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2017年9月28日木曜日

帯状疱疹の総論:A & Rのeditorialより

ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY Vol. 69, No. 10, October 2017, pp 1917–1920

まず初めに
  • 帯状疱疹は、VZV再活性化によって皮疹と神経痛が生じる
  • アメリカでは、成人の1/3が一度は罹患する
  • 痛みを伴う皮疹に加えて、20%は帯状疱疹後神経痛を発症し、それにかかるコストやQOL低下は無視できない
  • 帯状疱疹の発生率は増加しているものの、CDCの報告では、60歳以上のうち28%しかワクチン接種を受けていない
  • 自己免疫疾患を患っている人は帯状疱疹発症リスクは高く、それに対する治療によってさらに高くなる
  • どういった人がリスクとなるのか、リスクが高い人にどのようにワクチンを接種するのか、他のリスクを低下させる方法はないのかといったことが重要である


The solution 

  • 帯状疱疹生ワクチンは、60歳以上の38546人を対象とした試験の結果を受けて、2006年にFDAに承認された(N Engl J Med 2005;352:2271–84. )

    • 3年ほどの観察期間にて、帯状疱疹発症率は、生ワクチンを接種した人は1.66%、プラセボ群は3.42%であり、51%リスクを低下させた。また、帯状疱疹後神経痛の発症は、2/3減少した。
    • その効果は加齢とともに低下し、60-69歳では64%リスクが低下するも、80歳以上ではリスク低下は18%のみだった
    • 有害事象は少なく、帯状疱疹様皮疹が生ワクチン接種群で1.6%、プラセボ群で1.1%だった
    • 播種性帯状疱疹は、生ワクチン接種群で0.026%、プラセボ群で0.056%だった
    • 眼領域の帯状疱疹は、生ワクチン接種群で0.18%、プラセボ群で0.36%だった
  • 帯状疱疹の抗体のスクリーニングは、60歳以上の高齢者ではほぼ全員水痘に対する免疫があり、帯状疱疹に以前に罹患していても再度かかることがあるため、ワクチン接種の前にスクリーニングは不要である
  • 帯状疱疹ワクチンの効果は4年以上あるが、徐々にその後は有効性は低下し、5年以降は効果があるか定かではない
    • 50−59歳の人に帯状疱疹ワクチン接種が推奨されないのはこれも1つの理由である
  • また、帯状疱疹に罹患してすぐの人にはワクチン接種は不要である


What is at risk?
  • 大半の帯状疱疹は、VZV再活性化によって生じる
  • 帯状疱疹ワクチンを接種すべき人は下記の通り
    • 60歳以上
      • 60歳以上の変形性関節症の人の帯状疱疹発症率:0.6-1.0/100人年
    • 慢性疾患を有する人(CKD、糖尿病、RA、慢性肺疾患など)
    • 以前に帯状疱疹にかかったことがある人
    • 長期間のステロイド治療中の人
      • 用量依存性に帯状疱疹リスクが増加する
    • 生物学的製剤を使用している人
      • 生物学的製剤使用している人の帯状疱疹発症率:0.78-1.6/100人年
    • JAK阻害薬を使用している人
      • Tofa使用している人の帯状疱疹率:〜4.5/100人年
        • これは普通のRAの人と比較すると3-7倍高い
        • JAK阻害薬使用中の人は、年齢関係なく帯状疱疹ワクチン接種が推奨される

Who is at greatest risk?
  • 生物学的製剤使用中の人に生ワクチンを接種しないことは、エビデンスに乗っ取っているわけではない
  • しかしながら、移植患者や化学療法を受けた子供の様な非常に免疫力の低い患者において播種性帯状疱疹が発症するという報告から、理論上リスクがあるということで、ガイドラインでは推奨していない
  • Zhangらは、生物学的製剤を使用しているRA患者で、偶然、帯状疱疹ワクチンを接種した633人について調査し、42日間の観察期間で帯状疱疹を発症した人はいなかったと報告した(Arthritis Res Ther 2011;13:R174. )

    • この報告によれば、たいていの成人はワクチン接種のリスクは低い
    • しかし、VZVの免疫がもともとなく、ワクチンによって初めてVZVの抗体を得るという場合には、特に若年免疫不全患者においてリスクが高い

When to give zoster vaccination?
  • リスクと年齢に応じて、ワクチンを接種すべきである
  • ほとんどのガイドラインでは、MTX、他のDMARDs、ステロイド(PSL20mg/day相当)使用中でも帯状疱疹生ワクチン接種してもよいとされている
  • 最も問題なのは、生物学的製剤を使用する予定の場合である
  • ワクチン接種は、なるべく早期に実施する方が望ましい
    • 特に、50歳以上で、生物学的製剤を開始前に接種する方がよいだろう

Timing of zoster vaccination 

  • 生物学的製剤使用開始は、ワクチン接種後2−4週間が望ましい
  • The Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) では、生物学的製剤で治療中の患者は、生物学的製剤を中止して最低4週間あけて生ワクチンを接種し、生物学的製剤再開は生ワクチン接種後2-4週間あけるよう推奨している
  • Winthropらは、Tofa使用中の112人の患者における、帯状疱疹生ワクチン接種のタイミングと安全性について調べた



Future vaccine options. 

  • 実臨床では、生物学的製剤やJAK阻害薬の開始について、帯状疱疹生ワクチンの接種直後 or 2−4週間待つか、選択肢がある
  • 幸いなことに、帯状疱疹の不活化ワクチンが近々市場に出るので、その場合には同時に打てるだろう
    • inactive recombinant VZV glycoprotein adjuvant-basedワクチンであり、2ヶ月間隔で2回、筋注する
    • In the Zoster Efficacy Study in Adults 50 Years of Age or Older (ZOE-50) and the Zoster Efficacy Study in Adults 70 Years of Age or Older (ZOE- 70) trials では、4年間経過したのちも、70歳以上の人に対して90%発症リスクを低下させ、50歳以上の人には発症リスクを98%低下させた。帯状疱疹後神経痛に関しては、70歳以下の人では発生せず、70歳以上の人にも発症リスクを89%低下させた。
    • デメリットとしては、2回筋注しなくてはならず、80%の頻度で接種部位の筋痛が生じた


Formal guidance for prevention of HZ. 

  • ACIPガイドラインでの帯状疱疹生ワクチン接種の推奨対象
    • 60歳以上
      • 50-59歳は発症率が低く、若年者に対する長期のデータがないため推奨せず
  • Xeljanz product label より

    • Tofa使用中には生ワクチンは接種しないように
  • Zostavax product labelより
    • 免疫抑制剤使用中は接種しないように 
    • 活動性のある未治療結核患者には接種しないように
    • 免疫抑制治療中もしくは免疫不全患者に接種すると、播種性帯状疱疹が発症する可能性がある

Zoster vaccination uncertainties. 

  • 以下のことはまだわかっていない
    • 帯状疱疹に罹患した場合、どのタイミングでワクチン接種すれば再発を防げるか?
    • 一度帯状疱疹に罹患すると、アメリカのリウマチ専門医の90%は生物学的製剤もしくはJAK阻害薬を中止するが、これは正しいのか?再開する場合、どのタイミングで再開するのがよいのか?
    • ACIPガイドラインでは、高齢の健常人に対してのみ推奨が記載されており、自己免疫疾患などの高リスク患者に対しては記載していない
    • 今後、市場に出回るだろう新しい不活化帯状疱疹ワクチンのメリット、デメリット

2017年9月21日木曜日

23価肺炎球菌ワクチンに対するbelimumabの影響

 2017 Jan 1:961203317703495.

本文中の図やグラフは元論文より引用しております。


背景

  • EULARの推奨では、リウマチ系疾患でも通常と同様に、23価の肺炎球菌ワクチンは強く推奨されている
  • Belimumabは、ヒト化IgG1λmonoclonal抗体で、BLyS(soluble B-lymphocyte stimulator)蛋白に結合し阻害する
    • CD19(+), CD20(+), naive, activated B細胞、形質細胞を減らす。また、一過性にmemory B細胞が増加するが52週には正常範囲まで戻る
    • 理論的には、B細胞の成熟と生存を阻害し、ワクチンに対する効果に影響を与える
    • SLEに対するbelimumabの大規模phase3ランダム化試験では、サブグループ解析で、23価肺炎球菌ワクチンの有効性には影響を与えないという結果であり、belimumabはlong-lived 形質細胞とmemory B細胞には影響しないことが示唆された
    • 13価肺炎球菌ワクチンに関しても、DMARDsやPSLを使用しているSLE患者にbelimumabを投与しても免疫反応に差はなかったと報告している
  • 今回は、SLE患者において、belimumabが肺炎球菌ワクチンの免疫反応に影響を与えるか評価した

方法
  • phase4, open-label, ランダム化試験
  • アメリカの13施設で実施
  • 期間:2012/5−2015/11
  • 23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®︎、サノフィ)接種時期を以下の通り割付
    • 7:9=belimumab投与する4週間前に接種する群(pre-belimumab群):belimumab投与開始してから24週時点で接種する群(belimumab-concurrent群)
    • 脱落率の違いを考慮して上記の比率で割付た
  • belimumab用量:計9回投与
    • pre-belimumab群
      • 10mg/kg IV @week 4, 6, 8 → 4週毎に投与
    • belimumab-concurrent群
      • 10mg/kg IV @day 0, week 2, 4 → 4週毎に投与
  • 対象
    • 18歳以上
    • ACR分類基準をみたすSLE
  • 除外
    • belimumabの投与歴あり
    • 1年以内に生物学的製剤使用あり(TNF阻害剤、IL-1受容体阻害薬、血漿交換、PSL相当 ≧ 100mg/day、IVCYは90日以上経過していればOK)
  • primary outcome
    • 接種4週間後の時点で、23価のうち、1つ以上の株で接種前より2倍以上抗体価の上昇があった割合
      • 接種前に検出感度以下の抗体価だった場合は、接種後に ≧ 0.6 μg/mLとなった場合とする(使用したアッセイでは検出感度下限が 0.3μg/mLだったため)
  • ITT解析
    • 1回でもbelimumab and/or ワクチン接種を受けたら解析対象


結果
  • 79人が以下のように割り付けられた(figure1)
  • 脱落率:12.7%(10/79)
    • 3人は患者希望、3人は副作用、2人はlost、2人は他の理由
  • 計9回のbelimumab投与を完遂した人数
    • pre-belimumab群:27人
    • belimumab-concurrent群:35人





    • baseline(table1)
      • 女性:91.1%
      • 平均年齢:39.6歳
      • 白人:65.8%
      • なんらかの併用治療を受けていた割合:45.6%



    • primary outcome(figure2)
      • 接種4週間後の時点で、23価のうち、1つ以上の株で接種前より2倍以上抗体価の上昇があった割合
        • pre-belimumab群:97.0%(32/33)
          • 抗体がつかなかった症例は、baselineから血清IgG値が正常範囲より低く(539mg/dL)、観察期間中に増加しなかった
        • belimumab-concurrent群:97.6%(40/41)
          • 抗体がつかなかった症例は、baselineから観察期間中破血清IgG値は正常範囲を維持していた(813mg/dL→789mg/dL)
    • 85%以上は、23価のうち、10価以上の株に対して抗体価の上昇を認めた
    • 抗体価が上昇する株の数が70%(≒16/23株)以上だった割合は、belimumab-concurrent群でやや減少する
      • pre-belimumab群:75.8%(25/33) 
      • belimumab-concurrent群:63.4%(26/41)





    • 抗体価がつかなかった症例は、それぞれ1例とも(計2例)、抗マラリア薬と免疫抑制剤を併用しており、PSL > 7.5mgだった
    • pre-belimumab群において、12種類以上の株に対して抗体を得た人たちは、PSL用量が ≦ 7.5mgの割合がそうでない人たちより多かった
      • 90.9% [10/11] vs 77.3% [17/22]





    • 安全性
      • 1つ以上の有害事象があった割合
        • pre-belimumab群:91.7%(31/34)
        • belimumab-concurrent群:86.7%(39/45)
      • 最も頻度の多かった有害事象は関節痛、嘔気
      • 解析者によって、治療関連有害事象と判断された割合
        • pre-belimumab群:23.5%(8/34)
        • belimumab-concurrent群:8.9%(4/45)





    まとめ
    • belimumabを投与するタイミングによって、1つ以上の血清型で抗体を得られる割合は変わらなかった
    • 専門家の意見では、5歳以上であれば、70%以上の株で抗体が上昇すれば正常の反応とされている(2-5歳では50%)
      • 今回の研究でも、多くの症例において50-70%の種類の株で抗体価の増加を認め、それはbelimumabの投与するタイミングで変わらなかった
    • 既報では、RA患者において、RTXとMTX併用している群ではMTX単独よりも肺炎球菌ワクチンの反応が悪かったと報告されている
      • Arthritis Rheum 2010; 62: 64–74. 
    • SLEの既報では、免疫抑制剤によって反応性が低下したが、抗マラリア薬によってそれが緩和されたと報告されている
      • Rheumatology 2012; 51: 1061–1069. 
    • limitation
      • placeboなし
      • サンプルサイズ小さい
      • 免疫抑制剤を併用している患者の割合が半数以下なので、実臨床でbelimumabを追加した場合はまた異なるかもしれない


    belimumabでは肺炎球菌ワクチンの効果はあまり変わらなかったとのこと。
    そのぶん、SLEに対する有効性も低いのでしょうか。。。

    2017年9月20日水曜日

    Tofacitinibと生ワクチン(帯状疱疹)のタイミング


    ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
    Vol. 00, No. 00, Month 2017, pp 00–00


    本文中の図やグラフは元論文より引用しております。


    背景

    • 帯状疱疹は高齢者や免疫が低下した人が罹患しやすい
    • RA患者は、健常人と比較して、帯状疱疹のリスクが1.5 - 2倍といわれている
      • DMARDsはこのリスクをさらに増加させる
    • Tofacitinib(ゼルヤンツ®︎)はJAK阻害薬であり、RAにおける有効性や安全性はphase2, 3, extension studiesで示されてきた
      • Tofaは、特にMTXやステロイド併用下で、帯状疱疹のリスクを上げることが報告されている
    • 帯状疱疹の予防として、 ACR, EULAR, ACIPはワクチン接種を推奨している
      • 生ワクチンなので、理論的には免疫不全者においては播種性感染症を起こしうるといわれており、生物学的製剤やTofaの投与はワクチン接種後2-4週間空けることべきといわれている
    • しかしながら、ガイドラインによって接種のタイミングは異なる
      • ACRでは、50歳以上のRA患者は、生物学的製剤やTofaを開始する2週間以上前に帯状疱疹ワクチンを接種するよう推奨している
      • 2011EULARでは、一般的には免疫不全者には帯状疱疹は避けるが、帯状疱疹抗体が低い場合は免疫抑制剤を一時中止してワクチンを投与することも必要だとしている
      • ACIPでは、RAなどのような慢性疾患の患者も含め、60歳以上には帯状疱疹ワクチンを投与すべきとしている
    • 既報では、帯状疱疹ワクチンによって、60歳以上であれば4.9年間で帯状疱疹を51%減らし、50-59歳であれば1.3年間に70%減らしたと報告している
      • MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2014;63:729–31. 

    • 今回は、RA患者において、Tofa開始前に帯状疱疹ワクチンを投与し、免疫原生と安全性を調べた

    方法
    • phase2, ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
    • アメリカの27施設で実施
    • 期間:2014/6-2015/7
    • MTX維持量で投与されているRA患者を対象
    • ワクチン接種2-3週間後に、以下の通り割付
      • 1:1=tofacitinib 5mg 1日2回:placebo
    • 対象
      • 50歳以上
      • 2010 ACR/EULAR RA分類基準 score ≧ 6
      • 4つ以上の圧痛・腫脹関節あり
      • CRP ≧ 0.3mg/dL or CDAI > 10
      • MTX 15-25mg/wにて4週間以上用量変更なし
      • ステロイド使用している場合には用量 ≦10mg/day
    • exclusion criteria
      • 6週間以内に重症感染症かかっている
      • 2週間以内の治療介入を要する感染症
      • 活動性のB/C型肝炎
      • 未治療のLTBI
      • 悪性腫瘍の既往あり
      • 再発性(>1回)の帯状疱疹 or 播種性帯状疱疹の既往あり
      • 以前に帯状疱疹ワクチンを接種したことがある
      • 6週間以内になんらかのワクチンを接種している
    • primary outcome
      • 接種後6週間時点での、帯状疱疹の抗体変化比

    結果
    • baseline characteristics
      • 112人を割付
        • 16人は介入に関連しない有害事象(2人Tofa群、7人placebo群)、介入に関連する有害事象(2人Tofa群、2人placebo群)、臨床的効果不十分(1人Tofa群、2人placebo群)で脱落


    • primary outcome(table2)
      • 接種6週間後(Tofa開始4週間後)の抗体変化比は同等
        • Tofa群:placebo群=2.11 (80% CI 1.87–2.37) vs. 1.74 (80% CI 1.55–1.95) 
    • 抗体変化比はday1, week4, week12のいずれの時点でも同等(Tofa群のほうが高い傾向にあるが、統計学的有意差なし)(figure1A)
    • 接種6週間後に帯状疱疹IgG抗体が1.5倍以上増加した割合も同等(figure1B)




    • 帯状疱疹ウイルス特異的IFNγ産生T細胞の反応性も同等(figure2)




    • 安全性
      • ワクチン関連有害事象は、接種部位局所反応を含めてTofa群で7例、placebo群で5例発生した
        • 重度有害事象はTofa群のみで発生し、3例(5.5%)あった
          • 1例は胆管炎、1例は気管支炎
          • 1例は播種性水痘(接種後16日後、Tofa開始2日後に出現)が出現した。Tofaを中止し、抗ウイルス薬で7日間治療し、皮疹は改善した。治療後は、介入前と同様の治療(MTX15mg/w+PSL4mg/day)で継続した。この症例は、もともと帯状疱疹ウイルスに対する抗体を保有していなかった。ワクチン接種2週間後も全く免疫反応を示していなかったが、播種性感染後に抗体が陽性化した(table4)。このことより、この症例は初回の播種性感染だったと言える。


    まとめ
    • 活動性RA患者でも同等に、帯状疱疹ワクチンによって有効な抗体を得ることができ、Tofa投与によってそれに関してはnegativeな影響を与えなかった
    • 基本的にはRA患者にも安全に接種できるが、播種性感染を起こした例を考慮すると、今回のようなシチュエーションではもともと抗体を保有しているか確認したほうが良さそう
    • 既報では、ワクチン接種後数週間はウイルスが体内を循環しており、一部の患者ではワクチン接種後4週間でもまだ唾液にウイルスがいることが報告されている
      • J Infect Dis 2011;203: 1542–5. 
      • それを考慮すると、今回の播種性感染の例も考慮し、現状ではガイドラインでは免疫抑制剤開始はワクチン接種後2−4週間空けるよう推奨されているが、4週間空けるほうが良いかもしれない
    • 既報では、RA患者はワクチンに対する免疫原生が弱いと報告されており、それはPSLやDMARDsだけでなく疾患活動性が高いことも影響している可能性がある
    • 現時点では、帯状疱疹ワクチンは、PSL > 20mg/day or MTX > 25mg/wの場合は禁忌であるが、これはあくまでもexpert opinionであり、エビデンスに乏しい
      • 今回の研究では、通常量のMTX or PSLであれば、安全性だけでなく免疫原生も同等であることが示唆された


    現在の帯状疱疹ワクチンは生ワクチンです。
    免疫抑制剤開始は、生ワクチンを接種した場合には、上記試験における播種性感染の例も考慮すると、4週間は空けたほうが良さそうです。

    2017年9月1日金曜日

    MTXやめといたほうがインフルエンザワクチンの効きがよくなるか?

    Park JK, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1559–1565

    背景
    • RA患者はインフルエンザ含め予防できる疾患のワクチンをガイドラインでも推奨されている
      • (AnnRheum Dis 2011;70:414–22.)
      • (Arthritis Rheum 2008;59:762–84.)
    • DMARDs使用中にワクチンを接種した場合の反応に関して、健常人と比較して、同等であるという報告と多少効果が下がるという報告がそれぞれ複数報告されている
    • その中でも、MTXが有意に肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンに対する効果を低くすることを示した報告も複数ある
      • Ann Rheum Dis2016;75:687–95.
      • Rheumatology 2007;46:608–11.
      • Arthritis Res Ther 2014;16:r2.
      • Ann Rheum Dis 2011;70:2144–7.
    • これらより、MTX治療開始前にワクチンを接種しておくことが望ましい。
    • しかし、実臨床では、ワクチンが必要なときに既にMTXを使用していることも多い
    • こういった問題に対する解決策が必要であり、本研究はこのClinical questionに基づいたものである。今回の研究では、すでにMTXで治療している患者に対して、継続群と中止群に分けて介入することで、ワクチンに対する反応性を調べた。

    方法
    • 前向き、単施設、単盲検、ランダム化介入比較試験
    • 以下のようにランダム化
      • Group 1:MTX継続
      • Group 2:MTXをワクチン接種前4週間に中止
      • Group 3:MTXをワクチン接種前2週間〜ワクチン接種後2週間後まで中止
      • Group 4:MTXをワクチン接種〜接種後4週間まで中止
    • コンピュータによって、これらのGroupに1:1:1:1の比率でランダム化
    • 分析者はこれらの情報を盲検化された


    • Week 0(接種4週間前)に初診、week4に採血(接種前抗体価を確認)・接種、week8に採血(接種後抗体価を確認)、week20に疾患活動性(DAS28)を評価
    • DMARDsの変更・追加はweek8まで禁止
    • 併存症に対する薬剤は継続
    • MTX中止してRAが再燃(ΔDAS28 > 1.2、しかしDAS28 baseline ≧ 3.2の場合は ΔDAS28 > 0.6)した際は、アセトアミノフェン650mg 1日3回まで or NSAIDs通常量 or PSL 10mg/日まで使用可能とした

    Stastical Analysis
    • 最初の解析はワクチン接種をおこない、接種前後の抗体価の情報を得られたものを対象とした(ITT解析でははなく、week8より前に脱落した場合には解析対象とはなっていない)
      • The primary analysis population (per-protocol population) included all study subjects who underwent the vaccination, discontinued or continued MTX according to the allocated regimen, and whose prevaccination and postvaccination titres were available.
    • Sample sizeの見積もり:これまでの既報(Ann Rheum Dis2016;75:687–95.)では、MTXで治療しているRA患者 / MTXを使用していないRA患者において、ワクチンによって十分な抗体を保有する確率は61.8%/76.7%と報告されている。αレベル0.05, 検出力は0.90、ドロップアウトは10%と設定し、146人がそれぞれのGroupに必要と計算されたため、計584人が必要であった
    • 連続変数はt検定 or Mann-Whitney U testを使用、Secondary outcomeの2つはχ2乗検定 or Fisher’s検定を使用 

    Intervention
    • インフルエンザワクチン:GC Flu, Green Cross, South Korea
    • 上記のワクチンは、15 µg of A/California/72009 Reassortant virus NYMC X-181 (H1N1), 15 µg of A/Switzerland/9715293/2013 Reassortant virus NIB-88 (H3N2) 、15 µg of B/Phuket/3073/2013 (B-Yamagata)抗原を含んでいる。
    • 0.5mLのプレフィルドシリンジの製剤
    • 三角筋に筋注

    Outcome
    • Primary Outcome:接種前後でのΔhaemaglutination inhibition(=HI)抗体価 titers ≧ 4倍 の割合
    • Secondary Outcome
      • それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前後でのhaemaglutination inhibition=HI抗体価titer上昇率
      • それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)のなかで、接種後に抗体を保有した人(HI titers ≧ 1:40)の割合


    Inclusion Criteria
    • 18歳以上
    • 組み入れられる6週間以上から、MTXの用量を変更していない
    • ACR1987のRA分類基準を満たす

    Exclusuion Criteria
    • 妊婦もしくは授乳婦
    • 卵もしくはワクチンに対するアレルギー歴がある
    • ワクチン接種時に38度以上の発熱と感染兆候がある
    • ギランバレー症候群もしくは脱髄性疾患の既往がある
    • 組み入れ時期より4週間以内に生ワクチン接種もしくは2週間以内に不活化ワクチンの接種している
    • 治療変更の必要性がある高い疾患活動性がある
    • シェーグレン症候群以外のリウマチ膠原病疾患を併発している


    Results
    • 2015年9月〜2015年11月
    • 目標数である584人には組み入れ期間が3ヶ月と短い(インフルエンザワクチン接種を12月より前に行うべきという医学的判断のため)ため届かず、組み入れ人数は277人であった


    • baselineはtable1の通りで、DAS28, CRP, 組み入れ時の治療内容に有意差はなかった
    • MTXは平均13mg前後、バイオは10-20%
    • 接種前のH1N1, H3N2, B抗原に対するHI抗体価もそれぞれのグループで有意差なし(Supplementary Table 1)

    Primary Outcome(接種前後でのΔhaemaglutination inhibition(=HI)抗体価 titers ≧ 4倍 の割合)
    • 下グラフA-C:3つのインフルエンザ抗原(H1N1, H3N2, B抗原)うち、A=少なくとも1種類のインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価  titers ≧ 4倍 の割合、B=2種類以上のインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価  titers ≧ 4倍 の割合、C=3種類全てのインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価  titers ≧ 4倍 の割合
    • A:有意差なし。
    • しかしながら、CではGroup 3(MTXをワクチン接種前2週間〜ワクチン接種後2週間後まで中止)がGroup1(MTX継続)に対して有意差をもってHI抗体価がより増加した 
    • B抗原に限っていえば、Group3, 4はGroup1に対して有意に良好なワクチンに対する反応性を示した(Supplementary Table 2)
      • group 3 vs group 1: difference, 20.3%; 95% CI, 1.0% to 39.6%; p=0.040
      • group 4 vs group 1: difference, 22.6%; 95% CI, 3.6% to 41.7%; p=0.0197


    Secondary Outcome
    • A:それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前後でのhaemaglutination inhibition=HI抗体価titer上昇率
    • B:それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)のなかで、接種後に抗体を保有した人(HI titers ≧ 1:40)の割合

    • A:Group3, 4は、Group1に対して、H3N2抗原とB抗原に関して、有意にHI抗体価上昇率が大きかった
      • しかしH3N2抗原に関してはいずれのGroupも接種前にすでに抗体保有率が高く、Group1でも接種前にH3N2抗原を保有していない人も全員ΔHI抗体価  titers ≧ 4倍 となっている
    • B:上記の違いは、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)場合にはより顕著であり、Group3に関しては3種類の抗原全てでGroup1より有意に上昇していた



    • ワクチンによる重度の副作用はなし
    • 全体において29.1%のRA再燃をがあり、Group2, 3でより多かったが、統計学的には有意とはいえなかった。
      • groups 2 (n=15; 34.1%) and 3 (n=19; 38.8%), while groups 1 and 4 had lower flare rates (n=13; 24.1% and n=11; 21.2%, respectively.  (p=0.224)
    • 再燃した症例では、Group4の1例を除き、MTXを再開することで再びコントロール可能であった

    Discussion
    • 今回の研究によって、MTX中止期間の中間時点にてインフルエンザワクチンを接種することで、より効果的に抗体価上昇が期待できることを示した
    • また、維持量であれば、4週間の中止期間が適正であることも示唆された
    • さらに、中止するタイミングも重要であることがわかった
    • 接種後4週間でほぼ同等の抗体保有率を示したことは、MTXに関しては、臨床的に効果を示すよりも、免疫細胞に対する効果がより早いことを示唆されている
    • 抗原の種類によっても違いがある(免疫原性が大きい順にH3N2 > H1N1 > B-Yamagata)
    • 事前に抗体を保有していない場合にはMTX中止による効果がより大きかったため、新型インフルエンザのパンデミックの際に応用できるかもしれない
    • limitation:1つは、単施設研究であり当初の予定の症例数を得られなかったため、少なくとも2種類の抗原に対するワクチンの反応性の違いに関する検出力が0.46、3種類全ての抗原に対しては0.52となってしまった。2つ目は、韓国の低疾患活動性で安定したRA患者と対象が限られていること。3つ目は、抗体価の上昇と実際の予防率がどのくらい相関があるのかが不明なので、MTX中断のリスクとフレアのリスクの兼ね合いが難しい

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