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2019年5月6日月曜日

SSA抗体陽性の妊婦から出生した新生児の先天性房室ブロックに関する疫学的調査:スウェーデンより

Comorbidity and long-term outcome in patients with congenital heart block and their siblings exposed to Ro/SSA autoantibodies in utero
Mofors J, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:696–703.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214406

<背景>

  • Congenital heart block (CHB)は、SSA抗体陽性の妊婦から生まれた新生児に起こりうる
    • 一般人口では、約 1/23,000人
    • SSA抗体陽性の女性からは、1 - 2%
  • ペースメーカー留置が早い時期から必要になることもあるが、ペースメーカーの留置とその後の拡張型心筋症の発症が関連していることは知られている
  • CHBは稀なので、CHBやそれに伴う合併症に関するデータを多く集めることは比較的難しい
  • そのため、今回はスウェーデンのnation-wide healthcare registersのデータから、CHBに関する情報を収集した

<方法>
  • SSA抗体陽性の女性から出生した、CHBを有する新生児 (n=119人)とその同胞(n=128人)の情報を集めた
  • healthy controlは、the Swedish National Patient Registerから収集

<結果>
  • 平均フォロー期間
    • CHB group:17.1年
    • 同胞グループ:18.4年

  • CHB patientsは、一般集団よりも、心血管疾患のリスクが有意に高かった
    • 心筋症 ± 心不全
      • 16.8% (20人) vs 0.3% (3人)
      • HR 70.0 (95% CI 20.8 to 235.4)
    • 脳梗塞
      • HR 39.9 (95% CI 4.5 to 357.3)

  • CHB patientsは、感染症のリスクも高かった
    • ペースメーカー留置をすることで、脳梗塞のリスクは下がるものの、心筋症 ± 心不全と感染症のリスクが増加した(Figure 1)

  • CHB patientsとその同胞は、ともに、何かしらの自己免疫疾患を発症するリスクが高かった
    • CHB patients:HR 5.7, 95% CI 2.83 to 11.69 
    • 同胞:3.6, 95% CI 1.7 to 8.0

<考察>

  • 今回の研究は、これらの関連について因果関係を明らかにする内容の研究ではないが、これまでの小規模な研究の結果を支持する内容だった
  • ペースメーカー留置が脳梗塞を予防する効果は大きいかもしれない
    • 脳梗塞を発症した4人のうち3人は、ペースメーカーをしていなかった
  • 心疾患がCHB patientsで一般集団より多かったのは、同胞でも多かったことから、reporting biasもあるかもしれない
  • 感染症に関しては、ペースメーカー留置に伴う二次的な感染症や、CHB patientsはprematureな段階で出生すること、一般集団よりも医療機関を受診する頻度が多いことがより感染症の診断がつきやすいことが関係しているかもしれない

2018年1月26日金曜日

分子学を用いたリウマチ膠原病疾患の分類:Nature reviewより



  • リウマチ膠原病疾患は早期発見、治療が望ましい
    • しかしながら、いずれの疾患もほぼ共通して発症早期は関節炎や全身の炎症を伴い診断が難しく、バイオマーカーに関しては助けにはなるが有病率が低いため発症早期にバイオマーカーのみ陽性の場合は扱いが難しく経済的な問題もあり、多くの疾患は、undifferentiated connective tissue disease (UCTD) として最初の数年間は経過する
  • オーダーメイド医療が最近は注目されている
    • 悪性腫瘍の領域でも、The Cancer Genome Atlas (TCGA) が14000人以上の被験者から、分子レベルの検体(RNA sequencing (RNA-seq) 、DNA methylationなど)を集めて解析している
      • しかしながら、実地臨床にこれらの情報はまだ活かせていない
    • リウマチ膠原病疾患でも、まだ、このような分子生物学を用いた未分類疾患の診断は行われていない
  • 今回のレビューでは、これまでの分類基準の歴史、生化学を利用した新しい分類方法の検討を述べていく


これまでの分類の歴史
  • Fig1のように、特異的な自己抗体によって、分類基準が改定されてきた(診断基準ではない)
    • ゴールドスタンダードは専門家による診断である
  • それぞれの疾患の分類基準の変遷は本文に詳しく書かれていますが、ここでは割愛


分子学的な分類

  • 自己免疫疾患における遺伝の要素はわかっていないことも多い
    • 同じ疾患を共有する割合は高くない
      • SLEに関しては、第1親等もしくは第2親等にも同じ患者がいるのは10%未満
      • 一卵性双生児で疾患を共有する割合は、SLE 11.1%, RA 12.3%, SSc 4.2%
    • しかしながら、異なる全身性の自己免疫疾患を血族で共有することは多々あるので、異なる疾患でもメカニズムとしてはいくつか共通している部分があるのだろう
    • GWASによれば、SLE, RA, SSc, SjSにおいて、300 lociがこれらの疾患と関連があるとわかった(定義:p < 5×10^-8)
      • 多くのlociが、2つ以上の自己免疫疾患と関連しており、これらの遺伝子の発現・制御が、特異的な臨床所見とどう関連しているのか調べていく必要がある

HLA
  • HLA locusと自己免疫疾患の関連は、最初に、SLEとRAにおいて指摘された
  • しかしながら、原因となるMHC locusを特定するのは、この領域におけるlong-range linkage disequilibrium(LRLD, linkage disequilibrium = 連鎖不均衡)の点と、もともと多型が多いということから、なかなか難しい
    • fine-mapping platforms (例:ImmunoChip)、large MHC reference panels、specific imputation algorithms、next-generation sequencingなど新しい技術は、これらMHC locusの複雑性を解明していくことの助けになる
  • fine-mapping platformsの研究では、HLA class 2 遺伝子が自己免疫疾患と関連があることがわかった(table1)
    • HLA class 2 遺伝子にコードされている蛋白は、T細胞への抗原提示に関与している、自己抗体産生に関連している
  • これらHLA遺伝子マーカーによって、一部の疾患を層別化することが可能である
    • 例えば、SScのうち、lcSScと関連するセントロメア抗体はHLA-DQA1、HLA-DOAと関連しており、dcSScと関連するトポイソメラーゼ抗体はHLA-DPB1と関連してがある
    • SLEの患者においても一部でトロポイソメラーゼ抗体とセントロメア抗体が陽性になり、これらにはHLAが関連していると考えられている
      • セントロメア抗体に関しては、SLEの6%未満で陽性となり、これらは臨床所見としては高齢発症で、Raynaud症状が多いという特徴があり、Nakanoらは新しいSLEのサブセットとして提唱している
      • トポイソメラーゼ抗体に関しては、SLEの25%未満で陽性となり、PAH・腎炎のリスクが上がると言われている





Non-HLA associations

  • HLAが主な自己免疫疾患発症に関与している遺伝子と考えられているが、HLA以外の関与も指摘されている
  • それぞれの疾患によってrisk locciの数が大きく異なるのは、GWASで解析したそれぞれの疾患の数が異なるためである
    • RAとSLEに対して行われたGWASsは、SjSとSScに対するそれの10倍である
    • それにも関わらず、SjSとSScは、risk lociのうち60%以上を共有している(SLEとRAは50%未満)
  • これらのrisk lociは、遺伝子のいたるところに分布しており、その多くは以下に関与するものである(Fig2)
    • T細胞、B細胞の機能・シグナル
    • 免疫複合体のprocessing
    • phagocytosis
    • 炎症反応
    • アポトーシス
    • NFκBシグナル
    • TLRシグナル
    • IFN産生経路



  • それぞれの疾患におけるrisk lociは他の自己免疫疾患でもrisk lociとなっていることが多いが、全risl lociにおいて平均して69%が複数の疾患と共有しているlociだった
    • Nature 518, 337–343 (2015). における下図aがそれを示している。主な自己免疫疾患間において、幅広い遺伝子の特徴が共有されていた。

  • また、よりリスクが相対的に低いlociも検出するためにGWASのmeta-analysisを行うと、
    • RAは、SScとgeneticな要素でoverlapする部分があるものの、SLEとSjSとはoverlapしなかった
    • しかしながら、SLSとSjSは、SScとoverlapする部分がある
    • これらのデータには、すでに述べた様に、疾患によって調べられたGWASの数が異なることに注意する必要がある

トランスクリプトーム
  • トランスクリプトームは、疾患経過中に細胞(免疫細胞や組織由来fibroblastなど)や組織(血液や罹患臓器など)など変化するため、個々の症例における遺伝子variationを調べるよりも複雑である
  • 遺伝要素のみではなく、エピゲノムや環境要因もトランスクリプトームに関連しているため、自己免疫疾患の病態について新しい知見が得られるだろう

組織を標的にしたトランスクリプトーム解析
  • トランスクリプトーム解析によって、それぞれの疾患をいくつかのサブグループに分けることができる

  • RA
    • RA-Ⅰ
      • 免疫グロブリン関連遺伝子の発現が増加
      • 獲得免疫・古典的補体活性化経路の活性化
      • 滑膜における細胞外マトリックス代謝の活性化
    • RA-Ⅱ
      • fibroblastのde-differentiation関連遺伝子が増加
    • 滑膜組織における炎症反応が過剰発現もしくは抑制されているサブグループも報告されているが、これらを特定する末梢血のバイオマーカーは特定されていない
  • SSc
    • lcSScとdcSScの両者を含む3つ目のグループがある
      • このグループは、炎症反応に関連する遺伝子が著明に増加している
    • dcSScのグループでは、細胞増殖に関連する遺伝子の発現が増加し、脂肪酸・脂質合成関連遺伝子の発現が低下している
    • lcSScのグループでは、細胞増殖に関連する遺伝子や炎症反応に関係する遺伝子は発現が低下しているものの、多様な機能に関連する複数の遺伝子発現が増加している
  • SjS
    • 多くの患者が唾液腺におけるIFN活性が亢進しており、臨床所見と相関する
    • このIFN signatureのうち、優位なものがtype 1なのか、type 2なのか、両者なのかによって層別化できる
      • type 2 IFN 優位の場合が、唾液腺組織におけるfocus scoreが最も高いことが報告されているが、このサブグループによって臨床所見が異なるわけではない
  • SLE
    • heterogeneousな疾患であるが、多くの罹患臓器(糸球体、滑膜、皮膚、骨髄)がtype 1 IFN signatureを示す
    • 腎炎は以下の2つのサブグループに分かれるが、臨床的に大きく異なる特徴の違いはないため、この層別化にはあまり意味がないかもしれない。一方のグループで糸球体硬化のリスクが高いかどうか、長期間の解析が必要である
      • 線維化に関連する遺伝子の発現が増加しており、糸球体硬化と関連するグループ
      • type 1 IFN signatureのサブグループ

血液でのトランスクリプトーム解析
  • SjS, SScの末梢血単球は、 type1 IFN signatureである
    • SjSの場合は疾患活動性と関連しているが、SScではこのsignatureであるかどうかはサブグループによって異なる(発症早期 78.9%, 診断確定後 100%。lcSSc 42.9%, dcSSc 70%)
    • SScの重症度とIFN誘導性ケモカインが関連していることを示した報告もある
  • 興味深いことに、sialic acid binding Ig like lectin1 (SIGLEC1) などいくつかのIFN関連バイオマーカーは、SjSにおける腺外症状の有無と関連している
    • miRNAs、long non-coding RNAs、methylation sitesなど、他のバイオマーカーについても調べられているところである

エピゲノム
  • 環境要因は、エピゲノムの変化によって、それぞれの疾患発症に関連している
  • DNAメチル化が最も特徴的なエピジェネティックマークである
  • 遺伝子の転写、染色体の安定性、alternative splicingの制御は、regulator regionにおけるDNAメチル化と関連している
  • エピゲノムのオアターンは自己免疫疾患においても重要であるが、解析はまだあまり行われていない
    • SLE患者のCD4陽性T細胞は、type 1 IFN 関連遺伝子の低メチル化によって発現が増加していることからも、これらが発症の指標になるかもしれない
    • T細胞の低メチル化は、SSc, SjSでも報告されている
    • SLE, SSc, SjS患者のB細胞、単球、皮膚fibroblast、全リンパ球は、hypomethylated patternを示す
      • このpatternは、DNAメチル化に関連している遺伝子(DNMT1, DNMT3B, MBD4)発現の低下と関連している
    • Methylation machinery gene は食事による葉酸摂取に依存しており、葉酸摂取低下により全ゲノムのメチル化が低下する
      • この結果は、環境要因と自己免疫疾患発症の関連を支持している
    • CD40L遺伝子プロモーターは、X染色体に存在するが、RA, SLE, SScでメチル化が低下している
      • この遺伝子の低メチル化が、女性におけるCD40過剰発現の原因なのかもしれない
    • type 1 IFN signature遺伝子であるIFI44Lのプロモーターは、SLE患者においてメチル化が低下している
      • RA, SjSでも同様の変化があるが、メチル化のレベルは明らかにこの3疾患で異なっている
    • 一卵性双生児間におけるDNAメチル化を比較すると、SLEでは49遺伝子のメチル化が双生児間で異なっていたが、RAと皮膚筋炎ではこの双生児間での違いは認められなかった
    • dcSScとlcSScのメチル化を比較した研究は1つのみあるが、それによると、CpC sitesにおけるメチル化がこの両疾患で異なっていた




Integrated analysis
  • 上記の手法を統合して解析することで、さらなるデータが得られる
  • RA患者では、DNAメチル化とトランスクリプトーム解析のデータを統合して解析したところ、関節によって、fibroblast-like 滑膜細胞におけるDNAメチル化と発現パターンが異なっていた
    • すなわち、同じRAでも、罹患関節によって薬剤への反応性が異なるかもしれない
  • SLE患者において、腎炎がない場合とある場合であまり遺伝子の違いはなかったが、その少ない異なる遺伝子の多くはDNAメチル化に関する遺伝子だった
    • これによれば、エピゲノムをモニターすることで、腎炎発症のリスクが高い集団を早期に特定できるかもしれない
  • SjSでは、トランスクリプトーム解析とプロテオミクス解析を統合してみると、トランスクリプトではIFN関連遺伝子が疾患活動性と関連していたが、プロテオミクス解析ではメタロプロテアーゼ基質が関連していた
    • これらは結果は異なるものの、両方の解析結果にはIFN制御遺伝子が含まれていた
    • また、両者の手法での解析結果とも、memory CD8陽性T細胞の数と関連していた
      • すなわち、IFN経路が、CD8陽性T細胞のプロテオームのエピゲノムでの変化と関連しているということを示唆している。そしてこのエピゲノムの変化には、メチル化によるものではない。
      • しかしながら、メチル化による変化がCD8陽性T細胞に生じることでこれらの機能が変化することも起こりうる
  • integtared analysisにおける難しさは、統計学的有意差を出すために十分なサンプルを確保することである
    • 例えば、RA, SLE, SSc患者におけるCD4陽性T細胞から、トランスクリプトーム解析とメチル化に関するデータを集めるにしても、健常人とメチル化が変化しているのは33種類の遺伝子のみしか特定できなかった
  • integrated analysisの手法に関しては、table42やfigure4のように、いくつかのアルゴリズムがある




2018年1月25日木曜日

免疫関連炎症性疾患(IMID)に対するnovel therapy


Baker KF, Isaacs JD. Ann Rheum Dis 2018;77:175–187.  

<背景>
  • CD4陽性T細胞は、innate immunityとadaptive immunityに共通して関与している
    • 当初はTh1、Th2が知られていた
    • Th1:細胞内の微生物に対して、IFNγなどのサイトカインを産生し、細胞性免疫を活性化する
    • Th2:液性免疫を活性化し、IL-4, IL-5, IL-13などを介して寄生虫感染症に反応する
    • 当初はTh1が多くの免疫関連炎症性疾患(IMID)を誘導していると考えられていたが、Th1は必ずしも必須ではないことがわかり、その後発見されたのがTh17である
    • IL-17は、Th17によって産生され、TNFαやIL-1βとともに、好中球を誘導したり軟骨を阻害して骨びらんを起こすことがわかってきた
    • 現在、Th17は、RA, PsA, AS, IBDなど多様な疾患に関与していることが知られており、IL-17を阻害することでTh17分化を抑制する治療が注目されている


<Th17 axis>

IL-17阻害strategy
  • IL-17
    • A-Fの6種類のhomologous サイトカインで構成される(IL-17A-F)
    • IL-17Aが最も豊富に調べられている
  • IL-17受容体
    • A-Eの5種類のサブユニットを有するhomodimer もしくはheterodimerである(IL-17RA-E)
    • それぞれの受容体の種類に関する、親和性、細胞への局在、下流シグナルへの作用の違いは完全にはわかっていない
  • 乾癬に対して、TNFα阻害も有効だが、皮膚への有効性はIL-17阻害のほうが明らかである

  • IL-17阻害薬
    • セクキヌマブ
      • IL-17Aに対する完全ヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • 乾癬、PsA, ASに有効
        • RAへの有効性には乏しい
    • Ixekizumab
      • IL-17Aに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • PsA, 乾癬に対する有効性はセクキヌマブと同等
    • bimekizumab
      • IL-17A, IL-17Fのhomologue epitopeに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
      • 乾癬とPsAに対するtrialが進行中
    • 他の薬剤は下のTable1参照

    • IL-17阻害は、重症となることはないがカンジダ感染症と関連しており、IL-17の真菌感染症に対する関与が示唆されている

    • IL-17受容体阻害薬
      • ブロダルマブ(ルミセフ®︎)
        • IL-17RAに対するヒト化モノクローナル蛋白製剤
          • IL-17RAには、IL-17A, IL-17F, IL-17A/F, IL-17C, IL-17E(IL-25)が結合してシグナルを伝達する
        • Figure1にあるように、広域にシグナルを阻害する
          • IL-17E(IL-25)を阻害すると、マウス・ヒトIBD患者・ヒトRA患者においてTh2を活性化してTh17分化を抑制することが知られている。
        • 日本では、乾癬に対して承認されている

    • IL-17阻害は、RAと同様に、非感染性炎症性ぶどう膜炎への有効性は限定的である
      • すなわち、病変局所におけるサイトカインの発現は、考えられている病態とは異なるということだろう
    • さらに、セクキヌマブ、ブロダルマブはクローン病を増悪させることが知られており、IL-17Aは炎症性サイトカインとしての要素以外に、腸管免疫に対してはnegative regulatorとしての役割もあるのだろう
      • もしかしたら、IL-17Aは腸内細菌叢や真菌と相互に作用しているのかもしれない

    Th17への分化とIL-12 superfamily
    • naive CD4陽性T細胞の分化には、IL-12 superfamilyであるIL-12, IL-23, IL-27, IL-35が関与している
      • 特にIL-12, IL-23は、Th17分化が関わる病態への治療標的として知られてきた
    • ウステキヌマブ
      • IL-12とIL23に共通の、p40サブユニットに対する完全ヒト化モノクローナル抗体である
      • PsA, クローン病、乾癬に承認されている
        • ASに対してもopen-labelで有効性を認めている
      • IL-17A阻害薬と異なり、クローン病にも有効であり、中等症以上の乾癬への有効性はセクキヌマブに劣る
        • IL-23を介したTh17分化抑制と、IL-17Aそのものを阻害することの違いを反映しているのだろう
          • Th17はIL-17以外のサイトカイン(IL-17F, IL-22)も産生し、IL-17AはTh17以外の細胞からも産生される
    • p19サブユニット阻害を介して、IL-23を選択的に阻害する治療薬が開発中である
      • IL-23選択的に(IL-12/23を共に阻害するのではなく)阻害することで、感染症や悪性腫瘍のリスクを下げることができることが期待されている
      • 実際に、乾癬に対するウステキヌマブの市販後調査で、non-melanoma skin cancerとウステキヌマブの関連が示唆されている
        • これは、おそらく、IL-12を介した細胞性免疫の阻害が原因と考えられる

    head-to-headの結果
    • 乾癬に対する有効性
      • IL-17A阻害薬(ixekizumab)、IL-23阻害薬(guselkumab)> TNFα阻害薬(それぞれETN, ADA)
      • IL-17A阻害薬(セクキヌマブ)、IL-17受容体阻害薬(ブロダルマブ)、IL-23p19阻害薬(risankizumab)> IL-12/23p40阻害薬(ustekinumab )

    <type1 IFN axis>
    • IFNは、免疫を活性化するサイトカインであり、大きくは以下の3つに分類される
      • type1
        • IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκ、IFNω
      • type2
        • IFNγ
      • type3
        • IFNλ

    • type1の中では、IFNαが最も調べられている
    • 通常の場合にはtype1 IFNの産生は検出感度以下にコントロールされているが、ウイルス感染症などの際には急速に産生が亢進する
      • 主にはplasmacytoid DC(pDC)から産生される。
      • pDCには、TLR7やTLR9などの細胞内パターン認識受容体が豊富に存在している
      • type1 IFNが受容体に結合すると、IFN-stimulated genes(ISGs)の発現が増加する。
      • 作用は多様で、樹状細胞の活性化、Th1増加、Th17増加、Treg減少、B細胞活性化され抗体が産生される
    • SLE, SjS, SSc, 一部のRAでISGsが増加している
      • SLEでは、内因性のDNA複合体がpDCsのTLR7/9に結合し、type1 IFNを産生することが病態として考えられている
    • 開発中のtype1 IFN経路への阻害薬は下の表の通り
      • sifalimumab
        • SLEでは、高用量ではplaceboと比較して有効だった
        • IFNαはウイルス感染への防御に関しており、帯状疱疹はdose-dependentに増加した
        • 筋炎では、13種類のIFN signature geneを抑制し、臨床所見の改善と筋力改善を認めた
      • rontalizumab
        • SLEに対してはprimary endpointを満たせず失敗に終わったが、IFNが少ない患者群の方が多い患者群より有効である傾向を認め、ウイルス感染症が増えなかったため、試験デザインが問題であった可能性もある
      • IFNαに対する抗体を誘導する、ワクチンタイプの治療も開発中である
        • IFN-α kinoidを投与することで、IFNαに対する中和抗体を自己で産生させる
    • type1 IFN受容体への阻害薬
      • anifrolumab
    • type1 IFN経路の上流への阻害薬
      • BIIB059  
        • 樹状細胞表面に存在する受容体であるBDAC-2に対するモノクローナル抗体
      • talacotuzumab
        • CD123に対する細胞障害性モノクローナル抗体
        • CD123はpDCsに多く発現している



    type2 IFN阻害
    • type1 IFNが主要なIFN gene signature の誘導因子であるが、type2, 3も同様にこれらを誘導する
    • IFNγシグナルは、type1 IFNとは異なる受容体に結合するが、figure2のように、下流シグナルはいくつかoverlapしている

    • JAK阻害薬はIFNシグナルの阻害薬として期待されている


    <cell adhesionに対する治療>

    インテグリンに対する阻害


    • 接着分子は、循環している免疫細胞を誘導してくるための細胞間相互作用に必要である
    • インテグリンファミリーは、白血球・内皮細胞・粘膜上皮細胞に存在し、細胞外マトリックスや特異的な受容体と結合する
    • 白血球に発現している接着分子は、6種類である
      • LFA-1 (αLβ2)
        • immunological synapseを形成する
      • Mac-1 (αMβ2)
      • αxβ2
      • αdβ2
      • α4β7 
        • 腸管内皮細胞表面に存在するMAdCAM-1と結合することで、腸管特異的リンパ球を引き寄せる
      • αEβ7 
        • 腸管上皮細胞のE-cadherinと結合し、粘膜における白血球の保持に重要
    • Natalizumab
      • 自己免疫疾患に対して使用された最初のインテグリン阻害薬
      • α4インテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
      • 非選択的に、リンパ球の遊走を、脳血液関門(α4β1インテグリン)と腸管(α4β7インテグリン)において阻害する
      • 多発性硬化症とクローン病に対して有効
      • 市販後調査でPMLが発生
    • efalizumab
      • LFA-1のαLインテグリンサブユニットに対するモノクローナル抗体
      • 乾癬に有効だが、PML発生により市場から消えた
    • lifitegrast
      • LFA-1阻害薬
      • 乾性結膜炎に対して、眼に局所的に使用することで最近承認された
    • carotegrast methyl、firategrast 
      • ともにα4インテグリン阻害薬
      • それぞれ潰瘍性大腸炎、多発性硬化症に対して承認された
    • 感染症に対するリスクを抑えるために、下の表に示す通り、より選択的なインテグリン阻害薬が開発されている




    <JAK阻害薬>
    →JAK阻害薬:review



    <特異的な細胞への標的治療>



    B細胞標的治療

    • RTXから始まり、下の表にあげたものが開発されてきている
    • ocrelizumab
      • ヒト化抗CD20モノクローナル抗体
      • 多発性硬化症に対して有効
        • RTXは再発寛解を繰り返している場合にのみ有効性が示されているが、ocrelizumabは初回進行性の多発性硬化症でも有効性が示されているが、その違いの原因はわかっていない
      • RA, SLEに対しても試されたが、有害事象により中止となっている
    • obinutuzumab
      • CD20に対するモノクローナル抗体
      • 糖鎖工学に基づき、細胞障害性が改良された
      • 造血器悪性腫瘍に対して市場で使用されており、SLEに対してはphase2が進行中
    • B細胞depletionのみではなく、B細胞の成熟・生存を阻害するアプローチも進んでいる
      • BAFF, APRILは、それぞれB細胞成熟、形質細胞生存・クラススイッチに関して重要な分子である
      • ベリムマブ
        • SLEに対して承認されているが、関節・皮膚病変以外の有効性のデータは限られている
      • tabalumab(可溶性・膜結合型BAFFに対する抗体)、blisibimod(BAFFに対するpeptibody)
        • SLEに対するphase3臨床試験での有効性は不十分だった
      • BAFFとAPRILはtransmembrane activator and calcium-modulator and cyclo- philin ligand interactor (TACI) に結合する
        • TACI:IgG-Fc fusion peptideで、BAFFとAPRILの両者を阻害するataciceptは、感染症のリスクを高める懸念がある
      • RAに対しては、RTXは有効であるものの、BAFF/APRIL阻害の有効性は限定的だった
        • おそらくこの違いの原因は、BregがAPRILを介してIL-10を産生するといった、B細胞のmodulator effectsが関係しているかもしれない




    Treg標的治療

    • Tregを刺激することも考えられている
      • 低用量recombinant IL-2の投与など
        • 高用量で投与するとeffector T細胞が刺激され、これはメラノーマなどで治療として用いられている
        • 低用量で投与すると、Tregが有意に増加する
        • 実際に、C型肝炎関連血管炎、GVHD、SLE、1型糖尿病、円形脱毛症に対してearly phaseの試験で有効性が確認されている
      • TGN-1412
        • 共刺激分子であるCD28に対するsuper-agonist モノクローナル抗体である
        • phase1では健常人に致死的なサイトカインストームを起こした
          • これは、CD28を介して組織に局在するmemory T細胞を活性化したことが原因と考えられている
          • ちなみに、カニクイザルのmemory T細胞にはCD28が存在しないため、preclinical 試験ではサイトカインストームは起きなかった
      • tregalizumab
        • CD4に対するモノクローナル抗体
        • preclinical試験では、他のCD4モノクローナル抗体と異なり、遠位にあるepitopeに結合してTreg特異的に活性化した
          • しかしながら、RAに対するphase2b試験ではplaceboと比較してACR20の有意な改善を示すことはできず、開発は中止された
    • 最近では、Treg epitopes (Tregitopes) が注目を集めている
      • Tregを特異的に活性化する
      • IgG分子内に存在する保存されたアミノ酸配列で、MHCⅡ allele に対して提示され、Tregを特異的に活性化する
      • IVIgがTregを増加させる機序としても考えられている

    2018年1月16日火曜日

    自己免疫疾患におけるplasma cell標的治療について


    Hiepe, Falk, and Andreas Radbruch. "Plasma cells as an innovative target in autoimmune disease with renal manifestations." Nature Reviews Nephrology 12.4 (2016): 232-240.

    • plasma cellが最初に発見されたのは1947年で、抗体を産生する細胞としてAstrid Fagraeus が発見した
      • 当初は、活性化B細胞から継続的に分化してくる、均一な、short-lived の細胞集団と考えられていた
    • 当時から、一部の専門家は、抗体はlong-lived plasma cellから産生されると仮説を立てていたが、その証明がなされたのは1997年になってからであり、Manzらが報告した
    • これらの知見に基づいて、2004年にHoyerらが、SLE腎炎マウスモデルを使用して、short-lived plasmablastもしくはplasma cellと、long-lived plasma cellの両者が自己抗体を産生することを報告した
      • 現在では、long-lived plasma cellは、液性免疫を維持する基盤の細胞集団であることがわかっている
      • short-lived plasma cellとは異なり、long-lived plasma cellは(自己反応性のものも含めて)、B細胞前駆細胞に非依存的であり、CYCなどの増殖を妨げる薬剤に対して抵抗性を有しているため、治療標的として注目されてきた
    • 今回のレビューでは、short-lived plasma cellとlong-lived plasma cellの発生、plasma cellの自己免疫疾患における役割、自己反応性plasma cell除去の治療戦略に関して述べている


    plasma cellの発生
    • 膜結合型の抗体は、抗原に対する受容体として作用し、B細胞表面に存在しているが、これらの細胞は抗体を分泌しない
    • plasma cellは、以下の3つの経路を介して、B細胞から発生する
      • B1細胞 → plasma cell
      • T細胞非依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
      • T細胞依存的な機序で、B2細胞 → plasma cell
    • マウスでは、B1細胞は、TLRを介してplasma cellへ分化し、主にIgMを産生する
      • ヒトにおいては、そのような経路がB1細胞において存在するかはわかっていない
    • B2細胞は、T細胞依存性と非依存性の経路でplasma cellに分化する(下図)
      • T細胞非依存性の経路は、以下のいずれかの結果である
        • B細胞受容体(BCR)非依存性の、LPSのようなmitogenに対するpolyclonal B細胞の反応
        • long-chain polysaccharides によるBCR活性化
          • Marginal-zone B2細胞は、short-lived plasma cellに分化し、主にIgMを産生する
      • 一方で、T細胞依存性の経路は2段階ある
        1. extrafollicularでの反応によってshort-lived plasma blastへ分化し、中等度の親和性を有する抗体を産生する
        2. 活性化B細胞の一部は、再びB細胞のfollicleへ入ってTfhの下で増殖し、germinal centerを形成する。このgerminal centerで発生したplasma cellは、骨髄のnicheにおいて長期に生存し、高親和性の抗体を産生する
    (Cellular and Molecular Immunology 12, 31–39)



    • B細胞は、活性化した後に、増殖可能なpre-plasmablastとplasmablastを経て、増殖せずに生着するplasma cellへ分化する
      • plasmablastもplasma cellも、抗体を産生する
      • これらの分化段階では、それぞれ異なる表面マーカーが発現している(table1)
      • plasma cellも多様であり、CD19が発現しているものとしていないものが骨髄や炎症性組織に存在していることがわかっている
        • CD19, CD38, CD138の発現によって、骨髄のplasma cellは、4つのサブセットに分けられる



    Long-lived plasma cells
    • Long-lived plasma cellsは、二次的な免疫反応によって発生し、発生にはgerminal centerでの反応が必要である
      • plasmablastのうち、限られた数しかlong-livedに分化できない
    • plasmablastは、骨髄や炎症性組織に移動し、long-lived plasma cellとして生存するのに必要なnicheを競合し合う
      • 骨髄のnicheは限られているが、炎症性組織のnicheは炎症の程度に依り、炎症がおさまるとnicheも消える
        • 感染症の罹患部位にplasma cellが存在することは、その部位においてplasma cellが産生した抗体によって原因微生物が排除されるという仮説を支持している
    • オートファジーの過程(細胞のホメオスタシスを維持するために細胞質成分にリサイクルする、リソソームによる自家消化)は、plasma cellの寿命に関与している
      • plasma cellはオートファジーが活性化している
    • plasma cellの寿命は、nicheからのsurvival factorに依存しており、骨髄nicheから分離するとlong-lived plasma cellは数日で死滅する
      • nicheは、CXCL12とVCAM1を発現している間葉系細胞によって構成されている。また、巨核球と好酸球は、survival factorであるBAFF、APRIL、IL-6を産生している
      • APRILとBCMAの骨髄における相互作用が、plasma cellがMCL-1を多く発現するのに必要である
    • 炎症性組織におけるplasma cell生存に関与しているfacrtorは不明な点が多いが、CXCL12発現細胞、CXCR3リガンド(=CXCL9, CXCL10, CXCL11)、APRIL, BAFFが炎症性組織で関与していることが報告されている
    • long-lived plasma cellは、memory B細胞・B細胞活性化・抗原の結合・T細胞による補助とは非依存性に抗体を産生し、memory cellsの性質を有している


      Plasma cells in autoimmunity 
      • 臓器病変として腎臓が含まれる自己免疫疾患で、自己抗体が病態に関与している疾患はTable2に示すように多い

      • 自己抗体を産生するplasma cellが、これら自己免疫疾患の病態において重要である
        • NZB/Wマウス(SLEモデルマウス)のplasma cellを、plasma cellが欠損し免疫不全であるRag1−/−  マウスに移植すると、抗ds-DNA抗体を産生するようになり、免疫複合体を形成して腎炎を生じる
      • 自己抗体は、2つの異なる独立したplasma cellから産生される(下、Figure1)
        • 1つは、新規に発生したshort-lived plasmablastとplasma cell
          • これらはB細胞活性化に依存しており、脾臓とリンパ節で生じる
          • B細胞が活性化するような状態、すなわちワクチンや自己免疫疾患再燃の過程で起こる
          • short-lived plasmablastは末梢血に存在しており、フローサイトメトリーで特定可能である
          • plasmablastの数の増加 or plasmablast/B細胞比の増加は、B細胞の活性化の指標として、SLEやAAVなどの自己免疫疾患で使用されている
          • 二次免疫での反応では、ワクチン特異的な、オリゴクローナルな、高頻度に変異したplasmablastが誘導される
          • 活動性のSLEにおいては、一部は自己抗原特異的なplasmablastがmemory B細胞から分化するが、大半は、ポリクローナルな活性化naive B細胞から発生する、低いレベルでのsomatic hypermutationを示すplasmablastである
            • 驚くべきことに、SLE患者において、活性化naive B細胞クローンが数ヶ月末梢血に存在している
            • plasmablastの増加は、抗ds-DNA抗体のような自己抗体増加と関係している
        • 2つ目は、long-lived memory plasma cell
          • short-lived plasma cellと異なり、memory plasma cellは通常の免疫抑制治療に抵抗性である
            • SLE腎炎モデルマウスでds-DNA抗体を産生するNZB/W F1 マウスでは、CYC, ステロイドの併用治療でも骨髄と局所の炎症部位に存在するplasma cellを除去できない
          • memory plasma celは、B細胞非依存性に自己抗体を産生するため、B細胞を直接的に標的にした治療(抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗BAFF抗体)もしくは間接的に標的にした治療(Th細胞阻害薬)に影響されない
            • これらの治療で自己抗体が低下しない場合には、memory plasma cellから産生されていると考えられる
        • これら2つの機序のうち、いずれが主に自己抗体を産生しているのかはわかっていない
      • 自己反応性plasmablastは、pritectiveに作用するlong-lived plasma cellともnicheを競合する
        • 骨髄が主なlong-lived plasma cellのnicheであるが、炎症性自己免疫疾患では炎症組織もまたnicheとなりうるので、その部位において病的な自己抗体を産生する
        • 活動性SLE患者の骨髄、リンパ節、腎病変のplasma cellは、BAFF, APRILを産生することができ、自身の生存に関与しているかもしれない




      plasma cellを標的にした治療


      conventional immunosupression
      • short-lived plasmablastとplasma cellは、増殖しているplasmablastとB細胞を標的にして、通常の免疫抑制治療に反応する
        • 増殖していないplasmablastは、これらの治療開始後数日で消失する
        • RTX, ベリムマブは、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するが、long-lived memory plasma cellには影響しない
        • 自己反応性B細胞を刺激するfactorを阻害する治療、すなわちtype1 IFNや、ヘルパーT細胞やTregを標的にした治療も同様に、short-lived plasmablastとplasma cellの発生を阻害するだろうが、long-lived memory plasma cellには影響しないだろう


      Antithymocyte globulin 
      • 自家造血幹細胞移植において使用されるATGは、自己反応性memory細胞を含む獲得免疫システムの全体を除去する
        • ポリクローナルなATGは、CD38, CD138, CD52のようなplasma cellに発現している分子に結合する
        • これによって、健常人と同じような獲得免疫を再構築することができるかもしれない


      Proteasome inhibitors 
      • Proteasome inhibitors は、より選択的に、plasma cellを除去する
      • plasma cellの腫瘍である多発性骨髄腫において使用されているボルテゾミブは、免疫グロブリン合成を誘導し、unfolded proteinの蓄積によってアポトーシスを誘導する
        • NZB/Wマウスでは、ボルテゾミブは、ほぼ完全にplasmablastとplasma cellを除去し、ds-DNA抗体産生と腎炎の発症を防ぎ、コントロールと比較して生存期間が著明に延長した
        • この結果を受けて、通常の治療で治療抵抗性SLEに対して、2-4回のサイクルでボルテゾミブを投与するpilot studyが行われたところ、SLEDAIは~60%低下し、ds-DNA抗体価は正常値まで改善した
          • ワクチンによる抗体価も~30%まで低下し、末梢血に循環しているplasmablastと骨髄のplasma cellも抗体価の低下と相関して減少した
        • さらに、マウスモデルでは、proteasome inhibitorは、plasma cytoid DCsによるtype1 IFNの産生も阻害し、これも機序として考えられる
        • また、in vitroでは、活性化ヒトT細胞を選択的に除去する作用も示されており、これによってT細胞とB細胞のアポトーシスを誘導し、NFκB活性化を阻害する
      • AAVでも、ボルテゾミブによるplasma cell除去は試みられている
        • この疾患のモデルマウスでも、脾臓や骨髄に存在するMPO-ANCAを産生するplasma cellの数を有意に低下させ、MPO-ANCAが低下し腎炎の発症を予防した
        • 治療抵抗性のAAVや特発性膜性腎症によるネフローゼ症候群に対するボルテゾミブ使用のケースレポートでも、良好な結果が報告されている
      • 新世代のproteasome inhibitorであるdelanzomibやcarfilzomib は、より少ない毒性でより有効な結果を残すころが期待されている


      Targeting survival factors 
      • miRNA-148aやsurvival nicheの構成成分など、plasma cellのsurvival factorを標的にした治療も検討されている
        • アタシセプト(可溶性TACI-Ig)は、BAFFとAPRILを中和し、有望なアプローチであり、plasma cellと免疫グロブリンを低下させる
          • phase2/3では、アタシセプト 75mgでは、中等症以上のSLEの再燃を予防できなかった
          • 150mgを投与した試験では再燃を予防できたが、肺炎による死亡症例が2例あり、早期にこの試験は中止された
          • また、多発性硬化症では、アタシセプトによってむしろ疾患活動性が増加し、RAでは全く有効性を示さなかった
      • 接着分子であるVLA-4、LFA-1に対するモノクローナル抗体製剤は、wild-type C57BL/6 マウスにおいて、骨髄のplasma cellを除去した
        • この効果は、CD20抗体を投与してB細胞を除去することで延長した
        • しかしながら、NZB/Wマウスでは、VLA-4、LFA-1、CD20に対するモノクローナル抗体製剤の有効性は不十分であった
          • この違いの理由はわかっていない


      Targeting plasma cell homing 
      • CXCR4-CXCL12の相互作用は、plasma cellが骨髄に移動するのに必須である
        • plasma cellがCXCR4を発現しており、CXCL12を発現している骨髄nicheを主に形成している間葉系細胞に惹きつけられる
        • 炎症組織(腎臓、関節、皮膚、唾液腺)のnicheでも、CXCL12は過剰に発現している
        • NZB/Wマウスに対して、CXCLに対するモノクローナル抗体製剤を投与すると、発症前の場合は腎病変とds-DNA抗体産生が予防され、すでに発症しているマウスだと疾患活動性を低下させる
        • CXCR4アンタゴニストであるCTCE-9908も、B6.Sle Yaa SLEモデルマウスに対して同様の効果を示した
        • NZB/Wマウスのplasma cellを、免疫不全であるRag1−/− マウスに投与したところ、CXCR4阻害薬(AMD3100)によって骨髄への移動が阻害された
        • さらに、NZB/Wマウスに、短期間のボルテゾミブでplasma cellを除去した後に、長期間AMD3100を投与すると、骨髄でのplasma cellの回復と腎病変発症を阻害し、ds-DNA抗体とタンパク尿を低く維持した
      • plasma cellと同様に、CXCR4を発現している他の炎症性細胞(マクロファージ、好中球、T細胞)が炎症部位に移動するのを抑制した
      • 第8因子に対する自己抗体を有する血友病のモデルマウスに対して、AMD3100によるCXCR4阻害とG-CSFの併用治療で、第8因子を阻害する抗体を産生するplasma cellを含むlong-lived plasma cellを低下させた


      Targeting cell-surface molecules
      • CD38が、plasma cellと多発性骨髄腫細胞の表面に多く発現している
        • そして、これは、他のリンパ球系細胞、骨髄系細胞にはあまり発現していない
      • daratumumabというCD38に対するモノクローナル抗体を使用した臨床試験では、治療抵抗性の多発性骨髄腫患者の骨髄に存在するplasma cellを除去し、良好な結果を示した
        • 自己免疫疾患に対するデータは存在していない


      plasma cell除去による有害事象
      • 感染症
        • ボルテゾミブでは、免疫グロブリンは~30%低下した(SLE)
        • アタシセプトでは、IgMとIgAが~50-60%低下し、IgGは30-40%低下した(SLE, RA)
          • アタシセプトに2週間先行して高用量ステロイドとMMFを投与していたSLE腎炎の患者では、アタシセプトを投与して、IgGが300mg/dLまで急激に低下し、肺炎を発症した。こういった患者には、免疫グロブリンの補充やワクチン投与を考慮する必要がある。
        • ワクチンに対する抗体価は、~30%低下したが、その多くはまだ有効な抗体価を維持していた


      Depletion of pathogenic plasma cells 
      • memory plasma cellに対する治療は、ワクチンに対して反応したようなprotectiveなplasma cellも除去するので、病的なplasma cell選択的に除去する治療が望ましい
      • これまで、SLEの病態に関与しているplasma cellを直接標的にする表面蛋白は同定されていないが、それらが産生している抗体によって病的なplasma cellとprotectiveなplasma cellを区別することは可能と考えられる
        • それぞれのplasma cellをそれ自体が標的にしている抗原で覆ってしまえば、plasma cellが産生している抗体がplasma cellの表面に結合して、補体を活性化してplasma cellが除去できるだろう
      • 理論的には、マウスのCD138に対する抗体のF(ab)2 fragmentを、自己抗原で共役させると、plasma cellの表面を覆い、自己抗体を産生しているplasma cell選択的に、補体による細胞溶解 or antibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC) を誘導することができる(figure3)
        • in vitroでは、証明できている
        • しかしながら、この手法ではすでに末梢血に循環している自己抗体は除去できないので、血漿交換や免疫吸着を併用する必要があるだろう


      Targeting precursor B cells 
      • NZB/Wマウスでは、B細胞の活性が高く、ボルテゾミブを中断すると、自己反応性memory plasma cellが急速に再構築される
        • これは、活動性SLEにおいても同様に認められ、ボルテゾミブを1サイクル投与した後、末梢血に循環しているplasmablastとds-DNA抗体が再び増加してくる
        • 長期間のボルテゾミブ or proteasome inhibitorは、毒性(末梢神経障害、肺障害、ヘルペスなどの感染症、便秘・下痢、骨髄抑制、局所投与部位の皮下脂肪組織萎縮や皮膚硬結)やコストからしても望ましくない
        • そのため、plasma cellの前駆細胞を阻害することで、自己反応性memory plasma cellの再構築を抑制する必要がある
        • NZB/W マウスでは、短期間のボルテゾミブの後に、B細胞除去治療(CD20に対する抗体製剤、CYC)を行うことで、ds-DNA抗体産生long-lived memory plasma cellの再構築を阻害し、腎炎の発症を遅らせた
          • この結果から、今後、自己免疫に対して新しい治療戦略を開発する際に、まず最初に自己反応性memory plasma cellをボルテゾミブで除去し、その後にRTXやベリムマブによるB細胞標的治療を行うことは有効かもしれない

      2017年11月19日日曜日

      2016 ACR-EULARシェーグレン症候群分類基準の特性について(日本人の解析より)


      Tsuboi H, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1980–1985. 

      背景

      • シェーグレン症候群は、主に唾液腺や涙腺などの外分泌腺を侵し、しばしば腎臓や肺の間質、神経系、血液、筋骨格系などの腺外症状を引き起こす自己免疫疾患である
      • リンパ球が外分泌臓器に浸潤し、ドライマウス・ドライアイや様々な腺外症状を生じる
        • 他の自己免疫疾患に関連しないprimary SjSと、関連するsecondary SjSに分けられる
      • 日本には、厚生労働省が提案した診断基準がある。以下のものを含む3つが、ここ3年間では診断 or 分類の際に使用されてきた。
        • the American-European Consensus Group classifiCation criteria for SS (AECG) (2002) 
        • the Sjögren’s International Collaborative Clinical Alliance (SICCA) が提唱しているthe 2012 ACR classification criteria for SS
      • 筆者らは、694人の日本人SjS患者を解析し、臨床医の診断をgold standardとしてそれぞれの基準の特性を調べたところ、日本人SjSにおいては厚生労働省基準がもっとも優れていた
        • 日本厚生労働省基準:感度 79.6%、特異度 90.4%
        • AECG:感度 78.6%、特異度 90.4%
        • ACR:感度 77.5%、特異度 83.5%
      • 2016年に新しいSjSの分類基準がACR-EULARから出された(Shiboski CH, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:9–16.)
        • これは、上記SICCAとEULARのSjS task forceが合同となり、国際的な共通の分類基準を作るために、SS Criteria Working Group を結成し作成したものである 

      各項目の重み付けの結果


        • 組み入れ基準を満たし、除外基準に該当せず、スコア4点以上を分類
          • 口唇唾液腺生検でリンパ球性唾液腺炎の所見を示し、フォーカススコア(FS) ≧ 1フォーカス/4㎜^2:3点
          • 抗SS-A/Ro抗体陽性:3点
          • 少なくとも片眼で眼球染色スコア ≧ 5点(もしくはvan Bijsterveldスコア ≧ 4点):1点
          • 少なくとも片眼でシルマーテスト ≦ 5㎜/5分:1点
          • 無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/分:1点

      組み入れ基準
      眼球もしくは口腔乾燥症状を示す、次の項目のうち一つ以上が該当する
      • 3か月以上毎日持続し困っている眼乾燥症状
      • 眼に砂や砂利が入ったような感じが反復して起こる
      • 人口涙液点眼を1日3回以上使用する
      • 3か月以上毎日口渇を感じる
      • 乾いた食べ物を飲み込むのに飲み物が必要になりことがよくあるがある、もしくはもしくはESSDAI質問票で1つ以上の領域が陽性でシェーグレン症候群が疑れる

      除外基準
      • 頭頸部の放射線治療の既往
      • PCRで確定した活動性のC型肝炎
      • AIDS
      • サルコイドーシス
      • アミロイドーシス
      • 移植片対宿主病
      • IgG4関連疾患


      • 上記4つの基準は項目、作成された目的が異なる
        • 厚生労働省基準は診断するため、他の3つは研究のための分類基準である
      • 今回の研究では、新しい2016ACR-EULAR分類基準を他の3つと比較した



      方法
      • 解析対象の499人(38人男性、461人女性)
        • primary SjSと診断 or primary SjS疑い患者
        • 病理、眼、口、自己抗体について全て評価されている
        • 日本の10施設
      • OSSは日本ではあまりやられていなかったので、Rose Bengal test, lissamine green test,  fluorescein staining testにてVan Bijsterveld Score ≥4 であればACR-EULARのOSSを満たし、Van Bijsterveld Score ≥3であればACRのOSSを満たすとした

      • 無刺激唾液分泌試験はあまり日本ではやられていなかったので、無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/min or ガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで、ACR-EULARとAECGにおける唾液分泌量低下を満たすとした
      • gold standardは臨床医の診断とした


      結果
      • 499人のうち、(gold standardである臨床医の診断のもとで)pSSと診断されたのは302人で、pSSでない(non-pSS)と診断されたのは197人だった
      • 各診断基準の感度、特異度は以下の通り(table2)であり、ACR-EULARの基準は有意に感度が高く、特異度は低かった(table3)
        • ACR-EULAR:感度 95.4%, 特異度 72.1%
        • 厚生労働省基準:感度 82.1%, 特異度 90.9%
        • AECG:感度 89.4%, 特異度 84.3%
        • ACR:感度 79.1%, 特異度 84.8%
      • 無刺激唾液分泌試験をおこなった患者に限った場合は下段のsubanalysis
        • ACR-EULAR:感度 94.1%, 特異度 76.7%
        • 厚生労働省基準:感度 74.9%, 特異度 90.6%
        • AECG:感度 85.7%, 特異度 86.1%
        • ACR:感度 79.8%, 特異度 81.1%



      • 各症例において、各基準を満たすか満たさないかを示したのがtable4
        • pSS症例(288人)も、non-pSS(55人)も、各基準のうち、ACR-EULARが満たす患者が最も多かった
        • pSSと診断された症例のうち、72.8%(220/302人)は4つ全ての基準を満たし、いずれの基準も満たさなかったのは11症例のみだった
        • non-pSSの場合は、いずれも満たさない割合が68.5%(135/197人)と多かく、全て満たしたのは8症例のみだった
        • ACR-EULAR基準以外の3つを全て満たすが、ACR-EULAR基準を満たさない症例はpSS診断症例・non-pSS症例のいずれにもいなかった


      • pSS症例302人のうち8人、non-pSS症例197人のうち11人は、ACR-EULARのみ満たした。この計19症例は、ACR-EULARが他の診断基準と合致していないという症例である。
        • pSS症例8人で、ACR-EULARのどの項目を満たしたか調べてみると、FS陽性(62.5%, 5/8症例)or SS-A抗体陽性(37.5%, 3/8症例)かつ唾液分泌量低下(87.5%, 7/8症例)or 涙液分泌量低下(12.5%, 1/8症例)にて4点となっていた(figure1A)
        • non-pSS症例も同様の組み合わせで4点となっていた(figure1B)

      まとめ
      • 新しいACR-EULAR基準は、他の3つの基準と比較すると、臨床医の診断をgold standardとした場合、感度が高く、特異度が低かった
      • 診断・除外する際に、ACR-EULAR基準と、そのほかの3つの基準が全て一致する割合も低かった
        • Shiboskiらからの報告では、ACR-EULAR基準は感度 96%、特異度 95%と高く、他の基準との一致度も高かった(AECG基準とのκ coefficient:0.91、 ACR基準とのκ coefficient:0.82)
      • 今回の結果と既報の結果が異なった原因は、ACR-EULARのみ満たした上記19症例が示している
        • 特異度が低かったことに関しては、non-pSS症例の11症例の解析で検討できる
        • 方法で述べたように、今回の試験では唾液分泌量低下の評価において、無刺激唾液分泌試験をやっていない症例が多く(166/499症例で未施行)、無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/min or ガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで、ACR-EULARとAECGにおける唾液分泌量低下を満たすとしたことが、特異度の低下と関係しているのだろう。
          • 実際に、この19症例に含まれるnon-pSSの6/11症例は、唾液分泌量低下をガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで定義していた。
          • そして、無刺激唾液分泌試験をおこなった患者群のみで解析したtable2のsubanalysisのほうが、全体での解析よりもACR-EULAR分類基準の特異度が高かった(76.7% vs. 72.1%)
        • 感度が高かったことに関しては、pSS症例の8症例の解析で検討できる
          • これら8症例では、FS陽性(62.5%, 5/8症例)or SS-A抗体陽性(37.5%, 3/8症例)かつ唾液分泌量低下(87.5%, 7/8症例)or 涙液分泌量低下(12.5%, 1/8症例)にて4点となっていた
      • 臨床試験にACR-EULAR基準を用いる場合には、特異度が低いため、non-pSS症例がある程度紛れてしまうことを念頭においておく必要があるだろう
      • limitation
        • gold standardが臨床医の診断としており、曖昧な部分がある
        • 涙腺病変と唾液腺病変の評価方法が施設によって異なっていた
      • これらlimitationを考慮すると、より優れた診断基準が必要である
        • 厚生労働省の基準は、pSSとsSSともに特異度が優れているが、唾液腺造影・唾液腺シンチ・ガム試験・サクソンテストはACR-EULAR基準・ACR基準のいずれにも含まれていない項目であり、眼の染色スコアのカットオフも他の基準と異なり(下記)、さらなるvalidationが必要である
          • 厚生労働省基準:Van Bijsterveld Score ≥3
          • the ACR-EULAR :Van Bijsterveld Score ≥4 or OSS ≥5
          • AECG:Van Bijsterveld Score ≥4
          • ACR criteria:OSS ≥3

      2017年10月18日水曜日

      原発性シェーグレン症候群における唾液腺エコー検査の特性

      Mossel E, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1883–1889.
      本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

      背景

      • 原発性Sjogren症候群(pSS)慢性の全身性自己免疫疾患であり、外分泌腺の炎症を生じる。
        • 有病率:0.05%
        • 口腔内乾燥症、乾燥性角結膜炎、倦怠感に加えて、腺外症状として関節痛・炎、筋痛などもある
      • 複数の分類基準がある
        • 2002年the American European Consensus Group (AECG) criteria が提唱されたが、ACRやEULARでは支持されなかった
        • 2012年ACR基準が提唱されたが、多くのSS専門家の間では受け入れられていない
        • 国際的な分類基準が必要なため、ACR-EULAR基準が最近提唱された
        • これら3つの分類基準は全て、唾液腺生検とSS-A/Ro抗体がpSS分類に重要とされている
          • AECGとACR-EULAR分類基準では、唾液腺の評価として無刺激唾液分泌量(UWS)が含まれている
      • エコーによる唾液腺評価は、pSSにおける唾液腺病変の評価として今後期待される項目である
        • しかしながら、検者による違いなどもある
        • 最近のmeta-analysisでは、エコーによるpSS診断精度は、感度69%, 特異度92%と報告された
          • しかしながら、研究間で臨床所見と方法が大きく異なっていたことが研究結果に影響している可能性がある
          • そのため、エコーによるpSSの診断精度については不明な点が多い
        • 洛和会丸太町病院救急総合診療科さんの非公式HPで上記meta-analysisを含むSSにおけるエコーを解説しております
      • 今回の研究では、エコー所見と耳下腺・口唇腺生検結果 & 唾液分泌量 & SS-A/Ro抗体を比較し、エコーの診断特性を調べた

      方法

      • University Medical Center Groningenにおいて、前向きにデータを収集したcross-sectional study
      • 110人の臨床的にpSSが疑われる18歳以上の患者に、エコーと生検を含む各診断検査を行い、AECG, ACR, ACR-EULAR分類基準の項目を評価した
      • エコー評価方法
        • Hocevarらのscoring system を使用(計0 - 48)
          • 両側耳下腺、顎下腺において、
            1. 甲状腺と比較した実質エコー輝度:graded 0–1
              • 0:同等、1:甲状腺より低エコー
            2. 不均質性:graded 0–3
              • 0:均質、1:mild、2:明らか、3:著明
            3. 低エコー領域の有無:graded 0–3
              • 0:なし、1:わずか、2:複数、3:多発
            4. 高エコー反射(hyperechogenic reflections):graded 0–3 (耳下腺)、graded 0–3(顎下腺)
              • 耳下腺
                • 0:なし、1:わずか、2:複数、3:多発
              • 顎下腺
                • 0:なし、1:あり
            5. 唾液腺の境界
              • 0:明瞭、1:一部不明瞭、2:全体的に不明瞭、3:境界がわからない

      (Hocevarらのscoring systemのエコースコアリングシステムの精度:元論文より)


      • 唾液腺生検の陽性
        • FS(浸潤した単核球の数 ≥ 50 lymphocytes/4mm2 )≥1 
      • UWS
        • 異常:≦ 1.5ml/15min

      結果
      • フローチャート(figure1)


      • baseline chraracteritics



      Total group (n=103)
      Age (years)
      50 (15)
      Females
      93 (90%)
      Ultrasound total score
      15 (10)
      Biopsy with focus score ≥1

         Parotid gland biopsy
      28 (36%)
         Labial gland biopsy
      29 (52%)
      Anti-SSA/Ro antibodies
      53 (52%)
      UWS ≤1.5 ml/15min
      55 (56%)
      OSS≥5
      30 (29%)
      Schirmer ≤5 mm/5min
      74 (72%)

      AECG – incl. parotid gland biopsy
      (n=97)
      AECG – incl. labial gland biopsy
      (n=96)

      Positive
      Negative
      Positive
      Negative
      Age (years)
      50 (16)
      50 (14)
      51 (15)
      49 (15)
      Females
      42 (93%)
      46 (88%)
      47 (96%)
      41 (87%)
      Ultrasound total score
      22 (11)
      10 (5)
      22 (11)
      10 (5)
      Biopsy with focus score ≥1
      25 (76%)
      3 (7%)
      26 (84%)
      3 (12%)
      Anti-SSA/Ro antibodies
      44 (98%)
      5 (10%)
      44 (90%)
      5 (11%)
      UWS ≤1.5 ml/15min
      33 (77%
      17 (35%)
      34 (72%)
      15 (34%)
      OSS≥5
      25 (56%)
      5 (10%)
      26 (53%)
      4 (9%)
      Schirmer ≤5 mm/5min
      40 (89%)
      30 (58%)
      42 (86%)
      27 (57%)

      ACR – incl. parotid gland biopsy
      (n=97)
      ACR – incl. labial gland biopsy
      (n=93)

      Positive
      Negative
      Positive
      Negative
      Age (years)
      48 (16)
      51 (14)
      50 (14)
      51 (14)
      Females
      40 (91%)
      47 (89%)
      39 (91%)
      44 (88%)
      Ultrasound total score
      23 (11)
      9 (4)
      22 (11)
      9 (4)
      Biopsy with focus score ≥1
      25 (78%)
      3 (7%)
      24 (83%)
      5 (19%)
      Anti-SSA/Ro antibodies
      44 (100%)
      5 (9%)
      40 (93%)
      4 (8%)
      UWS ≤1.5 ml/15min
      29 (71%)
      23 (45%)
      27 (68%)
      22 (46%)
      OSS≥5
      25 (57%)
      4 (8%)
      25 (58%)
      3 (6%)
      Schirmer ≤5 mm/5min
      38 (86%)
      32 (60%)
      36 (84%)
      30 (60%)

      ACR-EULAR – incl. parotid gland biopsy (n=99)
      ACR-EULAR – incl. labial gland biopsy (n=97)

      Positive
      Negative
      Positive
      Negative
      Age (years)
      50 (16)
      50 (14)
      51 (15)
      50 (14)
      Females
      48 (92%)
      42 (89%)
      51 (93%)
      37 (88%)
      Ultrasound total score
      21 (12)
      9 (4)
      20 (12)
      9 (4)
      Biopsy with focus score ≥1
      26 (72%)
      2 (5%)
      26 (79%)
      3 (13%)
      Anti-SSA/Ro antibodies
      51 (98%)
      1 (2%)
      50 (91%)
      1 (2%)
      UWS ≤1.5 ml/15min
      37 (76%)
      16 (36%)
      38 (73%)
      14 (35%)
      OSS≥5
      25 (48%)
      4 (9%)
      26 (47%)
      3 (7%)
      Schirmer ≤5 mm/5min
      45 (87%)
      26 (55%)
      48 (87%)
      23 (55%)

      Values are presented as number of patients (%) or mean (SD). When ‘including parotid gland biopsy’ is added, parotid gland biopsy outcome is considered an item of the AECG, ACR and ACR-EULAR criteria. When ‘including labial gland biopsy’ is added, labial gland biopsy outcome is considered an item of the AECG, ACR and ACR-EULAR criteria. UWS = unstimulated whole saliva; OSS = ocular staining score.




      • エコーの唾液腺生検結果の予測能(table1)
        • 耳下腺:良好
          • AUC:0.849 (95% CI 0.746 to 0.952)
          • 最適カットoff値:15
            • 一致率:83% (65/78)
            • 感度:75% (21/28)
            • 特異度:88% (44/50)
            • PPV:78% (21/27)
            • NPV:86% (44/51)  
        • 口唇腺:良好
          • AUC:0.824 (95% CI 0.714 to 0.934)  

          • 最適カットoff値:14
            • 一致率:79% (44/56)
            • 感度:72% (21/29) 
            • 特異度:85% (23/27) 
            • PPV:84% (21/25)  
            • NPV:74% (23/31) 



      • 唾液腺生検で陽性群の方が明らかにエコースコアが高い(figure2)



      • エコーの、UWS低下の予測能(table1)
        • 不良
          • AUC:0.696 (95% CI 0.593 to 0.799)
            • 一致率:66% (65/98)
        • UWS低下(≦ 1.5ml/15min)している群のほうが有意にエコースコアが高い
        • 相関の程度:fair
          • ρ=−0.366





      • エコーの、SS-A/Ro抗体陽性の予測能
        • 良好
          • AUC:0.803 (95% CI 0.711 to 0.894)
          • 一致率:82%(84/103)
        • SS-A/Ro抗体陽性群のほうが有意にエコースコア高い

      • エコーの、各分類基準を満たすことの予測能(table2)
        • AECG
          • 良好
            • AUC:0.826 (95% CI 0.735 to 0.918)
            • 最適カットoff値:15
        • ACR
          • 良好
            • AUC:0.862 (95% CI 0.777 to 0.947)
            • 最適カットoff値:15
        • ACR-EULAR
          • 良好
            • AUC:0.802 (95% CI 0.710 to 0.894)
            • 最適カットoff値:15



      • 各分類基準を満たす群のほうがエコースコアが高い(figure3)




      • エコーとSS-A/Ro抗体の組み合わせ
        • エコー陽性かつSS-A/Ro抗体陽性の群
          • 耳下腺生検で陽性:78% (14/18)
          • 口唇生検で陽性:94% (17/18)
          • AECG基準を満たす割合:94%
          • ACR基準を満たす割合:97%
          • ACR-EULAR基準を満たす割合:97%
            • 上記診断基準を満たす割合は、生検部位が耳下腺でも口唇腺でも同様
        • エコー陰性かつSS-A/Ro抗体陰性の群
          • 耳下腺生検で陰性:93% (37/40)
          • 口唇生検で陰性:77% (17/22)
          • AECG基準を満たす割合:98%
          • ACR基準を満たさない割合:100%
          • ACR-EULAR基準を満たさない割合:98%
            • 上記診断基準を満たさない割合は、生検部位が口唇腺の場合はもう少し下がる
              • それぞれ89%, 93%, 89%








      まとめ
      • 今回の試験では、臨床的にpSSが疑われる患者を対象としているので、実臨床に近い
      • ACR-EULAR分類基準とエコーを比較した今回が初めてだが、よく相関していた
        • 既報ではACR, AECG基準を比較していたが、その際はエコーのカットoff値は15-19とばらつきがあった
      • エコーで陰性の場合は、大半が耳下腺生検も陰性だったが、口唇腺の場合は26%は陽性となった
        • 一方で、エコーで陽性の場合は、大半が口唇腺生検も陽性だったが、耳下腺の場合は22%陰性だった
        • この結果の解釈の際には、全例にて両方の部位を生検したわけではないことを考慮しなくてはならないが、耳下腺と口唇腺の違いを示した結果となった
      • UWSが低下しているがエコーで陰性の場合は、SS早期もしくは他の原因でUWSが低下していると考えられる
      • エコーが発症早期のpSS患者をdetectできる感度は不明である
        • 今回の結果では、他の分類基準よりも、より低いエコースコアでACR-EULAR分類基準を満たしたため、ACR-EULAR分類基準がより早期の患者をdetectできるかもしれない
      • 各分類基準を満たすかいなかについて、エコーのPPVはNPVより高かったため(table2)、陽性の場合は分類基準を満たす可能性が高いが、陰性の場合は満たさないとは言えないだろう
        • 分類基準は、臨床においては診断のためにも頻用されるが、元々は研究のためにhomogeneousな集団を集めることを目的として開発されたものであることを念頭においておく必要がある
      • 今回の結果から、耳下腺でなく口唇生検を分類基準の項目として用いた場合、7-11%はエコー陰性かつSS-A/Ro抗体陰性でも各分類基準を満たす可能性があるので、唾液腺機能低下を示唆する所見がある場合には、もしエコー陰性かつSS-A抗体陰性でも生検は行なったほうが良いと思われる
        • 一方で、両者陽性の場合は、診断基準を満たす可能性が非常に高いので、生検は行わなくてもいいかもしれない

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