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2017年12月12日火曜日

体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎(主にPsA)に対するT2T:2017 recommendation


Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:3–17.  


※axSpAに関する2016 EULAR-ACR recommendationは既述

※PsAに関する評価項目について

  • PASDAS, GRACE, CPDAIをMDA criteriaの代わりにTICOPA studyに当てはめたらどうなるか、という試験はこちら
  • 赤が含まれていない項目、緑が含まれている項目




DAPSA score


MDA Criteria 
– GRAPPA [Ann Rheum Dis. 2010 Jan;69(1):48-53.

次の基準の7(臨床試験で検証)のうち5つを満たす場合は、MDAを有すると分類 
  1. 圧痛関節数 ≤ 1
  2. 腫脹関節数 ≤ 1
  3. PASI ≤ 1 または BSA ≤ 3 %
  4. 患者疼痛 VAS ≤ 15 mm
  5. 患者全般疾患活動性 VAS ≤ 20 mm
  6. HAQスコア ≤ 0.5
  7. 腱付着部炎箇所 ≤ 1
  • このMDA基準は、ランダム化比較試験と観察コホートで検証され、12ヶ月以上のMDAを達成した患者では、関節破壊の進行の有意な減少を示した
    • Arthritis Care Res (Hoboken). 2010 Jul;62(7):970-6. 



疾患活動性の複合評価項目について

  • 炎症、構造変化、身体的機能の3つは、炎症性変化の過程で部分的に生じるが直接的に反映されているわけではないので、それぞれ別々に評価されるべきである


  • そのため、ASDASが、ASAS improvement and remission criteria より適切と考えられる
    • ASAS 20
      • 以下の4つの項目において、合計20%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 1 unit 以上の改善を示す。
        • patient global assessment
        • pain
        • BASFI(function)
        • BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
          • 全体で20%以上の増悪なし、改善のない項目にて1 unit以上の増悪がないことが前提
    • ASAS 40
      • 以下の4つの項目において、合計40%以上の改善を示し、かつ、少なくとも3つ以上の項目で(0-10のスケールで) 2 unit 以上の改善を示す。
        • patient global assessment
        • pain
        • BASFI(function)
        • BASDAIの朝のこわばりに関する質問5, 6のVAS scoreの平均(inflammation)
          •  全ての項目で増悪がないことが前提
    • ASAS remission
      • 上記と同じ4つの項目において、全ての項目が(0-10のスケールで) 2 unit を超えない
    • ASDAS inactive deisease:ASDAS < 1.3 


決定したConsensusが下のtable3

  • principle
    • A:治療目標に関しては、リウマチ専門医と患者がshared decisionをしなくてはならない
    • B:疾患活動性に従ったT2Tは予後を改善する
      • PsAに対するTICOPA trialにて証明された
        • しかしこれは、T2Tの有用性というよりcsDMARDsの急速な増量(T2T群:4週おき、対照群:12週おき)と併用治療の有用性が影響しているかもしれない。
TICOPA regimen(Lancet 2015;386:2489–98.)



      • axSpAに対するT2Tの有用性を調べた試験はまだないが(TICOSPA, NCT 03043846, and STRIKE, NCT 02897115 が進行中)、疾患活動性によって構造変化が進行することを考慮するとおそらく有効だろう。

    • C:全身性疾患であるため、関節外病変も注意し、他領域の専門家(皮膚科、消化器内科、眼科など)と連携する
    • D:最終的なゴールは、長期の健康関連QOLを改善し、社会参加をできるようにする
    • E:上記目標を達成するには、炎症をとることが重要である
      • PsA患者の1/3は非進行性であるが、多くの患者では予後を改善するのに炎症を抑えることが必要
  • recommendations
    1. 治療ターゲットは、clinical remission/inactive diseaseにすべきである
      • remissionを達成できない患者もいるのも事実
      • これまでremissionやinactive diseaseをターゲットにされた臨床試験は存在しない
      • 多様されるMDAは、いくつかの項目が残存するしうるので、低疾患活動性に相当する
      • そして、MDAを含む低疾患活動性をターゲットにすると構造破壊・身体機能低下が抑制される十分なデータがあるので、remissionやinactive diseaseをターゲットにすることは間接的に十分と考えられる
    2. 治療ターゲット・治療評価期間は、現在の臨床症状や使用している薬剤に合わせて、個別化すべき
      • NSAIDsとDMARDsでは治療効果判定期間が異なる
      • DMARDsであれば、3ヶ月以内に有意な改善を示し、6ヶ月以内に治療ターゲットを達成すべき
    3. clinical remission/inactive diseaseは、臨床症状と検査所見にて明らかな疾患活動性がないと定義される
      • MDA, clinical DAPSA にはCRP, ESRが含まれていないが、これらをターゲットにしても予後改善に関連することが報告されているので、検査所見は含まないことも考慮された
      • しかしながら、PsAでもaxSpAでも、急性期炎症反応蛋白レベルが構造破壊に関連することが示されており、客観的指標なので、疾患活動性の評価から除外はできないとされた
      • そして、上記推奨における検査所見には、超音波やMRIなどの画像評価は含まれていない
    4. low/minimal disease activityは代替治療ターゲットになりうるかもしれない
      • 既述したように、罹患期間が長い患者や併存疾患がある人では、remissionを達成するのは難しい
    5. 疾患活動性は、臨床所見と急性期炎症反応蛋白に基づいて計算されるべきである
      • 画像所見に関しては、フォローすることの正当性を示すデータがなく、現実的にMRIを何回もフォローすることは困難であるため、含まれなかった
      • RAでは、エコー寛解が臨床的寛解に優れているということは示せなかった
    6. 治療ターゲットを決めて治療内容を変更していくためにも、関節、皮膚、他の関節外病変(ぶどう膜炎、炎症性腸疾患など)に関するvalidated measuresを実臨床で使用すべきである
      • 高疾患活動性であれば 1 - 3 ヶ月ごと、治療ターゲットを達成したら 6 - 12 ヶ月ごとに記録に残すべき
    7. axSpA → ASDAS、PsA → DAPSA or MDA にてターゲットを決定すべき
      • axSpA
        • 2012年推奨では ASDAS and/or BASDAI + CRP だったが、syndemophyte(靭帯骨棘形成)に関してはASDASのほうがBASDAI + CRPより関連していることが報告されたため、BASDAI + CRP は今回除外された
        • そして、ASDASは、BASDAIよりも、多くの炎症性biomarkerやMRI変化と関連している
      • PsA
        • CPDAI、PASDASは多面的に評価している
        • しかしながら、薬剤によっては皮膚には有効だが関節病変には効果が低く(フマル酸、CyAなど。IL-17iは関節病変に対してはTNFiと同等だが、皮膚病変に対してはより有効性が高い。)、多面的評価では全て含めて有効となってしまい、詳細な評価ができない
        • ETN 50mg weekly vs. 100mg weekly を比較したPRESTA試験 のpost hoc解析でも、12週目時点で、CPDAIでは両群間に有意差がついたがDAPSAではつかなった。originalの試験でも、12週目時点でPASIのみ有意差がついたが、関節・dactylitis・腱付着部炎 scoreは有意差なし
          • そのため、乾癬性関節炎に対しては50mg, 乾癬に対しては100mgで承認された
        • GRAPPA, EULARでは、関節・腱付着部炎・皮膚病変のどれがpredominant かによって、異なる治療アルゴリズムを推奨している
        • すなわち、PsAにおいては、全ての病変をそれぞれのscoreで評価すべきであり、皮膚病変とそれ以外の病変を1つのscoreにして計算することは避けたほうがいいだろう
        • PsAにおいて、関節病変以外の活動性scoreが関節破壊に関連しているかはまだわからない
        • DAPSAは、CRPが含まれているが、関節病変に重点をおいた指標であり、皮膚項目を入れてvalidationすべきという提案に関しては決着していない。スコアによってremission, low disease activityを定義できる。
        • MDAは、末梢性関節炎、腱付着部炎、皮膚病変を含むが、CRPなどの検査所見が含まれていない。そして、T2Tの有用性に関して唯一評価されたことがある指標である。身体機能に関しては、罹患期間が長いと高くなりやすく、現在の疾患活動性と同じようにスコアに反映されてしまうかもしれない。
        • そのため、PsAに関しては、もっと適切な評価項目に関する研究が必要である
    8. 治療ターゲットには、併存疾患、患者背景、薬剤によるリスクを考慮すべきである
    9. 臨床所見や検査所見だけでなく、画像評価の結果も、managementの考慮に入れたほうがいいかもしれない
      • 画像所見は、治療ターゲットには含まれないが、治療ターゲットを達成できているか疑わしいときの補助にはなる
    10. 治療ターゲットを達成したら維持すべきである
    11. 患者は、治療ターゲット、T2T戦略のリスクとベネフィットに関して十分に情報を得て、議論に参加すべきである

上記をまとめたアルゴリズムが下のfigure2


今後の課題

  • PsA, axSpAにおいて、結局、remissionの定義に全ての病変を含めるべきか結論は出ていない
  • しかしながら、remissionとlow disease activityの予後に対する影響の違いはわかってきている
  • 疾患活動性と構造変化の関係もわかってきている
  • 2012年の時は全ての推奨がエビデンスレベルが低かったが、今回のは少し改善された
  • 以下、future research agenda
    • 脊椎病変と末梢病変は同じように治療に反応するのか?
    • dactylitisとenthesitis
      • 治療反応性のデータ
      • 身体機能、健康関連QOL、社会参加、心血管系リスクに影響するのか
      • 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
    • 皮膚病変
      • 身体機能、心血管系リスクに影響するのか
      • 複合的評価方法にどれだけ影響を与えるのか
      • 皮膚病変の改善が、関節病変や他の筋骨格系病変とは関係なく健康関連QOL、社会参加に影響するのか
    • 画像
      • フォローすることの有効性
      • 画像寛解を達成すべきなのか
    • 機能(HAQなど)
      • PsAの複合的評価項目にどれだけ影響するのか
    • axSpAとPsAの試験に関する戦略
    • 治療による改善をどうやって維持するか、漸減できるのか
    • リウマチ科など専門家によるケアが、非専門家より良い結果を与えるのか
    • 患者教育による方法で予後が変わるのか
    • 治療ターゲットを達成することでax/peripheral SpAの関節病変の構造破壊を抑制できるのか?
    • CRPより優れたバイオマーカの開発


2017年12月4日月曜日

軟骨石灰化とOAの関係 & 結晶性関節炎に対する関節超音波のレビュー


①European League Against Rheumatism recommendations for calcium pyrophosphate deposition. Part I: terminology and diagnosis
W Zhang,1 M Doherty,1 T Bardin,2 V Barskova,3 P-A Guerne,4 T L Jansen,5 B F Leeb,6 F Perez-Ruiz,7 J Pimentao,8 L Punzi,9 P Richette,2 F Sivera,10 T Uhlig,11 I Watt,12
E Pascual13 




  • 関節部位、年齢、性別による軟骨石灰化(chondrocalcinosis)の違い



EULAR2011による言葉の定義
  • CPP crystals
    • calcium pyrophosphate dihydrate crystalsのこと
  • CPPD
    • CPP crystalによってもたらされる全ての状況の総称
  • CC(cartilage calcification)
    • 画像もしくは組織学的に軟骨石灰化のこと。CPPDとは限らず、正常組織にも起きうる。

Risf factors
  • 関節外傷の既往
  • 遺伝的・家族性にCPPDの傾向あり
  • 特異的な疾患
    • ヘモクロマトーシス
    • 副甲状腺機能亢進症
    • 低フォスファターゼ症
    • 低Mg血症 など
EULAR recommendations
  1. CCは、OAとは独立もしくはOAによる構造変化とともに認める
    • CPPDを伴うOAは、そうでないOAと比較して、osteophytosisの程度が強く、罹患関節も異なり、炎症所見が強い
    • 稀だが、腱炎、腱鞘滑膜炎、滑液包炎、体軸関節に関連した症状を起こすこともある
  2. 単施設研究では、急性のCPP結晶関節炎は、典型的には3−4日以内に改善した
    • 関節痛、こわばり、腫脹、圧痛、±紅斑を認める
  3. 65歳以上の膝、手、肩関節の関節炎は急性CPP関節炎を示唆する。画像による石灰化は診断の可能性を高めるが、確実な診断には結晶を証明することが必要である
    • 上記のグラフのように、50歳以下では稀であり、45歳以下(特に多関節病変)で診断される場合には家族性 or 背景の代謝性疾患を考慮する
    • 痛風も年齢とともにリスクが増加するが、多くの初発は足である(特に第1MTP関節)
  4. OA患者ではCPPDが多い
    • 非典型的な部位のOAと関連する
  5. 慢性CPP結晶性関節炎は、mono/oligo関節炎(89%)、多関節炎(11%)と報告がある
    • 診断はCPP結晶の証明


  • CPPDに関する検査の特性について



  • CPPDリスク因子





  • 今後の課題
    • CPPDの有無によって、OAに違いがあるか(症状、罹患関節、予後)
    • 結晶の有無をgold standardとした質の高い臨床研究
    • CPP結晶の検査に関するプロトコル作成
    • ルーチン検査とできるように、それぞれの画像検査のvalidation
    • 関連する代謝性疾患によるCPPDへの影響



OA患者において、軟骨石灰化がどのように関連するかを調べた研究が以下の②
②Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 1651–1658 

Association of Chondrocalcinosis in Knee Joints
With Pain and Synovitis: Data From the
Osteoarthritis Initiative
BOBBY KWANGHOON HAN,1 WOOJIN KIM,2 JINGBO NIU,3 SHRISTI BASNYAT,4 VENIAMIN BARSHAY,4 JOHN P. GAUGHAN,4 CHARLENE WILLIAMS,4 SHARON L. KOLASINSKI,2 AND DAVID T. FELSON3



背景

  • calcium pyrophosphate dihydrate (CPPD) crystalsやbasic calcium phosphate (BCP)などのカルシウム含有結晶が、関節のヒアリン軟骨や線維軟骨(→hyaline cartilage, fibrocartilage, elastic cartilageの違いはhttp://www.differencebetween.net/science/health/difference-between-hyaline-cartilage-and-elastic-cartilage/を参照)に沈着し、画像的に線状の石灰化として認める(=chondrocalcinosis:軟骨石灰化)ことはよくあることである
  • chondrocalsinosisは変形性関節症(OA)と関連があり、OA重症度と関節液CPPD結晶の有無が関係しているという報告もある
    • しかしながら、他の報告では、関節裂隙とchondrocalsinosisの関連はなかったという報告や、前向き試験ではMRI上のOA進行や軟骨消失と関連がなかったという報告もある
  • CPPD結晶は、炎症反応と滑膜炎を惹起し、急性or慢性炎症性関節炎の原因となる
    • CPPDは、in vitroのヒトの軟骨や滑膜細胞において、nitric oxide, MMP-13, PGE2などの炎症性・異化メディエーターを産生する
    • BCP結晶は、in vitroのマクロファージにおいて、NLRP3 inflammasome→IL-1βを分泌させる。マウスの関節に注射することで滑膜炎や軟骨細胞変性を誘導した。
    • しかしながら、chondrocalsinosisに含まれるカルシウム含有結晶が、実際に滑膜炎やOA発症に関わるかは不明である
  • MRIで測定される滑膜の体積が、膝の痛みの重症度と関連して変化することや、軟骨消失とOA発症を予測することが既報で報告されている
  • 今回の試験では、chondrocalsinosisが膝関節痛 or MRIでの滑膜炎に関連するか、the Osteoarthritis Initiative (OAI)のデータから調べた

方法
  • the Osteoarthritis Initiative (OAI)
    • 4796人のOA患者を対象とした、前向き多施設レジストリーである
  • 2004-2010年の症例を調べた
    • 60歳以上
      • それ以上若いと石灰化が稀なため
    • baselineにてKellgren-Lawrence (K/L)grade 0, 1, 2のいずれか
      • それ以上進行していると、他の要因による関節痛や関節炎が交絡する可能性が高いから



※K/L classification

Classification

  • grade 0: no radiographic features of OA are present
  • grade 1: doubtful joint space narrowing (JSN) and possible osteophytic lipping
  • grade 2: definite osteophytes and possible JSN on anteroposterior weight-bearing radiograph
  • grade 3: multiple osteophytes, definite JSN, sclerosis, possible bony deformity
  • grade 4: large osteophytes, marked JSN, severe sclerosis and definite bony deformity
(Clin Orthop Relat Res (2016) 474:1886–1893. より引用) 

  • まず、baselineとその後4年間における膝関節痛とchondrocalcinosisの関連を調べた
  • その次に、MRIでの滑膜炎とchondrocalcinosisの関連を調べた

結果
  • baseline characteristics

  • 膝関節痛とchondrocalcinosisの関連について
    • baselineでは、いずれの質問においても、chondrocalcinosisがある場合の方が、膝関節痛が有意に強かった
      • 年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後

    • 4年後時点では、chondrocalcinosisがあるほうが有意に膝関節痛が強かったのは、"any knee pain, past 30 days"のみ



  • VASで評価した膝関節痛重症度に関して
    • baselineでは、chondrocalcinosisがあるほうが有意にVASが高かった
    • baselineから4年後までの膝関節痛の変化は、chondrocalcinosisに関連しなかった



  • 間欠的な痛みはchondrocalcinosisがあるほうが有意に強かった



  • MRIでの滑膜炎に関して
    • chondrocalcinosisの有無は関係なし



まとめ
  • (交絡因子となりうる年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後も)膝関節痛はchondrocalcinosisがある場合の方が有意に強かったが、MRIでの滑膜炎とは関連しなかった
    • 当初の仮説としては、CPPDとBCP crystalが関節炎と関連があるのは、滑膜炎のためと考えていたが、今回の結果はそうでなかった
  • OA患者の膝関節置換術の滑膜検体からは、組織学的な滑膜炎と血管新生にchondrocalcinosisは関連しなかったと報告されている
    • その理由として、カルシウム含有結晶は軟骨内にあることが考えられている
    • CPPD結晶は、急速なカルシウム血中濃度低下など限られた状況のみで出現し、それが間欠的であるため滑膜炎も間欠的となり、滑膜体積には反映されないことも理由としてありうる
  • さらに、カルシウム含有結晶の形成は、細胞外マトリックスの変化に制御されている
    • 筆者らは、軟骨のカルシウム結晶沈着は、(滑膜炎の誘引というよりも) 膝関節のOAによる細胞外マトリックスのdegenerative changeと関節痛のマーカーになるのではないかと推測している
    • 軟骨細胞過形成のマーカーであるtype Xコラーゲンの発現レベルと軟骨の石灰化が相関しているという組織学的研究からの報告もある
    • さらに、type 2コラーゲンは、ATPが石灰化を促進するのを抑制するが、type2とtype1コラーゲンが共に存在するとATPが石灰化を促進するのを増強するのがvitroで示されている
      • プロテオグリカンはtype or type2コラーゲンに加えるとカルシウム含有結晶の形成を抑制する


結晶性関節炎におけるエコーに関するレビューが以下の③
③Emerg Radiol (2016) 23:623–632
Musculoskeletal ultrasonography in the diagnosis of acute crystalline synovitis
Matt Rheinboldt1,2 & Courtney Scher2,3 


  • ヒアリン軟骨は低エコーだが(figure1)、線維軟骨は高エコー(figure2)




  • 関節液貯留(figure3)
    • 非特異的



  • 滑膜増殖(figure4)
    • 非特異的
    • 結晶関節炎でも滑膜内の血流増加は認めうる



  • erosion (figure5)
    • 非特異的(痛風でもRAでも認める)



  • double-contour sign(figure6:痛風)と軟骨内石灰化(figure7:偽痛風)
    • 特異的所見
    • double-contour signは、無症状の高尿酸血症でも認めることがあり、治療によって消失するため疾患活動性のマーカーと考えられている




  • Aggregates(figure8)
    • 尿酸結晶、カルシウムピロリン酸結晶ともに、関節液内にて"snowstorm"のように見える
    • 滑膜組織、関節外の腱、軟部組織にも結晶形成が起こりうり、その場合にはその部位にechogenicな所見を認める


    •  手関節における三角線維軟骨のカルシウムピロリン酸結晶のAggregates(figure9)



  • 痛風結節(figure10)
    • 形成初期は低エコー、均質な所見
    • 時間が経過すると内部が石灰化し、acoustic shadowingを認める
    • 肉芽種とfibrovascular組織により、周囲は低エコーとなりハローサインを呈する




    • 腱に形成した痛風結節は、軽度の腱の腫脹を認め、fibriallary構造が消失し、acoustic shadowingを認める(figure11)
    • 頻度が多いのは膝蓋腱と上腕三頭筋腱であり、その次にアキレス腱と大腿四頭筋腱
    • CPP結晶は、肉芽種形成や滑膜・軟部組織の結節形成は稀である



  • (肘などの)滑液包にも、痛風結節も認めうる(figure12)



  • 関節液貯留していると、ヒアリン軟骨のechogenecityにより軟骨表面が高エコーとなることがあり、これをdouble-contour signと間違えることがあるので、より多くのアングルで観察することをOMERACT definitionでも推奨している




2017年11月19日日曜日

2016 ACR-EULARシェーグレン症候群分類基準の特性について(日本人の解析より)


Tsuboi H, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1980–1985. 

背景

  • シェーグレン症候群は、主に唾液腺や涙腺などの外分泌腺を侵し、しばしば腎臓や肺の間質、神経系、血液、筋骨格系などの腺外症状を引き起こす自己免疫疾患である
  • リンパ球が外分泌臓器に浸潤し、ドライマウス・ドライアイや様々な腺外症状を生じる
    • 他の自己免疫疾患に関連しないprimary SjSと、関連するsecondary SjSに分けられる
  • 日本には、厚生労働省が提案した診断基準がある。以下のものを含む3つが、ここ3年間では診断 or 分類の際に使用されてきた。
    • the American-European Consensus Group classifiCation criteria for SS (AECG) (2002) 
    • the Sjögren’s International Collaborative Clinical Alliance (SICCA) が提唱しているthe 2012 ACR classification criteria for SS
  • 筆者らは、694人の日本人SjS患者を解析し、臨床医の診断をgold standardとしてそれぞれの基準の特性を調べたところ、日本人SjSにおいては厚生労働省基準がもっとも優れていた
    • 日本厚生労働省基準:感度 79.6%、特異度 90.4%
    • AECG:感度 78.6%、特異度 90.4%
    • ACR:感度 77.5%、特異度 83.5%
  • 2016年に新しいSjSの分類基準がACR-EULARから出された(Shiboski CH, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:9–16.)
    • これは、上記SICCAとEULARのSjS task forceが合同となり、国際的な共通の分類基準を作るために、SS Criteria Working Group を結成し作成したものである 

各項目の重み付けの結果


    • 組み入れ基準を満たし、除外基準に該当せず、スコア4点以上を分類
      • 口唇唾液腺生検でリンパ球性唾液腺炎の所見を示し、フォーカススコア(FS) ≧ 1フォーカス/4㎜^2:3点
      • 抗SS-A/Ro抗体陽性:3点
      • 少なくとも片眼で眼球染色スコア ≧ 5点(もしくはvan Bijsterveldスコア ≧ 4点):1点
      • 少なくとも片眼でシルマーテスト ≦ 5㎜/5分:1点
      • 無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/分:1点

組み入れ基準
眼球もしくは口腔乾燥症状を示す、次の項目のうち一つ以上が該当する
  • 3か月以上毎日持続し困っている眼乾燥症状
  • 眼に砂や砂利が入ったような感じが反復して起こる
  • 人口涙液点眼を1日3回以上使用する
  • 3か月以上毎日口渇を感じる
  • 乾いた食べ物を飲み込むのに飲み物が必要になりことがよくあるがある、もしくはもしくはESSDAI質問票で1つ以上の領域が陽性でシェーグレン症候群が疑れる

除外基準
  • 頭頸部の放射線治療の既往
  • PCRで確定した活動性のC型肝炎
  • AIDS
  • サルコイドーシス
  • アミロイドーシス
  • 移植片対宿主病
  • IgG4関連疾患


  • 上記4つの基準は項目、作成された目的が異なる
    • 厚生労働省基準は診断するため、他の3つは研究のための分類基準である
  • 今回の研究では、新しい2016ACR-EULAR分類基準を他の3つと比較した



方法
  • 解析対象の499人(38人男性、461人女性)
    • primary SjSと診断 or primary SjS疑い患者
    • 病理、眼、口、自己抗体について全て評価されている
    • 日本の10施設
  • OSSは日本ではあまりやられていなかったので、Rose Bengal test, lissamine green test,  fluorescein staining testにてVan Bijsterveld Score ≥4 であればACR-EULARのOSSを満たし、Van Bijsterveld Score ≥3であればACRのOSSを満たすとした

  • 無刺激唾液分泌試験はあまり日本ではやられていなかったので、無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/min or ガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで、ACR-EULARとAECGにおける唾液分泌量低下を満たすとした
  • gold standardは臨床医の診断とした


結果
  • 499人のうち、(gold standardである臨床医の診断のもとで)pSSと診断されたのは302人で、pSSでない(non-pSS)と診断されたのは197人だった
  • 各診断基準の感度、特異度は以下の通り(table2)であり、ACR-EULARの基準は有意に感度が高く、特異度は低かった(table3)
    • ACR-EULAR:感度 95.4%, 特異度 72.1%
    • 厚生労働省基準:感度 82.1%, 特異度 90.9%
    • AECG:感度 89.4%, 特異度 84.3%
    • ACR:感度 79.1%, 特異度 84.8%
  • 無刺激唾液分泌試験をおこなった患者に限った場合は下段のsubanalysis
    • ACR-EULAR:感度 94.1%, 特異度 76.7%
    • 厚生労働省基準:感度 74.9%, 特異度 90.6%
    • AECG:感度 85.7%, 特異度 86.1%
    • ACR:感度 79.8%, 特異度 81.1%



  • 各症例において、各基準を満たすか満たさないかを示したのがtable4
    • pSS症例(288人)も、non-pSS(55人)も、各基準のうち、ACR-EULARが満たす患者が最も多かった
    • pSSと診断された症例のうち、72.8%(220/302人)は4つ全ての基準を満たし、いずれの基準も満たさなかったのは11症例のみだった
    • non-pSSの場合は、いずれも満たさない割合が68.5%(135/197人)と多かく、全て満たしたのは8症例のみだった
    • ACR-EULAR基準以外の3つを全て満たすが、ACR-EULAR基準を満たさない症例はpSS診断症例・non-pSS症例のいずれにもいなかった


  • pSS症例302人のうち8人、non-pSS症例197人のうち11人は、ACR-EULARのみ満たした。この計19症例は、ACR-EULARが他の診断基準と合致していないという症例である。
    • pSS症例8人で、ACR-EULARのどの項目を満たしたか調べてみると、FS陽性(62.5%, 5/8症例)or SS-A抗体陽性(37.5%, 3/8症例)かつ唾液分泌量低下(87.5%, 7/8症例)or 涙液分泌量低下(12.5%, 1/8症例)にて4点となっていた(figure1A)
    • non-pSS症例も同様の組み合わせで4点となっていた(figure1B)

まとめ
  • 新しいACR-EULAR基準は、他の3つの基準と比較すると、臨床医の診断をgold standardとした場合、感度が高く、特異度が低かった
  • 診断・除外する際に、ACR-EULAR基準と、そのほかの3つの基準が全て一致する割合も低かった
    • Shiboskiらからの報告では、ACR-EULAR基準は感度 96%、特異度 95%と高く、他の基準との一致度も高かった(AECG基準とのκ coefficient:0.91、 ACR基準とのκ coefficient:0.82)
  • 今回の結果と既報の結果が異なった原因は、ACR-EULARのみ満たした上記19症例が示している
    • 特異度が低かったことに関しては、non-pSS症例の11症例の解析で検討できる
    • 方法で述べたように、今回の試験では唾液分泌量低下の評価において、無刺激唾液分泌試験をやっていない症例が多く(166/499症例で未施行)、無刺激唾液分泌試験 ≦ 0.1ml/min or ガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで、ACR-EULARとAECGにおける唾液分泌量低下を満たすとしたことが、特異度の低下と関係しているのだろう。
      • 実際に、この19症例に含まれるnon-pSSの6/11症例は、唾液分泌量低下をガムテスト ≦ 10ml/min or Saxon test ≦ 2g/2minで定義していた。
      • そして、無刺激唾液分泌試験をおこなった患者群のみで解析したtable2のsubanalysisのほうが、全体での解析よりもACR-EULAR分類基準の特異度が高かった(76.7% vs. 72.1%)
    • 感度が高かったことに関しては、pSS症例の8症例の解析で検討できる
      • これら8症例では、FS陽性(62.5%, 5/8症例)or SS-A抗体陽性(37.5%, 3/8症例)かつ唾液分泌量低下(87.5%, 7/8症例)or 涙液分泌量低下(12.5%, 1/8症例)にて4点となっていた
  • 臨床試験にACR-EULAR基準を用いる場合には、特異度が低いため、non-pSS症例がある程度紛れてしまうことを念頭においておく必要があるだろう
  • limitation
    • gold standardが臨床医の診断としており、曖昧な部分がある
    • 涙腺病変と唾液腺病変の評価方法が施設によって異なっていた
  • これらlimitationを考慮すると、より優れた診断基準が必要である
    • 厚生労働省の基準は、pSSとsSSともに特異度が優れているが、唾液腺造影・唾液腺シンチ・ガム試験・サクソンテストはACR-EULAR基準・ACR基準のいずれにも含まれていない項目であり、眼の染色スコアのカットオフも他の基準と異なり(下記)、さらなるvalidationが必要である
      • 厚生労働省基準:Van Bijsterveld Score ≥3
      • the ACR-EULAR :Van Bijsterveld Score ≥4 or OSS ≥5
      • AECG:Van Bijsterveld Score ≥4
      • ACR criteria:OSS ≥3

2017年11月15日水曜日

2017 EULAR/ACR 分類基準 for adult & juvenile 特発性炎症性筋疾患


2017 European League Against Rheumatism/ American College of Rheumatology classi cation criteria for adult and juvenile idiopathic in ammatory myopathies and their major subgroups 
Ann Rheum Dis 2017;76:1955–1964.  

背景

  • 特発性炎症性筋疾患(IIM)の主要なサブグループは、以下の4つである
    • dermatomyositis (DM)
    • polymyositis (PM) 
    • inclusion body myositis (IBM)
    • juvenile DM (JDM)
  • これまで、様々な診断基準や分類基準が使用されてきたが、いずれも項目が経験だもので、validationもされていない
    • Bohan and Peter基準も頻用されているが、限界がある
      • どのように他のミオパチーを除外するか規定しておらず、IBMをPMと誤分類したり、炎症を伴うジストロフィーも筋炎に分類される可能性もある
    • 臨床所見と関連がある筋特異的自己抗体もここ数十年で新しく発見されており、診断の正確性に寄与すると思われるが、それについても確認がされていない
  • 今回のプロジェクトは、The International Myositis Assessment and Clinical Studies (IMACS) Groupにより、成人・若年IIMの分類基準を開発することが目的である
※pilot studyでの各所見のIIMに対する特性


結果
  • 新基準開発の際に解析された患者集団(IIM群、対象群)のdemographic data
    • 対象群(IIMを模倣する疾患)
      • 全身性炎症性疾患
      • 筋ジストロフィー
      • 薬剤 or 毒素性ミオパチー
      • 運動ニューロン疾患/ニューロパチー
      • 代謝性ミオパチー
      • 筋肉痛
      • 皮膚疾患
      • 内分泌関連ミオパチー
      • 感染性ミオパチー
      • ミトコンドリア関連ミオパチー
      • 神経筋疾患
      • 他のミオパチー
      • 免疫介在性皮膚疾患
    • アジア人:20%程度

  • 新分類基準
    • The EULAR/ACR classification criteria for adult and juvenile idiopathic infammatory myopathies (IIMs) 
    • 小児、皮膚科ではあまり筋生検をしないので、筋生検なしのスコアも開発
      • しかしながら、IIMに分類するには、皮疹がなければ筋生検は必須とwarking committee全体でコンセンサスあり




  • 上記スコアを用いて、IIMの可能性(probability of IIM)を以下のように計算
    • 筋生検あり:1/[1+指数(5.33–score)] 
    • 筋生検なし:1/[1+指数 (6.49–score)] 
  • 上記計はwebで計算可能(www.imm.ki.se/biostatistics/calculators/iim). 

    • IIMの可能性 = 50% 〜 55%:possible IIM
    • IIMの可能性 = 55% 〜 90%:probable IIM
    • IIMの可能性 ≧ 90%:definite IIM

  • カットオフ
    • A、C:筋生検なし
      • IIMの可能性=55%:5.5
      • IIMの可能性=90%:7.5
    • B、D:筋生検あり
      • IIMの可能性=55%:6.7
      • IIMの可能性=90%:8.7


    • classification tree
      • まずは上記スコアにて、 IIMの可能性≧55%を満たすことが前提
      • 臨床所見と筋生検によって、成人IIMはPM, IBM, ADM, DMに分類
        • PMはIMNMを含む
      • 小児はサンプルサイズが小さすぎてjuvenile PM, IMNM, hypomyopathic DMを分けられなかった




    • 臨床医による分類と、上記treeによる分類の比較
      • 概ね一致

    • 新分類基準と既存の基準の比較
      •  IIMの可能性=55%の値をカットオフとすると、筋生検なしの場合は新分類基準の感度=87%、特異度=82%

    • validation
      • 内的妥当性
        • 筋生検なし:AUC=0.942、cross-validated area=0.933
        • 筋生検あり:AUC=0.962、cross-validated area=0.942
      • 外的妥当性
        • the Euromyositis register の592症例(PM=281, DM=256, IBM=33, JDM=18and ADM=4)を使用
          •  IIMの可能性=55%をカットオフとすると、感度100%


    まとめ
    • 今回のthe EULAR/ACR criteriaは、初めてvalidationした基準である
      • 解析対象にアジア人が少ないので、もっとアジア人を対象にしてvalidationしていく必要がある
      • 外的妥当性の際には対象群が設定されていない
    • 皮疹の点数が高い
    • 感度、特異度ともに良好だった
      • 筋生検なし:感度87%、特異度82%
      • 筋生検あり:感度93%、特異度88%

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