Wu W, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:648–656.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-213455
<背景&目的>
- SScはheterogeneousな疾患であり、将来的に不可逆的な内臓病変を発症してくる患者集団をいかに特定するかは、重要な課題である
- そういった患者集団を特定することで、適した患者集団に早期治療介入が可能になり、かつ将来の臨床試験に必要なcohortの構築にも必要である(雑多なdcSSc患者集団を試験に組み込むと、その後、病変が進行しない軽症患者も取り込まれてしまい、きちんとしたデータが出にくくなる)
- 以前に、EUSTAR (European Scleroderma Trials and Research) databaseのデータから、罹病期間が短いこと(≦15ヶ月)、baselineでmRSSが比較的低いこと(≦22/51)が、その後の皮膚硬化の進行(baselineから約1年後のmRSS増加 > 5 かつ baselineから約1年後のmRSS増加率 ≧ 25%)の独立した予測因子であることは報告されている
- また、皮膚硬化の進行がmortalityや重症度に関連することは以前にも報告されているが、昔のデータであり、かつやや偏った患者集団のデータであった(Arthritis Rheum 2001;44:2828–35.、Arthritis Rheum 2000;43:2445–54.)
- 発症早期のdcSScを対象とした単施設のretrospectiveな研究では、baseline mRSSが高いこと、その後2年間で皮膚硬化の改善を認めないこと、がより高いmortalityと有意に関連したが、 内臓病変をoutcomeとした結果とは矛盾した結果だった(Arthritis Rheum 2007;56:2422–31.)
- そこで、今回は、dcSScの皮膚硬化の進行が、内臓病変の進行やmortalityと関連するか、大規模cohortで調べることとした
<方法>
- EUSTAR database のdcSSc患者のうち、baselineのmRSS ≧ 7 で約1年後(12±3ヶ月)にmRSS評価を行い、かつ1回以上フォローしている患者集団を評価
- 皮膚硬化の進行の定義(以下2つを満たす)
- baselineから約1年後のmRSS増加 > 5
- baselineから約1年後のmRSS増加率 ≧ 25%
- outcome
- 心臓、肺、腎臓病変の進行
- 全死亡率
<結果>
- 1021人のdcSScを解析
- 7.6%(78人)に皮膚硬化の進行あり (skin progressors)
- フォロー期間中央値:3.4年
- baselineの時点で平均罹病期間は7年以上であり、多くはnon-earlyの患者
- 多重比較補正すると、有意なp値 = 0.0013 であり、skin progressorsとnon-skin progressorsを比較したTable 1でこれを満たすのは、罹病期間のみだった(skin progressorsのほうが短い)
肺病変の進行
- 中央値3.7年のフォロー期間中に、肺病変が進行(relative decrease in FVC ≥10%)したのは、全体で 35.8% (282/788人)
- CT scanを施行した患者670人のうち、baselineでILDがあったのは 60.1%(403人)
- baseline FVC の平均値±SD: 86.9%±20.5%
- そのうち、FVC < 70%は 20.8% (164人)
- Kaplan-Meier survival analysisにより、skin progressors とnon-skin progressorsを比較
- Figure 1A: FVC decline ≥10% (53.6% vs 34.4%; p<0.001)
- サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だった(Figure 2A,C)。
- 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 2B,D)。
- Figure 1B: FVC-DLCO composite definition(FVC decline ≥10% or 5-9% with DLCO ≧ 15%)による肺病変の進行の評価でも、有意にskin progressorsのほうが肺病変が進行した(56.4% vs 39.8%; p=0.004)
- こちらでも、サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だったが、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった。
収縮性心不全
- 頻度が少なかったので、評価には注意が必要
- 中央値3.2年のフォロー期間中に、
- LVEF reduction:2.3% (15/662人)
- skin progressors:6.3% (3人)
- non-skin progressors:2.0% (12人)
- Kaplan-Meier survival analysisでは、有意にskin progressorsでLVEF reductionが多かった(log-rank test p=0.038)
- サブグループ解析では有意とならず(サンプル少ないので当然といえば当然)
SRC
- 頻度が少なかったので、評価には注意が必要
- 中央値3.1年のフォロー期間中に、
- new SRC:2.1% (21/985人)
- skin progressors:0% (0人)
- non-skin progressors:2.3% (21人)
- Kaplan-Meier survival analysisでは、有意差なし(log-rank test p=0.196)
- サブグループ解析では有意とならず(サンプル少ないので当然といえば当然)
肺高血圧
- 中央値3.8年のフォロー期間中に、
- new PH:15.7% (109/693人)
- skin progressors:10.4% (5人)
- non-skin progressors:16.1% (104人)
- Kaplan-Meier survival analysisでは、有意差なし(log-rank test p=0.316)
- サブグループ解析では、罹病期間が長い(>15ヶ月)患者において、skin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意にPHが少なかった((0/28 [0.0%] vs 89/528 [16.9%], respectively; p=0.026)
全死亡率
- skin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意に高い (15.4% vs 7.3%; p=0.003) (Figure 1C)
- サブ解析にて、上記の関連は、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51)(9/67 [13.4%] vs 54/752 [7.2%], p=0.017)、罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)(4/19 [21.1%] vs 3/107 [2.8%], p=0.009)のうち、いずれにおいてもskin progressorsがnon-skin progressorsよりも有意に高かった(Figure 3A, C)
- 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 3B,D)。
Overall disease progression
- 中央値4.6年のフォロー期間中に、
- 上記で定義した全ての臓器のうち、いずれかで進行があった患者:56.8% (389/685人)
- skin progressors:74.0% (37人)
- non-skin progressors:55.4% (352人)
- Kaplan-Meier survival analysisでは、有意にskin progressorsで多かった(log-rank test p=0.012)(Figure 1D)
- サブ解析にて、baselineでmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)で有意だった(Figure 4A,C)。
- 一方で、baselineでmRSSが比較的高い患者群(>22/51), 罹病期間が長い患者群(>15ヶ月)は有意でなかった(Figure 4B,D)。
- multivariable Cox regressionでも、1年以内の皮膚硬化の進行は、以下の項目に独立して関連する因子だった
- FVC decline ≥10% (HR 1.79, 95% CI 1.20 to 2.65)
- all-cause death (HR 2.58, 95% CI 1.31 to 5.09)
- baselineにおけるSRCの既往, LVEF < 45%, FVC < 70%, DLCO < 70%, 年齢も、all-cause deathの独立したリスク因子だった
<考察>
- dcSScにおける1年以内の皮膚硬化の進行は、肺機能の低下と死亡率に有意に関連する因子だった
- これらの結果は、mRSSがdcSScのsurogate markerであることを支持するものである
- また、baselineにおけるmRSSが比較的低い患者群(≦22/51), 罹病期間が短い患者群(≦15ヶ月)は、今後の臨床試験に向けたcohortに組み込んでいくが重要であることも示唆された
- 今回のコホートの多くはnon-earlyで、罹病期間が短い患者群のほうが臓器病変の進行が多かったが、late-stageのdcSScにも臓器病変が進行していた患者がいたのも事実であり、dcSScのheterogeneityを反映する結果だった
- すなわち、臨床実地においても、late-stageのdcSScでも臓器病変が進行しないか注意が必要である
- limitation
- 死亡原因が不明
- 長期間フォローできた患者が少ない(その代わりnultiple imputationで補った)
- new PHがやや多かった(これは心カテではなくエコーでの評価を定義としたためだろう。EUSTAR databaseには心カテの情報はないらしい)
- 観察研究のため、治療内容による影響が考慮されていない(一応、患者群間で免疫抑制剤を受けている患者の割合は同等らしい)
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