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2017年12月4日月曜日

軟骨石灰化とOAの関係 & 結晶性関節炎に対する関節超音波のレビュー


①European League Against Rheumatism recommendations for calcium pyrophosphate deposition. Part I: terminology and diagnosis
W Zhang,1 M Doherty,1 T Bardin,2 V Barskova,3 P-A Guerne,4 T L Jansen,5 B F Leeb,6 F Perez-Ruiz,7 J Pimentao,8 L Punzi,9 P Richette,2 F Sivera,10 T Uhlig,11 I Watt,12
E Pascual13 




  • 関節部位、年齢、性別による軟骨石灰化(chondrocalcinosis)の違い



EULAR2011による言葉の定義
  • CPP crystals
    • calcium pyrophosphate dihydrate crystalsのこと
  • CPPD
    • CPP crystalによってもたらされる全ての状況の総称
  • CC(cartilage calcification)
    • 画像もしくは組織学的に軟骨石灰化のこと。CPPDとは限らず、正常組織にも起きうる。

Risf factors
  • 関節外傷の既往
  • 遺伝的・家族性にCPPDの傾向あり
  • 特異的な疾患
    • ヘモクロマトーシス
    • 副甲状腺機能亢進症
    • 低フォスファターゼ症
    • 低Mg血症 など
EULAR recommendations
  1. CCは、OAとは独立もしくはOAによる構造変化とともに認める
    • CPPDを伴うOAは、そうでないOAと比較して、osteophytosisの程度が強く、罹患関節も異なり、炎症所見が強い
    • 稀だが、腱炎、腱鞘滑膜炎、滑液包炎、体軸関節に関連した症状を起こすこともある
  2. 単施設研究では、急性のCPP結晶関節炎は、典型的には3−4日以内に改善した
    • 関節痛、こわばり、腫脹、圧痛、±紅斑を認める
  3. 65歳以上の膝、手、肩関節の関節炎は急性CPP関節炎を示唆する。画像による石灰化は診断の可能性を高めるが、確実な診断には結晶を証明することが必要である
    • 上記のグラフのように、50歳以下では稀であり、45歳以下(特に多関節病変)で診断される場合には家族性 or 背景の代謝性疾患を考慮する
    • 痛風も年齢とともにリスクが増加するが、多くの初発は足である(特に第1MTP関節)
  4. OA患者ではCPPDが多い
    • 非典型的な部位のOAと関連する
  5. 慢性CPP結晶性関節炎は、mono/oligo関節炎(89%)、多関節炎(11%)と報告がある
    • 診断はCPP結晶の証明


  • CPPDに関する検査の特性について



  • CPPDリスク因子





  • 今後の課題
    • CPPDの有無によって、OAに違いがあるか(症状、罹患関節、予後)
    • 結晶の有無をgold standardとした質の高い臨床研究
    • CPP結晶の検査に関するプロトコル作成
    • ルーチン検査とできるように、それぞれの画像検査のvalidation
    • 関連する代謝性疾患によるCPPDへの影響



OA患者において、軟骨石灰化がどのように関連するかを調べた研究が以下の②
②Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 1651–1658 

Association of Chondrocalcinosis in Knee Joints
With Pain and Synovitis: Data From the
Osteoarthritis Initiative
BOBBY KWANGHOON HAN,1 WOOJIN KIM,2 JINGBO NIU,3 SHRISTI BASNYAT,4 VENIAMIN BARSHAY,4 JOHN P. GAUGHAN,4 CHARLENE WILLIAMS,4 SHARON L. KOLASINSKI,2 AND DAVID T. FELSON3



背景

  • calcium pyrophosphate dihydrate (CPPD) crystalsやbasic calcium phosphate (BCP)などのカルシウム含有結晶が、関節のヒアリン軟骨や線維軟骨(→hyaline cartilage, fibrocartilage, elastic cartilageの違いはhttp://www.differencebetween.net/science/health/difference-between-hyaline-cartilage-and-elastic-cartilage/を参照)に沈着し、画像的に線状の石灰化として認める(=chondrocalcinosis:軟骨石灰化)ことはよくあることである
  • chondrocalsinosisは変形性関節症(OA)と関連があり、OA重症度と関節液CPPD結晶の有無が関係しているという報告もある
    • しかしながら、他の報告では、関節裂隙とchondrocalsinosisの関連はなかったという報告や、前向き試験ではMRI上のOA進行や軟骨消失と関連がなかったという報告もある
  • CPPD結晶は、炎症反応と滑膜炎を惹起し、急性or慢性炎症性関節炎の原因となる
    • CPPDは、in vitroのヒトの軟骨や滑膜細胞において、nitric oxide, MMP-13, PGE2などの炎症性・異化メディエーターを産生する
    • BCP結晶は、in vitroのマクロファージにおいて、NLRP3 inflammasome→IL-1βを分泌させる。マウスの関節に注射することで滑膜炎や軟骨細胞変性を誘導した。
    • しかしながら、chondrocalsinosisに含まれるカルシウム含有結晶が、実際に滑膜炎やOA発症に関わるかは不明である
  • MRIで測定される滑膜の体積が、膝の痛みの重症度と関連して変化することや、軟骨消失とOA発症を予測することが既報で報告されている
  • 今回の試験では、chondrocalsinosisが膝関節痛 or MRIでの滑膜炎に関連するか、the Osteoarthritis Initiative (OAI)のデータから調べた

方法
  • the Osteoarthritis Initiative (OAI)
    • 4796人のOA患者を対象とした、前向き多施設レジストリーである
  • 2004-2010年の症例を調べた
    • 60歳以上
      • それ以上若いと石灰化が稀なため
    • baselineにてKellgren-Lawrence (K/L)grade 0, 1, 2のいずれか
      • それ以上進行していると、他の要因による関節痛や関節炎が交絡する可能性が高いから



※K/L classification

Classification

  • grade 0: no radiographic features of OA are present
  • grade 1: doubtful joint space narrowing (JSN) and possible osteophytic lipping
  • grade 2: definite osteophytes and possible JSN on anteroposterior weight-bearing radiograph
  • grade 3: multiple osteophytes, definite JSN, sclerosis, possible bony deformity
  • grade 4: large osteophytes, marked JSN, severe sclerosis and definite bony deformity
(Clin Orthop Relat Res (2016) 474:1886–1893. より引用) 

  • まず、baselineとその後4年間における膝関節痛とchondrocalcinosisの関連を調べた
  • その次に、MRIでの滑膜炎とchondrocalcinosisの関連を調べた

結果
  • baseline characteristics

  • 膝関節痛とchondrocalcinosisの関連について
    • baselineでは、いずれの質問においても、chondrocalcinosisがある場合の方が、膝関節痛が有意に強かった
      • 年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後

    • 4年後時点では、chondrocalcinosisがあるほうが有意に膝関節痛が強かったのは、"any knee pain, past 30 days"のみ



  • VASで評価した膝関節痛重症度に関して
    • baselineでは、chondrocalcinosisがあるほうが有意にVASが高かった
    • baselineから4年後までの膝関節痛の変化は、chondrocalcinosisに関連しなかった



  • 間欠的な痛みはchondrocalcinosisがあるほうが有意に強かった



  • MRIでの滑膜炎に関して
    • chondrocalcinosisの有無は関係なし



まとめ
  • (交絡因子となりうる年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後も)膝関節痛はchondrocalcinosisがある場合の方が有意に強かったが、MRIでの滑膜炎とは関連しなかった
    • 当初の仮説としては、CPPDとBCP crystalが関節炎と関連があるのは、滑膜炎のためと考えていたが、今回の結果はそうでなかった
  • OA患者の膝関節置換術の滑膜検体からは、組織学的な滑膜炎と血管新生にchondrocalcinosisは関連しなかったと報告されている
    • その理由として、カルシウム含有結晶は軟骨内にあることが考えられている
    • CPPD結晶は、急速なカルシウム血中濃度低下など限られた状況のみで出現し、それが間欠的であるため滑膜炎も間欠的となり、滑膜体積には反映されないことも理由としてありうる
  • さらに、カルシウム含有結晶の形成は、細胞外マトリックスの変化に制御されている
    • 筆者らは、軟骨のカルシウム結晶沈着は、(滑膜炎の誘引というよりも) 膝関節のOAによる細胞外マトリックスのdegenerative changeと関節痛のマーカーになるのではないかと推測している
    • 軟骨細胞過形成のマーカーであるtype Xコラーゲンの発現レベルと軟骨の石灰化が相関しているという組織学的研究からの報告もある
    • さらに、type 2コラーゲンは、ATPが石灰化を促進するのを抑制するが、type2とtype1コラーゲンが共に存在するとATPが石灰化を促進するのを増強するのがvitroで示されている
      • プロテオグリカンはtype or type2コラーゲンに加えるとカルシウム含有結晶の形成を抑制する


結晶性関節炎におけるエコーに関するレビューが以下の③
③Emerg Radiol (2016) 23:623–632
Musculoskeletal ultrasonography in the diagnosis of acute crystalline synovitis
Matt Rheinboldt1,2 & Courtney Scher2,3 


  • ヒアリン軟骨は低エコーだが(figure1)、線維軟骨は高エコー(figure2)




  • 関節液貯留(figure3)
    • 非特異的



  • 滑膜増殖(figure4)
    • 非特異的
    • 結晶関節炎でも滑膜内の血流増加は認めうる



  • erosion (figure5)
    • 非特異的(痛風でもRAでも認める)



  • double-contour sign(figure6:痛風)と軟骨内石灰化(figure7:偽痛風)
    • 特異的所見
    • double-contour signは、無症状の高尿酸血症でも認めることがあり、治療によって消失するため疾患活動性のマーカーと考えられている




  • Aggregates(figure8)
    • 尿酸結晶、カルシウムピロリン酸結晶ともに、関節液内にて"snowstorm"のように見える
    • 滑膜組織、関節外の腱、軟部組織にも結晶形成が起こりうり、その場合にはその部位にechogenicな所見を認める


    •  手関節における三角線維軟骨のカルシウムピロリン酸結晶のAggregates(figure9)



  • 痛風結節(figure10)
    • 形成初期は低エコー、均質な所見
    • 時間が経過すると内部が石灰化し、acoustic shadowingを認める
    • 肉芽種とfibrovascular組織により、周囲は低エコーとなりハローサインを呈する




    • 腱に形成した痛風結節は、軽度の腱の腫脹を認め、fibriallary構造が消失し、acoustic shadowingを認める(figure11)
    • 頻度が多いのは膝蓋腱と上腕三頭筋腱であり、その次にアキレス腱と大腿四頭筋腱
    • CPP結晶は、肉芽種形成や滑膜・軟部組織の結節形成は稀である



  • (肘などの)滑液包にも、痛風結節も認めうる(figure12)



  • 関節液貯留していると、ヒアリン軟骨のechogenecityにより軟骨表面が高エコーとなることがあり、これをdouble-contour signと間違えることがあるので、より多くのアングルで観察することをOMERACT definitionでも推奨している




2017年9月12日火曜日

偽痛風発症のリスク


Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1400–1406


アメリカから偽痛風の疫学に関する論文

急性発症の頸部痛、手関節痛、膝関節痛、X線で石灰化のある高齢者・・・ってかたが緊急入院され、CPDDだねってことで鎮痛しながら経過を見ています。
糖尿病とか冠動脈疾患とかCKDとか、CPDDにかかりそうな背景がたくさんあるなぁ・・・と思っていましたが、優しい指導医の先生がこの論文をプレゼントしてくださり読んでみると、実はそれは単なる自分の偏見かもしれない。。。と思っています。


背景
  • Calcium pyrophosphate deposition disease(CPDD)はピロリン酸血症による急性 or 慢性の関節炎である
  • 40歳以上では、〜4%の割合でX線でCPDDを認める
  • 診断には、関節液中の結晶を顕微鏡で証明することが必要であり、軟骨石灰化はそれを支持する所見である
  • CPDDの疫学に関しては大規模な研究がなく不明なことも多い
    • これまでの研究では、リスクと報告されているのは下
      • 加齢
        • 60歳以下では稀
      • 代謝異常
        • ヘモクロマトーシス
        • 副甲状腺機能亢進症
        • 低フォスファターゼ症
      • 低Mg血症
      • CKD
      • ループ系利尿薬
    • 痛風との関連は議論の余地あり
    • 他のリウマチ疾患と併発することもある
      • 報告があるのはOA, RA
    • 糖尿病、冠動脈疾患、アルコール依存症、喫煙、肥満、頻用される薬剤との関連はあまりわかっていない
  • 今回は、CPDDと併存疾患との疫学的な関連を調査することが目的である

方法
  • 横断研究
  • アメリカ合衆国退役軍人省の医療機関のデータを使用
  • 2010-2014年にCPDDと診断された全患者に、質問票を用いて調査
  • CPDD群とコントロール群を、年齢、性別をマッチさせて1:1とした

結果
  • CPDD有病率:5.2/1000人
  • 95% 男性
  • 平均年齢 68.1±12.3歳 


  • 併存疾患に関して
    • OR > 1だった項目
      • 副甲状腺機能亢進症
        • OR 3.35 [95% confidence interval (95% CI) 2.96–3.79])
      • 痛風
        • OR 2.82 [95% CI 2.69–2.95]
      • 変形性関節症
        • OR 2.26 [95% CI 2.15–2.37]
      • RA
        • OR 1.88 [95% CI 1.74–2.03]
      • ヘモクロマトーシス
        • OR 1.87 [95% CI 1.57– 2.24] 
      • 骨量減少
        • OR 1.26 [95% CI 1.16–1.36]
      • 低Mg血症
        • OR 1.23 [95% CI 1.16–1.30]
      • CKD
        • OR 1.12 [95% CI 1.07–1.18]
    • OR < 1だった項目
      • 甲状腺機能低下症
        • OR 0.88 [95% CI 0.83–0.92] 
      • 冠動脈疾患
        • OR 0.76 [95% CI 0.73–0.79]
      • 慢性心不全
        • OR 0.71 [95% CI 0.67–0.75]
      • 糖尿病
        • OR 0.79 [95% CI 0.76–0.83]
      • 高血圧
        • OR 0.77 [95% CI 0.72–0.82]
      • 低体重(BMI < 18.5)
        • OR 0.84 [95% CI 0.73–0.96]
      • アルコール依存
        • OR 0.62 [95% CI 0.58–0.65] 
      • 喫煙
        • OR 0.73 [95% CI 0.70–0.76]
  • 低フォスファターゼ症は稀な疾患のため解析できなかった


  • 治療薬に関して
    • OR < 1だった項目
      • PPI
        • OR 0.58 [95% CI 0.55–0.60]
      • サイアザイド系利尿薬
        • OR 0.84 [95% CI 0.81–0.88]
      • ループ利尿薬
        • OR 0.80 [95% CI 0.76–0.84]
      • ビスホスホネート製剤
        • OR 0.85 [95% CI 0.78–0.93]

    • OR > 1だった項目
      • Caサプリメント内服
        • OR 1.15 [95% CI 1.06–1.24)
  • 関節形成術に関して
    • 膝関節は有意に関連
      • OR 1.64 [95% CI 1.53–1.76]

まとめ
  • 副甲状腺機能亢進症に関しては既報と同様、関連する併存疾患であった
  • 他にも、痛風、変形性関節症も比較的強い関連であった
    • 痛風に関しては、今回の調査では、関節液の詳細な検討をおこなって偽痛風と鑑別した訳ではないので、過剰に診断している可能性もある
  • 今回の対象は急性発症のCPDDのみではなく、亜急性、慢性も含んでいるため、以前Rhoらが報告した有病率0.17%より増えたのだろう
  • MgはCPP結晶を分解する酵素の補酵素であるため、低Mg血症がリスクとなるのだろう
  • PPIは、低Mg血症の原因となるので、疫学的にはむしろOR1未満だったのは合致しない
    • PPIは今回の調査において、CPDD患者で最も使用されていた薬剤である
      • CPDD患者 60.3% vs. コントロール群 71.9%
  • 骨量低下とCPDDが関連しているのは、CPDDがピロリン酸の代謝異常による全身疾患として現れてくることを支持している
    • 軟骨マトリックスへのピロリン酸の蓄積はCPDDを起こす
    • また、ピロリン酸は、骨マトリックスを形成するのにカルシウムとリンが骨化することが必要であり、ピロリン酸はそれを阻害する


これまでの既報とは結果が異なる項目があり、バイアスの影響なのか気になりますね・・・冠動脈疾患や糖尿病とすでに診断されていると食事に気を使うから今回の調査ではnegativeだった、とか?

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