Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:3–17.
※axSpAに関する2016 EULAR-ACR recommendationは既述
※PsAに関する評価項目について
- PASDAS, GRACE, CPDAIをMDA criteriaの代わりにTICOPA studyに当てはめたらどうなるか、という試験はこちら
- 赤が含まれていない項目、緑が含まれている項目
DAPSA score
MDA Criteria
– GRAPPA [Ann Rheum Dis. 2010 Jan;69(1):48-53.
次の基準の7(臨床試験で検証)のうち5つを満たす場合は、MDAを有すると分類
- 圧痛関節数 ≤ 1
- 腫脹関節数 ≤ 1
- PASI ≤ 1 または BSA ≤ 3 %
- 患者疼痛 VAS ≤ 15 mm
- 患者全般疾患活動性 VAS ≤ 20 mm
- HAQスコア ≤ 0.5
- 腱付着部炎箇所 ≤ 1
- このMDA基準は、ランダム化比較試験と観察コホートで検証され、12ヶ月以上のMDAを達成した患者では、関節破壊の進行の有意な減少を示した
- Arthritis Care Res (Hoboken). 2010 Jul;62(7):970-6.
疾患活動性の複合評価項目について
- 炎症、構造変化、身体的機能の3つは、炎症性変化の過程で部分的に生じるが直接的に反映されているわけではないので、それぞれ別々に評価されるべきである
- そのため、ASDASが、ASAS improvement and remission criteria より適切と考えられる
- ASAS 20
- 以下の4つの項目において、合計20%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 1 unit 以上の改善を示す。
- patient global assessment
- pain
- BASFI(function)
- BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
- 全体で20%以上の増悪なし、改善のない項目にて1 unit以上の増悪がないことが前提
- ASAS 40
- 以下の4つの項目において、合計40%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 2 unit 以上の改善を示す。
- patient global assessment
- pain
- BASFI(function)
- BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
- 全ての項目で増悪がないことが前提
- ASAS remission
- 上記と同じ4つの項目において、全ての項目が(0-10のスケールで) 2 unit を超えない
- ASDAS inactive deisease:ASDAS < 1.3
- ASDAS, BASDAI, BASFI, BASMIの計算はこのサイトが便利です
決定したConsensusが下のtable3
- principle
- A:治療目標に関しては、リウマチ専門医と患者がshared decisionをしなくてはならない
- B:疾患活動性に従ったT2Tは予後を改善する
- PsAに対するTICOPA trialにて証明された
- しかしこれは、T2Tの有用性というよりcsDMARDsの急速な増量(T2T群:4週おき、対照群:12週おき)と併用治療の有用性が影響しているかもしれない。
TICOPA regimen(Lancet 2015;386:2489–98.)
- axSpAに対するT2Tの有用性を調べた試験はまだないが(TICOSPA, NCT 03043846, and STRIKE, NCT 02897115 が進行中)、疾患活動性によって構造変化が進行することを考慮するとおそらく有効だろう。
- C:全身性疾患であるため、関節外病変も注意し、他領域の専門家(皮膚科、消化器内科、眼科など)と連携する
- D:最終的なゴールは、長期の健康関連QOLを改善し、社会参加をできるようにする
- E:上記目標を達成するには、炎症をとることが重要である
- PsA患者の1/3は非進行性であるが、多くの患者では予後を改善するのに炎症を抑えることが必要
- recommendations
- 治療ターゲットは、clinical remission/inactive diseaseにすべきである
- remissionを達成できない患者もいるのも事実
- これまでremissionやinactive diseaseをターゲットにされた臨床試験は存在しない
- 多様されるMDAは、いくつかの項目が残存するしうるので、低疾患活動性に相当する
- そして、MDAを含む低疾患活動性をターゲットにすると構造破壊・身体機能低下が抑制される十分なデータがあるので、remissionやinactive diseaseをターゲットにすることは間接的に十分と考えられる
- 治療ターゲット・治療評価期間は、現在の臨床症状や使用している薬剤に合わせて、個別化すべき
- NSAIDsとDMARDsでは治療効果判定期間が異なる
- DMARDsであれば、3ヶ月以内に有意な改善を示し、6ヶ月以内に治療ターゲットを達成すべき
- clinical remission/inactive diseaseは、臨床症状と検査所見にて明らかな疾患活動性がないと定義される
- MDA, clinical DAPSA にはCRP, ESRが含まれていないが、これらをターゲットにしても予後改善に関連することが報告されているので、検査所見は含まないことも考慮された
- しかしながら、PsAでもaxSpAでも、急性期炎症反応蛋白レベルが構造破壊に関連することが示されており、客観的指標なので、疾患活動性の評価から除外はできないとされた
- そして、上記推奨における検査所見には、超音波やMRIなどの画像評価は含まれていない
- low/minimal disease activityは代替治療ターゲットになりうるかもしれない
- 既述したように、罹患期間が長い患者や併存疾患がある人では、remissionを達成するのは難しい
- 疾患活動性は、臨床所見と急性期炎症反応蛋白に基づいて計算されるべきである
- 画像所見に関しては、フォローすることの正当性を示すデータがなく、現実的にMRIを何回もフォローすることは困難であるため、含まれなかった
- RAでは、エコー寛解が臨床的寛解に優れているということは示せなかった
- 治療ターゲットを決めて治療内容を変更していくためにも、関節、皮膚、他の関節外病変(ぶどう膜炎、炎症性腸疾患など)に関するvalidated measuresを実臨床で使用すべきである
- 高疾患活動性であれば 1 - 3 ヶ月ごと、治療ターゲットを達成したら 6 - 12 ヶ月ごとに記録に残すべき
- axSpA → ASDAS、PsA → DAPSA or MDA にてターゲットを決定すべき
- axSpA
- 2012年推奨では ASDAS and/or BASDAI + CRP だったが、syndemophyte(靭帯骨棘形成)に関してはASDASのほうがBASDAI + CRPより関連していることが報告されたため、BASDAI + CRP は今回除外された
- そして、ASDASは、BASDAIよりも、多くの炎症性biomarkerやMRI変化と関連している
- PsA
- CPDAI、PASDASは多面的に評価している
- しかしながら、薬剤によっては皮膚には有効だが関節病変には効果が低く(フマル酸、CyAなど。IL-17iは関節病変に対してはTNFiと同等だが、皮膚病変に対してはより有効性が高い。)、多面的評価では全て含めて有効となってしまい、詳細な評価ができない
- ETN 50mg weekly vs. 100mg weekly を比較したPRESTA試験 のpost hoc解析でも、12週目時点で、CPDAIでは両群間に有意差がついたがDAPSAではつかなった。originalの試験でも、12週目時点でPASIのみ有意差がついたが、関節・dactylitis・腱付着部炎 scoreは有意差なし
- そのため、乾癬性関節炎に対しては50mg, 乾癬に対しては100mgで承認された
- GRAPPA, EULARでは、関節・腱付着部炎・皮膚病変のどれがpredominant かによって、異なる治療アルゴリズムを推奨している
- すなわち、PsAにおいては、全ての病変をそれぞれのscoreで評価すべきであり、皮膚病変とそれ以外の病変を1つのscoreにして計算することは避けたほうがいいだろう
- PsAにおいて、関節病変以外の活動性scoreが関節破壊に関連しているかはまだわからない
- DAPSAは、CRPが含まれているが、関節病変に重点をおいた指標であり、皮膚項目を入れてvalidationすべきという提案に関しては決着していない。スコアによってremission, low disease activityを定義できる。
- MDAは、末梢性関節炎、腱付着部炎、皮膚病変を含むが、CRPなどの検査所見が含まれていない。そして、T2Tの有用性に関して唯一評価されたことがある指標である。身体機能に関しては、罹患期間が長いと高くなりやすく、現在の疾患活動性と同じようにスコアに反映されてしまうかもしれない。
- そのため、PsAに関しては、もっと適切な評価項目に関する研究が必要である
- 治療ターゲットには、併存疾患、患者背景、薬剤によるリスクを考慮すべきである
- 臨床所見や検査所見だけでなく、画像評価の結果も、managementの考慮に入れたほうがいいかもしれない
- 画像所見は、治療ターゲットには含まれないが、治療ターゲットを達成できているか疑わしいときの補助にはなる
- 治療ターゲットを達成したら維持すべきである
- 患者は、治療ターゲット、T2T戦略のリスクとベネフィットに関して十分に情報を得て、議論に参加すべきである
上記をまとめたアルゴリズムが下のfigure2
- PsA, axSpAにおいて、結局、remissionの定義に全ての病変を含めるべきか結論は出ていない
- しかしながら、remissionとlow disease activityの予後に対する影響の違いはわかってきている
- 疾患活動性と構造変化の関係もわかってきている
- 2012年の時は全ての推奨がエビデンスレベルが低かったが、今回のは少し改善された
- 以下、future research agenda
- 脊椎病変と末梢病変は同じように治療に反応するのか?
- dactylitisとenthesitis
- 治療反応性のデータ
- 身体機能、健康関連QOL、社会参加、心血管系リスクに影響するのか
- 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
- 皮膚病変
- 身体機能、心血管系リスクに影響するのか
- 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
- 皮膚病変の改善が、関節病変や他の筋骨格系病変とは関係なく健康関連QOL、社会参加に影響するのか
- 画像
- フォローすることの有効性
- 画像寛解を達成すべきなのか
- 機能(HAQなど)
- PsAの複合的評価項目にどれだけ影響するのか
- axSpAとPsAの試験に関する戦略
- 治療による改善をどうやって維持するか、漸減できるのか
- リウマチ科など専門家によるケアが、非専門家より良い結果を与えるのか
- 患者教育による方法で予後が変わるのか
- 治療ターゲットを達成することでax/peripheral SpAの関節病変の構造破壊を抑制できるのか?
- CRPより優れたバイオマーカの開発
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