Baker KF, Isaacs JD. Ann Rheum Dis 2018;77:175–187.
<背景>
- CD4陽性T細胞は、innate immunityとadaptive immunityに共通して関与している
- 当初はTh1、Th2が知られていた
- Th1:細胞内の微生物に対して、IFNγなどのサイトカインを産生し、細胞性免疫を活性化する
- Th2:液性免疫を活性化し、IL-4, IL-5, IL-13などを介して寄生虫感染症に反応する
- 当初はTh1が多くの免疫関連炎症性疾患(IMID)を誘導していると考えられていたが、Th1は必ずしも必須ではないことがわかり、その後発見されたのがTh17である
- IL-17は、Th17によって産生され、TNFαやIL-1βとともに、好中球を誘導したり軟骨を阻害して骨びらんを起こすことがわかってきた
- 現在、Th17は、RA, PsA, AS, IBDなど多様な疾患に関与していることが知られており、IL-17を阻害することでTh17分化を抑制する治療が注目されている
<Th17 axis>
IL-17阻害strategy
- IL-17
- A-Fの6種類のhomologous サイトカインで構成される(IL-17A-F)
- IL-17Aが最も豊富に調べられている
- IL-17受容体
- A-Eの5種類のサブユニットを有するhomodimer もしくはheterodimerである(IL-17RA-E)
- それぞれの受容体の種類に関する、親和性、細胞への局在、下流シグナルへの作用の違いは完全にはわかっていない
- 乾癬に対して、TNFα阻害も有効だが、皮膚への有効性はIL-17阻害のほうが明らかである
- IL-17阻害薬
- セクキヌマブ
- IL-17Aに対する完全ヒト化モノクローナル蛋白製剤
- 乾癬、PsA, ASに有効
- RAへの有効性には乏しい
- Ixekizumab
- IL-17Aに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
- PsA, 乾癬に対する有効性はセクキヌマブと同等
- bimekizumab
- IL-17A, IL-17Fのhomologue epitopeに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
- 乾癬とPsAに対するtrialが進行中
- IL-17阻害は、重症となることはないがカンジダ感染症と関連しており、IL-17の真菌感染症に対する関与が示唆されている
- IL-17受容体阻害薬
- ブロダルマブ(ルミセフ®︎)
- IL-17RAに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
- IL-17RAには、IL-17A, IL-17F, IL-17A/F, IL-17C, IL-17E(IL-25)が結合してシグナルを伝達する
- Figure1にあるように、広域にシグナルを阻害する
- IL-17E(IL-25)を阻害すると、マウス・ヒトIBD患者・ヒトRA患者においてTh2を活性化してTh17分化を抑制することが知られている。
- 日本では、乾癬に対して承認されている
- IL-17阻害は、RAと同様に、非感染性炎症性ぶどう膜炎への有効性は限定的である
- すなわち、病変局所におけるサイトカインの発現は、考えられている病態とは異なるということだろう
- さらに、セクキヌマブ、ブロダルマブはクローン病を増悪させることが知られており、IL-17Aは炎症性サイトカインとしての要素以外に、腸管免疫に対してはnegative regulatorとしての役割もあるのだろう
- もしかしたら、IL-17Aは腸内細菌叢や真菌と相互に作用しているのかもしれない
Th17への分化とIL-12 superfamily
- naive CD4陽性T細胞の分化には、IL-12 superfamilyであるIL-12, IL-23, IL-27, IL-35が関与している
- 特にIL-12, IL-23は、Th17分化が関わる病態への治療標的として知られてきた
- ウステキヌマブ
- IL-12とIL23に共通の、p40サブユニットに対する完全ヒト化モノクローナル抗体である
- PsA, クローン病、乾癬に承認されている
- ASに対してもopen-labelで有効性を認めている
- IL-17A阻害薬と異なり、クローン病にも有効であり、中等症以上の乾癬への有効性はセクキヌマブに劣る
- IL-23を介したTh17分化抑制と、IL-17Aそのものを阻害することの違いを反映しているのだろう
- Th17はIL-17以外のサイトカイン(IL-17F, IL-22)も産生し、IL-17AはTh17以外の細胞からも産生される
- p19サブユニット阻害を介して、IL-23を選択的に阻害する治療薬が開発中である
- IL-23選択的に(IL-12/23を共に阻害するのではなく)阻害することで、感染症や悪性腫瘍のリスクを下げることができることが期待されている
- 実際に、乾癬に対するウステキヌマブの市販後調査で、non-melanoma skin cancerとウステキヌマブの関連が示唆されている
- これは、おそらく、IL-12を介した細胞性免疫の阻害が原因と考えられる
head-to-headの結果
- 乾癬に対する有効性
- IL-17A阻害薬(ixekizumab)、IL-23阻害薬(guselkumab)> TNFα阻害薬(それぞれETN, ADA)
- IL-17A阻害薬(セクキヌマブ)、IL-17受容体阻害薬(ブロダルマブ)、IL-23p19阻害薬(risankizumab)> IL-12/23p40阻害薬(ustekinumab )
<type1 IFN axis>
- IFNは、免疫を活性化するサイトカインであり、大きくは以下の3つに分類される
- type1
- IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκ、IFNω
- type2
- IFNγ
- type3
- IFNλ
- type1の中では、IFNαが最も調べられている
- 通常の場合にはtype1 IFNの産生は検出感度以下にコントロールされているが、ウイルス感染症などの際には急速に産生が亢進する
- 主にはplasmacytoid DC(pDC)から産生される。
- pDCには、TLR7やTLR9などの細胞内パターン認識受容体が豊富に存在している
- type1 IFNが受容体に結合すると、IFN-stimulated genes(ISGs)の発現が増加する。
- 作用は多様で、樹状細胞の活性化、Th1増加、Th17増加、Treg減少、B細胞活性化され抗体が産生される
- SLE, SjS, SSc, 一部のRAでISGsが増加している
- SLEでは、内因性のDNA複合体がpDCsのTLR7/9に結合し、type1 IFNを産生することが病態として考えられている
- 開発中のtype1 IFN経路への阻害薬は下の表の通り
- sifalimumab
- SLEでは、高用量ではplaceboと比較して有効だった
- IFNαはウイルス感染への防御に関しており、帯状疱疹はdose-dependentに増加した
- 筋炎では、13種類のIFN signature geneを抑制し、臨床所見の改善と筋力改善を認めた
- rontalizumab
- SLEに対してはprimary endpointを満たせず失敗に終わったが、IFNが少ない患者群の方が多い患者群より有効である傾向を認め、ウイルス感染症が増えなかったため、試験デザインが問題であった可能性もある
- IFNαに対する抗体を誘導する、ワクチンタイプの治療も開発中である
- IFN-α kinoidを投与することで、IFNαに対する中和抗体を自己で産生させる
- type1 IFN受容体への阻害薬
- anifrolumab
- type1 IFN経路の上流への阻害薬
- BIIB059
- 樹状細胞表面に存在する受容体であるBDAC-2に対するモノクローナル抗体
- talacotuzumab
- CD123に対する細胞障害性モノクローナル抗体
- CD123はpDCsに多く発現している
type2 IFN阻害
- type1 IFNが主要なIFN gene signature の誘導因子であるが、type2, 3も同様にこれらを誘導する
- IFNγシグナルは、type1 IFNとは異なる受容体に結合するが、figure2のように、下流シグナルはいくつかoverlapしている
- JAK阻害薬はIFNシグナルの阻害薬として期待されている
<cell adhesionに対する治療>
インテグリンに対する阻害
- 接着分子は、循環している免疫細胞を誘導してくるための細胞間相互作用に必要である
- インテグリンファミリーは、白血球・内皮細胞・粘膜上皮細胞に存在し、細胞外マトリックスや特異的な受容体と結合する
- 白血球に発現している接着分子は、6種類である
- LFA-1 (αLβ2)
- immunological synapseを形成する
- Mac-1 (αMβ2)
- αxβ2
- αdβ2
- α4β7
- 腸管内皮細胞表面に存在するMAdCAM-1と結合することで、腸管特異的リンパ球を引き寄せる
- αEβ7
- 腸管上皮細胞のE-cadherinと結合し、粘膜における白血球の保持に重要
- Natalizumab
- 自己免疫疾患に対して使用された最初のインテグリン阻害薬
- α4インテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
- 非選択的に、リンパ球の遊走を、脳血液関門(α4β1インテグリン)と腸管(α4β7インテグリン)において阻害する
- 多発性硬化症とクローン病に対して有効
- 市販後調査でPMLが発生
- efalizumab
- LFA-1のαLインテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
- 乾癬に有効だが、PML発生により市場から消えた
- lifitegrast
- LFA-1阻害薬
- 乾性結膜炎に対して、眼に局所的に使用することで最近承認された
- carotegrast methyl、firategrast
- ともにα4インテグリン阻害薬
- それぞれ潰瘍性大腸炎、多発性硬化症に対して承認された
- 感染症に対するリスクを抑えるために、下の表に示す通り、より選択的なインテグリン阻害薬が開発されている
<JAK阻害薬>
→JAK阻害薬:review
<特異的な細胞への標的治療>
B細胞標的治療
- RTXから始まり、下の表にあげたものが開発されてきている
- ocrelizumab
- ヒト化抗CD20モノクローナル抗体
- 多発性硬化症に対して有効
- RTXは再発寛解を繰り返している場合にのみ有効性が示されているが、ocrelizumabは初回進行性の多発性硬化症でも有効性が示されているが、その違いの原因はわかっていない
- RA, SLEに対しても試されたが、有害事象により中止となっている
- obinutuzumab
- CD20に対するモノクローナル抗体
- 糖鎖工学に基づき、細胞障害性が改良された
- 造血器悪性腫瘍に対して市場で使用されており、SLEに対してはphase2が進行中
- B細胞depletionのみではなく、B細胞の成熟・生存を阻害するアプローチも進んでいる
- BAFF, APRILは、それぞれB細胞成熟、形質細胞生存・クラススイッチに関して重要な分子である
- ベリムマブ
- SLEに対して承認されているが、関節・皮膚病変以外の有効性のデータは限られている
- tabalumab(可溶性・膜結合型BAFFに対する抗体)、blisibimod(BAFFに対するpeptibody)
- SLEに対するphase3臨床試験での有効性は不十分だった
- BAFFとAPRILはtransmembrane activator and calcium-modulator and cyclo- philin ligand interactor (TACI) に結合する
- TACI:IgG-Fc fusion peptideで、BAFFとAPRILの両者を阻害するataciceptは、感染症のリスクを高める懸念がある
- RAに対しては、RTXは有効であるものの、BAFF/APRIL阻害の有効性は限定的だった
- おそらくこの違いの原因は、BregがAPRILを介してIL-10を産生するといった、B細胞のmodulator effectsが関係しているかもしれない
Treg標的治療
- Tregを刺激することも考えられている
- 低用量recombinant IL-2の投与など
- 高用量で投与するとeffector T細胞が刺激され、これはメラノーマなどで治療として用いられている
- 低用量で投与すると、Tregが有意に増加する
- 実際に、C型肝炎関連血管炎、GVHD、SLE、1型糖尿病、円形脱毛症に対してearly phaseの試験で有効性が確認されている
- TGN-1412
- 共刺激分子であるCD28に対するsuper-agonist モノクローナル抗体である
- phase1では健常人に致死的なサイトカインストームを起こした
- これは、CD28を介して組織に局在するmemory T細胞を活性化したことが原因と考えられている
- ちなみに、カニクイザルのmemory T細胞にはCD28が存在しないため、preclinical 試験ではサイトカインストームは起きなかった
- tregalizumab
- CD4に対するモノクローナル抗体
- preclinical試験では、他のCD4モノクローナル抗体と異なり、遠位にあるepitopeに結合してTreg特異的に活性化した
- しかしながら、RAに対するphase2b試験ではplaceboと比較してACR20の有意な改善を示すことはできず、開発は中止された
- 最近では、Treg epitopes (Tregitopes) が注目を集めている
- Tregを特異的に活性化する
- IgG分子内に存在する保存されたアミノ酸配列で、MHCⅡ allele に対して提示され、Tregを特異的に活性化する
- IVIgがTregを増加させる機序としても考えられている
0 件のコメント:
コメントを投稿