ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 7–17
Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 7–17
背景
- 成人と小児のリウマチ膠原病疾患は類似しており、同じ様に検査をして同じ様に治療するが、同じ疾患を見ることはない。
- 成人の関節炎は多くはRAであり、seropositiveとseronegativeに分かれる。RA以外には、SpAがある。
- 小児の関節炎には、ILAR(International League of Associations for Rheumatology)の7つのサブカテゴリーがある。それにはJIAが含まれ、JIAは6つに分かれる。それに加えて、7つ目には未分類JIAがある。
※小児慢性特定疾患難病情報センターのサイトより
- これらの用語は、研究にリクルートしたりアルゴリズムに沿った診療を行うのに便利であり、小児JIAのように時系列でその疾患を追うことができる
- しかしながら、小児の患者が成長して成人のリウマチ科医がみたときに、違う名前であるが同じ疾患だと判明した際に、やはり小児と成人の領域は共同して診療していく必要性があることを感じる
- 幸いなことに、ここ最近はgeneticsによって、これらの疾患のspectrumのpatternを特定できるようになってきた
- 今回のreviewでは、これらの研究結果を統合して、関節炎の"big picture"にしてみようかと思う。それによって、用語や領域を超えて、医師がどうやってこれらの疾患に向き合っていくかのヒントになれば良い
The limits of eminence-based classification
- 歴史的には、関節炎は臨床所見によって分類されてきており、専門家の意見に基づいた分類をeminence-based medicineと呼ぶこともある
- eminence-based medicineにも問題がある
- patternによる分類には限界があり、その最たるものがRAである
- RFとACPAsによってseropositiveとseronegativeに分かれるが、臨床所見はoverlapしており、これらを臨床的にはっきりと区別するのは困難である
- しかしながら、これらの違いは遺伝的な違い、関節炎への免疫複合体や補体の関与、滑膜のT細胞populationによって異なるものと考えられる。すなわち、臨床所見が同じだからといって病態も同じかというとそうではないことを示している、良い例がRAである
- 他の問題としては、医師は、自分がみているものが全てだと考えてしまうことである
- JIAと成人関節炎の境界線は16歳という年齢であり、病態ではないのである
The genetics revolution
- 遺伝学の発展によって、いくつかのclinical phenotypeが共通の遺伝的背景を有することがわかってきた
- 結果として生じてくるこれまでの身体所見や検査所見とは異なり、遺伝子は病気に先行しているため、原因の解明に繋がる可能性がある
- 関節炎と遺伝子の関係は、T細胞への抗原提示に関与するHLA領域から始まった
- RAとHLA-DRB1*04、強直性脊椎炎とHLA-B*27などである
- GWASによって、発症した人と発症していない人を比較することで、疾患のリスクとなる多くの遺伝子多型が判明した
- それによって、ASとIL-17経路のように治療に繋がった例もあるが、多くは疾患とその多型の関係は曖昧である
- 例として、RAにおいて、蛋白の配列が変わってしまうvariantは、リスクとされたハプロタイプの16%のみである
- そして、GWASでヒットした遺伝子が疾患に与えるリスクはそこまで大きくなく、RAではリスクとなるHLAキャリアのodds ratio(OR)はせいぜい2.8程度であり、JIAに至ってはnon-HLA部位のリスクキャリアのORは1.1-1.4である
- しかしながら、GWASでは頻度の高い遺伝子多型のみしか調べていない
- 進化圧(evolutionally pressure)により、頻度の高い多型は、比較的、機能的な影響は小さく、それゆえ疾患への影響も小さいが、その影響の小ささがそのまま遺伝子の重要性を反映しているとも限らない
- 例としては、HMGCR近傍のnon-coding多型は、コレステロール値への影響は小さいが、スタチンによる治療へ繋がった
- 同様に、RAではIL-6やCTLA-4/CD28を含む治療ターゲットを明らかにした
- また、頻度の低いものは評価していないので、それが大きな影響を有している可能性はある
- そして、遺伝子のvariantが判明しても、それがそのように疾患の発症に関与しているのかも重要である
Using genetics to help define categories of arthritis
- Figure1がそれぞれの疾患とリスク遺伝子の関連を示している。
- AOSDはデータがほぼないが、systemic JIAと臨床所見、IL-6とIL-18増加、末梢血の遺伝子発現signatureが類似しているため、同じStill's spectrumに入ると思われる
- これによって、疾患の間で共通しているものが見えてくる。
- しかし、当然、一卵性双生児が両者とも発症する確率は低い(ACPA-positive RA:16%、JIA:25%)ため、遺伝子が全てではない
- 小児と成人の違いは、発症年齢が違うということであり、これは遺伝子要因と環境要因の比率が発症年齢によって変わってくるということであろう
- すなわち、同じ疾患でも、40歳で発症する場合と70歳で発症する場合には異なる遺伝子背景を有していると考えられる
- seropositive RAとRF positive polyarticular JIA(childhood-onset RA, or CORAとも呼ぶ)は、シトルリン化ペプチドを提示しやすいHLA allelesに強く関連している
- seropositive関節炎は非常に年齢の低い小児には起こりにくく(6歳以下には、むしろRAと関連のあるHLA-DRB1 allelesは関節炎に対して保護的に働く)、JIAの特徴である慢性前部ぶどう膜炎もこのpopulationには起こることは稀であり、drug-free remissionも難しいことも共通している
- 関節炎の分布なども類似しており、この2疾患は同じclusterにあることが強く示唆される
- seronegative RA、seronegative oligoarticular(発症後半年間における罹患関節数 < 5) & polyarticular JIA(発症後半年間における罹患関節数 ≧ 5)
- 末梢血の遺伝子発現signatureとHLAは、oligo/polyによって分かれるのではなく、発症年齢によって分かれる(6歳未満 or 6歳以上)ため、seronegative JIAは罹患関節炎の数に関係なく"polygoJIA"というほうが適切であるという学者もいる
- 少なくともHLAに関しては、これらseronegative JIAと、psoriatic JIA、enthesitis related arthritis(ERA)は遺伝子的に多少異なっており、RF positive polyarticular JIAは明らかに異なっている
○=遺伝子による分類、□=ILAR分類
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