コホートで検証され、12ヶ月以上のMDAを達成した患者では、関節破壊の進行の有意な減少を示した
      • Arthritis Care Res (Hoboken). 2010 Jul;62(7):970-6. 



    疾患活動性の複合評価項目について

    • 炎症、構造変化、身体的機能の3つは、炎症性変化の過程で部分的に生じるが直接的に反映されているわけではないので、それぞれ別々に評価されるべきである


    • そのため、ASDASが、ASAS improvement and remission criteria より適切と考えられる
      • ASAS 20
        • 以下の4つの項目において、合計20%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 1 unit 以上の改善を示す。
          • patient global assessment
          • pain
          • BASFI(function)
          • BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
            • 全体で20%以上の増悪なし、改善のない項目にて1 unit以上の増悪がないことが前提
      • ASAS 40
        • 以下の4つの項目において、合計40%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 2 unit 以上の改善を示す。
          • patient global assessment
          • pain
          • BASFI(function)
          • BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
            •  全ての項目で増悪がないことが前提
      • ASAS remission
        • 上記と同じ4つの項目において、全ての項目が(0-10のスケールで) 2 unit を超えない
      • ASDAS inactive deisease:ASDAS < 1.3 


    決定したConsensusが下のtable3

    • principle
      • A:治療目標に関しては、リウマチ専門医と患者がshared decisionをしなくてはならない
      • B:疾患活動性に従ったT2Tは予後を改善する
        • PsAに対するTICOPA trialにて証明された
          • しかしこれは、T2Tの有用性というよりcsDMARDsの急速な増量(T2T群:4週おき、対照群:12週おき)と併用治療の有用性が影響しているかもしれない。
    TICOPA regimen(Lancet 2015;386:2489–98.)



        • axSpAに対するT2Tの有用性を調べた試験はまだないが(TICOSPA, NCT 03043846, and STRIKE, NCT 02897115 が進行中)、疾患活動性によって構造変化が進行することを考慮するとおそらく有効だろう。

      • C:全身性疾患であるため、関節外病変も注意し、他領域の専門家(皮膚科、消化器内科、眼科など)と連携する
      • D:最終的なゴールは、長期の健康関連QOLを改善し、社会参加をできるようにする
      • E:上記目標を達成するには、炎症をとることが重要である
        • PsA患者の1/3は非進行性であるが、多くの患者では予後を改善するのに炎症を抑えることが必要
    • recommendations
      1. 治療ターゲットは、clinical remission/inactive diseaseにすべきである
        • remissionを達成できない患者もいるのも事実
        • これまでremissionやinactive diseaseをターゲットにされた臨床試験は存在しない
        • 多様されるMDAは、いくつかの項目が残存するしうるので、低疾患活動性に相当する
        • そして、MDAを含む低疾患活動性をターゲットにすると構造破壊・身体機能低下が抑制される十分なデータがあるので、remissionやinactive diseaseをターゲットにすることは間接的に十分と考えられる
      2. 治療ターゲット・治療評価期間は、現在の臨床症状や使用している薬剤に合わせて、個別化すべき
        • NSAIDsとDMARDsでは治療効果判定期間が異なる
        • DMARDsであれば、3ヶ月以内に有意な改善を示し、6ヶ月以内に治療ターゲットを達成すべき
      3. clinical remission/inactive diseaseは、臨床症状と検査所見にて明らかな疾患活動性がないと定義される
        • MDA, clinical DAPSA にはCRP, ESRが含まれていないが、これらをターゲットにしても予後改善に関連することが報告されているので、検査所見は含まないことも考慮された
        • しかしながら、PsAでもaxSpAでも、急性期炎症反応蛋白レベルが構造破壊に関連することが示されており、客観的指標なので、疾患活動性の評価から除外はできないとされた
        • そして、上記推奨における検査所見には、超音波やMRIなどの画像評価は含まれていない
      4. low/minimal disease activityは代替治療ターゲットになりうるかもしれない
        • 既述したように、罹患期間が長い患者や併存疾患がある人では、remissionを達成するのは難しい
      5. 疾患活動性は、臨床所見と急性期炎症反応蛋白に基づいて計算されるべきである
        • 画像所見に関しては、フォローすることの正当性を示すデータがなく、現実的にMRIを何回もフォローすることは困難であるため、含まれなかった
        • RAでは、エコー寛解が臨床的寛解に優れているということは示せなかった
      6. 治療ターゲットを決めて治療内容を変更していくためにも、関節、皮膚、他の関節外病変(ぶどう膜炎、炎症性腸疾患など)に関するvalidated measuresを実臨床で使用すべきである
        • 高疾患活動性であれば 1 - 3 ヶ月ごと、治療ターゲットを達成したら 6 - 12 ヶ月ごとに記録に残すべき
      7. axSpA → ASDAS、PsA → DAPSA or MDA にてターゲットを決定すべき
        • axSpA
          • 2012年推奨では ASDAS and/or BASDAI + CRP だったが、syndemophyte(靭帯骨棘形成)に関してはASDASのほうがBASDAI + CRPより関連していることが報告されたため、BASDAI + CRP は今回除外された
          • そして、ASDASは、BASDAIよりも、多くの炎症性biomarkerやMRI変化と関連している
        • PsA
          • CPDAI、PASDASは多面的に評価している
          • しかしながら、薬剤によっては皮膚には有効だが関節病変には効果が低く(フマル酸、CyAなど。IL-17iは関節病変に対してはTNFiと同等だが、皮膚病変に対してはより有効性が高い。)、多面的評価では全て含めて有効となってしまい、詳細な評価ができない
          • ETN 50mg weekly vs. 100mg weekly を比較したPRESTA試験 のpost hoc解析でも、12週目時点で、CPDAIでは両群間に有意差がついたがDAPSAではつかなった。originalの試験でも、12週目時点でPASIのみ有意差がついたが、関節・dactylitis・腱付着部炎 scoreは有意差なし
            • そのため、乾癬性関節炎に対しては50mg, 乾癬に対しては100mgで承認された
          • GRAPPA, EULARでは、関節・腱付着部炎・皮膚病変のどれがpredominant かによって、異なる治療アルゴリズムを推奨している
          • すなわち、PsAにおいては、全ての病変をそれぞれのscoreで評価すべきであり、皮膚病変とそれ以外の病変を1つのscoreにして計算することは避けたほうがいいだろう
          • PsAにおいて、関節病変以外の活動性scoreが関節破壊に関連しているかはまだわからない
          • DAPSAは、CRPが含まれているが、関節病変に重点をおいた指標であり、皮膚項目を入れてvalidationすべきという提案に関しては決着していない。スコアによってremission, low disease activityを定義できる。
          • MDAは、末梢性関節炎、腱付着部炎、皮膚病変を含むが、CRPなどの検査所見が含まれていない。そして、T2Tの有用性に関して唯一評価されたことがある指標である。身体機能に関しては、罹患期間が長いと高くなりやすく、現在の疾患活動性と同じようにスコアに反映されてしまうかもしれない。
          • そのため、PsAに関しては、もっと適切な評価項目に関する研究が必要である
      8. 治療ターゲットには、併存疾患、患者背景、薬剤によるリスクを考慮すべきである
      9. 臨床所見や検査所見だけでなく、画像評価の結果も、managementの考慮に入れたほうがいいかもしれない
        • 画像所見は、治療ターゲットには含まれないが、治療ターゲットを達成できているか疑わしいときの補助にはなる
      10. 治療ターゲットを達成したら維持すべきである
      11. 患者は、治療ターゲット、T2T戦略のリスクとベネフィットに関して十分に情報を得て、議論に参加すべきである

    上記をまとめたアルゴリズムが下のfigure2


    今後の課題

    • PsA, axSpAにおいて、結局、remissionの定義に全ての病変を含めるべきか結論は出ていない
    • しかしながら、remissionとlow disease activityの予後に対する影響の違いはわかってきている
    • 疾患活動性と構造変化の関係もわかってきている
    • 2012年の時は全ての推奨がエビデンスレベルが低かったが、今回のは少し改善された
    • 以下、future research agenda
      • 脊椎病変と末梢病変は同じように治療に反応するのか?
      • dactylitisとenthesitis
        • 治療反応性のデータ
        • 身体機能、健康関連QOL、社会参加、心血管系リスクに影響するのか
        • 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
      • 皮膚病変
        • 身体機能、心血管系リスクに影響するのか
        • 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
        • 皮膚病変の改善が、関節病変や他の筋骨格系病変とは関係なく健康関連QOL、社会参加に影響するのか
      • 画像
        • フォローすることの有効性
        • 画像寛解を達成すべきなのか
      • 機能(HAQなど)
        • PsAの複合的評価項目にどれだけ影響するのか
      • axSpAとPsAの試験に関する戦略
      • 治療による改善をどうやって維持するか、漸減できるのか
      • リウマチ科など専門家によるケアが、非専門家より良い結果を与えるのか
      • 患者教育による方法で予後が変わるのか
      • 治療ターゲットを達成することでax/peripheral SpAの関節病変の構造破壊を抑制できるのか?
      • CRPより優れたバイオマーカの開発


    2017年11月14日火曜日

    axSpAと線維筋痛症の併存について

    Co-Occurrence and Characteristics of Patients With Axial Spondyloarthritis Who Meet Criteria for Fibromyalgia: Results From a UK National Register. Macfarlane GJ, et al. Arthritis Rheumatol. 2017.

    編集中に消えてしまったので、要点のみ…


    背景
    ・これまでの既報でも、axSpAの人では線維筋痛症の人が多いことが知られていて、CRPは変わりないけどBASDAIとかはFM併存例で高くて、治療反応性も悪いと報告されていた
    ・今回はUKの国レベルの前向き多施設axSpAコホートで調べましたよ

    結果
    ・1500人くらいのaxSpA症例を調べた
    ・FM2011ACR基準を満たしたのは全体で20%くらい
    →サブ解析で修正NY基準、ASAS画像基準を満たす集団はそれぞれ20%くらいだけど、ASAS臨床基準のみ満たす人は9%と低い
    以下、FM基準満たしやすい人
    ・女性
    ・貧困指数高い人
    ・HLA-B27陰性

    ※年齢は関係なし

    FM基準満たす人は、
    ・BASDAI, BASMI, BADFI, BASGいずれも高い
    ・CRP 1以上の人の割合は有意差なし
    ・腸管外病変の割合は有意差ないけどやや多い傾向
    ・腫脹関節数、圧痛関節数多い
    ・BMI高い
    ・なんらかの併存疾患ある人多い
    ・バイオ使ってる人が5割くらい(満たさな人は3割くらい)
    ・不安、抑うつ感じてる人多い
    ・休職率も高い

    考察
    axial skeletonやenthesitisがFM診断基準に含まれちゃうのでoverlapしちゃうのはそうなんですし確かに実臨床でもみなさん感じてると思うんですが、そういったoverlapしちゃう人としない人の臨床所見、検査所見の差を示したのが有難い、ってところでしょうか。実際にこういう人にどういう治療すればいいのかは今後の課題、非薬物的治療も含めて。

    2017年11月2日木曜日

    PsAに対するGOLの有効性 vs. placebo

    ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 2151–2161
    Safety and Efficacy of Intravenous Golimumab in Patients With Active Psoriatic Arthritis Results Through Week Twenty-Four of the GO-VIBRANT Study
    Arthur Kavanaugh,1 M. Elaine Husni,2 Diane D. Harrison,3 Lilianne Kim,3 Kim Hung Lo,3 Jocelyn H. Leu,3 and Elizabeth C. Hsia


    背景

    • PsAは末梢性関節炎、体軸性関節炎、腱付着部炎、指趾炎、皮膚、爪を病変とする疾患である
      • TNF阻害薬は中等度以上のPsAに対して、臨床症状・画像所見・QOLを改善する薬剤である
      • ガイドラインでも、既存の治療(DMARDs, NSAIDs)に抵抗性の場合には、TNF阻害剤を含む生物学的製剤が推奨されている
    • GO-REVEAL trialは、PsA患者において、GOL s.c.がplaceboと比較して優れていることを示した
      • しかしながら、the Multinational Assessment of Psoriasis and Psoriatic Arthritis Survey では、生物学的製剤を使用している26%の人が不安、自己注射に対して不便を感じていることがわかった
      • 投与回数や投与方法などは患者と医療者で意思決定を行うのに非常に重要な要素である
    • The GO-VIBRANT study では、活動性PsA患者におけるGOL点滴投与の有効性と安全性を調べている
      • 今回は24週間時点における結果を報告する

    方法
    • phase3、多施設、ランダム化プラセボ比較試験
    • 対象
      • 18歳以上
      • 6ヶ月以上前にPsAと診断されている
      • DMARDs 3ヶ月以上 and/or NSAIDs 4週間以上使用しても活動性あり
        • 腫脹関節数 ≧ 5/66
        • 圧痛関節数 ≧ 5/68
        • CRP 以下 0.6mg/dl
      • MTXは4週間以上変更なし
      • PSLは10mg以下なら継続可
    • 除外
      • 以前に生物学的製剤使用歴あり
    • 割付
      • 1:1=placebo:GOL 2mg/kg(week0, 4, その後8週ごと) 


    • 16週時点で腫脹関節数・圧痛関節数の改善が5%以下の場合には、以下のレスキューあり
      • PSL増量 or 開始(ただし10mg以下)
      • MTX増量 or 開始(ただし25mg/w以下)
      • NSAIDs増量 or 開始
      • SASP開始(ただし3g/day以下)
      • HCQ開始(ただし400mg/day以下)
      • LEF開始(ただし20mg/day以下)


    結果
    • baseline characteristics(table1)
      • 両群で特に差なし
        • 男性:52%
        • 平気年齢:46歳
        • 罹患年数:5.8年
        • MTX使用:70%
        • 少量PSL:27.7%
        • NSAIDs:70.8%



    • 有効性(table2, figure3)
      • 14週時点でのACR20達成率
        • GOL群 vs. placebo群 = 75.1% vs. 21.8%
          • p<0.001
      • 14週時点でのACR50達成率
        • GOL群 vs. placebo群 = 43.6% vs. 6.3%
          • p<0.001
      • 14週時点でのPASI75
        • GOL群 vs. placebo群 = 59.2% vs. 13.6%
          • p<0.001

      • 14週時点でのΔHAQ-DI
        • GOL群 vs. placebo群 = -0.60 vs. -0.12%
          • p<0.001


      • GOL群の方が関節破壊進行も緩徐(figure2)
        • 24週時点でのPsA-modifued SHS
          • GOL群 vs. placebo群 = -0.4 vs. 2.0
            • p<0.001



      • GOLの有効性は2週間時点ですでに有意差あり、24週時点まで維持




    • 安全性
      • 特に両群で差なし


    • 血中濃度
      • 平均トラフ値は12週間時点で安定し、20週まで維持していた
        • baselineでのMTXの使用の有無は影響なし
    • 20週時点で、44例(19.5%)で抗GOL抗体あり
      • そのうち16例が中和抗体

    2017年10月22日日曜日

    csDMARDs抵抗性のPsA患者に対するトファシチニブの有効性:vs. プラセボ(vs. ADA)


    n engl j med 377;16 nejm.org October 19, 2017 

    本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

    背景

    • 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬患者のうち、6 - 42% で生じ、末梢性関節炎、腱、靱帯、体軸を病変とする
      • ガイドラインでは、MTXを含むcsDMARDsが第一選択で、それらが不応の場合にはTNF阻害剤、IL-12/23阻害剤、IL-17阻害剤などのbDMARDsもしくはapremilast が推奨されている
    • トファシチニブは経口のJAK阻害薬であり、PsA患者の病態に関与していると思われるcommon gamma chainのようなシグナルに関与する
    • 今回はthe Oral Psoriatic Arthritis Trial (OPAL) phase3試験であり、ADAと比較してTofaの有効性・安全性、構造変化を12ヶ月間の観察期間で調べた

    方法

    • 対象
      • 18歳以上
      • 6ヶ月以上前にPsAと診断され、CASPAR基準を満たす
      • 少なくともcsDMARDsに治療抵抗性
      • TNF阻害剤 naive 
    • 試験デザイン
      • 多国間の126施設で実施
      • 2014/1-2015/12
      • 観察期間:12ヶ月間
      • ランダムに割付(2:2:2:1:1)
        • Tofa 5mg 1日2回 
        • Tofa 10mg 1日2回 
        • adalimumab(ADA) 40mg s.c. 2週間毎
        • placebo 3ヶ月間 → Tofa 5mg 1日2回 
        • placebo 3ヶ月間 → Tofa 10mg 1日2回 
      • 全例、試験期間中はcsDMARDsを単剤で維持量で使用
    • primary endpoint
      • 3ヶ月時点でのACR20達成率
      • 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI


    結果
    • 422人が割り付けられ、373人が治療を完遂(figure1)


    • baseline characteristics(table1)
      • 平均LEI, SJC、MTX使用率:全てADA群で低い傾向
      • ステロイド使用率:Tofa10mgで低い傾向




    • 有効性(table2, figure2)
      • 3ヶ月時点でのACR20達成率
        • Tofa 5mg群:50%
        • Tofa 10mg群:61%
        • ADA群:52%
        • placebo群:33%
          • Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
      • 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI
        • Tofa 5mg群:-0.35
        • Tofa 10mg群:-0.40
        • ADA群:-0.38
        • placebo群:-0.18
          • Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
      • 12ヶ月時点でのTofa 5mg群、Tofa 10mg群、ADA群のACR20, ΔHAQ-DIは同等
      • week2時点でTofa群、ADA群はplacebo群と比較して有意にACR20達成率が高い




    • HAQ-DIが臨床的に有意な改善を意味する0.35以上の改善をbaselineから3ヶ月時点で達成できた割合
      • Tofa 5mg群:53%
      • Tofa 10mg群:55%
      • ADA群:51%
      • placebo群:31%


    • 3ヶ月時点でのACR50達成率(table2)
      • Tofa 5mg群:28%
      • Tofa 10mg群:40%
      • ADA群:33%
      • placebo群:10%
        • Tofa群はいずれもplace群と比較して有意
    • 3ヶ月時点でのACR70達成率
      • Tofa 5mg群:17%
      • Tofa 10mg群:14%
      • ADA群:19%
      • placebo群:5%
        • Tofa群はいずれもplace群と比較して有意

    • 3ヶ月時点でのPASI75達成率は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意
    • 3ヶ月時点でのLEI、Dactylitis Severity Scoreは、Tofa 10mg群でplacebo群と比較して有意
    • 3ヶ月時点でのFACIT-F, SF-36は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意



    • radiographic progressionについて
      • 全ての群でわずかに進行を認めた
      • しかしながら、12ヶ月時点で、全ての群において、radiographic non-progressionの定義であるΔmTSS ≦ 0.5だった割合は91-98%だった

    • 安全性
      • 3ヶ月間における有害事象の頻度
        • Tofa 5mg群:39%
        • Tofa 10mg群:45%
        • ADA群:46%
        • placebo群:35%
      • 3ヶ月間における重度有害事象の頻度
        • Tofa 5mg群:3%
        • Tofa 10mg群:1%
        • ADA群:1%
        • placebo群:1%
      • 12ヶ月間における重度有害事象の頻度(有害事象によって治療を中断した割合)
        • Tofa 5mg群:7%(6%)
        • Tofa 10mg群:4%(3%)
        • ADA群:8%(4%)
      • placebo→Tofa 5mgスイッチ群で4ヶ月時点(変更後1ヶ月)で心血管合併症により死亡
      • 重症感染症は計4例
        • そのうち3例はTofa群
          • インフルエンザ、虫垂炎、肺炎
        • もう1例はADA群
          • 単純ヘルペス、streptococcal pyoderma 
      • 帯状疱疹は4例、全てTofa群
      • 悪性腫瘍は4例(膀胱癌:day1、外陰部癌:day11、浸潤性乳管癌:day232、基底細胞癌:day103)、全てTofa群


      • 最も頻度の多い有害事象は上気道感染症

      • placebo群以外で好中球減少、LDL増加、HDL増加あり
        • 以下はなし
          • リンパ球減少症(0.5×109 cells/L)
          • 好中球減少症(1.0×109 cells per/L)
          • ΔHb低下 ≧ 0.8g/dL 
      • 正常上限3倍以上のAST増加
        • Tofa群:5例
        • ADA群:3例
      • 正常上限3倍以上のALT増加
        • Tofa群:5例
        • ADA群:9例


    まとめ
    • トファシチニブが、csDMARDsに治療抵抗性のPsAに対して、ADAと同等の有効性があることを示した
      • しかしながら、今回の試験ではADAとトファシチニブを比較するようなデザインではなく、そういった解析も行なっていない
    • トファシチニブの有効性は、5mg 1日2回でも10mg 1日2回でも、PsAの末梢性関節炎、皮膚病変、腱付着部炎、指尖炎に対してあまり変わらなかった

    トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

    Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...