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2018年2月7日水曜日

血管炎の分類:CHCC2012に皮膚所見を加えたもの(A&R reviewより)


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 2, February 2018, pp 171
–184 

背景
  • 血管炎では、皮膚が最も病変となりやすい臓器である
    • しかし、CHCC 2012 では、皮膚血管炎の特徴を詳しく扱っていない
    • そのため、今回、consensus group(日本を含む、血管炎が専門の皮膚科医+CHCC2012作成メンバーから数人ずつ)が、血管炎の皮膚病変についてCHCC2012に補足した(table1)


  • 定義
    • 全身性血管炎
      • 皮膚以外の臓器を少なくとも1つ以上病変とするもの
      • 白血球増加、CRP増加、関節痛は非特異的なので、全身性血管炎の症状とはしない
    • 粘膜、皮下脂肪の血管炎も、皮膚血管炎に含むとした
  • 皮膚の血管は、以下を含む
    • small arteries(小動脈)
    • arterioles(細動脈)
    • capillaries(毛細血管)
    • venules(細静脈)
    • small veins (小静脈)
  • CHCC2012では、小型血管〜中型血管の区別は、直径ではなく、構造と機能に基づくものとした
    • 小型血管
      • 実質内の動脈〜細動脈〜毛細血管〜細静脈〜小静脈
    • 中型血管
      • 主な内臓を走行する動静脈+その第一分枝
      • 脂肪隔壁の最も大きい動静脈は中型血管である
    • 大血管
      • 大動脈+その主な分枝


大血管炎(table2):Large vessel vasculitis (LVV)
  • Figure1の通り、どのサイズの動脈も病変となりうる
  • TA, GCAの2つが主である
    • TAでは皮膚血管炎は報告されていないが、血管炎ではない皮膚症状は起こりうる
    • GCAでも、皮膚血管は病変とならないが、皮膚ではないところにある血管が閉塞して皮膚や粘膜が壊死を起こすことはある


中型血管炎(table3):Medium vessel vasculitis (MVV) 
  • Figure1の通り、どのサイズの動脈も病変となりうる
    • 小型血管炎も中型血管炎も、いずれも皮膚の小動脈を病変としうるので、皮膚血管炎のみでは、どちらの血管炎か区別はできない
  • KD, PANの2つが主である
    • PANは皮膚血管炎を起こしうる
      • 中型血管:皮膚梗塞、リベド、皮膚潰瘍、真皮内結節など
        • しかしながら、小型血管炎の症状である紫斑、出血斑、紅斑、出血性水泡なども報告されている
      • cutaneous PAN 
        • 慢性・再発性の血管炎であり、主に皮下脂肪や真皮-皮下組織の小動脈・細動脈を病変とする。静脈は直接的には病変とならない。
        • 全身性の血管炎に発展することは稀

    • KDでは血管炎ではない皮膚症状(いわゆる mucocutaneous lymph node syndrome)が特徴的である


小型血管炎(table4):Small vessel vasculitis (SVV)
  • 主には AAV と immune complex vasculitis  
    • いずれも皮膚血管炎を起こす
  • AAVの皮膚血管炎には、以下の4つがある
    1. 細静脈(時に細動脈と小静脈にまで波及する)における白血球破砕性血管炎として、出血性紫斑(時に結節)を形成する
    2. 小動脈〜細動脈における血管炎として、網状皮斑、リベド、結節、指尖梗塞を形成する
    3. 血管外の非血管炎性の肉芽種性炎症(GPA, EGPA)
    4. その他の非血管炎性病変(GPAにおける増殖性歯肉炎)
  • immune complex vasculitis  
    • 下肢に優位(急性期に血管拡張因子を誘導するため)の触知性紫斑があるのが、IgA血管炎 or IgM/IgG血管炎の特徴である
      • cutaneous IgM/IgG vasculitisとは、IgM/IgGが沈着している白血球破砕性血管炎であり、他のimmune complex vasculitis の定義に当てはまらないものである
        • 白血球破砕性血管炎とは、血管炎のタイプを表す言葉ではなく、あくまでも血管炎の障害パターンを描写した言葉であるので、IgA血管炎やIgM/IgG immune complex vasculitisなどと同じように使用してはいけない
      • なお、IgA型のクリオグロブリンはCVに分類され、IgA血管炎ではない

      • 下肢の優位性がなく、細静脈以外の血管にも炎症が波及している場合には、CV, RV, lupus血管炎が疑われる
      • HUV(anti-C1q vasculitis)は、半数にてC1qに対する抗体が陽性である
        • 下肢に優位ではなく、慢性の蕁麻疹が特徴的であり、点状出血や色素沈着を認めうる



    その他の血管炎

    • Behcet病(BD)
      • (毛包性膿疱以外の)早期皮膚病変では、白血球破砕と内皮細胞の浮腫を伴う血管における好中球性炎症を認める
      • 血栓を伴う大血管では、しばしばvasa vasorumの血管炎を認める
      • 結節性紅斑様の病変は、慢性的でマクロファージが豊富であり、初期であれば脂肪隔壁内に白血球破砕性血管炎を認める
        • 白血球破砕性血管炎があること、小葉への浸潤があること、Miescher’s granulomas の欠損が古典的な結節性紅斑との鑑別点である
      • 動脈病変は稀であり、下肢においては細動脈と細静脈の区別が困難なので見過ごされやすい
      • 古い病変 or 治療後の病変であれば、血管壁内とその周囲にリンパ球浸潤を認める
      • MAGIC syndrome (mouth and genital ulcers with inflamed cartilage) 
        • BDの皮膚病変、再発性多発軟骨炎、血管炎を有する



    2018年1月16日火曜日

    自己免疫疾患におけるplasma cell標的治療について


    Hiepe, Falk, and Andreas Radbruch. "Plasma cells as an innovative target in autoimmune disease with renal manifestations." Nature Reviews Nephrology 12.4 (2016): 232-240.

    • plasma cellが最初に発見されたのは1947年で、抗体を産生する細胞としてAstrid Fagraeus が発見した
      • 当初は、活性化B細胞から継続的に分化してくる、均一な、short-lived の細胞集団と考えられていた
    • 当時から、一部の専門家は、抗体はlong-lived plasma cellから産生されると仮説を立てていたが、その証明がなされたのは1997年になってからであり、Manzらが報告した
    • これらの知見に基づいて、2004年にHoyerらが、SLE腎炎マウスモデルを使用して、short-lived plasmablastもしくはplasma cellと、long-lived plasma cellの両者が自己抗体を産生することを報告した
      • 現在では、long-lived plasma cellは、液性免疫を維持する基盤の細胞集団であることがわかっている
      • short-lived plasma cellとは異なり、long-lived plasma cellは(自己反応性のものも含めて)、B細胞前駆細胞に非依存的であり、CYCなどの増殖を妨げる薬剤に対して抵抗性を有しているため、治療標的として注目されてきた
    • 今回のレビューでは、short-lived plasma cellとlong-lived plasma cellの発生、plasma cellの自己免疫疾患における役割、自己反応性plasma cell除去の治療戦略に関して述べている


    plasma cellの発生
    • 膜結合型の抗体は、抗原に対する受容体として作用し、B細胞表面に存在しているが、これらの細胞は抗体を分泌しない
    • plasma cellは、以下の3つの経路を介して、B細胞から発生する
      • B1細胞 → plasma cell
      • T細胞非依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
      • T細胞依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
    • マウスでは、B1細胞は、TLRを介してplasma cellへ分化し、主にIgMを産生する
      • ヒトにおいては、そのような経路がB1細胞において存在するかはわかっていない
    • B2細胞は、T細胞依存性と非依存性の経路でplasma cellに分化する(下図)
      • T細胞非依存性の経路は、以下のいずれかの結果である
        • B細胞受容体(BCR)非依存性の、LPSのようなmitogenに対するpolyclonal B細胞の反応
        • long-chain polysaccharides によるBCR活性化
          • Marginal-zone B2細胞は、short-lived plasma cellに分化し、主にIgMを産生する
      • 一方で、T細胞依存性の経路は2段階ある
        1. extrafollicularでの反応によってshort-lived plasma blastへ分化し、中等度の親和性を有する抗体を産生する
        2. 活性化B細胞の一部は、再びB細胞のfollicleへ入ってTfhの下で増殖し、germinal centerを形成する。このgerminal centerで発生したplasma cellは、骨髄のnicheにおいて長期に生存し、高親和性の抗体を産生する
    (Cellular and Molecular Immunology 12, 31–39)



    • B細胞は、活性化した後に、増殖可能なpre-plasmablastとplasmablastを経て、増殖せずに生着するplasma cellへ分化する
      • plasmablastもplasma cellも、抗体を産生する
      • これらの分化段階では、それぞれ異なる表面マーカーが発現している(table1)
      • plasma cellも多様であり、CD19が発現しているものとしていないものが骨髄や炎症性組織に存在していることがわかっている
        • CD19, CD38, CD138の発現によって、骨髄のplasma cellは、4つのサブセットに分けられる



    Long-lived plasma cells
    • Long-lived plasma cellsは、二次的な免疫反応によって発生し、発生にはgerminal centerでの反応が必要である
      • plasmablastのうち、限られた数しかlong-livedに分化できない
    • plasmablastは、骨髄や炎症性組織に移動し、long-lived plasma cellとして生存するのに必要なnicheを競合し合う
      • 骨髄のnicheは限られているが、炎症性組織のnicheは炎症の程度に依り、炎症がおさまるとnicheも消える
        • 感染症の罹患部位にplasma cellが存在することは、その部位においてplasma cellが産生した抗体によって原因微生物が排除されるという仮説を支持している
    • オートファジーの過程(細胞のホメオスタシスを維持するために細胞質成分にリサイクルする、リソソームによる自家消化)は、plasma cellの寿命に関与している
      • plasma cellはオートファジーが活性化している
    • plasma cellの寿命は、nicheからのsurvival factorに依存しており、骨髄nicheから分離するとlong-lived plasma cellは数日で死滅する
      • nicheは、CXCL12とVCAM1を発現している間葉系細胞によって構成されている。また、巨核球と好酸球は、survival factorであるBAFF、APRIL、IL-6を産生している
      • APRILとBCMAの骨髄における相互作用が、plasma cellがMCL-1を多く発現するのに必要である
    • 炎症性組織におけるplasma cell生存に関与しているfacrtorは不明な点が多いが、CXCL12発現細胞、CXCR3リガンド(=CXCL9, CXCL10, CXCL11)、APRIL, BAFFが炎症性組織で関与していることが報告されている
    • long-lived plasma cellは、memory B細胞・B細胞活性化・抗原の結合・T細胞による補助とは非依存性に抗体を産生し、memory cellsの性質を有している


      Plasma cells in autoimmunity 
      • 臓器病変として腎臓が含まれる自己免疫疾患で、自己抗体が病態に関与している疾患はTable2に示すように多い

      • 自己抗体を産生するplasma cellが、これら自己免疫疾患の病態において重要である
        • NZB/Wマウス(SLEモデルマウス)のplasma cellを、plasma cellが欠損し免疫不全であるRag1−/−  マウスに移植すると、抗ds-DNA抗体を産生するようになり、免疫複合体を形成して腎炎を生じる
      • 自己抗体は、2つの異なる独立したplasma cellから産生される(下、Figure1)
        • 1つは、新規に発生したshort-lived plasmablastとplasma cell
          • これらはB細胞活性化に依存しており、脾臓とリンパ節で生じる
          • B細胞が活性化するような状態、すなわちワクチンや自己免疫疾患再燃の過程で起こる
          • short-lived plasmablastは末梢血に存在しており、フローサイトメトリーで特定可能である
          • plasmablastの数の増加 or plasmablast/B細胞比の増加は、B細胞の活性化の指標として、SLEやAAVなどの自己免疫疾患で使用されている
          • 二次免疫での反応では、ワクチン特異的な、オリゴクローナルな、高頻度に変異したplasmablastが誘導される
          • 活動性のSLEにおいては、一部は自己抗原特異的なplasmablastがmemory B細胞から分化するが、大半は、ポリクローナルな活性化naive B細胞から発生する、低いレベルでのsomatic hypermutationを示すplasmablastである
            • 驚くべきことに、SLE患者において、活性化naive B細胞クローンが数ヶ月末梢血に存在している
            • plasmablastの増加は、抗ds-DNA抗体のような自己抗体増加と関係している
        • 2つ目は、long-lived memory plasma cell
          • short-lived plasma cellと異なり、memory plasma cellは通常の免疫抑制治療に抵抗性である
            • SLE腎炎モデルマウスでds-DNA抗体を産生するNZB/W F1 マウスでは、CYC, ステロイドの併用治療でも骨髄と局所の炎症部位に存在するplasma cellを除去できない
          • memory plasma celは、B細胞非依存性に自己抗体を産生するため、B細胞を直接的に標的にした治療(抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗BAFF抗体)もしくは間接的に標的にした治療(Th細胞阻害薬)に影響されない
            • これらの治療で自己抗体が低下しない場合には、memory plasma cellから産生されていると考えられる
        • これら2つの機序のうち、いずれが主に自己抗体を産生しているのかはわかっていない
      • 自己反応性plasmablastは、pritectiveに作用するlong-lived plasma cellともnicheを競合する
        • 骨髄が主なlong-lived plasma cellのnicheであるが、炎症性自己免疫疾患では炎症組織もまたnicheとなりうるので、その部位において病的な自己抗体を産生する
        • 活動性SLE患者の骨髄、リンパ節、腎病変のplasma cellは、BAFF, APRILを産生することができ、自身の生存に関与しているかもしれない




      plasma cellを標的にした治療


      conventional immunosupression
      • short-lived plasmablastとplasma cellは、増殖しているplasmablastとB細胞を標的にして、通常の免疫抑制治療に反応する
        • 増殖していないplasmablastは、これらの治療開始後数日で消失する
        • RTX, ベリムマブは、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するが、long-lived memory plasma cellには影響しない
        • 自己反応性B細胞を刺激するfactorを阻害する治療、すなわちtype1 IFNや、ヘルパーT細胞やTregを標的にした治療も同様に、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するだろうが、long-lived memory plasma cellには影響しないだろう


      Antithymocyte globulin 
      • 自家造血幹細胞移植において使用されるATGは、自己反応性memory細胞を含む獲得免疫システムの全体を除去する
        • ポリクローナルなATGは、CD38, CD138, CD52のようなplasma cellに発現している分子に結合する
        • これによって、健常人と同じような獲得免疫を再構築することができるかもしれない


      Proteasome inhibitors 
      • Proteasome inhibitors は、より選択的に、plasma cellを除去する
      • plasma cellの腫瘍である多発性骨髄腫において使用されているボルテゾミブは、免疫グロブリン合成を誘導し、unfolded proteinの蓄積によってアポトーシスを誘導する
        • NZB/Wマウスでは、ボルテゾミブは、ほぼ完全にplasmablastとplasma cellを除去し、ds-DNA抗体産生と腎炎の発症を防ぎ、コントロールと比較して生存期間が著明に延長した
        • この結果を受けて、通常の治療で治療抵抗性SLEに対して、2-4回のサイクルでボルテゾミブを投与するpilot studyが行われたところ、SLEDAIは~60%低下し、ds-DNA抗体価は正常値まで改善した
          • ワクチンによる抗体価も~30%まで低下し、末梢血に循環しているplasmablastと骨髄のplasma cellも抗体価の低下と相関して減少した
        • さらに、マウスモデルでは、proteasome inhibitorは、plasma cytoid DCsによるtype1 IFNの産生も阻害し、これも機序として考えられる
        • また、in vitroでは、活性化ヒトT細胞を選択的に除去する作用も示されており、これによってT細胞とB細胞のアポトーシスを誘導し、NFκB活性化を阻害する
      • AAVでも、ボルテゾミブによるplasma cell除去は試みられている
        • この疾患のモデルマウスでも、脾臓や骨髄に存在するMPO-ANCAを産生するplasma cellの数を有意に低下させ、MPO-ANCAが低下し腎炎の発症を予防した
        • 治療抵抗性のAAVや特発性膜性腎症によるネフローゼ症候群に対するボルテゾミブ使用のケースレポートでも、良好な結果が報告されている
      • 新世代のproteasome inhibitorであるdelanzomibやcarfilzomib は、より少ない毒性でより有効な結果を残すころが期待されている


      Targeting survival factors 
      • miRNA-148aやsurvival nicheの構成成分など、plasma cellのsurvival factorを標的にした治療も検討されている
        • アタシセプト(可溶性TACI-Ig)は、BAFFとAPRILを中和し、有望なアプローチであり、plasma cellと免疫グロブリンを低下させる
          • phase2/3では、アタシセプト 75mgでは、中等症以上のSLEの再燃を予防できなかった
          • 150mgを投与した試験では再燃を予防できたが、肺炎による死亡症例が2例あり、早期にこの試験は中止された
          • また、多発性硬化症では、アタシセプトによってむしろ疾患活動性が増加し、RAでは全く有効性を示さなかった
      • 接着分子であるVLA-4、LFA-1に対するモノクローナル抗体製剤は、wild-type C57BL/6 マウスにおいて、骨髄のplasma cellを除去した
        • この効果は、CD20抗体を投与してB細胞を除去することで延長した
        • しかしながら、NZB/Wマウスでは、VLA-4、LFA-1、CD20に対するモノクローナル抗体製剤の有効性は不十分であった
          • この違いの理由はわかっていない


      Targeting plasma cell homing 
      • CXCR4-CXCL12の相互作用は、plasma cellが骨髄に移動するのに必須である
        • plasma cellがCXCR4を発現しており、CXCL12を発現している骨髄nicheを主に形成している間葉系細胞に惹きつけられる
        • 炎症組織(腎臓、関節、皮膚、唾液腺)のnicheでも、CXCL12は過剰に発現している
        • NZB/Wマウスに対して、CXCLに対するモノクローナル抗体製剤を投与すると、発症前の場合は腎病変とds-DNA抗体産生が予防され、すでに発症しているマウスだと疾患活動性を低下させる
        • CXCR4アンタゴニストであるCTCE-9908も、B6.Sle Yaa SLEモデルマウスに対して同様の効果を示した
        • NZB/Wマウスのplasma cellを、免疫不全であるRag1−/− マウスに投与したところ、CXCR4阻害薬(AMD3100)によって骨髄への移動が阻害された
        • さらに、NZB/Wマウスに、短期間のボルテゾミブでplasma cellを除去した後に、長期間AMD3100を投与すると、骨髄でのplasma cellの回復と腎病変発症を阻害し、ds-DNA抗体とタンパク尿を低く維持した
      • plasma cellと同様に、CXCR4を発現している他の炎症性細胞(マクロファージ、好中球、T細胞)が炎症部位に移動するのを抑制した
      • 第8因子に対する自己抗体を有する血友病のモデルマウスに対して、AMD3100によるCXCR4阻害とG-CSFの併用治療で、第8因子を阻害する抗体を産生するplasma cellを含むlong-lived plasma cellを低下させた


      Targeting cell-surface molecules
      • CD38が、plasma cellと多発性骨髄腫細胞の表面に多く発現している
        • そして、これは、他のリンパ球系細胞、骨髄系細胞にはあまり発現していない
      • daratumumabというCD38に対するモノクローナル抗体を使用した臨床試験では、治療抵抗性の多発性骨髄腫患者の骨髄に存在するplasma cellを除去し、良好な結果を示した
        • 自己免疫疾患に対するデータは存在していない


      plasma cell除去による有害事象
      • 感染症
        • ボルテゾミブでは、免疫グロブリンは~30%低下した(SLE)
        • アタシセプトでは、IgMとIgAが~50-60%低下し、IgGは30-40%低下した(SLE, RA)
          • アタシセプトに2週間先行して高用量ステロイドとMMFを投与していたSLE腎炎の患者では、アタシセプトを投与して、IgGが300mg/dLまで急激に低下し、肺炎を発症した。こういった患者には、免疫グロブリンの補充やワクチン投与を考慮する必要がある。
        • ワクチンに対する抗体価は、~30%低下したが、その多くはまだ有効な抗体価を維持していた


      Depletion of pathogenic plasma cells 
      • memory plasma cellに対する治療は、ワクチンに対して反応したようなprotectiveなplasma cellも除去するので、病的なplasma cell選択的に除去する治療が望ましい
      • これまで、SLEの病態に関与しているplasma cellを直接標的にする表面蛋白は同定されていないが、それらが産生している抗体によって病的なplasma cellとprotectiveなplasma cellを区別することは可能と考えられる
        • それぞれのplasma cellをそれ自体が標的にしている抗原で覆ってしまえば、plasma cellが産生している抗体がplasma cellの表面に結合して、補体を活性化してplasma cellが除去できるだろう
      • 理論的には、マウスのCD138に対する抗体のF(ab)2 fragmentを、自己抗原で共役させると、plasma cellの表面を覆い、自己抗体を産生しているplasma cell選択的に、補体による細胞溶解 or antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC) を誘導することができる(figure3)
        • in vitroでは、証明できている
        • しかしながら、この手法ではすでに末梢血に循環している自己抗体は除去できないので、血漿交換や免疫吸着を併用する必要があるだろう


      Targeting precursor B cells 
      • NZB/Wマウスでは、B細胞の活性が高く、ボルテゾミブを中断すると、自己反応性memory plasma cellが急速に再構築される
        • これは、活動性SLEにおいても同様に認められ、ボルテゾミブを1サイクル投与した後、末梢血に循環しているplasmablastとds-DNA抗体が再び増加してくる
        • 長期間のボルテゾミブ or proteasome inhibitorは、毒性(末梢神経障害、肺障害、ヘルペスなどの感染症、便秘・下痢、骨髄抑制、局所投与部位の皮下脂肪組織萎縮や皮膚硬結)やコストからしても望ましくない
        • そのため、plasma cellの前駆細胞を阻害することで、自己反応性memory plasma cellの再構築を抑制する必要がある
        • NZB/W マウスでは、短期間のボルテゾミブの後に、B細胞除去治療(CD20に対する抗体製剤、CYC)を行うことで、ds-DNA抗体産生long-lived memory plasma cellの再構築を阻害し、腎炎の発症を遅らせた
          • この結果から、今後、自己免疫に対して新しい治療戦略を開発する際に、まず最初に自己反応性memory plasma cellをボルテゾミブで除去し、その後にRTXやベリムマブによるB細胞標的治療を行うことは有効かもしれない

      2018年1月2日火曜日

      IgA血管炎に対するRTXの有効性


      ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
      Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 109
      –114


      成人IgA血管炎の臨床像に関する、フランスの多施設後ろ向き解析の結果はこちらに上げております
      →成人IgA血管炎の臨床像、治療について


      背景
      • IgA血管炎は、IgA1優位に沈着する全身の小血管炎であり、紫斑、消化管、関節炎、糸球体腎炎を呈する
      • 小児においては最も多い血管炎であり、成人では稀である
        • 小児発症の場合は予後良好であり、supportive careのみでよいことが多い
        • 成人発症では予後が悪く、特に腎病変を併発した場合は予後不良であり、末期CKD or ESRDに至る割合が10-30%である。
      Pillebout Eらの報告(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8. )より引用




      • 成人発症の場合の治療は確立していない
        • 特に重症の場合は、ステロイドと免疫抑制剤が使用されるが、ランダム化試験ではステロイドにCYCを追加することのメリットを示せず、議論の余地がある。
        • MMF, AZA, CyAなどの他の免疫抑制剤もエビデンスは限られている
      • RTXも同様にケースシリーズのみの限られたエビデンスのみであり、今回は、多施設観察研究にて、既存のステロイド・免疫抑制剤に対する禁忌を有する or 再発・治療抵抗性の成人発症IgA血管炎に対するRTXの有効性を調べてみた

      方法
      • ヨーロッパの9施設で実施
      • 解析対象
        • ACR1990分類と2012CHCCに基づいてIgA血管炎と診断されている
        • 全例、生検にてIgA血管炎が証明されている
        • 18歳以上で発症
        • 以下のうち、1つ以上の臓器に重症病変を有する
          • 腎生検にてIgA血管炎関連腎炎class3-4(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8.)
            • class1 = メサンギウム性糸球体腎炎(糸球体は正常 or わずかな病変)
            • class 2 = 巣状 or 分節性糸球体腎炎(分節性の管内 and/or 管外増殖性病変は全糸球体の50%未満)
            • class 3 = びまん性管内増殖性糸球体腎炎
              • 3a:中等症
              • 3b:重症
            • class 4 = 管内 & 管外増殖性糸球体腎炎(半月体を形成した糸球体病変が、全糸球体の50%以上を占める)
            • class 5 = びまん性糸球体硬化病変が全糸球体の90%以上を占める
          • 消化管出血・虚血・穿孔±鎮痛薬にて24時間以上改善しない腹痛
          • 肺胞出血
          • 上強膜炎
          • 心臓病変
          • 中枢神経病変
        • 他の自己免疫疾患や悪性腫瘍ではない
        • 再発性・治療抵抗性として投与されている or ステロイドもしくは免疫抑制剤が禁忌のため使用できないためRTXが投与された症例
      • RTX用量
        • 375mg/m2 weekly ×4回 or 1000mg/m2 bi-weekly ×2回
        • 他の免疫抑制剤と併用も可
        • ステロイド、免疫抑制剤の漸減はそれぞれの施設次第
      • remissionの定義
        • BVAS=0 
        • 腎機能が安定しており、血尿・蛋白尿が持続するのみであれば、BVAS ≦ 5 
      • relapseの定義
        • ステロイドもしくは他の免疫抑制剤が必要になる血管炎の活動性増加
        • PSL ≧ 15mg/dayの場合は50%以上の増量 
        • PSL < 12.5mg/dayの場合は100%以上の増量
      • refractoryの定義
        • ステロイド単剤もしくは他の免疫抑制剤と併用にて、治療反応性がみられない


      ※腎組織や他の所見による分類ごとの腎予後
      Pillebout Eらの報告(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8. )より引用


      結果
      • 22人の症例を解析
        • 男性:12人
        • 平均診断時年齢:37.5歳
        • 腎病変あり:90.9%
          • 平均eGFR:76 ml/m/1.73m2
          • 平均蛋白尿:1.9 g/day
        • RTX前にステロイドなどの治療歴あり(RTX投与理由がrelapse or refractory):73%
          • 他の27%は、RTXをfirst-lineとして投与(ステロイド通常量 or 他の免疫抑制剤が禁忌)

      RTXの有効性

      • remissionの割合
        • 1ヶ月後:45.5%
        • 6ヶ月後:72.7%
        • 12ヶ月後:72.7%
      • RTX後に再発した割合:35%(7/20人)
        • 平均12ヶ月で再発
      • フォロー期間:平均24ヶ月
        • 最終フォロー時点で18/22人がremission




        • 項目別
          • BVAS, CRP, PSL dose, 24時間タンパク尿は有意に改善
          • eGFRは有意差なし(p=0.59)
            • baseline:82 ml/m/1.73m2 → last:77 ml/m/1.73m2 

        • RTX単剤 vs. RTX+ステロイド/免疫抑制剤
          • 有意差なし

        RTX alone
        (n=6)
        RTX+GCs or other IS
        (n=16)
        P value§
        Baseline (time of RTX treatment)
        Age (at diagnosis), median (IQR)
        45.5 (37.5-53.5)
        29.5 (21-49.3)
        0.23
        Active organ involvement, n (%)



             Skin
        5 (83.3)
        13 (81.3)
        1.00
             Gastro-intestinal
        5 (83.3)
        10 (62.5)
        0.61
             Kidney
        6 (100)
        12 (75.0)
        0.54
             Joint
        4 (66.7)
        12 (75.0)
        1.00
        BVAS, median (IQR)
        21.5 (14.3-25.8)
        14 (11.5-19.0)
        0.25
        eGFR (CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
        73.5 (65.0-117.3)
        82.0 (74.0-101.0)
        1.00
        Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
        2200 (1725-3200)
        1000 (375-2210)
        0.16
        Kidney biopsy, n (%)



             Class I-II
        2 (33.3)
        4/9 (44.4)
        1.00
             Class III-IV
        4 (66.7)
        5/9 (55.6)
        1.00
        Month 6 after RTX
        Active organ involvement, n (%)



             Skin
        0
        1 (6.3)
        1.00
             Gastro-intestinal
        0
        2 (12.6)
        1.00
             Kidney
        2 (33.3)
        1 (6.3)
        0.17
             Joint
        0
        2 (12.6)
        1.00
        eGFR (CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
        72.0 (72.0-80.0)
        82.0 (66.0-92.0)
        0.92
        Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
        200 (150-4000)
        679.5 (187.5-2475)
        0.63
        BVAS, median (IQR)
        5 (3-5)
        5 (4-9)
        0.24
        Patients in remission, n (%)
        4 (66,7)
        12 (75)
        1.00
        Month 12 after RTX
        Active organ involvement, n (%)



             Skin
        0
        3 (18.9)
        0.53
             Gastro-intestinal
        0
        1 (6.3)
        1.00
             Kidney
        0
        3 (18.9)
        0.53
             Joint
        0
        1 (6.3)
        1.00
        eGFR (CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
        82 (60-112)
        76.5 (63.3-91.8)
        0.56
        Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
        140 (100-493)
        675 (175-1075)
        0.32
        BVAS, median (IQR)
        3 (0-3)
        5 (2-5)
        0.22
        Patients in remission, n (%)
        6 (100)
        10 (62.5)
        0.13



        まとめ
        • RTXは有効だったが、再発も35%と多め
        • なぜRTXが有効かはわかっていない
          • IgA血管炎の腎病変に関しては、ガラクトース欠損IgA1を含む免疫複合体が沈着することが病態と考えられている
          • 今回は17/22人で血清total IgAを測定したが、低下はわずかであり、RTXの有効性を反映していないと考えられる


          • 皮膚・腎臓による組織での検討では、B細胞(CD20+)の浸潤はわずかであり、T細胞(CD3+)とマクロファージ(CD163+)の浸潤の方が有意だった


          • RTXがIgA産生形質細胞を増殖を抑制した可能性は否定できないが、これらの結果を考慮すると、RTXが有効なメカニズムとしては、B細胞の抗原提示能・T細胞共刺激能を阻害したことが考えられる
            • このメカニズムは、すでにAAVや他の自己免疫疾患でも推測されている
          • ランダム化されて行なった既報では、ACEi or ARBsを使用しても蛋白尿 > 1g/dayのIgA腎症を対象にしてRTXの有効性を調べたが、12ヶ月時点で蛋白尿を減らすことはできなかった(J Am Soc Nephrol 2017;28:1306–13.)
            • 今回の結果では血清total IgA低下がわずかだったが、この既報でも、血清ガラクトース欠損IgA1値 or 血清ガラクトース欠損IgA1に対する抗体価変化していなかった
            • 今回の結果と対象的であった原因については、腎病変が慢性病変ですでに進行していたためにRTX有効性が低下したこと、IgA腎症とIgA血管炎は炎症があるかどうかで異なること(遺伝子的にも異なることがわかっている:HLA class2 variantsは両者とも関連しているが、自然免疫に関わるCARD9, ITGAMなどの遺伝子多型はIgA腎症のみに認められている)、が考えられる
        • limitation
          • サンプルサイズが少ない
          • ステロイドや他の免疫抑制剤、ACEiなどの他の治療薬による修飾があるかも

        トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

        Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...