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2019年5月9日木曜日

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis

Ronald van Vollenhoven,1 Eun Bong Lee,2 Sander Strengholt,3 Christopher Mojcik,3 Hernan Valdez,3 Sriram Krishnaswami,4 Pinaki Biswas,3 Irina Lazariciu,5 Anasuya Hazra,4 James D. Clark,6 Jennifer Hodge,3 Lisy Wang,4 and Ernest Choy
Arthritis & Rheumatology Vol. 71, No. 5, May 2019, pp 685–695 DOI 10.1002/art.40780

<背景&目的>

  • トファシチニブは、JAK/STAT pathwayを介して、複数のサイトカインを可逆的・部分的に抑制する
    • IL-2, IL-4, IL-7, IL-9, IL-15, IL-21:common γ-chain familyであり、JAK1/JAK3を介してT細胞、NK細胞、B細胞の分化や増殖に重要である
    • そのため、トファシチニブが免疫細胞の機能や数に影響すると考えられている
  • トファシチニブは、生物学的製剤と同等の重症感染症リスクを有する
    • リンパ球数(absolute lymphocyte counts (ALCs))が低いほど重症感染症のリスクが増加する
    • トファシチニブ 5 or 10mg 1日2回投与されている場合、ALCs < 500 cells/mmとなる人が~0.04%程度おり、ここまで低下した場合はトファシチニブを中止することが推奨されている
  • 今回は、トファシチニブを短期間、中期間、長期間内服しているRA患者のALCs, リンパ球サブセット数( lymphocyte subset counts (LSCs))と感染症リスクの関連を調べた
<方法>
  • トファシチニブのphase 1,2,3, LTEの臨床試験に組み込まれていたRA患者を解析

<結果>

ALC

  • 短期間(ORAL Standard試験とORAL Start試験、Figure 2A,B) 
    • ALCは、最初の1ヶ月では増加した。しかし、時を経るごとに徐々にALCは低下。
  • 長期間(Figure 2C)
    • baselineより -400 cells/mm3 程度の減少で安定
    • しかし、1.2%(80/6897人)の人が ALC < 500 cells/mm となった
      • この80人のうち、64人はトファシチニブと他の薬剤を併用、16人はトファシチニブ単剤だった



SLC
  • T細胞:徐々に減少
  • B細胞:最初は増加するも、徐々に軽度低下
  • NK細胞:最初は低下するも、最終的には増加


中止後の可逆性
  • 上記 ALC < 500 cells/mmとなった患者も、トファシチニブをやめればALCも回復する
  • LSCも戻る


感染症リスク
  • ALC < 500 だと、500以上の時よりも重症感染症のリスクが高い
  • ALCが低くなるほど帯状疱疹のリスクも増加する傾向だが、帯状疱疹になった人が少なすぎて結論が出せなかった

  • LSCでみると、どれかのサブセットにおいて特異的に重症感染症、帯状疱疹のリスクと関連するわけではなさそうだった
  • ALC < 500 となるリスク因子を探索するためCox regression analysisをすると、以下が有意なリスク因子だった
    • baseline ALC が低いこと
    • 高齢
    • トファシチニブの用量が多いこと
    • MTX併用あり


  • まとめると、トファシチニブの免疫細胞への影響は下の通り
Cell
Tofacitinib treatment effect
Reversibility
Clinical consequence
Monitoring
ALC
Gradual decrease of 400 cells/mm3 (24%) over ~48 months; ~1/100 incidence of confirmed ALC <500 cells/mm3
Post-treatment discontinuation follow-up supports return to baseline
Increased risk of SI at ALC <500 cells/mm3. HZ generally showed an increasing risk with lower ALC values
Yes, due to association with infections and lymphopenia risk; do not initiate tofacitinib, or discontinue tofacitinib, if ALC <500 cells/mm3
CD3+ T cell
Changes mirror that of ALC; decrease of 21% after ~50 months
Temporary withdrawal supports expansion of CD3+ T cells within 4 weeks
No evidence of an imbalance in infections at low values
Not required
CD4+ T cell
Changes mirror that of ALC; decrease of 28% after ~50 months
Temporary withdrawal supports expansion of CD4+ T cells within 4 weeks
No evidence of an imbalance in infections at low values
Not required
CD8+ T cell
Changes mirror that of ALC; decrease of 28% after ~50 months
Temporary withdrawal supports expansion of CD8+ T cells within 4 weeks
No evidence of an imbalance in infections at low values
Not required
NK cell
Short term decrease of ~20–40%, followed by increase of 69% after ~50 months
Temporary withdrawal supports expansion of NK cells within 4 weeks
No evidence of an imbalance in infections at low values
Not required
B cell
Short term increase of up to ~30%, followed by return to baseline at ~50 months
Temporary withdrawal supports return to baseline within 4 weeks
No evidence of an imbalance in infections at high values
Not required

<考察>
  • MTX naiveやMTX-IRなど異なる集団を解析対象としていることに注意が必要
  • ALC < 500となるのは1%程度で、かつそのうち80%は他の治療薬を併用していた。ALC < 500 となってトファシチニブを中止しても、中止後3-6週で > 500まで改善する
    • しかし、ALC < 500となると重症感染症や帯状疱疹のリスクが増加する
    • baseline ALCは、トファシチニブを開始したのちにALC < 500となるリスク因子であり、baseline時点で500未満の場合はトファシチニブは勧められない
  • 特にLSCのモニターは必要なさそうであり、ALCをモニターすれば十分だろう
  • トファシチニブの開始直後のALC増加は、トファシチニブによる疾患活動性の低下や、リンパ球のtraffickingやmarginationの阻害の影響が考えられる
  • IL-7/IL-15はCD4/CD8 T cellの生存や増殖に必要であり、IL-15はNK細胞の生存にも必要である
    • 先にNK細胞がT細胞よりも減るのは、半減期の違いからだろう
    • その後徐々にT細胞が減ることで、NK細胞とT細胞によるIL-15の競合が緩和し、NK細胞にIL-15が作用しやすくなることで長期的にNK細胞が増加するのだろう
    • B細胞の変化の理由に関しては全くわからない
    • 上記は全て推論であり、トファシチニブがALC/SLCに影響を及ぼす機序はわかっていないことが多い


2019年3月21日木曜日

重症感染症のリスク TCZ vs other bDMARDs:TCZのほうがTNFiと比較して皮膚、憩室炎が有意に多い(USコホート)

Pawar A, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:456–464.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214367

<背景>

  • RAの活動性自体が治療に関わらず感染症のリスクになることは知られているが、重要なことはどの治療が感染症のリスクを高めるかということである
    • TNFi vs csDMARDs, nonTNFi(ABT, RTX):システマティックレビューによれば、TNFiのほうが結核や重症感染症のリスクが高い
  • しかし、TCZに関しては、head-to-headの試験も限られており、あまりわかっていない
    • TCZ mono vs MTX:24週間におけるRCTでは、重症感染症がTCZ群のほうが多い(3.6 vs 1.5/100 patient years
    • TCZ 4mg/kg + DMARDs vs TCZ 8mg/kg + DMARDs vs placebo + DMARDs:重症感染症がTCZ群のほうが多い(4.4 vs 5.3 vs 3.9/100 patient years
  • これまで、他のbDMARDsと比較した試験はサンプルが少なく、それぞれの重症感染症ごとに分けた試験はなかった
    • Medicareコホートの試験:ABTと比較して、入院を有する重症感染症のリスクに有意差なし(HR 0.89 - 1.34)
    • 日本の前向き試験:TNFiと比較して、重症感染症のリスクに有意差なし(HR 0.93 - 5.37)
    • Britishの試験:ETNと比較して、TCZの方が有意に重症感染症が多い(HR 1.02 - 1.47)
  • 結果が異なるので、さらに質の高い試験が必要である
    • ということで、今回は重症細菌・ウイルス感染症の割合を、TCZ vs other bDMARDsで、複数のデータベースを利用して比較した

<方法>
  • アメリカの3つのコホートを使用
    • Medicare
    • IMS
    • MarketScan
  • first cohortであるTNFi群・TCZ群は、TCZ・TNFiの使用歴なし
    • second cohortでTCZ vs ABTを比較したが、ABT群はABT使用歴なしという患者とした
  • 罹患年数や重症度といった交絡因子を少しでも少なくするため、bDMARDsやtofacitinib以外の治療歴がある患者を対象とした
  • RTXは、悪性腫瘍の既往のある症例に使用されることが多く患者の背景が異なる可能性があるので、今回の解析に入れなかった
  • 退院時の病名に基づいて、primary outcomeの重症感染症を調べた
    • 細菌感染症、帯状疱疹、日和見感染症(opportunistic infection)、腎盂腎炎、皮膚軟部組織感染症、結核、ウイルス性肝炎、憩室炎、肺炎、敗血症
  • RAの重症度や罹患年数、感染症発症に潜在的に影響しうる因子として、以下のものを考慮した
    • 年齢、地域、併存疾患、combined comorbidity index、主観的RA重症度インデックス、併用治療薬、ワクチン、予防抗生物質の使用、侵襲的処置の既往歴
  • 今回はTCZ群 vs TNFi群 or TCZ群 vs TNFi群で比較する際に、propensity score matchingを行った
    • その際に、70以上の項目をそれぞれのコホートで調節した
    • 検出力を上げるために、TCZ:TNFi =1:3 の比率とした
      • second cohortではTCZ:ABT =1:1


<結果>

  • first cohortは以下のようなflowになった
    • second cohortはonline supple参照



  • Patient characteristicsは以下 (Table 1)
    • コホートごとの違いはあるが、TCN vs TNFiで特に違いはなさそう
    • baselineの使用歴
      • MTX:69-73%
      • PSL:70-79%
  • TCN vs ABTも特に違いはなさそう(online supple参照)



  • 3つのコホートをまとめると、重症感染症リスクはTCZとTNFiで有意差なし
    • TCZ vs TNFi : HR 0.95 - 1.16 (Table 2)
  • second cohortにおけるTCZとABTの比較では、有意にTCZで重症感染症が多い
    • TCZ vs ABT : HR 1.20 - 1.63 (Table 3)




  • 重症感染症の内訳 (Table 4)
    • TCZ vs TNFi:皮膚軟部組織感染症、憩室炎が、有意にTCZで多い
      • 皮膚軟部組織感染症 TCZ vs TNFi : HR 1.47 - 3.86 
      • 憩室炎 TCZ vs TNFi : HR 1.64 - 3.34
    • TCZ vs ABT:憩室炎、肺炎、敗血症が、有意にTCZで多い ()
      •  憩室炎 TCZ vs ABT: HR 1.12 - 2.84
      •  肺炎 TCZ vs ABT: HR 1.04 - 1.80
      • 敗血症 TCZ vs ABT: HR 1.08 - 1.78



  • サブグループ解析では、いずれもTCZ vs TNFiで有意差なし(Table 5)



<考察>

  • アメリカの複数コホートのpropensity score matchingを行ったTCZ vs TNFiの比較における重症感染症のリスクは、全体でみると有意差はなかったが、個別にみると、皮膚軟部組織感染症、憩室炎が有意に多かった

2018年3月8日木曜日

乾癬 or PsAに対するTNFiの、動脈硬化 & 血管の炎症に与える影響について


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 3, March 2018, pp 408
–416 DOI 10.1002/art.40366

背景
  • 乾癬は、慢性的な免疫介在性皮膚疾患である
    • 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬のうち1/3が発症する
    • 最近、乾癬もしくはPsAの患者における動脈硬化のリスクが注目されている
      • このリスクは、一般的な動脈硬化のリスク因子で調整しても有意であり、乾癬自体が心血管系疾患のリスクであることを示唆している
  • 乾癬において動脈硬化を促進する機序については、あまりわかっていない
    • 乾癬は全身の炎症であり、心血管系疾患の主な原因である動脈硬化も免疫が関与した炎症が影響することは広く認識されている
  • 自然免疫と獲得免疫は、動脈硬化発症において、サイトカインを通じて関与している
    • Th1の活性が増加し、Tregの活性が低下することで、TNFやIFNγなどの炎症性サイトカインが増加することは、動脈硬化・乾癬において共通している
  • また、乾癬患者でよくみられる肥満とそれに関連する代謝異常は、全身性の炎症と強く関連している
    • 脂肪組織は、様々な炎症性サイトカインを産生する
    • 血清TNFの増加は、細胞性免疫を刺激し、動脈硬化に関連する血管内皮細胞の障害へ繋がる
  • 乾癬患者における心血管系疾患へのTNFiの影響は、まだあまりわかっていない
    • いくつかの試験で、TNFiが血管の機能・構造の改善を認めたという報告もあるが、いずれも小規模で観察期間も短い
    • そのため、今回は、subclinicalな動脈硬化の指標(頸動脈プラークや血管の炎症など)をprimary endpointとして用いて、乾癬に対するTNFiのsubclinicalな心血管系疾患に与える影響について調べた

方法
①Study design

  • 2-stage study
    • Stage 1(Toronto cohort)
      • トロント大学にて、乾癬とPsAの患者を、2010-2015年にリクルート
      • prospective
      • baselineと2-3年後に頸動脈エコーでプラークを評価
      • このStage 1の結果によって、乾癬に対するTNFiが血管の炎症に有効かどうか評価するかを決めた
    • Stage 2(NIH cohort)
      • NIHで、prospectiveにフォローしている、34例のPsAを対象にnested cohort analysisをおこなった
      • 内訳は、TNFiを投与されている21例のPsAと、それらのPsA患者と年齢・性別をマッチさせた乾癬に対するsystemic medicationを受けていないPsA 13例
      • baselineと、1年後にFDG-PET/CTを撮影
      • 既知の心血管系疾患、コントロール不良の高血圧、HIV、5年以内に悪性腫瘍の既往がある、活動性感染症のある患者、なんらかの手術後3ヶ月以内の患者は除外
②TNFi therapy exposure
  • IFX, ETN, ADA, GOL, CZPのいずれかを、フォローされている期間のうち半分以上で、使用されている場合を"TNFi therapy exposure"と定義
  • baselineでの評価前にTNFiを開始していても、上記を満たせばOK

③Ultrasound assessment of carotid atherosclerosis.
  • Stage 1において実施
    • 1人のphysicianによって実施
    • a high-resolution ultrasound system for carotid imaging (Esaote MyLab 70 XVision)を使用
    • 両側の頸動脈を、baselineと2-3年後に評価
    • 動脈硬化のプラークの定義(下のいずれか)
      • 周囲の血管壁の厚さより、局所の血管壁が50%以上厚い
      • 局所の血管壁の内膜が1mm以上に肥厚している
    • TPA(Total plaque area)
      • 心血管系疾患の予測因子として知られている
      • 撮影したビデオから計測
④FDG-PET/CT image acquisition and analysis
  • Stage 2において実施
    • 前日夜から禁食
    • baselineと12ヶ月後に撮影
    • 10 mCi dose of 18F-FDGを投与して60分間以内に撮影
    • 64-slice scanner (Siemens Biograph mCT PET/CT scanner)を使用して、1.5mmスライスを作った
    • 大動脈を下の図の通り、5つの領域に分けて評価し、血管の炎症をTarget-to-background ratio(TBR)として計測
      • 1. 上行大動脈、2. 大動脈弓部、3. 下行大動脈、4. 腎動脈上の大動脈、5. 腎動脈下の大動脈
      • TBRは、一般人口において、心血管系イベントを予測すると既報で報告されている



結果
①Stage 1
  • 319人を解析(table1)
    • 平均年齢:54.5才
    • 男性:55.8%
    • 平均観察期間:2.9年
    • 心血管系リスク因子は、特にTNFiとcontrol群で偏りはなさそう
    • baselineで、1つ以上の頸動脈プラークあり:62.1%(198人)



    • baseline TPAは、TNFi群を投与されている男性が、controlより高い(p=0.04)(table2)



  • 性別とTNFiの使用の間において、有意な統計学的相互作用があったため(p=0.03)、男性と女性に分けて解析した(table3)
    • 男性
      • TNFi therapyが、動脈硬化進行を有意に抑制した
        • adjusted β coefficient -2.09 [95% CI -3.32, -0.86], p < 0.001
      • 上記の結果は、心血管系リスク因子と脂質降下薬内服の有無で調整しても、有意だった
        • adjusted β coefficient -2.20 [95% CI -3.41, -1.00], p < 0.001
    • 女性
      • TNFi therapyによる動脈硬化進行の抑制は、単変量解析でも多変量解析でも有意ではなかった(p=0.93, p=0.74)





  • TNFiは、DMARDsと比較して、動脈硬化進行を有意に抑制した
    • adjusted β coefficient -4.1 [95% CI -5.6, -2.5], P < 0.001
  • TNFiは、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行を有意に抑制した
    • adjusted β coefficient -1.4 [95% CI -2.6, -0.1], P = 0.03
  • DMARDsは、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行と有意に関連した
    • adjusted β coefficient 2.7 [95% CI 1.2, 4.2], P < 0.001





②Stage 2

  • 34症例のPsAを解析(baseline characteristicsはTable1)
    • TNFiを投与されている群
      • 男性が多い:57%
      • 平均年齢:49.6才
      • 心血管系リスク因子のスコアであるthe Framingham Risk Scoreは低い:中央値 4
    • systemic anti-psoriatic therapyを受けていない群
      • 年齢、性別をマッチさせた13人のPsA患者
      • 心血管系リスク因子のスコアであるthe Framingham Risk Scoreは低い:中央値 3
    • 血管の炎症は、TNFi群で1年後に有意に改善
      • 平均TBR 1.90 vs 1.76  P = 0.03
    • 心血管リスク因子と脂質降下薬の有無で調整した多変量解析の結果でも、TNFiは、有意に血管の炎症を抑制した(Table4)
      • standardized β coefficient -0.41 [95% CI -0.74, -0.08], P = 0.02
    • FDG-PET/CTを用いたStage 2では、性別による結果の違いはなかった





まとめ
  • 今回の試験によって、TNFiは、古典的な心血管系リスク因子とは独立して、頸動脈プラークの進展を有意に抑制した
    • その効果は、男性でより顕著だった
  • また、TNFiによって、古典的な心血管系リスク因子とは独立して、FDG-PET/CTで評価した血管の炎症を有意に改善した
    • これに関しては、性別による違いはなかった
  • 関節リウマチでは、MTXとTNFiによって、心血管系リスクを低下させることができるということは知られていたが、乾癬ではこれまでこういったデータはなかった
    • 今回、DMARDsが、no systemic medicationと比較して、動脈硬化進行と有意に関連したのは、後者は皮膚や関節炎のみで比較的軽症であることが交絡しているものと推測される
  • 今回の試験では、血管の炎症が動脈硬化に繋がることは別々のstageでそれらを評価しているので、あくまでも血管の炎症を抑制することが動脈硬化進展の抑制に繋がるのは間接的なデータである
    • しかし、別の報告で、18F-FDGの取り込みが血管の石灰化に繋がることが示されており、血管の炎症が動脈硬化進展に繋がると考えることは妥当だろう
    • さらに、TNFiは脂質プロファイルやインスリン抵抗性など古典的な心血管系リスク因子に影響を及ぼすことが報告されている
      • しかしながら、今回の試験では、TNFiによって脂質プロファイル・血圧・血糖は変化しなかった(データ提示なし)ので、それらとは別の経路を介した機序が推測される
  • TNFiが、動脈硬化に与える影響について、男性と女性で異なる原因として、あまり説明できるものが考えられない
    • 血管の炎症に対する効果は、性別による違いがなかったのも事実である
    • 一つ考えられるのは、女性はもともと、baselineにおける動脈プラークが比較的少なく進展もわずかであるために、女性ではあまりTNFiによる影響が出にくかったのもしれない
    • もう一つ考えられるのは、男性と女性で動脈硬化進展の機序が異なるということである。実際にこれはすでに報告されており、性ホルモンが血管系や心血管系リスク因子に作用するというものである。
  • limitation
    • 観察研究であり、交絡因子の除外がしきれていないかもしれない
    • 血管の炎症と、動脈硬化の進展は、異なるcohortで評価している
    • TNFiを使用している患者の大半が、今回の研究開始前に投与開始されているため、TNFiによる早期の有効性を評価できていない
  • strength
    • 乾癬の動脈硬化に対するTNFiの影響に関して、これまでで最も大きいprospectiveな研究である
    • 心血管系リスク因子と疾患活動性に関して、よく評価されている

2018年2月21日水曜日

RAに対するトファシチニブの有効性(TCZからのスイッチか、MTX併用の有無での追加解析含む)


Iwamoto N, Tsuji S, Takatani A, Shimizu T, Fukui S, Umeda M, et al. (2017) Efficacy and safety at 24 weeks of daily clinical use of tofacitinib in patients with rheumatoid arthritis. PLoS ONE 12 (5): e0177057. https://doi.org/10.1371/journal. pone.0177057 

目的

  • RAに対するトファシニチブの有効性を評価

方法
  • 観察研究
  • 対象
    • 長崎大学、佐世保中央病院でフォローされているRA患者
    • 2013/11-2016/5の期間でトファシニチブを開始した70症例
    • ACR/EULAR 2010 RA criteriaを満たす
  • 観察期間:24週間
  • トファシニチブの用法
    • 5mg 1日2回
    • csDMARDsの併用継続は可
  • ガイドラインでは、MTX > 8mg でも3ヶ月間以上治療抵抗性の患者にトファシニチブは推奨されており、今回は67/70症例がそれに該当した
    • 他の3例はMTX naiveであり、他のbDMARDs含めた治療に抵抗性のためトファシニチブを導入された

結果
  • baseline(table1)
    • 平均年齢:64.2 ± 11.5 才
    • MTX併用:68.6%
    • 経口ステロイド併用:52.9%
    • bDMARDs使用歴
      • naive:22/70例
      • 1 or 2 剤:24/70例
      • 3剤以上:24/70例
    •  疾患活動性
      • DAS28-ESR:5.04 ± 1.33
      • SDAI:22.25 ± 14.17
      • CDAI:21.66 ± 13.60
    • 24週目までトファシチニブを継続:82.9%(58/70例)
      • 有効性なく中断:7例
      • 有害事象:4例(肺炎、敗血症、嘔気、耳下腺癌)
      • 患者の自己判断:1例


  • 有効性
    • DAS28-ESR:5.04 ± 1.33 → 3.83 ± 1.11 


  • remissionの割合
    • DAS28-ESR:0% → 21.4%
    • SDAI:0% → 26.1%
    • CDAI:0% → 20.3% 
  • LDAの割合
    • DAS28-ESR:5.7% → 40.0%
    • SDAI:15.9% → 69.6%
    • CDAI:13.0% → 71.0% 




有害事象
  • 1つ以上の有害事象を経験した症例:20%(14/70例)
    • 帯状疱疹:10 - 22週に発症し、5例とも治癒後にトファシチニブ再開した



MTX併用の有無, TCZからのスイッチからかそうでないか、でそれぞれ分けた解析
  • TCZからのスイッチ群のほうが、baselineの疾患活動性、経口ステロイド併用率、ESRが高い
    • ※しかし、baselineのcomposite measureによる疾患活動性に関しては, TJC, SJC, P-VASは2群間でほぼ同等であり, かつ盲検でないので、CRP, ESRとそれに引っ張られたD-VASが影響している可能性あり
  • MTX併用群のほうが、RF陽性の割合が多い



  • MTX併用群、非併用群でトファシチニブ継続率は有意差なし
    • 85.4% vs 77.3%,  P = 0.37 
  • MTX併用群のほうがDAS28-ESRがより改善している傾向にあるが、有意差なし




  • TCZからのスイッチ群(※non-responderか二次無効かは不明)か、TCZ以外からのスイッチ群か
    • baselineによる違いがあるので正確な比較はできないが、有意差はなかった
    • TNFiからのスイッチ群(n=10)とTCZからのスイッチ群を比較すると、トファシチニブの有効性は同等だった
      • 平均ΔDAS28-ESR
        • TCZからのスイッチ群:-1.01 
        • TNFiからのスイッチ群:-0.88 
          • P = 0.88 



  • 多変量解析
    • 24週時点でのLDA達成に有意に関係した因子
      • これまで使用したことのあるbDMARDsの数



まとめ
  • MTX併用の有無でトファシチニブの有効性に有意差はでなかったが、MTX併用のほうが有効な傾向があり、ORAL soloの既報の結果も考慮すると、おそらくMTX併用のほうがよりトファシチニブは有効なのだろう
  • TCZからのスイッチでも、そうでない場合と比較して同等にトファシチニブが有効だったので、この場合はIL-6経路とは別の機序で有効性を発揮したものと思われる
  • トファシチニブの有効性に影響する因子としては、これまでに使用したbDMARDsの数だった

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...