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2019年5月6日月曜日

dcSScにおいて、1年間の皮膚病変の進行が、その後の肺機能の低下と死亡に有意に関連している

Progressive skin fibrosis is associated with a decline in lung function and worse survival in patients with diffuse cutaneous systemic sclerosis in the European Scleroderma Trials and Research (EUSTAR) cohort
Wu W, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:648–656.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-213455

<背景&目的>

  • SScはheterogeneousな疾患であり、将来的に不可逆的な内臓病変を発症してくる患者集団をいかに特定するかは、重要な課題である
    • そういった患者集団を特定することで、適した患者集団に早期治療介入が可能になり、かつ将来の臨床試験に必要なcohortの構築にも必要である(雑多なdcSSc患者集団を試験に組み込むと、その後、病変が進行しない軽症患者も取り込まれてしまい、きちんとしたデータが出にくくなる)
  • 以前に、EUSTAR (European Scleroderma Trials and Research) databaseのデータから、罹病期間が短いこと(≦15ヶ月)、baselineでmRSSが比較的低いこと(≦22/51)が、その後の皮膚硬化の進行(baselineから約1年後のmRSS増加 > 5 かつ baselineから約1年後のmRSS増加率 ≧ 25%)の独立した予測因子であることは報告されている

  • また、皮膚硬化の進行がmortalityや重症度に関連することは以前にも報告されているが、昔のデータであり、かつやや偏った患者集団のデータであった(Arthritis Rheum 2001;44:2828–35.、Arthritis Rheum 2000;43:2445–54.)
  • 発症早期のdcSScを対象とした単施設のretrospectiveな研究では、baseline mRSSが高いこと、その後2年間で皮膚硬化の改善を認めないこと、がより高いmortalityと有意に関連したが、 内臓病変をoutcomeとした結果とは矛盾した結果だった(Arthritis Rheum 2007;56:2422–31.)
  • そこで、今回は、dcSScの皮膚硬化の進行が、内臓病変の進行やmortalityと関連するか、大規模cohortで調べることとした


<方法>
  • EUSTAR database のdcSSc患者のうち、baselineのmRSS ≧ 7 で約1年後(12±3ヶ月)にmRSS評価を行い、かつ1回以上フォローしている患者集団を評価
  • 皮膚硬化の進行の定義(以下2つを満たす)
    • baselineから約1年後のmRSS増加 > 5 
    • baselineから約1年後のmRSS増加率 ≧ 25%
  • outcome
    • 心臓、肺、腎臓病変の進行
    • 全死亡率

<結果>
  • 1021人のdcSScを解析
    • 7.6%(78人)に皮膚硬化の進行あり (skin progressors)
    • フォロー期間中央値:3.4年
    • baselineの時点で平均罹病期間は7年以上であり、多くはnon-earlyの患者
    • 多重比較補正すると、有意なp値 = 0.0013 であり、skin progressorsとnon-skin progressorsを比較したTable 1でこれを満たすのは、罹病期間のみだった(skin progressorsのほうが短い)
肺病変の進行
  • 中央値3.7年のフォロー期間中に、肺病変が進行(relative decrease in FVC ≥10%)したのは、全体で 35.8% (282/788人)
    • CT scanを施行した患者670人のうち、baselineでILDがあったのは 60.1%(403人)
    • baseline FVC の平均値±SD: 86.9%±20.5%
      • そのうち、FVC < 70%は 20.8% (164人)
  • Kaplan-Meier survival analysisにより、skin progressors とnon-skin progressorsを比較
    • Figure 1A: FVC decline ≥10% (53.6% vs 34.4%; p<0.001)
      • サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だった(Figure 2A,C)。
      • 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 2B,D)。
    • Figure 1B: FVC-DLCO composite definition(FVC decline ≥10% or 5-9% with DLCO ≧ 15%)による肺病変の進行の評価でも、有意にskin progressorsのほうが肺病変が進行した(56.4% vs 39.8%; p=0.004)
      • こちらでも、サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だったが、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった。



収縮性心不全
  • 頻度が少なかったので、評価には注意が必要
  • 中央値3.2年のフォロー期間中に、
    • LVEF reduction:2.3% (15/662人)
      • skin progressors:6.3% (3人)
      • non-skin progressors:2.0% (12人)
    • Kaplan-Meier survival analysisでは、有意にskin progressorsでLVEF reductionが多かった(log-rank test p=0.038)
      • サブグループ解析では有意とならず(サンプル少ないので当然といえば当然)

SRC
  • 頻度が少なかったので、評価には注意が必要
  • 中央値3.1年のフォロー期間中に、
    • new SRC:2.1% (21/985人)
      • skin progressors:0% (0人)
      • non-skin progressors:2.3% (21人)
    • Kaplan-Meier survival analysisでは、有意差なし(log-rank test p=0.196)
      • サブグループ解析では有意とならず(サンプル少ないので当然といえば当然)

肺高血圧
  • 中央値3.8年のフォロー期間中に、
    • new PH:15.7% (109/693人)
      • skin progressors:10.4% (5人)
      • non-skin progressors:16.1% (104人)
    • Kaplan-Meier survival analysisでは、有意差なし(log-rank test p=0.316)
      • サブグループ解析では、罹病期間が長い(>15ヶ月)患者において、skin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意にPHが少なかった((0/28 [0.0%] vs 89/528 [16.9%], respectively; p=0.026)

全死亡率
  • skin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意に高い (15.4% vs 7.3%; p=0.003)  (Figure 1C)
    • サブ解析にて、上記の関連は、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51)(9/67 [13.4%] vs 54/752 [7.2%], p=0.017)、罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)(4/19 [21.1%] vs 3/107 [2.8%], p=0.009)のうち、いずれにおいてもskin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意に高かった(Figure 3A, C)
    • 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 3B,D)。


Overall disease progression
  • 中央値4.6年のフォロー期間中に、
    • 上記で定義した全ての臓器のうち、いずれかで進行があった患者:56.8% (389/685人)
      • skin progressors:74.0% (37人)
      • non-skin progressors:55.4% (352人)
    • Kaplan-Meier survival analysisでは、有意にskin progressorsで多かった(log-rank test p=0.012)(Figure 1D)
      • サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だった(Figure 4A,C)。
      • 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 4B,D)。


  • multivariable Cox regressionでも、1年以内の皮膚硬化の進行は、以下の項目に独立して関連する因子だった
    • FVC decline ≥10% (HR 1.79, 95% CI 1.20 to 2.65) 
    • all-cause death (HR 2.58, 95% CI 1.31 to 5.09)
  • baselineにおけるSRCの既往, LVEF < 45%, FVC < 70%, DLCO < 70%, 年齢も、all-cause deathの独立したリスク因子だった


<考察>
  • dcSScにおける1年以内の皮膚硬化の進行は、肺機能の低下と死亡率に有意に関連する因子だった
    • これらの結果は、mRSSがdcSScのsurogate markerであることを支持するものである
  • また、baselineにおけるmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)は、今後の臨床試験に向けたcohortに組み込んでいくが重要であることも示唆された
  • 今回のコホートの多くはnon-earlyで、罹病期間が短い患者群のほうが臓器病変の進行が多かったが、late-stageのdcSScにも臓器病変が進行していた患者がいたのも事実であり、dcSScのheterogeneityを反映する結果だった
    • すなわち、臨床実地においても、late-stageのdcSScでも臓器病変が進行しないか注意が必要である
  • limitation
    • 死亡原因が不明
    • 長期間フォローできた患者が少ない(その代わりnultiple imputationで補った)
    • new PHがやや多かった(これは心カテではなくエコーでの評価を定義としたためだろう。EUSTAR databaseには心カテの情報はないらしい)
    • 観察研究のため、治療内容による影響が考慮されていない(一応、患者群間で免疫抑制剤を受けている患者の割合は同等らしい)


2018年3月23日金曜日

発症早期dcSScにおいて、その後のmRSS scoreの変化を予測する因子


Herrick AL, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:563–570. doi:10.1136/annrheumdis-2017-211912

背景

  • dcSScでは、mRSSによって皮膚硬化/肥厚を評価する
  • dcSScの臨床試験では、このmRSSがprimary endpointに設定されるが、いくつか困難な点がある
    • dcSScは稀な疾患である
    • 急速に進行する傾向がある(特に最初の3-5年間) が、その後、プラトーに達し、しばしば改善する
      • それが、ある薬剤において、open-labelや観察研究では有効と評価されても、RCTでは有効性が証明されない原因と考えられる
  • 理想的には、どの患者が、mRSSが進行するか予測することができて、その患者をRCTに組み込めるようにするほうが良い
    • 多くのRCTは、発症早期の患者に対象を限定しているので、組み入れ基準のmRSSの上限をさらに上げることで(現在提唱されているのは22)、皮膚硬化の増悪に関するコホートに入る患者として適切であると思われるが、そうやって厳密にすることで組み入れられる患者の数が減少するのも問題である
  • The European Scleroderma Observational Study (ESOS)は、発症早期dcSSc患者326人を対象とした、治療に関する前向き観察研究である
    • 患者は、12-24ヶ月の間、3ヶ月ごとにmRSSを評価されている
    • 皮膚肥厚が生じてから中央値11.9ヶ月の患者を組み入れており、発症早期dcSScの皮膚病変の推移を評価できる貴重な試験である
    • 今回の目的は、以下の2つである
      • 実臨床のために、皮膚病変が進行しやすい患者を特定する因子を見つけること
      • 今後の臨床試験のために、12ヶ月間で皮膚病変が進行することを予測するモデルを開発すること

方法
  • ESOS study
    • 組み入れ基準
      • 皮膚肥厚発症から3年以内
      • 18歳以上
    • primary endpoint
      • mRSS
    • 326例の患者が、50施設(19カ国)から集められた
    • 始められた治療は以下の通り
      • MTX:65例
      • MMF:118例
      • CYC:87例
      • 無治療:56例
    • 治療群によって皮膚病変の進行は有意差なかったため(supple table S1)、治療群に関係なくmRSSの経過を解析した

  • progressionの定義
    • mRSSにおいて、baselineから、5-unit以上かつ25%以上の増加を認める


結果
  • mRSSのprogressionの経過(figure1)
    • フォロー期間中(中央値 23.4ヶ月)のmRSS scores:中央値 7 units
    • どんな程度でも(progressionの定義に関わらず)、mRSSが増加した患者:160例
      • そのうち、ほぼ大半は最初の12ヶ月に増悪した:149例


  • baseline characteristics(table1)
    • progressor(n=66)とnon-progressor(n=227)に分けて解析
    • 組み入れ時の罹病期間
      • progressorのほうが短い
        • median 8.1 vs 12.6 months (P=0.001) 

    • 組み入れ時のmRSS
      • progressorのほうが低い
        • median 19 vs 21 units (P=0.030)
    • しかしながら、組み入れ時のprogressorsのmRSSは、全てのprogressorsのうち30.3%がmRSS > 22, 15.2%がmRSS > 25 units だった(table1の下図)
      • 中央値は低いものの、mRSSが高い患者の割合は多かった






  • 自己抗体statusごとのprogressorsの特徴(table2)
    •  RNA poly Ⅲ陽性
      • baselineの mRSS scoresが有意に高い
      • 罹患期間は有意差なし
      • progressorsが多い傾向
        • 29.2% vs 11.9% (自己抗体陰性群)
          • P=0.105
      • mRSS peakのscoresが有意に高い
        • 35 units
          • p=0.001
      • mRSS peakまでの期間が最も短い
        • 16.3 months 
          • P=0.199






  • 最初の12ヶ月間における、mRSS progressionの予測モデル(figure2)
    • 以下の項目をモデルに入れた場合のROC曲線:AUC 0.711, PPV 41.0%
      • mRSS scores
      • 最初に皮膚硬化が生じてからの期間
      • mRSS scores/最初に皮膚硬化が生じてからの期間、の交互作用
      • RNA poly Ⅲ




  • mRSS scores/最初に皮膚硬化が生じてからの期間、の交互作用は、その後のprogressorとなることを予測する
    • progressorは、model Aにおける曲線の下半分に多く位置している
    • model A に RNA poly Ⅲ を追加すると、より精度がよくなる(model B)
      • RNA poly Ⅲが陽性だと、最初の1年間に急速に皮膚病変が進行する可能性が増加する




  • progressorを推測する表
    • 患者が来院した時点で、皮膚硬化が生じてからの期間(一番左)がわかり、そこからprogressorであると予測するには、mRSS scoresがその右の値以下であることが必要である、ことを示した表(model A, Bそれぞれ)
      • 例えば、model Aを用いる場合(施設によってはRNA poly Ⅲが測定できない)
        • 9ヶ月で臨床試験に組み入れられた場合、mRSS 0 - 23であれば、progressorを予測する


    • 上記 model AをESOS cohortに適用してみると、
      • 139/279例(49.8%):progressorと予測される
        • 47例が実際にprogressorだった(PPV 33.8%)
      • 140/279例(50.2%):non-progressorと予測される
        • 123例が実際にnon-progressorだった(NPV 87.9%)
    • 上記 model BをESOS cohortに適用してみると、
      • 78/279例:progressorと予測される
        • 32例が実際にprogressorだった(PPV 41.0%)
      • 153/279例(50.2%):non-progressorと予測される
        • 132例が実際にnon-progressorだった(NPV 86.3%)

まとめ
  • 今回の試験の強みは、使用したcohortは、3ヶ月おきにprospectiveに皮膚病変を診察しているため、皮膚病変の経過を詳細にフォローできていることである
    • 3ヶ月おきのフォローは実臨床でも現実的であり、今後行なっていくRCTでも可能なフォロー方法である
    • また、今回のデータは、通常行う治療内容中の経過であり、実臨床にも一般化できると考えられる
    • さらに、baselineの皮膚所見とそれまでの罹病期間を用いたprogressorの予測モデルを開発できたのも大きい発見である
      • 自己抗体の所見を追加すれば、より正確な予測が可能になる
      • 臨床試験で用いるアルゴリズムは、今回のようにあまり厳密すぎず、感度が高いほうが好ましい
  • ESOS cohortの組み込み基準をmRSS > 22 unitとすると、サンプルサイズはn=326 → 189へ減少してしまうが、progressorの割合は22.5% → 26.4%しか増えない
    • しかしながら、model Aを使えば 33.8%, model Bを使えば 41.0%まで増加する
    • すなわち、mRSS scoresのみではprogressorsを予測するには不十分であるということである
  • limitation
    • 実際に、皮膚病変が肥厚した時期を推測するのは、なかなか難しい
      • 一部の患者は、試験に組み込まれる前にmRSS peakを過ぎている可能性がある
    • 今回のmodel A, Bはvalidationをおこなっていないため、一般化するにはその段階を踏むのが必要
    • progression statusがわからない患者のうち、36.4%が死亡しており、これがバイアスとなっている可能性がある
    • model Bでは、自己抗体のデータが欠損しているのが19.6%あり、これによって予測率が低下している可能性がある

2018年1月26日金曜日

分子学を用いたリウマチ膠原病疾患の分類:Nature reviewより



  • リウマチ膠原病疾患は早期発見、治療が望ましい
    • しかしながら、いずれの疾患もほぼ共通して発症早期は関節炎や全身の炎症を伴い診断が難しく、バイオマーカーに関しては助けにはなるが有病率が低いため発症早期にバイオマーカーのみ陽性の場合は扱いが難しく経済的な問題もあり、多くの疾患は、undifferentiated connective tissue disease (UCTD) として最初の数年間は経過する
  • オーダーメイド医療が最近は注目されている
    • 悪性腫瘍の領域でも、The Cancer Genome Atlas (TCGA) が14000人以上の被験者から、分子レベルの検体(RNA sequencing (RNA-seq) 、DNA methylationなど)を集めて解析している
      • しかしながら、実地臨床にこれらの情報はまだ活かせていない
    • リウマチ膠原病疾患でも、まだ、このような分子生物学を用いた未分類疾患の診断は行われていない
  • 今回のレビューでは、これまでの分類基準の歴史、生化学を利用した新しい分類方法の検討を述べていく


これまでの分類の歴史
  • Fig1のように、特異的な自己抗体によって、分類基準が改定されてきた(診断基準ではない)
    • ゴールドスタンダードは専門家による診断である
  • それぞれの疾患の分類基準の変遷は本文に詳しく書かれていますが、ここでは割愛


分子学的な分類

  • 自己免疫疾患における遺伝の要素はわかっていないことも多い
    • 同じ疾患を共有する割合は高くない
      • SLEに関しては、第1親等もしくは第2親等にも同じ患者がいるのは10%未満
      • 一卵性双生児で疾患を共有する割合は、SLE 11.1%, RA 12.3%, SSc 4.2%
    • しかしながら、異なる全身性の自己免疫疾患を血族で共有することは多々あるので、異なる疾患でもメカニズムとしてはいくつか共通している部分があるのだろう
    • GWASによれば、SLE, RA, SSc, SjSにおいて、300 lociがこれらの疾患と関連があるとわかった(定義:p < 5×10^-8)
      • 多くのlociが、2つ以上の自己免疫疾患と関連しており、これらの遺伝子の発現・制御が、特異的な臨床所見とどう関連しているのか調べていく必要がある

HLA
  • HLA locusと自己免疫疾患の関連は、最初に、SLEとRAにおいて指摘された
  • しかしながら、原因となるMHC locusを特定するのは、この領域におけるlong-range linkage disequilibrium(LRLD, linkage disequilibrium = 連鎖不均衡)の点と、もともと多型が多いということから、なかなか難しい
    • fine-mapping platforms (例:ImmunoChip)、large MHC reference panels、specific imputation algorithms、next-generation sequencingなど新しい技術は、これらMHC locusの複雑性を解明していくことの助けになる
  • fine-mapping platformsの研究では、HLA class 2 遺伝子が自己免疫疾患と関連があることがわかった(table1)
    • HLA class 2 遺伝子にコードされている蛋白は、T細胞への抗原提示に関与している、自己抗体産生に関連している
  • これらHLA遺伝子マーカーによって、一部の疾患を層別化することが可能である
    • 例えば、SScのうち、lcSScと関連するセントロメア抗体はHLA-DQA1、HLA-DOAと関連しており、dcSScと関連するトポイソメラーゼ抗体はHLA-DPB1と関連してがある
    • SLEの患者においても一部でトロポイソメラーゼ抗体とセントロメア抗体が陽性になり、これらにはHLAが関連していると考えられている
      • セントロメア抗体に関しては、SLEの6%未満で陽性となり、これらは臨床所見としては高齢発症で、Raynaud症状が多いという特徴があり、Nakanoらは新しいSLEのサブセットとして提唱している
      • トポイソメラーゼ抗体に関しては、SLEの25%未満で陽性となり、PAH・腎炎のリスクが上がると言われている





Non-HLA associations

  • HLAが主な自己免疫疾患発症に関与している遺伝子と考えられているが、HLA以外の関与も指摘されている
  • それぞれの疾患によってrisk locciの数が大きく異なるのは、GWASで解析したそれぞれの疾患の数が異なるためである
    • RAとSLEに対して行われたGWASsは、SjSとSScに対するそれの10倍である
    • それにも関わらず、SjSとSScは、risk lociのうち60%以上を共有している(SLEとRAは50%未満)
  • これらのrisk lociは、遺伝子のいたるところに分布しており、その多くは以下に関与するものである(Fig2)
    • T細胞、B細胞の機能・シグナル
    • 免疫複合体のprocessing
    • phagocytosis
    • 炎症反応
    • アポトーシス
    • NFκBシグナル
    • TLRシグナル
    • IFN産生経路



  • それぞれの疾患におけるrisk lociは他の自己免疫疾患でもrisk lociとなっていることが多いが、全risl lociにおいて平均して69%が複数の疾患と共有しているlociだった
    • Nature 518, 337–343 (2015). における下図aがそれを示している。主な自己免疫疾患間において、幅広い遺伝子の特徴が共有されていた。

  • また、よりリスクが相対的に低いlociも検出するためにGWASのmeta-analysisを行うと、
    • RAは、SScとgeneticな要素でoverlapする部分があるものの、SLEとSjSとはoverlapしなかった
    • しかしながら、SLSとSjSは、SScとoverlapする部分がある
    • これらのデータには、すでに述べた様に、疾患によって調べられたGWASの数が異なることに注意する必要がある

トランスクリプトーム
  • トランスクリプトームは、疾患経過中に細胞(免疫細胞や組織由来fibroblastなど)や組織(血液や罹患臓器など)など変化するため、個々の症例における遺伝子variationを調べるよりも複雑である
  • 遺伝要素のみではなく、エピゲノムや環境要因もトランスクリプトームに関連しているため、自己免疫疾患の病態について新しい知見が得られるだろう

組織を標的にしたトランスクリプトーム解析
  • トランスクリプトーム解析によって、それぞれの疾患をいくつかのサブグループに分けることができる

  • RA
    • RA-Ⅰ
      • 免疫グロブリン関連遺伝子の発現が増加
      • 獲得免疫・古典的補体活性化経路の活性化
      • 滑膜における細胞外マトリックス代謝の活性化
    • RA-Ⅱ
      • fibroblastのde-differentiation関連遺伝子が増加
    • 滑膜組織における炎症反応が過剰発現もしくは抑制されているサブグループも報告されているが、これらを特定する末梢血のバイオマーカーは特定されていない
  • SSc
    • lcSScとdcSScの両者を含む3つ目のグループがある
      • このグループは、炎症反応に関連する遺伝子が著明に増加している
    • dcSScのグループでは、細胞増殖に関連する遺伝子の発現が増加し、脂肪酸・脂質合成関連遺伝子の発現が低下している
    • lcSScのグループでは、細胞増殖に関連する遺伝子や炎症反応に関係する遺伝子は発現が低下しているものの、多様な機能に関連する複数の遺伝子発現が増加している
  • SjS
    • 多くの患者が唾液腺におけるIFN活性が亢進しており、臨床所見と相関する
    • このIFN signatureのうち、優位なものがtype 1なのか、type 2なのか、両者なのかによって層別化できる
      • type 2 IFN 優位の場合が、唾液腺組織におけるfocus scoreが最も高いことが報告されているが、このサブグループによって臨床所見が異なるわけではない
  • SLE
    • heterogeneousな疾患であるが、多くの罹患臓器(糸球体、滑膜、皮膚、骨髄)がtype 1 IFN signatureを示す
    • 腎炎は以下の2つのサブグループに分かれるが、臨床的に大きく異なる特徴の違いはないため、この層別化にはあまり意味がないかもしれない。一方のグループで糸球体硬化のリスクが高いかどうか、長期間の解析が必要である
      • 線維化に関連する遺伝子の発現が増加しており、糸球体硬化と関連するグループ
      • type 1 IFN signatureのサブグループ

血液でのトランスクリプトーム解析
  • SjS, SScの末梢血単球は、 type1 IFN signatureである
    • SjSの場合は疾患活動性と関連しているが、SScではこのsignatureであるかどうかはサブグループによって異なる(発症早期 78.9%, 診断確定後 100%。lcSSc 42.9%, dcSSc 70%)
    • SScの重症度とIFN誘導性ケモカインが関連していることを示した報告もある
  • 興味深いことに、sialic acid binding Ig like lectin1 (SIGLEC1) などいくつかのIFN関連バイオマーカーは、SjSにおける腺外症状の有無と関連している
    • miRNAs、long non-coding RNAs、methylation sitesなど、他のバイオマーカーについても調べられているところである

エピゲノム
  • 環境要因は、エピゲノムの変化によって、それぞれの疾患発症に関連している
  • DNAメチル化が最も特徴的なエピジェネティックマークである
  • 遺伝子の転写、染色体の安定性、alternative splicingの制御は、regulator regionにおけるDNAメチル化と関連している
  • エピゲノムのオアターンは自己免疫疾患においても重要であるが、解析はまだあまり行われていない
    • SLE患者のCD4陽性T細胞は、type 1 IFN 関連遺伝子の低メチル化によって発現が増加していることからも、これらが発症の指標になるかもしれない
    • T細胞の低メチル化は、SSc, SjSでも報告されている
    • SLE, SSc, SjS患者のB細胞、単球、皮膚fibroblast、全リンパ球は、hypomethylated patternを示す
      • このpatternは、DNAメチル化に関連している遺伝子(DNMT1, DNMT3B, MBD4)発現の低下と関連している
    • Methylation machinery gene は食事による葉酸摂取に依存しており、葉酸摂取低下により全ゲノムのメチル化が低下する
      • この結果は、環境要因と自己免疫疾患発症の関連を支持している
    • CD40L遺伝子プロモーターは、X染色体に存在するが、RA, SLE, SScでメチル化が低下している
      • この遺伝子の低メチル化が、女性におけるCD40過剰発現の原因なのかもしれない
    • type 1 IFN signature遺伝子であるIFI44Lのプロモーターは、SLE患者においてメチル化が低下している
      • RA, SjSでも同様の変化があるが、メチル化のレベルは明らかにこの3疾患で異なっている
    • 一卵性双生児間におけるDNAメチル化を比較すると、SLEでは49遺伝子のメチル化が双生児間で異なっていたが、RAと皮膚筋炎ではこの双生児間での違いは認められなかった
    • dcSScとlcSScのメチル化を比較した研究は1つのみあるが、それによると、CpC sitesにおけるメチル化がこの両疾患で異なっていた




Integrated analysis
  • 上記の手法を統合して解析することで、さらなるデータが得られる
  • RA患者では、DNAメチル化とトランスクリプトーム解析のデータを統合して解析したところ、関節によって、fibroblast-like 滑膜細胞におけるDNAメチル化と発現パターンが異なっていた
    • すなわち、同じRAでも、罹患関節によって薬剤への反応性が異なるかもしれない
  • SLE患者において、腎炎がない場合とある場合であまり遺伝子の違いはなかったが、その少ない異なる遺伝子の多くはDNAメチル化に関する遺伝子だった
    • これによれば、エピゲノムをモニターすることで、腎炎発症のリスクが高い集団を早期に特定できるかもしれない
  • SjSでは、トランスクリプトーム解析とプロテオミクス解析を統合してみると、トランスクリプトではIFN関連遺伝子が疾患活動性と関連していたが、プロテオミクス解析ではメタロプロテアーゼ基質が関連していた
    • これらは結果は異なるものの、両方の解析結果にはIFN制御遺伝子が含まれていた
    • また、両者の手法での解析結果とも、memory CD8陽性T細胞の数と関連していた
      • すなわち、IFN経路が、CD8陽性T細胞のプロテオームのエピゲノムでの変化と関連しているということを示唆している。そしてこのエピゲノムの変化には、メチル化によるものではない。
      • しかしながら、メチル化による変化がCD8陽性T細胞に生じることでこれらの機能が変化することも起こりうる
  • integtared analysisにおける難しさは、統計学的有意差を出すために十分なサンプルを確保することである
    • 例えば、RA, SLE, SSc患者におけるCD4陽性T細胞から、トランスクリプトーム解析とメチル化に関するデータを集めるにしても、健常人とメチル化が変化しているのは33種類の遺伝子のみしか特定できなかった
  • integrated analysisの手法に関しては、table42やfigure4のように、いくつかのアルゴリズムがある




2018年1月19日金曜日

強皮症に対するTCZ:phase 2, The faSScinate clinical trial


Khanna D, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:212–220.  

背景

  • 強皮症は稀な疾患であるが、特に肺・心臓・腎臓に病変がある場合は予後も不良
    • 実際に、肺病変は、強皮症による死因で最も多い
    • 治療法が限られたものしかない
  • SScの病態にIL-6が関与している
    • 内皮細胞や皮膚fibroblastからIL-6産生が増加している
    • 発症早期のdcSSc患者の血清ではIL-6が高い
    • SScにおける進行予測・予後予測マーカーとして使用できるという報告もある
    • 活動性がある場合にCRPが増加している(特に発症早期のdcSSc)
  • TCZをSScに対して使用した試験の既報では、皮膚硬化と多関節炎が改善した
  • The faSScinate clinical trial は、TCZ皮下投与のSScに対する有効性と安全性を評価するための、最初の二重盲検・ランダム化比較試験である
    • 以前に報告されている48週間の盲検期間の結果では、臨床的には効果があったが、統計学的には有意差をもってmRSSがプラセボと比較して改善せず、primary endpointを達成しなかった
    • 今回は、さらにopen-labelで48週間観察し、計96週間の観察期間の結果を報告する

方法
  • 多施設(カナダ、フランス、ドイツ、UK、USA)、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較試験、phase 2
  • 対象
    • 18才以上
    • 1980 ACR SSc criteriaを満たす
    • Raunaud症状以外のSSc症状発症から5年以内
    • mRSS 15 - 40
    • 以下のうちいずれかを満たす、活動性のSSc
      • スクリー二ングの時点で、その時点から1-6ヶ月前の外来と比較して、mRSSが3以上増加(悪化)
      • スクリニーニングから1年以内に発症した新規SScでmRSSにて2以上の新規皮膚病変 or mRSSにて1以上の新規皮膚病変が2つ以上あり
      • 直近6ヶ月間で皮膚の厚みが増加していることがなんらかで証明されている
      • 腱摩擦音が1ヶ所以上 + 検査所見(CRP ≧ 1mg/dL or ESR ≧ 28mm/h or Plt ≧ 33万/uL)
    • 肘、膝よりも近位の皮膚病変を含む
  • 1:1でランダムに割付
    • placebo → 48週間時点でopen labelでTCZ 162mg weekly s.c. 開始
    • TCZ 162mg weekly s.c. → 48週間時点でopen labelでTCZ 162mg weekly s.c. 継続

  • 割付は、baselineにおける関節病変(28関節で4ヶ所未満 or 4ヶ所以上の圧痛あり)によって層別化
  • 24週間目以降から、SSc増悪あれば、escape therapyとしてMTX, HCQ, MMF使用可能
  • exploratory endpoint
    • 96週時点でのmRSSの改善率(≧20%, ≧40%, ≧60%) 
    • mRSSにてminimal clinically important difference(MCID)を達成した割合(baselineから4.7以上改善)
    • %FVC
    • %DLco
    • 医師評価のVAS
    • HAQ-DI
    • 患者評価のVAS
    • FACIT-Fatigue Score
    • Pruritus 5-D Itch Scale


結果
  • 流れ


  • baseline characteristics
    • HAQ-DI score, CRPがわずかにopen-labelへ以降した群で低い


有効性

  • open-labelへ移行後も、TCZ群のmRSS改善は持続
  • 最初の48週間はplaceboを投与されていた群も、open labelでTCZ開始すると、有意にmRSS改善



  • 96週時点でのmRSSの改善率(≧20%, ≧40%, ≧60%)を達成した割合も、TCZ継続群では48週間時点よりも増加
  • 医師評価VAS, 患者評価項目いずれもTCZ継続群で継続的に改善



  • 最初の48週間でplacebo群だった場合は%FVCが増悪した割合は83%だったが、96週間のうちプロトコルを継続できた患者群(=TCZ継続群 or TCZへopen labelへ移行群)では、%FVC増悪率はいずれも同様だった(42%, 46%)
  • open labelへ移行して全例にTCZを投与開始したあとでは、%FVC 10%以上低下した症例はなし



安全性

  • 重症感染症
    • placeno→TCZ群にて、前後で重症感染症を発症した割合は増加
  • open-label phaseでは死亡症例なし
    • 盲検phaseでは死亡症例あり


まとめ
  • 最初の48週間にてplaceboだった症例も、その後48週間TCZを投与することで、TCZ継続群と同等のmRSS改善を示した
  • TCZ継続群では、継続的にmRSSが改善した
    • 72週間あたりで、mRSSの改善はフラットになったが、個々の症例では改善を認めていた
    • 2症例、例外的にmRSSが増悪した(それぞれ+9、+14)
  • TCZによって、患者主観的評価項目でも改善を示した
  • 肺機能の低下も、TCZ投与によってある程度防ぐことができた
  • 有害事象も既知のものだった
    • 最初の数ヶ月で感染症が多かった

2018年1月16日火曜日

自己免疫疾患におけるplasma cell標的治療について


Hiepe, Falk, and Andreas Radbruch. "Plasma cells as an innovative target in autoimmune disease with renal manifestations." Nature Reviews Nephrology 12.4 (2016): 232-240.

  • plasma cellが最初に発見されたのは1947年で、抗体を産生する細胞としてAstrid Fagraeus が発見した
    • 当初は、活性化B細胞から継続的に分化してくる、均一な、short-lived の細胞集団と考えられていた
  • 当時から、一部の専門家は、抗体はlong-lived plasma cellから産生されると仮説を立てていたが、その証明がなされたのは1997年になってからであり、Manzらが報告した
  • これらの知見に基づいて、2004年にHoyerらが、SLE腎炎マウスモデルを使用して、short-lived plasmablastもしくはplasma cellと、long-lived plasma cellの両者が自己抗体を産生することを報告した
    • 現在では、long-lived plasma cellは、液性免疫を維持する基盤の細胞集団であることがわかっている
    • short-lived plasma cellとは異なり、long-lived plasma cellは(自己反応性のものも含めて)、B細胞前駆細胞に非依存的であり、CYCなどの増殖を妨げる薬剤に対して抵抗性を有しているため、治療標的として注目されてきた
  • 今回のレビューでは、short-lived plasma cellとlong-lived plasma cellの発生、plasma cellの自己免疫疾患における役割、自己反応性plasma cell除去の治療戦略に関して述べている


plasma cellの発生
  • 膜結合型の抗体は、抗原に対する受容体として作用し、B細胞表面に存在しているが、これらの細胞は抗体を分泌しない
  • plasma cellは、以下の3つの経路を介して、B細胞から発生する
    • B1細胞 → plasma cell
    • T細胞非依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
    • T細胞依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
  • マウスでは、B1細胞は、TLRを介してplasma cellへ分化し、主にIgMを産生する
    • ヒトにおいては、そのような経路がB1細胞において存在するかはわかっていない
  • B2細胞は、T細胞依存性と非依存性の経路でplasma cellに分化する(下図)
    • T細胞非依存性の経路は、以下のいずれかの結果である
      • B細胞受容体(BCR)非依存性の、LPSのようなmitogenに対するpolyclonal B細胞の反応
      • long-chain polysaccharides によるBCR活性化
        • Marginal-zone B2細胞は、short-lived plasma cellに分化し、主にIgMを産生する
    • 一方で、T細胞依存性の経路は2段階ある
      1. extrafollicularでの反応によってshort-lived plasma blastへ分化し、中等度の親和性を有する抗体を産生する
      2. 活性化B細胞の一部は、再びB細胞のfollicleへ入ってTfhの下で増殖し、germinal centerを形成する。このgerminal centerで発生したplasma cellは、骨髄のnicheにおいて長期に生存し、高親和性の抗体を産生する
(Cellular and Molecular Immunology 12, 31–39)



  • B細胞は、活性化した後に、増殖可能なpre-plasmablastとplasmablastを経て、増殖せずに生着するplasma cellへ分化する
    • plasmablastもplasma cellも、抗体を産生する
    • これらの分化段階では、それぞれ異なる表面マーカーが発現している(table1)
    • plasma cellも多様であり、CD19が発現しているものとしていないものが骨髄や炎症性組織に存在していることがわかっている
      • CD19, CD38, CD138の発現によって、骨髄のplasma cellは、4つのサブセットに分けられる



Long-lived plasma cells
  • Long-lived plasma cellsは、二次的な免疫反応によって発生し、発生にはgerminal centerでの反応が必要である
    • plasmablastのうち、限られた数しかlong-livedに分化できない
  • plasmablastは、骨髄や炎症性組織に移動し、long-lived plasma cellとして生存するのに必要なnicheを競合し合う
    • 骨髄のnicheは限られているが、炎症性組織のnicheは炎症の程度に依り、炎症がおさまるとnicheも消える
      • 感染症の罹患部位にplasma cellが存在することは、その部位においてplasma cellが産生した抗体によって原因微生物が排除されるという仮説を支持している
  • オートファジーの過程(細胞のホメオスタシスを維持するために細胞質成分にリサイクルする、リソソームによる自家消化)は、plasma cellの寿命に関与している
    • plasma cellはオートファジーが活性化している
  • plasma cellの寿命は、nicheからのsurvival factorに依存しており、骨髄nicheから分離するとlong-lived plasma cellは数日で死滅する
    • nicheは、CXCL12とVCAM1を発現している間葉系細胞によって構成されている。また、巨核球と好酸球は、survival factorであるBAFF、APRIL、IL-6を産生している
    • APRILとBCMAの骨髄における相互作用が、plasma cellがMCL-1を多く発現するのに必要である
  • 炎症性組織におけるplasma cell生存に関与しているfacrtorは不明な点が多いが、CXCL12発現細胞、CXCR3リガンド(=CXCL9, CXCL10, CXCL11)、APRIL, BAFFが炎症性組織で関与していることが報告されている
  • long-lived plasma cellは、memory B細胞・B細胞活性化・抗原の結合・T細胞による補助とは非依存性に抗体を産生し、memory cellsの性質を有している


    Plasma cells in autoimmunity 
    • 臓器病変として腎臓が含まれる自己免疫疾患で、自己抗体が病態に関与している疾患はTable2に示すように多い

    • 自己抗体を産生するplasma cellが、これら自己免疫疾患の病態において重要である
      • NZB/Wマウス(SLEモデルマウス)のplasma cellを、plasma cellが欠損し免疫不全であるRag1−/−  マウスに移植すると、抗ds-DNA抗体を産生するようになり、免疫複合体を形成して腎炎を生じる
    • 自己抗体は、2つの異なる独立したplasma cellから産生される(下、Figure1)
      • 1つは、新規に発生したshort-lived plasmablastとplasma cell
        • これらはB細胞活性化に依存しており、脾臓とリンパ節で生じる
        • B細胞が活性化するような状態、すなわちワクチンや自己免疫疾患再燃の過程で起こる
        • short-lived plasmablastは末梢血に存在しており、フローサイトメトリーで特定可能である
        • plasmablastの数の増加 or plasmablast/B細胞比の増加は、B細胞の活性化の指標として、SLEやAAVなどの自己免疫疾患で使用されている
        • 二次免疫での反応では、ワクチン特異的な、オリゴクローナルな、高頻度に変異したplasmablastが誘導される
        • 活動性のSLEにおいては、一部は自己抗原特異的なplasmablastがmemory B細胞から分化するが、大半は、ポリクローナルな活性化naive B細胞から発生する、低いレベルでのsomatic hypermutationを示すplasmablastである
          • 驚くべきことに、SLE患者において、活性化naive B細胞クローンが数ヶ月末梢血に存在している
          • plasmablastの増加は、抗ds-DNA抗体のような自己抗体増加と関係している
      • 2つ目は、long-lived memory plasma cell
        • short-lived plasma cellと異なり、memory plasma cellは通常の免疫抑制治療に抵抗性である
          • SLE腎炎モデルマウスでds-DNA抗体を産生するNZB/W F1 マウスでは、CYC, ステロイドの併用治療でも骨髄と局所の炎症部位に存在するplasma cellを除去できない
        • memory plasma celは、B細胞非依存性に自己抗体を産生するため、B細胞を直接的に標的にした治療(抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗BAFF抗体)もしくは間接的に標的にした治療(Th細胞阻害薬)に影響されない
          • これらの治療で自己抗体が低下しない場合には、memory plasma cellから産生されていると考えられる
      • これら2つの機序のうち、いずれが主に自己抗体を産生しているのかはわかっていない
    • 自己反応性plasmablastは、pritectiveに作用するlong-lived plasma cellともnicheを競合する
      • 骨髄が主なlong-lived plasma cellのnicheであるが、炎症性自己免疫疾患では炎症組織もまたnicheとなりうるので、その部位において病的な自己抗体を産生する
      • 活動性SLE患者の骨髄、リンパ節、腎病変のplasma cellは、BAFF, APRILを産生することができ、自身の生存に関与しているかもしれない




    plasma cellを標的にした治療


    conventional immunosupression
    • short-lived plasmablastとplasma cellは、増殖しているplasmablastとB細胞を標的にして、通常の免疫抑制治療に反応する
      • 増殖していないplasmablastは、これらの治療開始後数日で消失する
      • RTX, ベリムマブは、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するが、long-lived memory plasma cellには影響しない
      • 自己反応性B細胞を刺激するfactorを阻害する治療、すなわちtype1 IFNや、ヘルパーT細胞やTregを標的にした治療も同様に、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するだろうが、long-lived memory plasma cellには影響しないだろう


    Antithymocyte globulin 
    • 自家造血幹細胞移植において使用されるATGは、自己反応性memory細胞を含む獲得免疫システムの全体を除去する
      • ポリクローナルなATGは、CD38, CD138, CD52のようなplasma cellに発現している分子に結合する
      • これによって、健常人と同じような獲得免疫を再構築することができるかもしれない


    Proteasome inhibitors 
    • Proteasome inhibitors は、より選択的に、plasma cellを除去する
    • plasma cellの腫瘍である多発性骨髄腫において使用されているボルテゾミブは、免疫グロブリン合成を誘導し、unfolded proteinの蓄積によってアポトーシスを誘導する
      • NZB/Wマウスでは、ボルテゾミブは、ほぼ完全にplasmablastとplasma cellを除去し、ds-DNA抗体産生と腎炎の発症を防ぎ、コントロールと比較して生存期間が著明に延長した
      • この結果を受けて、通常の治療で治療抵抗性SLEに対して、2-4回のサイクルでボルテゾミブを投与するpilot studyが行われたところ、SLEDAIは~60%低下し、ds-DNA抗体価は正常値まで改善した
        • ワクチンによる抗体価も~30%まで低下し、末梢血に循環しているplasmablastと骨髄のplasma cellも抗体価の低下と相関して減少した
      • さらに、マウスモデルでは、proteasome inhibitorは、plasma cytoid DCsによるtype1 IFNの産生も阻害し、これも機序として考えられる
      • また、in vitroでは、活性化ヒトT細胞を選択的に除去する作用も示されており、これによってT細胞とB細胞のアポトーシスを誘導し、NFκB活性化を阻害する
    • AAVでも、ボルテゾミブによるplasma cell除去は試みられている
      • この疾患のモデルマウスでも、脾臓や骨髄に存在するMPO-ANCAを産生するplasma cellの数を有意に低下させ、MPO-ANCAが低下し腎炎の発症を予防した
      • 治療抵抗性のAAVや特発性膜性腎症によるネフローゼ症候群に対するボルテゾミブ使用のケースレポートでも、良好な結果が報告されている
    • 新世代のproteasome inhibitorであるdelanzomibやcarfilzomib は、より少ない毒性でより有効な結果を残すころが期待されている


    Targeting survival factors 
    • miRNA-148aやsurvival nicheの構成成分など、plasma cellのsurvival factorを標的にした治療も検討されている
      • アタシセプト(可溶性TACI-Ig)は、BAFFとAPRILを中和し、有望なアプローチであり、plasma cellと免疫グロブリンを低下させる
        • phase2/3では、アタシセプト 75mgでは、中等症以上のSLEの再燃を予防できなかった
        • 150mgを投与した試験では再燃を予防できたが、肺炎による死亡症例が2例あり、早期にこの試験は中止された
        • また、多発性硬化症では、アタシセプトによってむしろ疾患活動性が増加し、RAでは全く有効性を示さなかった
    • 接着分子であるVLA-4、LFA-1に対するモノクローナル抗体製剤は、wild-type C57BL/6 マウスにおいて、骨髄のplasma cellを除去した
      • この効果は、CD20抗体を投与してB細胞を除去することで延長した
      • しかしながら、NZB/Wマウスでは、VLA-4、LFA-1、CD20に対するモノクローナル抗体製剤の有効性は不十分であった
        • この違いの理由はわかっていない


    Targeting plasma cell homing 
    • CXCR4-CXCL12の相互作用は、plasma cellが骨髄に移動するのに必須である
      • plasma cellがCXCR4を発現しており、CXCL12を発現している骨髄nicheを主に形成している間葉系細胞に惹きつけられる
      • 炎症組織(腎臓、関節、皮膚、唾液腺)のnicheでも、CXCL12は過剰に発現している
      • NZB/Wマウスに対して、CXCLに対するモノクローナル抗体製剤を投与すると、発症前の場合は腎病変とds-DNA抗体産生が予防され、すでに発症しているマウスだと疾患活動性を低下させる
      • CXCR4アンタゴニストであるCTCE-9908も、B6.Sle Yaa SLEモデルマウスに対して同様の効果を示した
      • NZB/Wマウスのplasma cellを、免疫不全であるRag1−/− マウスに投与したところ、CXCR4阻害薬(AMD3100)によって骨髄への移動が阻害された
      • さらに、NZB/Wマウスに、短期間のボルテゾミブでplasma cellを除去した後に、長期間AMD3100を投与すると、骨髄でのplasma cellの回復と腎病変発症を阻害し、ds-DNA抗体とタンパク尿を低く維持した
    • plasma cellと同様に、CXCR4を発現している他の炎症性細胞(マクロファージ、好中球、T細胞)が炎症部位に移動するのを抑制した
    • 第8因子に対する自己抗体を有する血友病のモデルマウスに対して、AMD3100によるCXCR4阻害とG-CSFの併用治療で、第8因子を阻害する抗体を産生するplasma cellを含むlong-lived plasma cellを低下させた


    Targeting cell-surface molecules
    • CD38が、plasma cellと多発性骨髄腫細胞の表面に多く発現している
      • そして、これは、他のリンパ球系細胞、骨髄系細胞にはあまり発現していない
    • daratumumabというCD38に対するモノクローナル抗体を使用した臨床試験では、治療抵抗性の多発性骨髄腫患者の骨髄に存在するplasma cellを除去し、良好な結果を示した
      • 自己免疫疾患に対するデータは存在していない


    plasma cell除去による有害事象
    • 感染症
      • ボルテゾミブでは、免疫グロブリンは~30%低下した(SLE)
      • アタシセプトでは、IgMとIgAが~50-60%低下し、IgGは30-40%低下した(SLE, RA)
        • アタシセプトに2週間先行して高用量ステロイドとMMFを投与していたSLE腎炎の患者では、アタシセプトを投与して、IgGが300mg/dLまで急激に低下し、肺炎を発症した。こういった患者には、免疫グロブリンの補充やワクチン投与を考慮する必要がある。
      • ワクチンに対する抗体価は、~30%低下したが、その多くはまだ有効な抗体価を維持していた


    Depletion of pathogenic plasma cells 
    • memory plasma cellに対する治療は、ワクチンに対して反応したようなprotectiveなplasma cellも除去するので、病的なplasma cell選択的に除去する治療が望ましい
    • これまで、SLEの病態に関与しているplasma cellを直接標的にする表面蛋白は同定されていないが、それらが産生している抗体によって病的なplasma cellとprotectiveなplasma cellを区別することは可能と考えられる
      • それぞれのplasma cellをそれ自体が標的にしている抗原で覆ってしまえば、plasma cellが産生している抗体がplasma cellの表面に結合して、補体を活性化してplasma cellが除去できるだろう
    • 理論的には、マウスのCD138に対する抗体のF(ab)2 fragmentを、自己抗原で共役させると、plasma cellの表面を覆い、自己抗体を産生しているplasma cell選択的に、補体による細胞溶解 or antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC) を誘導することができる(figure3)
      • in vitroでは、証明できている
      • しかしながら、この手法ではすでに末梢血に循環している自己抗体は除去できないので、血漿交換や免疫吸着を併用する必要があるだろう


    Targeting precursor B cells 
    • NZB/Wマウスでは、B細胞の活性が高く、ボルテゾミブを中断すると、自己反応性memory plasma cellが急速に再構築される
      • これは、活動性SLEにおいても同様に認められ、ボルテゾミブを1サイクル投与した後、末梢血に循環しているplasmablastとds-DNA抗体が再び増加してくる
      • 長期間のボルテゾミブ or proteasome inhibitorは、毒性(末梢神経障害、肺障害、ヘルペスなどの感染症、便秘・下痢、骨髄抑制、局所投与部位の皮下脂肪組織萎縮や皮膚硬結)やコストからしても望ましくない
      • そのため、plasma cellの前駆細胞を阻害することで、自己反応性memory plasma cellの再構築を抑制する必要がある
      • NZB/W マウスでは、短期間のボルテゾミブの後に、B細胞除去治療(CD20に対する抗体製剤、CYC)を行うことで、ds-DNA抗体産生long-lived memory plasma cellの再構築を阻害し、腎炎の発症を遅らせた
        • この結果から、今後、自己免疫に対して新しい治療戦略を開発する際に、まず最初に自己反応性memory plasma cellをボルテゾミブで除去し、その後にRTXやベリムマブによるB細胞標的治療を行うことは有効かもしれない

    2018年1月11日木曜日

    強皮症に対する骨髄破壊的前処置による自家造血幹細胞移植 vs. CYC 500mg/BSA monthly ×12回:the SCOT trial


    (米国国立アレルギー・感染症研究所,米国国立衛生研究所から助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00114530)


    背景
    • dcSScの肺病変による死亡率は、ここ40年で改善していない
    • DMARDsや生物学的製剤においても、長期的な有効性を示すものは報告されていない。
      • CYCを12ヶ月間投与しても、placeboと比較して、短期間のメリットを示すのみだった
    • 強皮症に対する自家造血幹細胞移植の有効性を評価した先行研究では、皮膚硬化の改善と肺機能の安定を示した
      • 骨髄非破壊的前処置による移植に関する2つのランダム化試験も有効性を示したが、安全性の懸念があり、実臨床におけるpracticeを変えることはなかった
    • 今回の試験(Scleroderma: Cyclophosphamide or Transplantation [SCOT] )は、骨髄破壊的前処置の移植のほうがCYCよりも長期の有効性が優れているという仮説のもと、異なるレジメンで行なった
      • 骨髄破壊的前処置+全身放射線照射→CD34陽性血球細胞の自家移植 vs. CYC
      • 観察期間:4.5年程度
      • primary endpoint:54ヶ月時点におけるglobal rank composite score(GCRS)

    方法
    • ランダム化、open-label、phase2 trial
    • USの26施設で実施
    • 観察期間:54ヶ月間(最大72ヶ月間)
    • 自家造血幹細胞移植群
      • leukapheresisを行い、G-CCF投与してCD34陽性細胞を採取した後、冷凍保存
      • 分割全身放射線照射(800cGy)+CYC(120mg/kg)+ウマ由来のATG(90mg/kg)
        • 肺と腎臓は、200cGrまでの曝露となるよう防護した
      • CD34陽性細胞を移植(平均5.6×10^6/kg, IQR 3.8 - 6.0)
      • 移植後に、G-CSF+グルココルチコイド+リシノプリル+予防的抗菌薬(アシクロビルを1年間)


    • CYC群
      • CYC 500mg/BSA monthly ×12回
    • 対象
      • 18-69歳
      • ACR1995分類基準を満たす強皮症で、肺病変(活動性ILD[気管支鏡による細胞分画 or CTにて診断]+FVC or DLco < 70% )もしくは強皮症関連腎病変を有する
      • 罹患期間5年以内
    • 除外
      • 活動性の胃前庭部毛細血管拡張症
      • DLco < 40%
      • FVC < 45%
      • LVEF < 50%
      • Ccr < 40ml/min
      • PAHあり
      • 以前にCYCで6ヶ月間以上の治療歴がある
    • 評価
      • 診察の際に、呼吸機能検査とmRSSを評価
    ※mRS score

    • primary endpoint
      • 54ヶ月時点でのGCRS
    ※Global Rank Composite Score (GRCS) 
    • 多彩な臨床所見を同時に呈する疾患の解析ツール
    • 疾患活動性や重症度を測定するものではなく、outcomeのhierarchyを症例ごとに比較するもの
    • 今回のoutcomeのorderは、SCOT Steering Committeeで上から順に以下のように決定
      • 死亡
      • event-free生存期間=EFS(肺病変の進行なし、腎不全なし、心不全なし)
        • 肺病変の進行
          • DLco 30%以上の低下 
          • FVC 20%以上の低下 
          • 安静時 pO2 < 60mmHg(室内気) 
          • 安静時pCO2 > 50mmHg 
          • 安静時SpO2 < 88%
        • 腎不全
          • 6ヶ月間以上の血液透析
          • 腎移植
        • 心不全
          • 慢性心不全:New York Class 3 or 4
          • UCGでLVEF < 30%
      • FVC
      • HAQ-DI
      • mRS
    • 注意すべきなのは、GCRSにおいては、全ての死亡と、54ヶ月時点でのEFS failureが等しく評価されることである
      • 移植の場合は、移植合併症で短期間の予後は悪くなりがちだが、長期で評価すると異なるため、今回の試験ではGCRSを使用した
    • 上の順序に従い、以下のStepに沿って、それぞれの症例同士で比較し、良い(=1)、同等(=0)、悪い(=ー1)とスコアをつける

    • GRCSの例は以下の通り
      • 6症例で比較すると、subject 1と2はいずれも時期は異なるが死亡しているのでoutcomeはequalであり、1と2を比較するとsubscoreは「0」となる。他のsubject 3-6とそれぞれ比較すると、いずれも1と2のほうがoutcomeが悪いので、−1となる。そのため、合計はsubject 1と2は共に−4となる。


    統計学的解析に関して
    • 当初の予定では、EFSをprimary endpointとしていており、226人を対象に行う予定だったが、その後サンプルがなかなか集まらなかったので、entry criteriaを拡大し、GCRSをprimary endpointとしてサンプルサイズを減らすことができ、十分な検出力(両側検定で93%、α level=0.05)のために必要なサンプルサイズは114人となった
      • 最終的には、the data and safety monitoring boardから、75人の時点で終了する様に推奨された


    結果
    • 2005年7月〜2011年9月に、205人をスクリーニングし、75人が割り付けられた




    • Baseline characteristics(table1)
      • 平均mRSS:30
      • 平均DLco:53%
      • 肺病変あり:93%
        • 比較的、重症な集団が含まれていた
      • 理由は不明だが、CYC群のほうが女性、喫煙歴なし、以前にCYCを使用していた割合が多い



    有効性
    • primary endpoint(54ヵ月の時点でのGRCS)
      • intention-to-treatの集団で1404(36例×39例) の対比較を実施すると、骨髄破壊的前処理による造血幹細胞移植群のほうが良好であった割合は 67%、CYCのほうが良好であった割合は 33%
          • P=0.01
      • per-protocolの集団(移植を受けたか、CYCの投与を 9 回以上受けた症例を対象)で対比較を行うと、移植群で70%、CYC群で 30%
        • P=0.004
    • 54ヵ月の時点でのEFS
      • per-protocolの集団で解析
      • 移植群 79% vs. CYC群 50%
        • P=0.02
    • Kaplan–Meier曲線では、およそ治療後2年時点で2群間が分岐していった
      • per-protocolの集団における、72ヵ月の時点でのEFS
        • 移植群 74% vs. CYC群 47%
          • P=0.03
      • per-protocolの集団における、72ヵ月の時点での全生存率
        • 移植群 86% vs. CYC群 51%
          • P=0.02

    • DMARDを 54 ヵ月の時点までに開始した割合
      • 移植群 9% vs. CYC群 44%
        • P=0.001
    • 移植群では、慢性心不全やPAHの発症なし
      • CYC群では、それぞれ12%, 15%であり、有意差あり(p<0.05)




    • 各臨床項目の改善している割合も、移植群のほうが多い
      • 上がITT集団、下がper-protocol集団


    • baselineにおける違いを修正して解析したpost hoc解析でも、移植群の優越性は変わらなかった
      • 層別化すると、非喫煙者において、移植群群とCYC群の有効性の違いが最も有意だった


    安全性
    • 治療関連死亡率
      • 移植群 3%(54ヶ月時点),6%(72 ヵ月時点)
      • シクロホスファミド群 0%
    • 全ての理由を含む死亡人数は21例
    • 移植群における死亡症例:7例
      • 3例は移植を受けずに死亡
      • 2例はMDSと診断された後に治療関連で死亡(17ヶ月時点、70ヶ月時点)
        • 1年以内に死亡した症例はいなかった
      • 残りの2例はすでにrespiratory failure、renal failure、cardiac failure(EFSで定義されたもの)のeventが起きていた
    • CYC群における死亡症例:14例
      • 3例はIVCY投与回数5回以下
      • 7例はすでにrespiratory failure、renal failure、cardiac failure(EFSで定義されたもの)のeventが起きていた
      • CYCによる死亡と考えられた死亡はいなかった


    • 重度有害事象
      • 移植群 74% vs. CYC群 51%
      • しかしながら、観察期間による違いがあるので、人年で計算すると、移植群のほうが有害事象は少ない傾向だった
        • 移植群 0.38/人年 vs. CYC群 0.52/人年
          • p=0.08
      • 移植群のほうが、早い時期に重度有害事象が起きやすい傾向にあった
    • grade 3以上の有害事象の割合:移植群のほうが多かった
      • 移植群 100% vs. CYC群 85%
      • 移植群 2.0/人年 vs. CYC群 1.2/人年
        • p<0.001



    • 悪性腫瘍
      • 移植群 3例(甲状腺乳頭癌 1例、MDS 2例)
      • CYC群 1例(乳癌)
    • 感染症の発生率:同等
      • 移植群 0.75/人年 vs. CYC群 0.79/人年
      • grade3以上に限定すると、移植群のほうが多い傾向にあった
        • 移植群 0.21/人年 vs. CYC群 0.13/人年
      • 帯状疱疹
        • 移植群 12例(1例は播種性) vs. CYC群 1例
      • 単純ヘルペス、EBV感染症:なし
      • CMV再活性化:移植後に5例


    考察
    • 今回の試験では、重症の強皮症に対して、骨髄破壊的前処置によるCD34陽性自家造血幹細胞移植は、長期の予後では、CYCよりも優れていた
      • 54ヶ月時点でのGCRSをITT解析した結果は、当初の群間の偏りを補正した後も、変わらなかった
      • GCRSのper-protocol解析、頻用されている他のend points(全生存率、EFS、mRSS、DMARDs使用率)で評価しても、移植群のほうが優れていた
    • 今回の結果は、the Autologous Stem Cell Transplantation International Scleroderma (ASTIS) trial の結果を支持するものだった
      • 非喫煙者のほうが良いというデータも同様だった
      • ASTIS trialでは、骨髄"非"破壊的前処置での移植を行い、移植後12-24ヶ月に強皮症が再発(DMARDsが必要だったものと定義)した症例の割合は22%だった
      • 今回のSCOT trialでは、54ヶ月時点でDMARDsを再開したのは、移植群で9%のみだった
    • 有害事象も考慮が必要だが、その発生は移植後早期に限られている
      • 重度有害事象の96%は最初の26ヶ月間に起きている
    • 全感染症の発生率は、同等だった
      • 帯状疱疹は移植群のほうが多かった(12/33=36%で発生)
    • GCRSによる評価はこれまで強皮症の試験では用いられることがなかったが、他の疾患では使用されている
      • 臨床指標というよりも、2群間の個々の症例をヒエラルキーに沿って比較する解析手法であり、多くの臨床所見を同時に評価することができる
      • 今回は、客観的項目(死亡、EFS、FVC)が主観的項目(HAQ-DI、mRSS)よりも重きを置かれた
      • そして、GCRSによる結果は、他の一般的な他のend points(全生存率、EFS、mRSS、DMARDs使用率)によっても支持される結果だった
    • 自己免疫疾患に対する自家造血幹細胞移植による合併症には、治療関連死亡、感染症、悪性腫瘍が含まれる
      • 感染症は最初の1ヶ月間に多く、その後はリスクが低下する
      • 強皮症自体が悪性腫瘍のリスクであるが、化学療法と放射線も悪性腫瘍のリスクを高める。全身放射線治療を受けた場合、その後の人生において二次発癌のリスクが高まってしまうため、慎重なフォローが必要である
    • 今回の試験において、移植関連死亡率は、54ヶ月時点で3%、72ヶ月時点で6%であり、これまでの報告より低いものだった
      • 死亡は最初の1年間では認めなかった
      • ASTIS trialでは、75例の骨髄非破壊的前処置自家造血幹細胞移植で、最初の1年間で10.7%が死亡した
      • この違いは、おそらく試験に組み込まれた患者のdisease characteristicsの違いを反映しているのだろう
        • SCOT trialでは、心病変と肺高血圧を有している症例がおらず、喫煙者の割合も低かった
        • ASTIS trialでは、CYCをmobilization(4g/BSA or 100mg/kg)とtransplantation(200mg/kg)の両者で高用量で使用している
        • 既報では、同等の高用量CYCを移植の際に使用した90例の強皮症患者をretrospectiveに解析すると、6%の治療関連死亡率となり、移植時期に近い5例の死亡例のうち4例は心臓合併症だった
          • すなわち、重症の強皮症患者(特に心病変を有する場合)に対する高用量CYCは、非常に毒性が強いのかもしれない
    • 骨髄非破壊的前処理による移植レジメンと異なり、SCOT trialのレジメンでは、造血幹細胞がreconstitutionする前に、T細胞を最大限除去するように組まれている
      • 全身放射線治療は、分裂&休眠している自己反応性クローン細胞を除去することができ、これによって長期のremissionを達成できるのかもしれない
      • しかしながら、自家移植した後にimmune homeostasisが自己免疫疾患をコントロールする機序は完全にはわかっていない
    • limitation
      • 重症の内臓病変をリクルートしており、皮膚病変のみではないため、全ての強皮症患者に今回の結果が当てはまるわけではないかもしれない
      • GCRSの項目とヒエラルキーは、今回の重症の集団に対して選択されたものなので、他の強皮症患者では異なるかもしれない
      • 移植では盲検ができない
        • 客観的指標を上位にすることでこのlimitationをできるだけカバーした

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