n engl j med 377;16 nejm.org October 19, 2017
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。
背景
- 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬患者のうち、6 - 42% で生じ、末梢性関節炎、腱、靱帯、体軸を病変とする
- ガイドラインでは、MTXを含むcsDMARDsが第一選択で、それらが不応の場合にはTNF阻害剤、IL-12/23阻害剤、IL-17阻害剤などのbDMARDsもしくはapremilast が推奨されている
- トファシチニブは経口のJAK阻害薬であり、PsA患者の病態に関与していると思われるcommon gamma chainのようなシグナルに関与する
- 今回はthe Oral Psoriatic Arthritis Trial (OPAL) phase3試験であり、ADAと比較してTofaの有効性・安全性、構造変化を12ヶ月間の観察期間で調べた
方法
- 対象
- 18歳以上
- 6ヶ月以上前にPsAと診断され、CASPAR基準を満たす
- 少なくともcsDMARDsに治療抵抗性
- TNF阻害剤 naive
- 試験デザイン
- 多国間の126施設で実施
- 2014/1-2015/12
- 観察期間:12ヶ月間
- ランダムに割付(2:2:2:1:1)
- Tofa 5mg 1日2回
- Tofa 10mg 1日2回
- adalimumab(ADA) 40mg s.c. 2週間毎
- placebo 3ヶ月間 → Tofa 5mg 1日2回
- placebo 3ヶ月間 → Tofa 10mg 1日2回
- 全例、試験期間中はcsDMARDsを単剤で維持量で使用
- primary endpoint
- 3ヶ月時点でのACR20達成率
- 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI
結果
- 422人が割り付けられ、373人が治療を完遂(figure1)
- baseline characteristics(table1)
- 平均LEI, SJC、MTX使用率:全てADA群で低い傾向
- ステロイド使用率:Tofa10mgで低い傾向
- 有効性(table2, figure2)
- 3ヶ月時点でのACR20達成率
- Tofa 5mg群:50%
- Tofa 10mg群:61%
- ADA群:52%
- placebo群:33%
- Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
- 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI
- Tofa 5mg群:-0.35
- Tofa 10mg群:-0.40
- ADA群:-0.38
- placebo群:-0.18
- Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
- 12ヶ月時点でのTofa 5mg群、Tofa 10mg群、ADA群のACR20, ΔHAQ-DIは同等
- week2時点でTofa群、ADA群はplacebo群と比較して有意にACR20達成率が高い
- HAQ-DIが臨床的に有意な改善を意味する0.35以上の改善をbaselineから3ヶ月時点で達成できた割合
- Tofa 5mg群:53%
- Tofa 10mg群:55%
- ADA群:51%
- placebo群:31%
- 3ヶ月時点でのACR50達成率(table2)
- Tofa 5mg群:28%
- Tofa 10mg群:40%
- ADA群:33%
- placebo群:10%
- Tofa群はいずれもplace群と比較して有意
- 3ヶ月時点でのACR70達成率
- Tofa 5mg群:17%
- Tofa 10mg群:14%
- ADA群:19%
- placebo群:5%
- Tofa群はいずれもplace群と比較して有意
- 3ヶ月時点でのPASI75達成率は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意
- 3ヶ月時点でのLEI、Dactylitis Severity Scoreは、Tofa 10mg群でplacebo群と比較して有意
- 3ヶ月時点でのFACIT-F, SF-36は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意
- radiographic progressionについて
- 全ての群でわずかに進行を認めた
- しかしながら、12ヶ月時点で、全ての群において、radiographic non-progressionの定義であるΔmTSS ≦ 0.5だった割合は91-98%だった
- 安全性
- 3ヶ月間における有害事象の頻度
- Tofa 5mg群:39%
- Tofa 10mg群:45%
- ADA群:46%
- placebo群:35%
- 3ヶ月間における重度有害事象の頻度
- Tofa 5mg群:3%
- Tofa 10mg群:1%
- ADA群:1%
- placebo群:1%
- 12ヶ月間における重度有害事象の頻度(有害事象によって治療を中断した割合)
- Tofa 5mg群:7%(6%)
- Tofa 10mg群:4%(3%)
- ADA群:8%(4%)
- placebo→Tofa 5mgスイッチ群で4ヶ月時点(変更後1ヶ月)で心血管合併症により死亡
- 重症感染症は計4例
- そのうち3例はTofa群
- インフルエンザ、虫垂炎、肺炎
- もう1例はADA群
- 単純ヘルペス、streptococcal pyoderma
- 帯状疱疹は4例、全てTofa群
- 悪性腫瘍は4例(膀胱癌:day1、外陰部癌:day11、浸潤性乳管癌:day232、基底細胞癌:day103)、全てTofa群
- 最も頻度の多い有害事象は上気道感染症
- placebo群以外で好中球減少、LDL増加、HDL増加あり
- 以下はなし
- リンパ球減少症(0.5×109 cells/L)
- 好中球減少症(1.0×109 cells per/L)
- ΔHb低下 ≧ 0.8g/dL
- 正常上限3倍以上のAST増加
- Tofa群:5例
- ADA群:3例
- 正常上限3倍以上のALT増加
- Tofa群:5例
- ADA群:9例
まとめ
- トファシチニブが、csDMARDsに治療抵抗性のPsAに対して、ADAと同等の有効性があることを示した
- しかしながら、今回の試験ではADAとトファシチニブを比較するようなデザインではなく、そういった解析も行なっていない
- トファシチニブの有効性は、5mg 1日2回でも10mg 1日2回でも、PsAの末梢性関節炎、皮膚病変、腱付着部炎、指尖炎に対してあまり変わらなかった
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