Hiepe, Falk, and Andreas Radbruch. "Plasma cells as an innovative target in autoimmune disease with renal manifestations." Nature Reviews Nephrology 12.4 (2016): 232-240.
- plasma cellが最初に発見されたのは1947年で、抗体を産生する細胞としてAstrid Fagraeus が発見した
- 当初は、活性化B細胞から継続的に分化してくる、均一な、short-lived の細胞集団と考えられていた
- 当時から、一部の専門家は、抗体はlong-lived plasma cellから産生されると仮説を立てていたが、その証明がなされたのは1997年になってからであり、Manzらが報告した
- これらの知見に基づいて、2004年にHoyerらが、SLE腎炎マウスモデルを使用して、short-lived plasmablastもしくはplasma cellと、long-lived plasma cellの両者が自己抗体を産生することを報告した
- 現在では、long-lived plasma cellは、液性免疫を維持する基盤の細胞集団であることがわかっている
- short-lived plasma cellとは異なり、long-lived plasma cellは(自己反応性のものも含めて)、B細胞前駆細胞に非依存的であり、CYCなどの増殖を妨げる薬剤に対して抵抗性を有しているため、治療標的として注目されてきた
- 今回のレビューでは、short-lived plasma cellとlong-lived plasma cellの発生、plasma cellの自己免疫疾患における役割、自己反応性plasma cell除去の治療戦略に関して述べている
plasma cellの発生
- 膜結合型の抗体は、抗原に対する受容体として作用し、B細胞表面に存在しているが、これらの細胞は抗体を分泌しない
- plasma cellは、以下の3つの経路を介して、B細胞から発生する
- B1細胞 → plasma cell
- T細胞非依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
- T細胞依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
- マウスでは、B1細胞は、TLRを介してplasma cellへ分化し、主にIgMを産生する
- ヒトにおいては、そのような経路がB1細胞において存在するかはわかっていない
- B2細胞は、T細胞依存性と非依存性の経路でplasma cellに分化する(下図)
- T細胞非依存性の経路は、以下のいずれかの結果である
- B細胞受容体(BCR)非依存性の、LPSのようなmitogenに対するpolyclonal B細胞の反応
- long-chain polysaccharides によるBCR活性化
- Marginal-zone B2細胞は、short-lived plasma cellに分化し、主にIgMを産生する
- 一方で、T細胞依存性の経路は2段階ある
- extrafollicularでの反応によってshort-lived plasma blastへ分化し、中等度の親和性を有する抗体を産生する
- 活性化B細胞の一部は、再びB細胞のfollicleへ入ってTfhの下で増殖し、germinal centerを形成する。このgerminal centerで発生したplasma cellは、骨髄のnicheにおいて長期に生存し、高親和性の抗体を産生する
(Cellular and Molecular Immunology 12, 31–39)
- B細胞は、活性化した後に、増殖可能なpre-plasmablastとplasmablastを経て、増殖せずに生着するplasma cellへ分化する
- plasmablastもplasma cellも、抗体を産生する
- これらの分化段階では、それぞれ異なる表面マーカーが発現している(table1)
- plasma cellも多様であり、CD19が発現しているものとしていないものが骨髄や炎症性組織に存在していることがわかっている
- CD19, CD38, CD138の発現によって、骨髄のplasma cellは、4つのサブセットに分けられる
Long-lived plasma cells
- Long-lived plasma cellsは、二次的な免疫反応によって発生し、発生にはgerminal centerでの反応が必要である
- plasmablastのうち、限られた数しかlong-livedに分化できない
- plasmablastは、骨髄や炎症性組織に移動し、long-lived plasma cellとして生存するのに必要なnicheを競合し合う
- 骨髄のnicheは限られているが、炎症性組織のnicheは炎症の程度に依り、炎症がおさまるとnicheも消える
- 感染症の罹患部位にplasma cellが存在することは、その部位においてplasma cellが産生した抗体によって原因微生物が排除されるという仮説を支持している
- オートファジーの過程(細胞のホメオスタシスを維持するために細胞質成分にリサイクルする、リソソームによる自家消化)は、plasma cellの寿命に関与している
- plasma cellはオートファジーが活性化している
- plasma cellの寿命は、nicheからのsurvival factorに依存しており、骨髄nicheから分離するとlong-lived plasma cellは数日で死滅する
- nicheは、CXCL12とVCAM1を発現している間葉系細胞によって構成されている。また、巨核球と好酸球は、survival factorであるBAFF、APRIL、IL-6を産生している
- APRILとBCMAの骨髄における相互作用が、plasma cellがMCL-1を多く発現するのに必要である
- 炎症性組織におけるplasma cell生存に関与しているfacrtorは不明な点が多いが、CXCL12発現細胞、CXCR3リガンド(=CXCL9, CXCL10, CXCL11)、APRIL, BAFFが炎症性組織で関与していることが報告されている
- long-lived plasma cellは、memory B細胞・B細胞活性化・抗原の結合・T細胞による補助とは非依存性に抗体を産生し、memory cellsの性質を有している
Plasma cells in autoimmunity
- 臓器病変として腎臓が含まれる自己免疫疾患で、自己抗体が病態に関与している疾患はTable2に示すように多い
- 自己抗体を産生するplasma cellが、これら自己免疫疾患の病態において重要である
- NZB/Wマウス(SLEモデルマウス)のplasma cellを、plasma cellが欠損し免疫不全であるRag1−/− マウスに移植すると、抗ds-DNA抗体を産生するようになり、免疫複合体を形成して腎炎を生じる
- 自己抗体は、2つの異なる独立したplasma cellから産生される(下、Figure1)
- 1つは、新規に発生したshort-lived plasmablastとplasma cell
- これらはB細胞活性化に依存しており、脾臓とリンパ節で生じる
- B細胞が活性化するような状態、すなわちワクチンや自己免疫疾患再燃の過程で起こる
- short-lived plasmablastは末梢血に存在しており、フローサイトメトリーで特定可能である
- plasmablastの数の増加 or plasmablast/B細胞比の増加は、B細胞の活性化の指標として、SLEやAAVなどの自己免疫疾患で使用されている
- 二次免疫での反応では、ワクチン特異的な、オリゴクローナルな、高頻度に変異したplasmablastが誘導される
- 活動性のSLEにおいては、一部は自己抗原特異的なplasmablastがmemory B細胞から分化するが、大半は、ポリクローナルな活性化naive B細胞から発生する、低いレベルでのsomatic hypermutationを示すplasmablastである
- 驚くべきことに、SLE患者において、活性化naive B細胞クローンが数ヶ月末梢血に存在している
- plasmablastの増加は、抗ds-DNA抗体のような自己抗体増加と関係している
- 2つ目は、long-lived memory plasma cell
- short-lived plasma cellと異なり、memory plasma cellは通常の免疫抑制治療に抵抗性である
- SLE腎炎モデルマウスでds-DNA抗体を産生するNZB/W F1 マウスでは、CYC, ステロイドの併用治療でも骨髄と局所の炎症部位に存在するplasma cellを除去できない
- memory plasma celは、B細胞非依存性に自己抗体を産生するため、B細胞を直接的に標的にした治療(抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗BAFF抗体)もしくは間接的に標的にした治療(Th細胞阻害薬)に影響されない
- これらの治療で自己抗体が低下しない場合には、memory plasma cellから産生されていると考えられる
- これら2つの機序のうち、いずれが主に自己抗体を産生しているのかはわかっていない
- 自己反応性plasmablastは、pritectiveに作用するlong-lived plasma cellともnicheを競合する
- 骨髄が主なlong-lived plasma cellのnicheであるが、炎症性自己免疫疾患では炎症組織もまたnicheとなりうるので、その部位において病的な自己抗体を産生する
- 活動性SLE患者の骨髄、リンパ節、腎病変のplasma cellは、BAFF, APRILを産生することができ、自身の生存に関与しているかもしれない
plasma cellを標的にした治療
conventional immunosupression
- short-lived plasmablastとplasma cellは、増殖しているplasmablastとB細胞を標的にして、通常の免疫抑制治療に反応する
- 増殖していないplasmablastは、これらの治療開始後数日で消失する
- RTX, ベリムマブは、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するが、long-lived memory plasma cellには影響しない
- 自己反応性B細胞を刺激するfactorを阻害する治療、すなわちtype1 IFNや、ヘルパーT細胞やTregを標的にした治療も同様に、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するだろうが、long-lived memory plasma cellには影響しないだろう
Antithymocyte globulin
- 自家造血幹細胞移植において使用されるATGは、自己反応性memory細胞を含む獲得免疫システムの全体を除去する
- ポリクローナルなATGは、CD38, CD138, CD52のようなplasma cellに発現している分子に結合する
- これによって、健常人と同じような獲得免疫を再構築することができるかもしれない
Proteasome inhibitors
Targeting survival factors
Targeting plasma cell homing
- Proteasome inhibitors は、より選択的に、plasma cellを除去する
- plasma cellの腫瘍である多発性骨髄腫において使用されているボルテゾミブは、免疫グロブリン合成を誘導し、unfolded proteinの蓄積によってアポトーシスを誘導する
- NZB/Wマウスでは、ボルテゾミブは、ほぼ完全にplasmablastとplasma cellを除去し、ds-DNA抗体産生と腎炎の発症を防ぎ、コントロールと比較して生存期間が著明に延長した
- この結果を受けて、通常の治療で治療抵抗性SLEに対して、2-4回のサイクルでボルテゾミブを投与するpilot studyが行われたところ、SLEDAIは~60%低下し、ds-DNA抗体価は正常値まで改善した
- ワクチンによる抗体価も~30%まで低下し、末梢血に循環しているplasmablastと骨髄のplasma cellも抗体価の低下と相関して減少した
- さらに、マウスモデルでは、proteasome inhibitorは、plasma cytoid DCsによるtype1 IFNの産生も阻害し、これも機序として考えられる
- また、in vitroでは、活性化ヒトT細胞を選択的に除去する作用も示されており、これによってT細胞とB細胞のアポトーシスを誘導し、NFκB活性化を阻害する
- AAVでも、ボルテゾミブによるplasma cell除去は試みられている
- この疾患のモデルマウスでも、脾臓や骨髄に存在するMPO-ANCAを産生するplasma cellの数を有意に低下させ、MPO-ANCAが低下し腎炎の発症を予防した
- 治療抵抗性のAAVや特発性膜性腎症によるネフローゼ症候群に対するボルテゾミブ使用のケースレポートでも、良好な結果が報告されている
- 新世代のproteasome inhibitorであるdelanzomibやcarfilzomib は、より少ない毒性でより有効な結果を残すころが期待されている
Targeting survival factors
- miRNA-148aやsurvival nicheの構成成分など、plasma cellのsurvival factorを標的にした治療も検討されている
- アタシセプト(可溶性TACI-Ig)は、BAFFとAPRILを中和し、有望なアプローチであり、plasma cellと免疫グロブリンを低下させる
- phase2/3では、アタシセプト 75mgでは、中等症以上のSLEの再燃を予防できなかった
- 150mgを投与した試験では再燃を予防できたが、肺炎による死亡症例が2例あり、早期にこの試験は中止された
- また、多発性硬化症では、アタシセプトによってむしろ疾患活動性が増加し、RAでは全く有効性を示さなかった
- 接着分子であるVLA-4、LFA-1に対するモノクローナル抗体製剤は、wild-type C57BL/6 マウスにおいて、骨髄のplasma cellを除去した
- この効果は、CD20抗体を投与してB細胞を除去することで延長した
- しかしながら、NZB/Wマウスでは、VLA-4、LFA-1、CD20に対するモノクローナル抗体製剤の有効性は不十分であった
- この違いの理由はわかっていない
Targeting plasma cell homing
- CXCR4-CXCL12の相互作用は、plasma cellが骨髄に移動するのに必須である
- plasma cellがCXCR4を発現しており、CXCL12を発現している骨髄nicheを主に形成している間葉系細胞に惹きつけられる
- 炎症組織(腎臓、関節、皮膚、唾液腺)のnicheでも、CXCL12は過剰に発現している
- NZB/Wマウスに対して、CXCLに対するモノクローナル抗体製剤を投与すると、発症前の場合は腎病変とds-DNA抗体産生が予防され、すでに発症しているマウスだと疾患活動性を低下させる
- CXCR4アンタゴニストであるCTCE-9908も、B6.Sle Yaa SLEモデルマウスに対して同様の効果を示した
- NZB/Wマウスのplasma cellを、免疫不全であるRag1−/− マウスに投与したところ、CXCR4阻害薬(AMD3100)によって骨髄への移動が阻害された
- さらに、NZB/Wマウスに、短期間のボルテゾミブでplasma cellを除去した後に、長期間AMD3100を投与すると、骨髄でのplasma cellの回復と腎病変発症を阻害し、ds-DNA抗体とタンパク尿を低く維持した
- plasma cellと同様に、CXCR4を発現している他の炎症性細胞(マクロファージ、好中球、T細胞)が炎症部位に移動するのを抑制した
- 第8因子に対する自己抗体を有する血友病のモデルマウスに対して、AMD3100によるCXCR4阻害とG-CSFの併用治療で、第8因子を阻害する抗体を産生するplasma cellを含むlong-lived plasma cellを低下させた
- CD38が、plasma cellと多発性骨髄腫細胞の表面に多く発現している
- そして、これは、他のリンパ球系細胞、骨髄系細胞にはあまり発現していない
- daratumumabというCD38に対するモノクローナル抗体を使用した臨床試験では、治療抵抗性の多発性骨髄腫患者の骨髄に存在するplasma cellを除去し、良好な結果を示した
- 自己免疫疾患に対するデータは存在していない
plasma cell除去による有害事象
- 感染症
- ボルテゾミブでは、免疫グロブリンは~30%低下した(SLE)
- アタシセプトでは、IgMとIgAが~50-60%低下し、IgGは30-40%低下した(SLE, RA)
- アタシセプトに2週間先行して高用量ステロイドとMMFを投与していたSLE腎炎の患者では、アタシセプトを投与して、IgGが300mg/dLまで急激に低下し、肺炎を発症した。こういった患者には、免疫グロブリンの補充やワクチン投与を考慮する必要がある。
- ワクチンに対する抗体価は、~30%低下したが、その多くはまだ有効な抗体価を維持していた
Depletion of pathogenic plasma cells
- memory plasma cellに対する治療は、ワクチンに対して反応したようなprotectiveなplasma cellも除去するので、病的なplasma cell選択的に除去する治療が望ましい
- これまで、SLEの病態に関与しているplasma cellを直接標的にする表面蛋白は同定されていないが、それらが産生している抗体によって病的なplasma cellとprotectiveなplasma cellを区別することは可能と考えられる
- それぞれのplasma cellをそれ自体が標的にしている抗原で覆ってしまえば、plasma cellが産生している抗体がplasma cellの表面に結合して、補体を活性化してplasma cellが除去できるだろう
- 理論的には、マウスのCD138に対する抗体のF(ab)2 fragmentを、自己抗原で共役させると、plasma cellの表面を覆い、自己抗体を産生しているplasma cell選択的に、補体による細胞溶解 or antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC) を誘導することができる(figure3)
- in vitroでは、証明できている
- しかしながら、この手法ではすでに末梢血に循環している自己抗体は除去できないので、血漿交換や免疫吸着を併用する必要があるだろう
Targeting precursor B cells
- NZB/Wマウスでは、B細胞の活性が高く、ボルテゾミブを中断すると、自己反応性memory plasma cellが急速に再構築される
- これは、活動性SLEにおいても同様に認められ、ボルテゾミブを1サイクル投与した後、末梢血に循環しているplasmablastとds-DNA抗体が再び増加してくる
- 長期間のボルテゾミブ or proteasome inhibitorは、毒性(末梢神経障害、肺障害、ヘルペスなどの感染症、便秘・下痢、骨髄抑制、局所投与部位の皮下脂肪組織萎縮や皮膚硬結)やコストからしても望ましくない
- そのため、plasma cellの前駆細胞を阻害することで、自己反応性memory plasma cellの再構築を抑制する必要がある
- NZB/W マウスでは、短期間のボルテゾミブの後に、B細胞除去治療(CD20に対する抗体製剤、CYC)を行うことで、ds-DNA抗体産生long-lived memory plasma cellの再構築を阻害し、腎炎の発症を遅らせた
- この結果から、今後、自己免疫に対して新しい治療戦略を開発する際に、まず最初に自己反応性memory plasma cellをボルテゾミブで除去し、その後にRTXやベリムマブによるB細胞標的治療を行うことは有効かもしれない
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