Jesus D, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:365–371.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214502
<背景&目的>
- SLEDAIが、SLEの疾患活動性の指標として広く用いられている
- しかし、SLEDAIは、"あり"か"なし”かで分ける二項的に指標をつけるものであり、remissionであるかどうかには問題ないが、その臓器病変の重症度が上がってもスコアは変わらず、疾患活動性の推移をモニターするのに限界がある
- また、溶血性貧血や肺炎、消化管病変などが含まれていないことも問題である
- こういったスコアの問題が、ベリムマブを除いて、実地臨床では効果があると実感される薬剤がSLEのphase 3の臨床試験で有効性を示せないことに繋がっている
- そこで、今回は、SLE-DAS(the SLE Disease Activity Score )という指標を開発し、その有効性を検討した
<方法>
- derivation cohort
- ポルトガルのCentro Hospitalar e Universitário de Coimbra (CHUC) Lupus Clinic at Rheumatology Departmentのlongitudinal cohort
- validation cohort
- イタリアの Rheumatology Unit, University of Padovaのlongitudinal cohort
- 対象
- ACR 1997 SLE分類基準を満たす患者を上記cohortから組み込んだ
- derivation cohortを使用して、SLE-DASを作成
- SLEDAI-2Kでも用いられている17種類の項目(Table 1)をindependent variable、PGAをdependent variableとして、multivariate linear regression analysisをおこなった
- フォロー期間中のvisitの中で、各患者において最も高い疾患活動性のvisitの時のデータを使用
- あまりに欠損値が多いと、sample variationが小さくなってしまったり、independent variableが多すぎると回帰モデルの精度が落ちるので、10人以上の患者で観測された項目のみをモデルに組み込んだ
- 組み込まれなかった項目は、熟練した解析者による裁量で重み付けをされた(他の項目との相関や、医師による疾患活動性の評価に与える影響などがその重みに考慮された)
- 上記で作成したSLE-DASを、validation cohortを用いて、以下の項目について検討した
- PGA, SLEDAI-2Kとの相関
- PGA, SLEDAI-2Kは、各施設のSLE expertが、visitの直近30日間に関して、スコアをつけた
- 臨床的に重要な変化(ΔPGA ≧ 0.3)を拾い上げる精度
- ROC analysisでcut-offを決定
- damage accrual(the SLICC/ACR Damage Index for SLE (SDI))を予測する精度
<結果>
1. スコアの作成過程
- 520人のSLE患者を上記2つのコホートから組み込んで解析した
- 以下の項目が10人以上の患者で観測できたため、multivariate linear regression analysisに組み込んだ
- swollen joints
- high urinary protein excretion
- low platelet count
- low white cell count
- localized and generalized lupus rash
- alopecia
- mucosal membrane lesions
- mucocutaneous vasculitis
- low complement
- increased levels of anti-dsDNA
- 尿蛋白、血小板、白血球数に関しては自然対数化した方がよいモデルとなった
- 以下の項目は、観測数が足りなかったので、熟練したexpertによって重み付けをされ、最終モデルに入れた
- neuropsychiatric involvement
- systemic vasculitis
- cardiac/pulmonary involvement
- myositis
- serositis
- haemolytic anaemia
- multivariate linear regression analysisを行った項目の回帰係数と、expertによる裁量で重み付けをした項目のスコアが下記
- 上記の結果、作成されたSLE-DASが以下
- SLE-DAS作成シート(各項目の定義含む)は下記
- 各施設でvalidationするのに使いやすそうです。
2. Internal Validation(deriviation cohortで検討)
- SLE-DASと、他の指標との相関(最終visitのデータで検討)
- PGA (rs =0.975, p<0.0005)
- SLEDAI-2K SLEDAI-2K (rs =0.94, p<0.0005)
- PGAとSLEDAI-2Kもきちんと相関していた(r =0.973, p<0.0005).
- 臨床的に重要な変化量(ΔPGA ≧ 0.3)としての、SLE-DASの精度は、SLEDAI-2Kよりも優れていた
- SLE-DAS:AUC=0.927 (95% CI 0.885 to 0.969, p<0.0005)
- SLEDAI-2K:AUC=0.787 (95% CI 0.718 to 0.857, p<0.0005)
- ΔSLE-DASのcut-off:1.72
- ΔSLE-DAS(≧1.72)は、ΔSLEDAI-2K(≧4)よりも、臨床的に重要な変化(ΔPGA ≧ 0.3)を拾い上げるのに高い感度を示した(特異度は96-100%で同等だった)
- 改善を拾い上げる感度:82.1% vs 44.8%, p<0.0005
- 増悪を拾い上げる感度:93.1% vs 46.6%, p<0.0005
3. External Validation(validation cohortで検討)
- SLE-DASと、他の指標との相関
- PGA (r=0.875, p<0.0005)
- SLEDAI-2K (r=0.943, p<0.0005)
- PGAとSLEDAI-2Kもきちんと相関していた (r =0.839, p<0.0005).
- 臨床的に重要な変化量(ΔPGA ≧ 0.3)としての、SLE-DASの精度は、SLEDAI-2Kよりも優れていた(Figure 2)
- SLE-DAS:AUC=0.998 (95% CI 0.994 to 1.000, p<0.0005)
- SLEDAI-2K:AUC= 0.928 (95% CI 0.855 to 1.000, p<0.0005)
- ΔSLE-DASのcut-off:1.72
- SLE-DASは、SLEDAI-2K(≧4)よりも、臨床的に重要な変化を拾い上げるのに高い感度を示した(特異度は同等だった)
- 改善を拾い上げる感度:89.5% vs 47.4%, p=0.008
- 増悪を拾い上げる感度:95.5% vs 59.1%, p=0.008
- 192人の患者が少なくとも2回フォローされており、それらでdamage accrualを予測する精度の解析をおこなった
- 平均5年間のフォロー
- model 1はadjusted mean of SLE-DAS, model 2はadjusted mean of SLEDAI-2Kで multivariate Cox regression modelを作成した(table 4)
- SLE-DAS、SLEDAI-2Kともに、damageを予測するのに有意な項目ではあったが、model 1の方がAICが低く、better fitだった(AIC 377.183 vs 385.015, respectively)
- また、model 3として、SLE-DAS、SLEDAI-2Kの両方を入れたmodelを作成sたが、model 3とmodel 1を比較するためにlikelihood ratio testを行うと、p=0.694であり、model 1にSLEDAI-2Kを追加する統計学的なメリットはないと判断された。一方で、model 2とmodel 3を比較すると、p=0.0047となり、SLE-DASを追加する方がより精度よくdamageを予測できた
- すなわち、adjusted mean of SLE-DASは、adjusted mean of SLEDAI-2Kよりも、精度が高かった
<考察>
- PGAを目的変数、Table 1に含まれる項目を予測変数として、multivariate linear regression analysis + expertによる裁量の重み付けで作成したSLE-DASは、SLEDAI-2Kよりも、PGAによる疾患活動性の変化、damage accrualを精度よく予測した
- SLEDAIよりも項目数が減った(24 vs 17)にも関わらず精度がよかったのは、溶血性貧血、消化管病変、心肺病変を含んだこと、quantitativeな評価方式に変更したからだろう
- limitation
- PGAという主観的な項目を目的変数として作成したことかもしれない
- しかし、PGAはSLE疾患活動性を評価する方法として広く使用されており、また、今回はPGAは同じ評価者で継時的に評価されており、SLEDAI-2KとPGA自体も高い相関を示したことから、妥当性は高いと考えられる
- もう一つは、validation cohortが単施設であり、主にCaucasianの患者であることである
- そのため、他の施設でのvalidationも必要だろう
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