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2019年5月8日水曜日

新しいSLEの疾患活動性評価スコア:SLE-DAS

Derivation and validation of the SLE Disease Activity Score (SLE-DAS): a new SLE continuous measure with high sensitivity for changes in disease activity
Jesus D, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:365–371.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214502

<背景&目的>

  • SLEDAIが、SLEの疾患活動性の指標として広く用いられている
  • しかし、SLEDAIは、"あり"か"なし”かで分ける二項的に指標をつけるものであり、remissionであるかどうかには問題ないが、その臓器病変の重症度が上がってもスコアは変わらず、疾患活動性の推移をモニターするのに限界がある
    • また、溶血性貧血や肺炎、消化管病変などが含まれていないことも問題である
    • こういったスコアの問題が、ベリムマブを除いて、実地臨床では効果があると実感される薬剤がSLEのphase 3の臨床試験で有効性を示せないことに繋がっている
  • そこで、今回は、SLE-DAS(the SLE Disease Activity Score )という指標を開発し、その有効性を検討した

<方法>
  • derivation cohort
    • ポルトガルのCentro Hospitalar e Universitário de Coimbra (CHUC) Lupus Clinic at Rheumatology Departmentのlongitudinal cohort
  • validation cohort
    • イタリアの Rheumatology Unit, University of Padovaのlongitudinal cohort
  • 対象
    • ACR 1997 SLE分類基準を満たす患者を上記cohortから組み込んだ
  • derivation cohortを使用して、SLE-DASを作成
    • SLEDAI-2Kでも用いられている17種類の項目(Table 1)をindependent variable、PGAをdependent variableとして、multivariate linear regression analysisをおこなった
      • フォロー期間中のvisitの中で、各患者において最も高い疾患活動性のvisitの時のデータを使用
      • あまりに欠損値が多いと、sample variationが小さくなってしまったり、independent variableが多すぎると回帰モデルの精度が落ちるので、10人以上の患者で観測された項目のみをモデルに組み込んだ
      • 組み込まれなかった項目は、熟練した解析者による裁量で重み付けをされた(他の項目との相関や、医師による疾患活動性の評価に与える影響などがその重みに考慮された)


  • 上記で作成したSLE-DASを、validation cohortを用いて、以下の項目について検討した
    • PGA, SLEDAI-2Kとの相関
      • PGA, SLEDAI-2Kは、各施設のSLE expertが、visitの直近30日間に関して、スコアをつけた
    • 臨床的に重要な変化(ΔPGA ≧ 0.3)を拾い上げる精度
      • ROC analysisでcut-offを決定
    • damage accrual(the SLICC/ACR Damage Index for SLE (SDI))を予測する精度


<結果>

1. スコアの作成過程
  • 520人のSLE患者を上記2つのコホートから組み込んで解析した

  • 以下の項目が10人以上の患者で観測できたため、multivariate linear regression analysisに組み込んだ
    • swollen joints
    • high urinary protein excretion
    • low platelet count
    • low white cell count
    • localized and generalized lupus rash
    • alopecia
    • mucosal membrane lesions
    • mucocutaneous vasculitis
    • low complement
    • increased levels of anti-dsDNA 
      • 尿蛋白、血小板、白血球数に関しては自然対数化した方がよいモデルとなった
  • 以下の項目は、観測数が足りなかったので、熟練したexpertによって重み付けをされ、最終モデルに入れた
    • neuropsychiatric involvement
    • systemic vasculitis
    • cardiac/pulmonary involvement
    • myositis
    • serositis
    • haemolytic anaemia
  • multivariate linear regression analysisを行った項目の回帰係数と、expertによる裁量で重み付けをした項目のスコアが下記

  • 上記の結果、作成されたSLE-DASが以下

  • SLE-DAS作成シート(各項目の定義含む)は下記
    • 各施設でvalidationするのに使いやすそうです。


2. Internal Validation(deriviation cohortで検討)

  • SLE-DASと、他の指標との相関(最終visitのデータで検討)
    • PGA  (rs =0.975, p<0.0005)
    • SLEDAI-2K SLEDAI-2K (rs =0.94, p<0.0005) 
  • PGAとSLEDAI-2Kもきちんと相関していた(r =0.973, p<0.0005).
  • 臨床的に重要な変化量(ΔPGA ≧ 0.3)としての、SLE-DASの精度は、SLEDAI-2Kよりも優れていた
    • SLE-DAS:AUC=0.927 (95% CI 0.885 to 0.969, p<0.0005)
    • SLEDAI-2K:AUC=0.787 (95% CI 0.718 to 0.857, p<0.0005)
    • ΔSLE-DASのcut-off:1.72


  • ΔSLE-DAS(≧1.72)は、ΔSLEDAI-2K(≧4)よりも、臨床的に重要な変化(ΔPGA ≧ 0.3)を拾い上げるのに高い感度を示した(特異度は96-100%で同等だった)
    • 改善を拾い上げる感度:82.1% vs 44.8%, p<0.0005
    • 増悪を拾い上げる感度:93.1% vs 46.6%, p<0.0005 


3. External Validation(validation cohortで検討)
  • SLE-DASと、他の指標との相関
    • PGA  (r=0.875, p<0.0005) 
    • SLEDAI-2K (r=0.943, p<0.0005) 
  • PGAとSLEDAI-2Kもきちんと相関していた (r =0.839, p<0.0005).
  • 臨床的に重要な変化量(ΔPGA ≧ 0.3)としての、SLE-DASの精度は、SLEDAI-2Kよりも優れていた(Figure 2)
    • SLE-DAS:AUC=0.998 (95% CI 0.994 to 1.000, p<0.0005) 
    • SLEDAI-2K:AUC= 0.928 (95% CI 0.855 to 1.000, p<0.0005)
    • ΔSLE-DASのcut-off:1.72
  • SLE-DASは、SLEDAI-2K(≧4)よりも、臨床的に重要な変化を拾い上げるのに高い感度を示した(特異度は同等だった)
    • 改善を拾い上げる感度:89.5% vs 47.4%, p=0.008
    • 増悪を拾い上げる感度:95.5% vs 59.1%, p=0.008
  • 192人の患者が少なくとも2回フォローされており、それらでdamage accrualを予測する精度の解析をおこなった
    • 平均5年間のフォロー
    • model 1はadjusted mean of SLE-DAS, model 2はadjusted mean of SLEDAI-2Kで multivariate Cox regression modelを作成した(table 4)
    • SLE-DAS、SLEDAI-2Kともに、damageを予測するのに有意な項目ではあったが、model 1の方がAICが低く、better fitだった(AIC 377.183 vs 385.015, respectively)
    • また、model 3として、SLE-DAS、SLEDAI-2Kの両方を入れたmodelを作成sたが、model 3とmodel 1を比較するためにlikelihood ratio testを行うと、p=0.694であり、model 1にSLEDAI-2Kを追加する統計学的なメリットはないと判断された。一方で、model 2とmodel 3を比較すると、p=0.0047となり、SLE-DASを追加する方がより精度よくdamageを予測できた
      • すなわち、adjusted mean of SLE-DASは、adjusted mean of SLEDAI-2Kよりも、精度が高かった



<考察>
  • PGAを目的変数、Table 1に含まれる項目を予測変数として、multivariate linear regression analysis + expertによる裁量の重み付けで作成したSLE-DASは、SLEDAI-2Kよりも、PGAによる疾患活動性の変化、damage accrualを精度よく予測した
  • SLEDAIよりも項目数が減った(24 vs 17)にも関わらず精度がよかったのは、溶血性貧血、消化管病変、心肺病変を含んだこと、quantitativeな評価方式に変更したからだろう
  • limitation
    • PGAという主観的な項目を目的変数として作成したことかもしれない
      • しかし、PGAはSLE疾患活動性を評価する方法として広く使用されており、また、今回はPGAは同じ評価者で継時的に評価されており、SLEDAI-2KとPGA自体も高い相関を示したことから、妥当性は高いと考えられる
    • もう一つは、validation cohortが単施設であり、主にCaucasianの患者であることである
      • そのため、他の施設でのvalidationも必要だろう

2019年5月6日月曜日

SSA抗体陽性の妊婦から出生した新生児の先天性房室ブロックに関する疫学的調査:スウェーデンより

Comorbidity and long-term outcome in patients with congenital heart block and their siblings exposed to Ro/SSA autoantibodies in utero
Mofors J, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:696–703.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214406

<背景>

  • Congenital heart block (CHB)は、SSA抗体陽性の妊婦から生まれた新生児に起こりうる
    • 一般人口では、約 1/23,000人
    • SSA抗体陽性の女性からは、1 - 2%
  • ペースメーカー留置が早い時期から必要になることもあるが、ペースメーカーの留置とその後の拡張型心筋症の発症が関連していることは知られている
  • CHBは稀なので、CHBやそれに伴う合併症に関するデータを多く集めることは比較的難しい
  • そのため、今回はスウェーデンのnation-wide healthcare registersのデータから、CHBに関する情報を収集した

<方法>
  • SSA抗体陽性の女性から出生した、CHBを有する新生児 (n=119人)とその同胞(n=128人)の情報を集めた
  • healthy controlは、the Swedish National Patient Registerから収集

<結果>
  • 平均フォロー期間
    • CHB group:17.1年
    • 同胞グループ:18.4年

  • CHB patientsは、一般集団よりも、心血管疾患のリスクが有意に高かった
    • 心筋症 ± 心不全
      • 16.8% (20人) vs 0.3% (3人)
      • HR 70.0 (95% CI 20.8 to 235.4)
    • 脳梗塞
      • HR 39.9 (95% CI 4.5 to 357.3)

  • CHB patientsは、感染症のリスクも高かった
    • ペースメーカー留置をすることで、脳梗塞のリスクは下がるものの、心筋症 ± 心不全と感染症のリスクが増加した(Figure 1)

  • CHB patientsとその同胞は、ともに、何かしらの自己免疫疾患を発症するリスクが高かった
    • CHB patients:HR 5.7, 95% CI 2.83 to 11.69 
    • 同胞:3.6, 95% CI 1.7 to 8.0

<考察>

  • 今回の研究は、これらの関連について因果関係を明らかにする内容の研究ではないが、これまでの小規模な研究の結果を支持する内容だった
  • ペースメーカー留置が脳梗塞を予防する効果は大きいかもしれない
    • 脳梗塞を発症した4人のうち3人は、ペースメーカーをしていなかった
  • 心疾患がCHB patientsで一般集団より多かったのは、同胞でも多かったことから、reporting biasもあるかもしれない
  • 感染症に関しては、ペースメーカー留置に伴う二次的な感染症や、CHB patientsはprematureな段階で出生すること、一般集団よりも医療機関を受診する頻度が多いことがより感染症の診断がつきやすいことが関係しているかもしれない

2018年3月22日木曜日

補体の活性化が、SLE ± APS妊婦の妊娠合併症を予測する


Kim MY, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:549–555. doi:10.1136/annrheumdis-2017-212224 


背景
  • SLE ± APSの妊婦は、妊娠中の有害事象(APOs)のリスク(子癇、胎児死亡、胎児発育障害など)が増加する
    • APOsを予測するリスク因子の同定について研究がすすめられてきている
  • マウスの研究では、炎症、特に補体活性化と好中球の誘導が、胎盤不全、胎児死亡、胎児発育障害に重要であることがわかった
    • 補体活性化が、白血球の浸潤を促進し、TNF-α や、血管成長阻害因子であるsoluble fms-like tyrosine kinase-1 (sFlt1)の産生を誘導する
  • 補体の活性化は、classical, alternative, lectin pathwaysの3つがある
    • これらの経路は、C3を介して、以下の共通のエフェクターを誘導する
      • anaphylatoxins
      • opsonins
      • the membrane attack complex 
    • classical, alternativeの経路に関わる物質(factor B, C4, C3, C5) を欠損したマウスでは、aPLによる胎児の障害に対して抵抗性を獲得するため、この両者の経路が重要であることが示唆されている

  • ヒトにおける研究でも、aPLによる妊娠合併症における補体の役割は、上記を支持している
    • classical pathway 活性化のマーカーであるC4dが、SLE ± APSの妊婦の胎盤に認められる
    • 原発性APSについての2つの研究では、軽度の低補体血症が認められることを報告している
    • SLE ± APSの妊婦が子癇を発症するリスクとして、補体制御蛋白のvariantsが報告されている
    • 自己免疫疾患を有さない妊婦のprospective studyにおいて、子癇の発症と、alternative pathwayの活性化によって産生されるBbの増加が、強く関連していることが報告されている
  • 今回は、SLE ± APSの妊婦において、妊娠第2半期前における血清の補体活性化の変動が、APOsと関連するか調べた(PROMISSE Studyのデータを使用)

方法
  • PROMISSE Study
    • Predictors of pRegnancy Outcome: bioMarkers In antiphospholipid antibody Syndrome and Systemic Lupus Erythematosus 
    • 大規模、多施設、多人種、prospective
    • 妊娠した時点では軽症〜中等症の疾患活動性であるSLE ± aPLの女性における、APOを予測する臨床所見・検査所見について調べた研究
    • 2003/9 - 2013/8 に、妊娠12週以内の症例をリクルート
    • コントロールとして、健常人を人種でマッチさせてリクルート
    • 除外規定:APOsと関連する他の因子を有している症例
      • PSL > 20mg/day
      • 尿蛋白 1g/gCr
      • sCr > 1.2mg/dl
      • 糖尿病あり
      • BP > 140/90 mmHg
  • APOsの定義
    • 妊娠12週後以降の胎児死亡
      • 染色体異常、解剖学的異常、感染症を除く
    • 発育不全もしくは胎盤不全によって、退院前に生じた新生児死亡
    • 妊娠高血圧、子癇、胎盤不全による36週間以内の早産
    • small-for gestational-age (SGA) neonate (<5th percentile) 

結果
  • 770人の妊婦(SLE ± aPL)をスクリニーングし、487人を解析
    • 内訳
      • SLE:326人(66.9%)
      • SLE + sPL:60人(12.3%)
      • aPL:101人(20.7%)
    • APOsがあった症例:100人(20.5%)
      • 妊娠12週後以降の胎児死亡
        • 27人(5.5%)
      • 発育不全もしくは胎盤不全によって、退院前に生じた新生児死亡
        • 5人(1.0%)
      • 妊娠高血圧、子癇、胎盤不全による36週間以内の早産
        • 49人(10.1%)
      • small-for gestational-age (SGA) neonate (<5th percentile) 
        • 47人(9.7%)
    • コントロール(健常人):204人
      • APOsがあった症例:7人(3.4%)
  • baseline characteristics(table1)
    • SLE ± aPLを有する女性のうち、以下の項目が有意にAPOsと関連した
      • aPL陽性、LAC陽性
      • 血圧高値
      • BMI高値
      • 血栓症の既往
      • ヘパリンや降圧薬での治療歴
    • 以下の項目は有意差なし
      • 人種
      • 年齢
      • 出産歴
      • ループス腎炎、タンパク尿の既往
      • アスピリン、ステロイドの使用歴
      • 喫煙歴



  • BbとsC5b-9に注目
    • SLE ± aPLの患者群でAPOsがあった症例では、妊娠12−15週という早期の段階から、BbとsC5b-9の有意な増加を認めた
    • SLE ± aPLの患者群でAPOsがない症例でも、健常人と比較すると増加していた
    • 全ての群で、妊娠経過に伴い低下していったが、低下の割合は健常人と比較して緩やかだった
    • なお、SLE ± aPLの患者群のBbとsC5b-9は、有意に相関していた
      • 12-15週
        • 0.49 (P<0.001) 

      • 36-39週
        • 0.68 (P<0.001) 



  • 血管新生因子(sFlt1, PIGF)との関連
    • Bb・sC5b-9と、sFlt1・PIGF・sFlt1/PlGFとの関連を調べたところ、中等度の関連が見られた(0.25は超えない程度)
    • sFlt1/PlGFによって調整した後も、BbとAPOs・sC5b-9とAPOsの関連は有意だった

  • 多変量解析(table2)
    • SLE ± aPLの患者群
      • 交絡因子(table2のvariable)で調整後も、12-15週におけるBb、sC5b-9は、有意にAPOsと関連していた
        • Bb
          • ORadj=1.41 per SD increase; 95%CI 1.06 to 1.89; P=0.019 
        • sC5b-9
          • ORadj=1.37 per SD increase; 95% CI 1.05 to 1.80; P=0.022 
    • 健常人
      • 12-15週におけるBbは、有意にAPOsと関連していた
        • Bb: 0.91 vs 0.71μg/mL
          • P=0.03
      • sC5b-9は有意差なし
        • 241.5 vs 226.5ng/mL , p=0.66



  • 他の補体因子について
    • C5a, C4d, iC3bは、APOsとの関連は有意でなかった
    • C3aは、bivariate avalysisでは有意だったものの、多変量解析にすると有意でなかった
      • 一方で、Bbは有意のままだった




まとめ


    • SLE ± aPLの妊婦において、Bb・sC5b-9の増加とAPOsは有意に関連した
      • これは、補体活性化(特にalternative pathway)と胎盤不全の関連によって、妊娠合併症を引き起こすという考えを支持している
      • 特にaPL陽性患者において、alternative pathway活性化とAPOsの関連が強かった
        • これは、マウスの実験において、factor Bを欠損したマウスが、aPLによる胎児発育不全・胎児死亡に対して抵抗性を有していたことと一致する
    • SLEとaPLの病態では自己抗体の関与が重要であるが、classical pathwayの構成要素よりも、alternative pathway fragmentであるBbが、APOsとの関連が最も強かった
      • Bb・sC5b-9の相関関係が有意であることが、alternative pathwayが補体活性化の主要経路であることを示唆している
      • classical pathwayの活性化は、抗体の親和性とサブクラスに依存しているが、aPLはIgG2が多く、このタイプはclassical pathwayの活性化に対しては弱い
        • classical pathway以外を活性化する抗体が沈着することで、membrane-bound complement regulatorを阻害し、持続的なalternative pathwayの活性化を誘導する
        • さらに、好中球由来 or 血小板由来のプロテアーゼによる補体因子の分解によって、classical pathwayはbypassされることになる
    • 正常妊娠では、胎盤は、母体ー胎児の境界部位で、補体を介した免疫による攻撃を受ける
      • その際、trophoblast cellsから産生される阻害因子によって、補体の活性化はうまくコントロールされている
      • しかしながら、aPL ± SLEの患者では、制御因子を上回るほどの過剰な補体活性化が末梢血中と胎盤において生じており、それによって胎児がリスクに晒される
    • 浸潤した白血球によって、血管新生阻害因子であるsFlt1が過剰に産生され、胎盤不全を生じる
      • それによる絨毛間の循環不全が、妊娠が進むにつれて、trophoblastでの大量のsFlt1合成を刺激する
        • これは補体による直接的な影響ではないため、補体因子とsFlt1の間の関連はそこまで強くなかったのはあまり驚くことではないかもしれない
    • PROMISSE studyの患者は、疾患活動性が比較的落ち着いている患者を対象としているが、APOsがなかった患者も、baselineにおけるBbとsC5b-9が、健常人と比較して有意に高かった
      • SLEとAPSの患者において、たとえ疾患活動性が落ち着いていても、長期間の補体活性化があると、胎盤不全と関連する白血球の誘導や血管新生阻害因子の増加を引き起こすかもしれない
    • 興味深いことに、SLEPDAI scoresと、BbとsC5b-9は有意に相関していた
      • 既報では、小規模な研究ではあるものの、BbとsC5b-9の増加が、SLE妊婦の疾患活動性と関連することは報告されている
      • 補体の値は、合成(エストロゲンによって補体合成は刺激される)と消費の両者を反映している
        • 今回の研究では妊娠早期における補体活性化による産物増加がAPOsと関連しており、以前に筆者らが報告したbaselineから第2半期にかけてのC3のより少ない増加がAPOsと関連したという結果も考慮すると、補体活性化は、APOsの結果というよりも、APOsを引き起こすものと言えるだろう
    • classical pathway fragmentであるC4dの沈着が、SLE ± APS妊婦と子癇患者の胎盤と、子癇患者の腎臓において認められることから、sPLによる局所におけるclassical pathwayとlectin pathwayの活性化についてはより調べる必要がある
      • 重要なことであるが、補体活性化の原因に関わらずalternative pathwayは活性化し、末梢血の補体 fragmentsは、胎盤における活性化の程度を反映していないかもしれないことを念頭において置く必要がある

    2018年3月6日火曜日

    G6PDH欠損症患者でも、HCQは安全に使えそう

    Arthritis Care & Research
    Vol. 70, No. 3, March 2018, pp 481–485 DOI 10.1002/acr.23296


    背景
    • HCQは、SLEなどの治療で頻用される
      • 作用機序はわかっていないが、有効性は明らかである
      • 2015 ACR RAガイドラインでは、HCQ開始にあたってG6PDHレベルの測定は推奨されていないが、添付文書ではG6PDH欠損患者では注意するように記載されている

      • この曖昧な注意喚起によって、G6PDH欠損が判明した患者においては投与がされなくなることで、HCQによる治療を受けられないことによる不利益が患者に生じる可能性があるので、正確なデータを示す必要がある
    • G6PDH患者と溶血の関連は、1920年代のマラリア患者に対するプリマキンの臨床試験で最初に報告された
      • 1950年代まで、G6PDHが酸化ストレスを緩和するのに重要な因子であることが判明した
      • すなわち、G6PDH欠損では酸化ストレスによって過剰なフリーラジカルが生じてそれによる赤血球の溶血が生じるということである

    • G6PDH欠損は、最も頻度の高い赤血球の酵素異常の1つである
      • 全世界において、3.3億人がG6PDH欠損症であり、有病率 4.9%である
      • G6PDH欠損症だと、主に感染症によって溶血が生じる。
        • 他にはそら豆、薬剤、なんらかの疾患も原因になりうる
      • 溶血の程度は、個人のG6PDH genotype, G6PDH欠損の程度にもよって異なり、場合によって致死的となったり、一過性であったりする
        • 2つのタイプが存在する
          • Mediterranean type
            • 重症となりやすい
            • ヨーロッパ、アジア、北インドに多い
          • African variant
            • 軽症となりやすい
            • アフリカ系に多い
      • 溶血が生じるタイミングは誘因によって異なり、数時間(そら豆)〜数日後(プリマキン)と幅がある
    • G6PDH酵素の遺伝子はX染色体に存在する
      • そのため、多くの欠損症患者は、男性である
    • G6PDH欠損症患者に対して抗マラリア薬を投与した場合の安全性は、多くはプリマキンに関するものであり、HCQに関する1つの小規模ケースシリーズのみで、大規模試験は存在しない
      • そのため、今回は、retrospectiveに、自己免疫疾患を有するアメリカのG6PDH欠損症患者に対して、HCQを投与した場合の溶血性貧血の発症率を調べた


    方法
    • Duke Enterprise Data Unified Content Explorer (DEDUCE) という、1996年からの電子カルテを含む臨床データに関するサーチエンジンを使用して、患者を調べた
    • 対象
      • Duke Clinic Rheumatologyを受診し、HCQの投与を受けて、G6PDHを調べた患者
    • 貧血の定義
      • (男性)Hb < 13.7 g/dL、(女性)Hb < 12.0 g/dL
    • 溶血性貧血の定義
      • 貧血に伴い、以下の所見を1つ以上認める
        • 網状赤血球の増加 > 2.36%
        • LDH増加 > 200 U/L
        • ハプトグロビン < 30 mg/dL

    結果
    • 275例のHCQ処方+G6PDH測定患者を調べた
    • 全体(table1)
      • 性別
        • 女性 84%
      • 人種
        • アフリカ系アメリカ人 46%
        • 白人 48%
      • 疾患
        • SLE 32%
        • RA 29%
        • 他の炎症性関節炎 14%
      • 貧血が少なくとも1回以上あり 69%
        • 溶血性 6%(16/275例)
    • G6PDH欠損症 
      • 11例 = 4%
      • 女性:9/11例
      • 全てアフリカ系アメリカ人
        • アフリカ系アメリカ人全体におけるG6PDH欠損症の頻度:(男性)11.7%, (女性)8.3%
      • 疾患
        • SLE:7/11例
        • RA:2/11例
        • その他の炎症性関節炎:1/11例
        • Behcet病:1/11例
      • 11例すべてで、経過中に貧血のエピソードあり
        • 溶血のエピソード:2/11例(18%)
          • 症例1
            • 28歳男性
            • 汎血球減少、急性腎障害、敗血症、溶血で入院し、SLEと判明(これまでHCQ内服の既往なし)
            • 退院時からHCQ内服開始し、この研究が行なわれるまで計50ヶ月間内服していたが、その間も貧血は持続していたものの、網状赤血球はSLE発症時点を除いて正常範囲で推移していた。それ以上の精査は行なわれなかった。
          • 症例2
            • 51歳女性
            • SLEとすでに診断されており、HCQ 600mg/日 を5年間内服していた(量が多いのは体重が多いためとのこと)
            • その後、網膜毒性のためHCQは中止
            • 中止6週間後に、SLE再燃(血小板減少、class Ⅳ+Ⅴ 腎炎)で入院
            • 中止8週間後に、精神症状、Cr増加、溶血を示唆する網状赤血球増加を伴う血小板減少・貧血の進行を認めた
            • 入院後にHCQ 600mg/日を再開後も、ハプトグロビン低下、LDH増加、破砕赤血球の出現は改善しなかった
            • ADAMTS13 は正常であり、これらの経過からHCQによる溶血性貧血ではなく、SLE活動性に伴う溶血性貧血と診断した
        • 上記2症例を除く、9症例の貧血患者について
          • 6症例では、貧血の際に、ハプトグロビン、LDHは一度も検査されていなかった
          • 3症例では、溶血を示唆する異常所見は認めなかった
        • 4/11症例では、G6PDH欠損と判明後にHCQは中止されていた
          • HCQ開始〜中止は、3ヶ月以内〜108ヶ月と幅あり


    まとめ
    • 自己免疫疾患に対してHCQを使用しているアメリカの患者における、G6PDH欠損症の有病率と溶血性貧血の発症率を調べた試験では、最も大きいものである
      • 今回の単施設研究では、275人のうちの11例(4%)がG6PDH欠損症だった
        • その中で、溶血性貧血を発症した2例は、HCQを内服していない時期に発症しており、HCQによるものと思われる溶血性貧血を発症した人はいなかった
        • しかしながら、G6PDH欠損症である11例は全て経過中に貧血のエピソードがあったものの、6例はハプトグロビンとLDHを測定していない
      • 他のG6PDH正常の264例のうち、6%が溶血を発症したが、いずれもTTPもしくはSLEに伴う自己免疫性溶血だった
    • 今回のコホートでは、G6PDH欠損症患者は全てアフリカ系アメリカ人だった
      • そのため、遺伝子タイプは、軽症となりやすいAfrican variantと考えられる(アジア人に多いタイプとは異なるもの)
      • 他の遺伝子タイプに関しては、今回の試験ではわからない
    • 今回のコホートにおけるG6PDH欠損症の有病率は、アメリカの一般人口と同様だった
      • 既報では、人種により、G6PDH欠損症の有病率は異なる
        • アフリカ系アメリカ人の男性 12.2%
        • アフリカ系アメリカ人の女性 4.1%
        • アジア人の男性 4.3%
          • この既報では、白人女性のG6PDH欠損症患者はおらず、白人男性の有病率は 0.3%と低かった
    • 抗マラリア薬による溶血に関して
      • クロロキン(4-アミノキノリン)による溶血は少数例報告されているものの、いずれも溶血作用を有するクロラムフェニコールを併用されており、クロロキン単剤による溶血の報告は認めない
        • すなわち、クロロキン単剤であればG6PDH欠損症でも安全に使用できるものと考えられる
      • プリマキン(8-アミノキノリン)による溶血も報告はされているが、非常に稀である
      • そのため、重症化しうるMediterranean typeのG6PDH欠損症有病率が低い地域では、G6PDHを測定せずにHCQを処方しても安全であると考えられる
        • ※ちなみに、日本におけるG6PDH欠損症の有病率は、稀であり、0.1%未満と考えられているようです。

    2018年2月12日月曜日

    NPSLEとNMOSDの自己抗体について


    ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
    Vol. 70, No. 2, February 2018, pp 277
    –286 

    背景

    • NPSLEには、ACR1999の定義では19種類の神経精神症状がある
      • それらの症状はNPSLEに特異的ではなく、評価が難しいため、頻度は報告によって 10~90% と異なる
      • そして、NPSLEに適したバイオマーカーがない
      • 診断には、診察、MRI、脳波、神経伝導検査、腰椎穿刺が用いられる
      • 剖検にてNPSLE患者の脳の病理組織を調べた報告は少ないが、それらによれば、出血、皮質・皮質下の萎縮、微小梗塞、脱髄など病理組織は多様である
    • 既報では、巣症状やびまん性の精神神経症状は、自己抗体(抗ribosomal P protein抗体、リン脂質抗体、抗Sm抗体)、補体、免疫複合体が原因かもしれないと報告されている
    • これまで、SLE or NPSLEの患者には、100種類以上の自己抗体が発見されている
      • NPSLEに特異的な抗体を発見することで、診断や治療、病態の理解に繋がる
    • 以前、筆者らのグループでは、DWEYSアミノ酸配列(N-methyl-D-aspartate [NMDA]受容体の GluN2A/GluN2B サブユニットの細胞外領域)に対する抗体(=IgG 抗DWEYS抗体)が、excitotoxicityによって海馬ニューロンのアポトーシスを誘導し、認知機能が低下することをマウスモデルで示した
      • SLE患者のIgG 抗DWEYS抗体は、ds-DNAと交差反応を示す
      • 健常人よりもNPSLE患者において、IgG 抗DWEYS抗体が陽性となることが多く、空間認知機能低下と関連することが報告されている
      • これまで、IgG 抗DWEYS抗体が、NPSLE患者において脱髄病変を起こすかどうかはわかっておらず、neuromyelitis optica spectrum disorder (NMOSD)など他の神経疾患でも陽性となるかもわかっていない
    • NMOSD
      • 若年女性に好発する中枢神経疾患
      • アストロサイトのAQP-4に対する抗体が陽性となり、アストロサイトが障害される
      • 脱髄を生じるNPSLEと特徴がoverlapする部分があり、一部のNMOSD患者はSLEを合併し、逆に一部のSLE患者はNMOSDを合併する
      • myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) のconformation-dependent epitopes を認識する抗体が、IgG 抗AQP-4抗体陰性である一部のNMOSD患者において陽性となる
      • NMOSD患者では、AQP-4が多く発現している部位(脳、視神経、脊髄)が病変となる
        • 脱髄(特に視神経炎や脊髄炎)による症状は、NPSLEでも認めうる
        • 脱髄病変はSLE疾患活動性と関連するが、NPSLEとNMOSDを鑑別することは難しい
        • NMOSDを合併したSLE患者(またはSLEを合併したNMOSD患者)の症例報告では、脱髄病変がいずれによるものなのか(両者によるものかもしれないが)判断が難しい
    • IgG 抗ds-DNA抗体とIgG ANA は、NMOSDでも認めうる
      • 頻度や病態への関与はわかっていない
      • IgG 抗ds-DNA抗体がNMOSD患者においてNMDA受容体と交差反応を示すのか、NMOSD患者でしばしば認められる認知機能低下と関連があるかどうか、はわかっていない
    • 今回の研究では、NPSLE(特に脱髄病変を有するNPSLE or NMOSDを合併しているNPSLE)における自己抗体のレパートリーを調べること、両疾患での脳へ作用する全ての自己抗体(IgG anti-brain antibodies)の頻度を調べることを目的とした
      • また、NMOSD患者において、IgG 抗ds-DNA抗体、IgG ANA、IgG 抗DWEYS抗体の頻度を調べた

    方法
    • 対象
      • NMOSD患者(n=33)
        • the Clinic of Neurology, Clinical Center of Serbia in Belgrade (n = 31)とthe Northwell Health System in New York (n =2) のNMOSD患者
        • 以下のNMOSD診断基準(Neurology 2015;85:177–89.)を満たす 

      • 神経精神症状を有さないSLE患者(n=38)
        • the Feinstein Institute for Medical Research (FIMR) in New York とthe Kitasato University School of Medicine in Japan (n = 1)のSLE患者 
        • ACR revised criteriaを満たす
          • 活動性NPSLE, NPSLEの既往あり, その他CNS eventsのあったSLE患者は除外
      • NPSLE患者(n=108)
        • the Kitasato University School of Medicine (n = 60) と the Hokkaido University Graduate School of Medicine (n = 31) と the Clinic of Neurology, Clinical Center of Serbia (n = 17)のNPSLE患者 
        • NPSLEのACR1999基準を満たす
        • 脱髄病変はMRIによって同定
      • healthy control(HC)(n=106)
        • the FIMR (n = 7)とthe Clinic of Neurology, Clinical Center of Serbia (n = 23)とthe BioreclamationIVT bank (n = 76)からリクルート

    結果

    ①IgG 抗AQP-4抗体はNMOSDに特異的であり、脱髄病変を有するNPSLE患者の一部でも陽性となる
    • SLE、NPSLE、NMOSD、HCにおけるIgG 抗AQP-4抗体を、live cell–based assay を用いて解析した(Figure1:脱髄病変を有するNPSLE患者の結果)
      • 陽性率(table1)
        • NMOSD:82%(27/33)
        • NPSLE:3%(3/108)
          • 脱髄病変(+)NPSLE:27%(3/11)
          • 脱髄病変(ー)NPSLE:0%(0/97)
        • 神経精神症状を有さないSLE患者:0%(0/38)
        • HC:0%(0/106)  





    ②血清IgG 抗MOG抗体は、IgG 抗AQP-4抗体(ー)NMOSDのみ陽性となり、NPSLEでは稀である

    • SLE、NPSLE、NMOSD、HCにおけるIgG 抗MOG抗体を、live cell–based assay を用いて解析した(table2)
      • 高力価(titier ≧ 80)IgG 抗MOG抗体陽性
        • IgG 抗AQP-4抗体(ー)NMOSD:50%(3/6)
        • 他のグループは陰性
      • 低力価IgG 抗MOG抗体陽性
        • 脱髄病変(+)NPSLE:18%(2/11)
        • 脱髄病変(ー)NPSLE:1%(1/97)
        • HC:5%(5/106)  



    ③抗NMDA受容体(GluN2A/GluN2B)抗体は、SLEとNPSLEに特異的であり、 NPSLEにおける脱髄病変の有無には関係なし。NMOSDとHCでは稀だった。



      • SLE、NPSLE、NMOSD、HCにおけるIgG 抗DWEYS抗体を、ELISA を用いて解析した
        • SLEとNPSLEにて有意に高く、NMOSDとHCでは有意差なし(figure2A)
          • NPSLEのなかで、脱髄病変の有無で有意差なし(figure2B)
        • 陽性率(table3)
          • NPSLE:55%(59/108)
            • 脱髄病変(+)NPSLE:27%(3/11)
            • 脱髄病変(ー)NPSLE:58%(56/97)
          • 神経精神症状を有さないSLE患者:29%(11/38)
          • HC:4%(4/106)
          • NMOSD:12%(4/33)  




      ④IgG anti-brain antibodiesの染色パターンは、SLE・NPSLEと、NMOSDで異なる


        • SLE、NPSLE、NMOSD、HCにおける血清IgG anti-brain antibodiesを、PFA-fixed rodent brain sectionsを用いて、陽性率(table3)と染色パターン(figure3)を解析した
          • 陽性率(table3)
            • 脱髄病変(+)NPSLE:82%(9/11)
            • 脱髄病変(ー)NPSLE:75%(72/97)
            • 神経精神症状を有さないSLE患者:84%(32/38)
            • NMOSD:61%(20/33)
            • HC:13%(13/106)  
              • NMOSDが、NPSLE・SLEと比較して陽性率が低いのは、1つはPFAによる固定でepitopeであるAQP-4の立体構造が変化したためと、2つ目は既報でも報告されていたようにマウスの脳組織を用いるとヒトの脳組織よりもIgG anti-brain antibodiesの感度と特異度が下がるためと考えられた
          • 染色パターン(figure3)
            • NPSLE, SLEのIgG anti-brain antibodiesでは、neuronal staining patternを示した
            • NMOSDでは、主にvasculalture patternを示した(neuronal stainingを伴っている部分もあった)
              • AQP4抗体が陽性のNPSLE(n=1)でも、vasculalture patternを示した




        ⑤IgG 抗ds-DNA抗体は、HC群と比較して、SLE, NPSLE, NMOSDにて増加を認めた

          • SLE、NPSLE、NMOSD、HCにおけるIgG 抗ds-DNA抗体を、ELISAを用いて解析した
            • 陽性率(table3)
              • 神経精神症状を有さないSLE患者:53%(20/38)
              • NPSLE:77%(83/108)
                • 脱髄病変(+)NPSLE:55%(6/11)
                • 脱髄病変(ー)NPSLE:79%(77/97)
              • NMOSD:33%(11/33)
              • HC:6%(6/106)

            • NMOSDは、HCよりもIgG 抗ds-DNA抗体が高力価だった(figure2C)
              • しかしながら、NPSLE患者と比較すると、NMOSD患者のほうが低かった
            • NMOSD患者の多くがIgG 抗DWEYS抗体陰性だったため、SLE・NPSLE患者と異なり、NMOSD患者のIgG 抗ds-DNA抗体は GluN2A/GluN2B と交差反応をしていないと考えられた
            • NPSLEの中で、脱髄病変の有無でIgG 抗ds-DNA抗体価は同様だった(figure2D)
            • 脱髄病変(+)NPSLEとNMOSDの間も、IgG 抗ds-DNA抗体価は有意差なかった(figure2C & 2D)

          まとめ
          • NPSLE患者と、精神神経病変を有さないSLE患者の間では、血清IgG anti-brain antibodiesの陽性率と染色パターンに違いはなかった
            • これは動物モデルを用いて、末梢血の脳に対する自己抗体では神経症状を起こさず、BBBをIgG anti-brain antibodiesを通過することが病態に重要であることを示した既報と同様だった
            • SLEとNPSLEの多くでは、neuronal staining patternを示した
              • 特に、海馬と皮質領域に発現している抗原に結合しており、この領域特異性がNPSLEにおける認知機能低下と関連していると考えられた
          • NPSLE患者では、通常のSLE患者よりも、IgG 抗DWEYS抗体が陽性の頻度が高かったが、抗ds-DNA抗体-抗GluN2A/GluN2B抗体の交差反応がBBBを破壊している機序なのかはわからない
            • 考えられる機序としては、血管内皮細胞に結合して活性化し、BBBを破綻させるというものである
              • しかし、BBBを破綻させるには、サイトカインやケモカイン、補体活性化、抗内皮細胞抗体など他の要素も必要だろう
          • NMOSDにおいて、抗ds-DNA抗体がどのように病態に関与しているかはわからない
          • 脱髄病変を有するNPSLE患者の一部で、抗AQP4抗体と抗MOG抗体が陽性となった
            • 脱髄病変を有するNPSLEでは、ルーチンで抗AQP4抗体・抗MOG抗体を測定すべきであり、抗AQP4抗体が陽性となった場合にはNMOSDの診断基準を満たすだろう
              • IgG 抗AQP4抗体陰性の脱髄病変を有するNPSLEも血清IgG anti-brain antibodiesが陽性となったため、他の自己抗体が病態に関与しているものと考えられる
                • IgG 抗DWEYS抗体は、脱髄病変のないNPSLEで58%陽性、脱髄病変のあるNPSLEで27%陽性のため、これとは異なる抗体が脱髄に関与 or 抗体非依存的な病態で脱髄を起こしていると考えられる
            • 一方で、脱髄病変のないNPSLEでは、抗AQP4抗体は陽性とならなかった
          • NMOSDにて、抗ds-DNA抗体はDWEYSと交差反応を示さなかったため、産生機序が異なるのだろう

          2018年2月11日日曜日

          自己免疫疾患における好中球の役割


          ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
          Vol. 68, No. 9, September 2016, pp 2071–2082 


          導入
          • 好中球は、最終分化した自然免疫細胞であり、微生物から宿主を守る役割を担っている
            • 骨髄から産生され、多臓器においてホメオスタシスを維持しながら存在する
            • 半減期が短かいので、平常状態を保つためには骨髄から継続的に産生される必要がある
            • しかしながら、ホメオスタシスの状態と非ホメオスタシスの状態での、骨髄と末梢における好中球のturn overについてはわかっていないこともある
          • 好中球の産生は、IL-17に反応して合成されるG-CSFによって、厳密に制御されている
          • 好中球の細胞質にある顆粒(granule)は、4つのカテゴリーに分かれる(figure1)
            • primary (azurophilic) granule
              • MPO
              • defensins
              • neutrophil elastase
              • membrane-bound CD63 など
            • secondary specific granule
              • lactoferrin
              • LL-37 peptide
              • membrane-bound CD66b など
            • tertiary gelatinase granule
              • gelatinase
              • cathepsin
              • lysozome
              • various toxic proteins  など
            • secretory granule
              • membrane-bound receptorsを貯蔵している
              • alkaline phosphataseやCD35を自身の膜に発現している 



          • 循環している時には、好中球は活性化されていない状態を維持しており、細胞内の毒性物質は偶発的に放出されないようになっている
            • 好中球の機能低下や減少は感染症のリスクに繋がるが、好中球を厳密に制御することも組織障害を予防するのに重要である
          • 炎症の状態下では、組織に浸潤し、活性化物質によって半減期も延長する
          • 炎症組織における好中球の役割は、サイトカインやケモカインの合成、貪食、MHC-class Ⅱ依存性の抗原提示など、多くの機能がマクロファージと重複している
            • 様々なメカニズム(貪食、脱顆粒、NETsの放出による細胞死誘導など)で微生物を攻撃する


          • 好中球は、自然免疫や獲得免疫の機能やphenotypeに関与して、炎症に対して強い影響力を有している
            • myeloid DCsは、アポトーシスした好中球を取り込むことによって、抗原提示機能が増強する
            • B cells の発生に関わるBAFFやAPRILなどのサイトカインを合成する
            • 脾臓の好中球は、T cells-independent B cell helper 機能を有する
            • MHC class Ⅰ-dependent にCD8陽性T細胞をcross-primeして、T cell response を増強もしくは抑制する
            • γ/δ T cellsを活性化する
            • PDL-1/PD-1 相互作用を介してT cell アポトーシスを誘導する
            • proteaseによって T cell-stimulating サイトカインであるIL-6, IL-2を不活性化する
            • T cell receptor ?(表示できない文字) chain をdown regulateして cell cycleを停止させ、ROS産生とarginase合成を誘導する
            • ROS産生とNK cellsのmodulationによって液性自己免疫を制御し、IFNγ産生を抑制する
          • 好中球は、分化・可塑性・phenotypeや機能の特徴は、他の免疫細胞と比較してわかっていないことも多い
            • 最終分化した状態では遺伝子操作が難しく、半減期も短いので冷凍・解凍作業の間に死滅を防ぐのが難しい
            • そのため、正確なimmune phenotypeや機能のassayには、freshな検体を抽出することが必要である
            • 重要なことはではあるが、マウスの好中球は生物学的にはヒトの好中球と異なるため、マウスモデルの有用性が限られている
            • それにもかかわらず、最近は好中球の自己免疫・炎症性疾患における生物学的な役割について注目を集めている

          好中球サブセット
          • 好中球には、phenotypeやfunctionに基づいて、いくつかのサブセットがある(table1)
            • 好中球のphenotypeの違いが、遺伝子によるものなのか、microbiomeによるものなのか、老化によるものなのか、解明する必要がある
            • 一部の専門家は、マクロファージのように、N1 (inflammatory neutrophil) と N2 (antiinflammatory neutrophil)  に分類することを提唱している
              • しかし、好中球をどちらかに誘導する因子がまだわかっていない
            • olfactomedin 4 (OLFM4) 
              • ~25%の好中球に認める、特異的な顆粒蛋白
              • OLFM4陽性の好中球の役割はわかっていない
            • CD177
              • glycoprotein I–anchored neutrophil antigen 
              • platelet endothelial cell adhesion molecule 1に結合する
              • 多くの好中球に発現しており、おそらく内皮細胞間を遊走する機能が高まると考えられている
            • CD16dim  
              • 細菌へのオプソニン化、ROS産生の機能が低下している
            • CD16bright 
              • CD16dim  と逆
            • 敗血症では、好中球におけるCD62Lの発現レベルと好中球機能低下が相関している
            • low-density granulocytes (LDGs)  
              • 自己免疫疾患との関連が指摘されている





          ROS
          • ROSは、炎症が進行する際に重要な役割を担う分子である
            • 抗菌作用、NF-κB転写因子活性のシグナル制御、NET産生など
            • ROSには以下が含まれる
              • superoxide anion
              • hydrogen peroxide
              • hydroxyl radical
              • hypochlorous acid 
          • ROSを主に産生するのは、ミトコンドリアとNADPH oxidase(NOX)である
            • NOXには、7種類のhomologが存在する
              • NOXs 1–5 
              • NOX/dual oxidases 1, 2 
                • 好中球では、NOX-2 が抗菌とNETosisに重要と考えられている
          • NOXによるROS産生が欠損すると、細菌や真菌に対する防御力が低下し、慢性肉芽種性疾患、免疫不全を発症する
            • そして、炎症が増強し、自己免疫疾患を発症する前段階へと繋がる
            • これは、ROSは炎症や組織障害を誘導する一方で、炎症を制御して自己免疫に対して抑制的に作用していることを示している
              • 実際に、ROS産生が低下し重症慢性炎症が持続している動物モデルでは、関節炎や多発性硬化症を発症する
              • また、NOX-2を欠損したlupus-prone マウスでは自己免疫が増悪し、NOX活性を低下させるとSLE発症を促進する


          phagosytosis
          • 自然免疫反応では重要であり、侵入してきた微生物に対して好中球とマクロファージが攻撃する
          • phagocytosisは、pattern- recognition receptors(Fcγ受容体やC-type lectinsなど)が、pathogen-associated molecular patterns(PAMPs)として知られる微生物のlipopolysaccharideや真菌のβ-glucansを認識しておこなわれる
          • 好中球のphagocytosisは、迅速であり、phagocytic vacuole とgranuleが融合してphagolysosomeを形成する
            • これらのgranuleは、NOX subunitsとhydrolytic enzymes を含んでいる
            • IgGによってオプソニン化されたparticleを20秒以内に貪食する
              • マクロファージの場合はもっと遅い
            • マクロファージと異なり、phagosomeの成熟は、細胞質のカルシウムに依存している

          NETosis
          • NET形成は、好中球が微生物を捉え、動けなくし、殺すメカニズムである
            • この過程の中で、活性化した好中球は、granular enzymeを含む自身の核の成分を放出し、細胞外に蜘蛛の巣のような構造を形成する(上のfigure2)
            • NETsを誘導するのは、微生物による刺激のみではなく、無菌である血小板、免疫複合体、サイトカイン、コレステロール、尿酸結晶、自己抗体などもNETsを誘導する
          • NETosisには、NOXなどによるROS産生が必要である
            • 最近の研究結果では、NOXの機能が欠損していても、ミトコンドリアによるROS産生があればNETsを誘導できることがわかった
            • ROS合成によってpeptidylarginine deiminase 4 (PAD4) の活性化が生じ、ヒストンのアルギニン残基をシトルリン化し、核のヒストンの脱凝縮(decondensation)と遺伝子転写を促進する
          • NETosisの間には、好中球のelastaseは、核へ局在化し、ヒストン修飾とクロマチンを展開し、核を大きくする
          • NETの晩期には、好中球の核膜の崩壊は、核と細胞質の構造物が混ざり、細胞膜の分裂と溶解を介してNETの放出が生じる
          • NETosisによる自己抗原の放出が、宿主の免疫活性化を起こす
            • 悪性腫瘍、線維化、血栓、動脈硬化、創傷治癒など多くの疾患でNETが関係していることが報告されている


          <好中球の全身性自己免疫疾患への関与>


          SLE
          • lupusと好中球の関係は、だいぶ前から示唆されていたが、臓器障害の誘導や免疫破綻における好中球の関与が注目されてきたのはここ10年の出来事である
          • SLE患者の骨髄では、好中球がtype 1 IFN の主な産生源であるあり、好中球が BAFF産生を介してB cellの異常を誘導していると言われている
            • 好中球のphenotype・functionの異常(好中球減少、貪食能の異常、oxidative activity)がその考えを支持している
          • SLEは、末梢血から分離されるLDGsの存在が特徴的である
            • LDGsをnormal density granulocytesから区別する細胞表面 or epigenetic マーカーが存在しないが、いくつかのトランスクリプトームと機能の違いがLDGsの病態への関与を示唆している
            • LDGsは、SLE患者において末梢血や皮膚病変で多く認められる
              • これを時系列を追って解析し、outcomeに影響するか調べる必要がある
            • 顆粒蛋白をコードするmRNAsの発現増加が、LDGsにおいて認められている
          • 機能的には、LDGsは、炎症性サイトカインやtype 1 IFN の合成能力が高く、SLEへの病態に関与していると考えられている
            • Ex vivo解析では、LDGsは、他の刺激がなくともNET形成を促進することが示されている
            • NETosisの促進・MMP-9の細胞外への放出を介して、LDGsは内皮細胞のアポトーシスを誘導し、血管機能を破綻させる
            • NETsは、P2X7受容体依存性にマクロファージにおけるNLRP3 inflammasome を活性化し、活性化IL-1βとIL-18合成を促進する
            • NETsの外側にあるCathelicidin LL-37 は、獲得免疫の反応を誘導し、LL-37/anti-LL-37 immune complexはplasmacytoid DCsがIFNαを合成するのを活性化する
            • NETosisの促進は、循環しているLDGsのみではなく、皮膚や腎臓などSLEの様々な罹患臓器で認められる
          • 最近の報告によれば、SLEのLDGsにおけるNETosisは、ミトコンドリアのROSに依存していた
            • 実際に、LDGsにおいて、ミトコンドリアでのROS産生は増加しており、ミトコンドリアのROSを除去するとNETosisが阻害される
            • ミトコンドリアのROSによって誘導されたNETsは、他の物質により誘導されたNETsよりも、monocyteを標的にしたtype 1 IFN や炎症性サイトカインの産生が強い
              • それはおそらく、LDG NETsにおける核酸の酸化が強いためである
              • genetic or ミトコンドリアのDNAは、酸化されると、崩壊が抑制され、stimulator of IFN genes (STING)などの細胞内センサーに認識されやすくなり、type 1 IFN産生反応が増強する
            • lupus-prone マウスで、ミトコンドリアのROSを阻害すると、lupusの症状は改善し、type 1 IFNは低下する
            • また、他の NETosisを抑制する方法としては、PAD4活性がNET形成に関与しているため、PAD4を阻害することがマウスモデルで試されており、実際に臓器障害が軽減されている
          • SLE患者の結成では、NETsを分解する能力が低下している
            • これには、以下の機序が考えられている
              • DNase Ⅰ活性が低下している 
              • DNase Ⅰ阻害物質の存在  
              • NETsが分解されることに対して保護的に作用する自己抗体の存在
            • NETの分解が阻害されると、疾患活動性の増加・補体活性化・ds-DNA抗体増加・腎炎の増加が認められることが報告されている

          RA

          • シトルリン化自己抗原に反応することが、RAの病態と考えられている
          • 好中球は、RAの関節破壊における主要なeffector cellsと考えられている
            • しかし、自己抗原の発生と、局所・全身における自然免疫・獲得免疫の反応を活性化する際に、好中球がどのような役割を担っているかはわかっていない
          • 最近、NETosisがシトルリン化自己抗原の主な産生源であり、疾患発症に関わっていることがわかってきた
            • 血液・滑膜などの組織において、好中球におけるNETosisが亢進している
          • PAD活性化を介して、NETosisは、細胞内抗原(ヒストン、ビメンチン、エノラーゼ)のシトルリン化のみではなく、細胞外自己抗原をシトルリン化できる活性化PAD isoformを放出している
          • RAにおけるmicroenvironment(シトルリン化抗原に対する自己抗体、RF、TNFやIL-17などの炎症性サイトカイン)は、NETosisを促進し、自己抗体産生→炎症反応増加→さらなるNET形成へと繋がるサイクルを形成する
            • NETsは、RAの滑膜線維芽細胞における、炎症反応を惹起する強い因子であり、関節破壊へ繋がっていく
          • NETosisにて産生されたシトルリン化ヒストンは、RAとFelty's syndromeにおける重要な自己抗原である
            • Protein tyrosine phosphatase N22 (PTPN22) は、PAD4を阻害するため、蛋白のシトルリン化も阻害する
              • このことから、PTPN22の多型がRA発症リスクとなる機序として、蛋白のシトルリン化促進を介してNETosisを起こすということが推測される
            • 補体とパーフォリンが活性化する際に、好中球のPAD活性化が起きることが、RAにおける自己抗原産生において重要であると考えられる
            • 一方で、好中球由来のmicrovesiclesが、軟骨に入り、関節の破壊を防ぐことも報告されている


          APS

          • 血栓と妊娠への影響は、APSの特徴である
          • 抗リン脂質抗体によって好中球が活性化することが知られている
          • APS患者の好中球において、ミトコンドリアの機能が低下していることが報告されている
          • 組織因子/Ⅶa因子/protease-activated receptor 2  のカスケードは、好中球の活性化を促進し、胎児死亡の原因となることがAPSモデルで示されている
          • 補体と好中球の相互作用も、胎児死亡の原因となることがAPSモデルで示されている
          • LDG populationが、APS患者において認められたことが報告されている
          • APS関連自己抗体は、ROS- & TLR4-dependentな機序で、NETosisを促進する
          • NETの分解が低下していることがAPS患者において報告されている


          AAV

          • 好中球の特異的な顆粒蛋白に対するANCAの発見と、これらが臨床的にもAAV関与していることがわかり、小血管炎の病態において好中球が重要な役割を担っていることがわかってきた
          • in vitroでは、炎症物質によってprimeされた好中球が、p38 MAPK pathwayの活性化と、細胞膜表面へのMPO/PR3の発現増加を起こし、ANCAがそこに直接結合する
            • Fc受容体への刺激 or 抗原との交差反応によって、ANCAが好中球表面に結合できるようになる
            • この結合によって、好中球が活性化され、炎症性サイトカインの合成、NET放出、脱顆粒、そして臓器障害へと繋がる
          • NETosisがAAVの病態に関与していることが最近わかってきた
            • 腎臓の血管病変やAAV患者の血栓にはNETを認める
            • NETsは、ANCA形成のために必要な免疫原性として作用する自己抗原の、主な産生源と考えられている
              • AAV患者では、NETosisの亢進とNET clearanceの低下が報告されており、NETの中にはPR3やMPOが含まれている
            • ANCAは、NETosisを誘導し、DCsがNETを抗原として認識してANCA産生がさらに促進されることがマウスの血管炎モデルで示されている
            • 補体のalternative pathwayが、AAVにて活性化している
            • 薬剤誘発性血管炎のモデルマウスでは、プロピオチオウラシルによって誘導されたNETsは、異常な構造を有しておりclearanceも低下し、MPO-ANCA形成とpauci-immune glomerulonephritisと関連している
          • AAV患者の一部はANCA陰性であり、再発のマーカーとしても疑問を持たれており、発症していない一部の健常人にも陽性となることがある
            • AAV患者のANCAと、健常人におけるMPOに対する自己抗体は、epitope specificityが異なり、これが疾患活動性とも関連している
          • 最近では、好中球顆粒蛋白のmRNA発現と、LDG populationがAAV患者に認められており、通常治療に対する反応性を予測できることが報告されている
          • PR3を膜表面に発現している活性化していない好中球のサブセットや、MPO/PR3のプロモーター領域の遺伝子修飾が、AAVのバイオマーカーになりうるかもしれない


          <自己炎症性疾患における好中球>
          • 好中球の機能に関連する単一遺伝子の疾患の発見は、我々の自己免疫への理解を促進した
          • ヒトとマウスモデルでは、好中球・遺伝子・molecular pathwayの違いがあるので、ヒトの単一遺伝子疾患を研究することで、好中球の新しいbiologyを発見できるかもしれない

          単一遺伝子自己炎症性疾患
          • 自己抗体や抗原特異的T細胞が陰性で、突発的な発熱、炎症反応を示すのが特徴である
            • 獲得免疫というより、自然免疫の異常による疾患であることを示唆している
          • 他の骨髄系細胞のように、好中球は、pattern- recognition receptors に多様なレパートリーを有しており、それによって自然免疫を活性化できる
            • in vitroで好中球を用いた実験を行う必要があるが、ヒト好中球におけるpattern- recognition receptors の理解が不足しており、多様な自己炎症性疾患における機能の研究は主にmonocyte/macrophage cell linesで行われてきた
          • 活性化した好中球のneutrophil phenotypeは、familial Mediterranean fever(FMF)の発作間欠期でも認める
            • FMFでは、NETsは、IL-1βによる炎症を制御している
          • inflammasome関連分子であるNLRP3, NLRC4, NLRP12のpoint mutationの存在は、自己炎症性疾患に対するIL-1阻害治療が有効であることを示している
            • 自己炎症性疾患におけるIL-1β産生源はmonocyteであるが, 好中球も病態に関与している
              • Neutrophilic urticarial dermatosis(NUD)は、neonatal-onset multisystem inflammatory disease (NOMID)における組織学的な特徴である
              • Chronic atypical neutrophilic dermatosis with lipodystrophy and elevated temperature (CANDLE) syndrome は、immunoproteasomeの機能異常による疾患であるが、未熟な好中球が皮膚に浸潤しているこが特徴である
              • しかしながら、これらの疾患における好中球の機能については、わかっていない

          痛風
          • 痛風の病態では、自然免疫が重要である
          • ヒトにおけるプリン代謝産物の最終産物である尿酸が、ナトリウムが豊富な液体において針状のmonosodium urate monohydrate (MSU) 結晶へ結晶化することによって発症する
          • 以下の機序によって、NLRP3 inflammasomeの活性化を介して、MSU結晶は関節や組織において炎症を誘導する
            • MSU結晶をmonocyteが貪食し、endosomeが細胞内でacidic lysosomeと融合する
            • phagolysosome内のpHが低下することで大量のナトリウムを放出し、細胞内の浸透圧が急激に増加し、アクアポリンを介した自由水の流入が生じ、細胞内のカリウム濃度が低下する
            • 細胞内のカリウム濃度低下がNLRP3 inflammasome活性化を起こし、pro IL-1βを活性化IL-1βへ変化させる
            • MSU結晶によるinflammasome活性化とサイトカイン放出は、好中球を引き寄せる
          • 急性の痛風発作は、結晶は発作間欠期にも残存するが、self-limitingである
            • 他の軟部組織を病変とする炎症性疾患の発症と異なり、数日間で症状が消退する
            • これは、MSU結晶誘発性の炎症を抑制する機序があることが示唆される
              • IL-10, TGFβ, proinflammatory macrophage → antiinflammatory macrophageへのスイッチが、機序として考えられる
          • 最近の報告では、痛風における炎症・抗炎症の異なる機序も提唱されている(figure3)
            • MSU結晶が存在する炎症部位に好中球が引き寄せられ、NETsを形成する
            • 好中球の数が少ない間は、炎症性サイトカイン(IL-6, TNF), 好中球誘導物質(CXCL8), 好中球活性化因子(CCL3, CXCL10)などの炎症メディエーターが放出され、それによってさらに好中球が増加する
            • NETsも最初は単一であったのが、NETsの集合体(aggregated NETs)が形成されてくる
            • NETsの集合体によって、MSU結晶はDNAや顆粒蛋白に捕捉され、セリンプロテアーゼ(好中球エラスターゼ、PR3など)によって炎症性メディエーターが不活化される




          好中球を標的にした治療

          • ステロイドは、好中球のアポトーシスを抑制し、好中球による炎症を増強させることが報告されている
            • 機序として報告されているのは、antiapoptotic Bcl-2 family membersの発現増加、NF-κB活性化、アポトーシスの経路に関わる物質の抑制、アポトートシス蛋白の阻害など
          • コルヒチンは、抗炎症作用があるが、特に好中球に作用する
            • 機序としては、好中球などの免疫細胞における微小管の重合を阻害することで、phagocytosisの抑制やpathogensのlysosomeへの移送が抑制されることが考えられている
          • ダプソンは、白血球の走化・細胞障害機能を抑制する
            • 好中球の接着機能を阻害することで、血管外への遊走を抑制する
          • シクロホスファミドによる好中球減少はよく知られた有害事象であるが、実のところ、どのようにして顆粒球の機能へ影響し、好中球へどれほど影響するかはわかっていない
          • NET形成・clearanceを標的にした薬剤は、NETosisが病態に関連している疾患には有効だろう
            • ヒドロキシクロロキン、シクロスポリンAは、生理的濃度において、PAD enzyme の阻害 or ROS産生源への作用で、NETosisを阻害し、lupus動物モデルにおいて有効であることが示されている

          2018年2月8日木曜日

          SLEに対するatacicept の phase 2b:ADDRESS Ⅱ試験


          ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
          Vol. 70, No. 2, February 2018, pp 266
          –276 

          背景

          • SLE患者では、B lymphocyte stimulator (BLyS) と APRIL (BAFF-APRIL)が増加しており、疾患活動性と自己抗体産生に関連があることが知られている
          • BLyS inhibitorであるベリムマブは、phase 3 試験でSLEに対して有効性を示した
          • ataciceptは、APRILとBLySの両者を阻害する
            • the APRIL SLE study において、SLE患者に対して、B cells, plasma cells, 血清免疫グロブリンを減らすことが示された
          • 今回のADDRESS Ⅱ試験は、ランダム化プラセボ比較試験 phase 2b である

          方法
          • 24週間、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較、parallel-arm、phase 2b
          • 対象
            • 18才以上
            • 既存の治療を受けても中等度以上の活動性(SLEDAI-2K ≧ 6 )のあるSLE患者(ACR分類基準4つ以上を満たす)
            • 罹病期間 ≧ 6ヶ月間
            • 抗核抗体陽性(titer ≧ 1:80)± anti-ds-DNA抗体陽性(≧30 IU/ml)
            • 肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを接種している
          • 免疫抑制剤は単剤のみ使用可能、抗マラリア薬も可

          • 除外
            • 重症の糸球体腎炎(尿蛋白/Cr > 2.0 g/gCr ± eGFR < 40 ml/min/1.73m2)
            • 中枢神経病変の症状がある
            • 1年以内にベリムマブ、RTX, ocrelizumab, その他B細胞標的治療薬を使用していた場合は除外
            • 以下に割付
              • SLEDAI-2K score [ 6-9 vs ≧10 ] ・人種・baselineにおけるMMFの使用の有無によって層別化して、1:1:1に割り付けた
                • atacicept 75mg s.c. weekly
                • atacicept 150mg s.c. weekly
                • placebo
            • CS(ステロイド)は、スクリーニング期間の間はPSL換算量 40mg/dayまで増量可能
              • ~week4:30mg/dayまでに漸減
              • ~week16:可能な限り漸減していくが、30mg/dayまでのレスキューは1回のみ認める(しかし7日間以内にweek4時点での用量以下に漸減しなくてはならない)
              • ~week24:ステロイドは維持


            • primary endpoint
              • 24週時点におけるSRI-4(以下の全てを満たす)
                • ΔSLEDAI-2K score の改善 ≧ 4点
                • Δphysician’s global assessmentの増加 < 10%
                • 新規のBILAG 2004 Aなし & 2つ以上Bなし


            結果
            • 306人が割り付けられた

            • baseline characteristics(table1)
              • atacicept 150mg 群が、75mg群よりも、BILAG 2004 1A or 2B scoreが多かった以外は、特に違いなし


            • BILAG 2004 A or B scoreは、主に皮膚粘膜・筋骨格





            • 24週時点におけるSRI response
              • atacicept 75 mg (57.8%; adjusted OR 1.78 [95% CI 1.01–3.12]
                • P = 0.045 (vs placebo)
              • atacicept 150 mg (53.8%; adjusted OR 1.56 [95% CI 0.89–2.72]
                • P = 0.121 (vs placebo)
              • placebo 44.0%





              • 16週時点から、placeboと違いが出てきている(figure1A)



            • primary endpointは達成できなかったため、他の探索的研究を行なった
              • day1をbaselineとした感度解析では、ITT populationにおいて、両群ともに有意に(p<0.05)placeboよりSRI-4 responseがよかった(下図)
              • 高疾患活動性(HDA)の患者のみのサブグループ解析
                • 用量依存性(150mg > 75mg)にSRI-4 response がよかった(上のfigure1B)






            • SRI-6 response
              • HDAにおいて、placeboとatacicept 150mg群の違いが顕著だった(figure2B)
                • atacicept 150 mg (54.9% [adjusted OR 3.31 (95% CI 1.44–7.61)]
                • placebo (28.8%)
                  • P = 0.005
              • HDA+血清学的に活動性あり、とするとさらにその差が顕著だった(figure2D)




            • severe disease flare
              • 新規BILAG A 出現は、atacicept 75mg群で有意にplacebo群よりも少なかった(figure3A)
              • HDAサブグループ解析では、その差がより顕著だった(sigure3B)



            • 24週時点でPSL ≦ 7.5mgを達成できた割合
              • ataciceptの両群ともplaceboと変わりなかった
                • atacicept 75mg:17.9% 
                • atacicept 150mg:11.3% 
                • placebo:18.9%
            • patient's global assessmentの変化も、いずれの群も有意差なし
            • biomarkerの変化について(figure4)
              • C3, C4, anti-ds-DNA antibody はいずれもataciceptの両群で改善
              • IgGもataciceptの両群で低下
                • 重度の低IgG血症( ≦ 300mg/dL)はなし






            • IgM, IgAも用量依存性に低下
              • baselineからの平均変化率:-50%前後


            • 有害事象
              • 治療関連有害事象は、atacicept 群で多い
                • atacicept 75 mg:81.4%
                • atacicept 150 mg:80.8%
                • placebo:72.0%
                  • 主には投与局所部位反応、上気道感染症、下痢、尿路感染症
              • 重症感染症
                • atacicept 75 mg:5.9%
                • atacicept 150 mg:1.0%
                • placebo:5.0%



            まとめ
            • primary endpointである24週時点でのSRI-4 responseは、ITT populationにて満たすことができなかった
              • しかしながら、day1をbaselineとすると、両群とも有意の改善を認めた
              • BLISS studyのように、倫理面も考慮して通常治療継続とステロイドの用量調整が入っており、中等度活動性の患者群ではplacebo群でのSRI-4が高いために、有意差が出なかったのかもしれない
              • 高疾患活動性のサブグループ解析では、サンプルサイズが減少したにもかかわらず、ataciceptの有効性がより高くなった
              • 血清学的な活動性が高い患者群も、ベリムマブと同様に、ataciceptの有効性がより高くなった
                • SRI responseにおける血清学的項目を除いて解析しても、血清学的な活動性が高い患者群に対するataciceptの有効性は認められた
              • 血清学的マーカーの改善(C3, C4, ds--DNA抗体)は、気泡によるBLySのみを標的にした治療薬よりも顕著だったのは、APRILがplasma cell survival, 抗体産生, そして潜在的な補体消費に関係しているからだろう
            • 有害事象に関しては、忍容性のある結果だった
              • 重症低γグロブリン血症や死亡例はいなかった
              • これまで死亡例や重症感染症によって試験が中断されたこともあったが、今回のように、しっかりワクチンを打ってモニタリングすれば、リスクを減らすことができることが示された
            • limitation
              • black/African American が少ない
              • 重症腎症や中枢神経病変を有するSLEが除外されている

            トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

            Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...