Herrick AL, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:563–570. doi:10.1136/annrheumdis-2017-211912
- dcSScでは、mRSSによって皮膚硬化/肥厚を評価する
- dcSScの臨床試験では、このmRSSがprimary endpointに設定されるが、いくつか困難な点がある
- dcSScは稀な疾患である
- 急速に進行する傾向がある(特に最初の3-5年間) が、その後、プラトーに達し、しばしば改善する
- それが、ある薬剤において、open-labelや観察研究では有効と評価されても、RCTでは有効性が証明されない原因と考えられる
- 理想的には、どの患者が、mRSSが進行するか予測することができて、その患者をRCTに組み込めるようにするほうが良い
- 多くのRCTは、発症早期の患者に対象を限定しているので、組み入れ基準のmRSSの上限をさらに上げることで(現在提唱されているのは22)、皮膚硬化の増悪に関するコホートに入る患者として適切であると思われるが、そうやって厳密にすることで組み入れられる患者の数が減少するのも問題である
- The European Scleroderma Observational Study (ESOS)は、発症早期dcSSc患者326人を対象とした、治療に関する前向き観察研究である
- 患者は、12-24ヶ月の間、3ヶ月ごとにmRSSを評価されている
- 皮膚肥厚が生じてから中央値11.9ヶ月の患者を組み入れており、発症早期dcSScの皮膚病変の推移を評価できる貴重な試験である
- 今回の目的は、以下の2つである
- 実臨床のために、皮膚病変が進行しやすい患者を特定する因子を見つけること
- 今後の臨床試験のために、12ヶ月間で皮膚病変が進行することを予測するモデルを開発すること
方法
- ESOS study
- 組み入れ基準
- 皮膚肥厚発症から3年以内
- 18歳以上
- primary endpoint
- mRSS
- 326例の患者が、50施設(19カ国)から集められた
- 始められた治療は以下の通り
- MTX:65例
- MMF:118例
- CYC:87例
- 無治療:56例
- 治療群によって皮膚病変の進行は有意差なかったため(supple table S1)、治療群に関係なくmRSSの経過を解析した
- progressionの定義
- mRSSにおいて、baselineから、5-unit以上かつ25%以上の増加を認める
結果
- mRSSのprogressionの経過(figure1)
- フォロー期間中(中央値 23.4ヶ月)のmRSS scores:中央値 7 units
- どんな程度でも(progressionの定義に関わらず)、mRSSが増加した患者:160例
- そのうち、ほぼ大半は最初の12ヶ月に増悪した:149例
- baseline characteristics(table1)
- progressor(n=66)とnon-progressor(n=227)に分けて解析
- 組み入れ時の罹病期間
- progressorのほうが短い
- median 8.1 vs 12.6 months (P=0.001)
- 組み入れ時のmRSS
- progressorのほうが低い
- median 19 vs 21 units (P=0.030)
- しかしながら、組み入れ時のprogressorsのmRSSは、全てのprogressorsのうち30.3%がmRSS > 22, 15.2%がmRSS > 25 units だった(table1の下図)
- 中央値は低いものの、mRSSが高い患者の割合は多かった
- 自己抗体statusごとのprogressorsの特徴(table2)
- RNA poly Ⅲ陽性
- baselineの mRSS scoresが有意に高い
- 罹患期間は有意差なし
- progressorsが多い傾向
- 29.2% vs 11.9% (自己抗体陰性群)
- P=0.105
- mRSS peakのscoresが有意に高い
- 35 units
- p=0.001
- mRSS peakまでの期間が最も短い
- 16.3 months
- P=0.199
- 最初の12ヶ月間における、mRSS progressionの予測モデル(figure2)
- 以下の項目をモデルに入れた場合のROC曲線:AUC 0.711, PPV 41.0%
- mRSS scores
- 最初に皮膚硬化が生じてからの期間
- mRSS scores/最初に皮膚硬化が生じてからの期間、の交互作用
- RNA poly Ⅲ
- mRSS scores/最初に皮膚硬化が生じてからの期間、の交互作用は、その後のprogressorとなることを予測する
- progressorは、model Aにおける曲線の下半分に多く位置している
- model A に RNA poly Ⅲ を追加すると、より精度がよくなる(model B)
- RNA poly Ⅲが陽性だと、最初の1年間に急速に皮膚病変が進行する可能性が増加する
- progressorを推測する表
- 患者が来院した時点で、皮膚硬化が生じてからの期間(一番左)がわかり、そこからprogressorであると予測するには、mRSS scoresがその右の値以下であることが必要である、ことを示した表(model A, Bそれぞれ)
- 例えば、model Aを用いる場合(施設によってはRNA poly Ⅲが測定できない)
- 9ヶ月で臨床試験に組み入れられた場合、mRSS 0 - 23であれば、progressorを予測する
- 上記 model AをESOS cohortに適用してみると、
- 139/279例(49.8%):progressorと予測される
- 47例が実際にprogressorだった(PPV 33.8%)
- 140/279例(50.2%):non-progressorと予測される
- 123例が実際にnon-progressorだった(NPV 87.9%)
- 上記 model BをESOS cohortに適用してみると、
- 78/279例:progressorと予測される
- 32例が実際にprogressorだった(PPV 41.0%)
- 153/279例(50.2%):non-progressorと予測される
- 132例が実際にnon-progressorだった(NPV 86.3%)
まとめ
- 今回の試験の強みは、使用したcohortは、3ヶ月おきにprospectiveに皮膚病変を診察しているため、皮膚病変の経過を詳細にフォローできていることである
- 3ヶ月おきのフォローは実臨床でも現実的であり、今後行なっていくRCTでも可能なフォロー方法である
- また、今回のデータは、通常行う治療内容中の経過であり、実臨床にも一般化できると考えられる
- さらに、baselineの皮膚所見とそれまでの罹病期間を用いたprogressorの予測モデルを開発できたのも大きい発見である
- 自己抗体の所見を追加すれば、より正確な予測が可能になる
- 臨床試験で用いるアルゴリズムは、今回のようにあまり厳密すぎず、感度が高いほうが好ましい
- ESOS cohortの組み込み基準をmRSS > 22 unitとすると、サンプルサイズはn=326 → 189へ減少してしまうが、progressorの割合は22.5% → 26.4%しか増えない
- しかしながら、model Aを使えば 33.8%, model Bを使えば 41.0%まで増加する
- すなわち、mRSS scoresのみではprogressorsを予測するには不十分であるということである
- limitation
- 実際に、皮膚病変が肥厚した時期を推測するのは、なかなか難しい
- 一部の患者は、試験に組み込まれる前にmRSS peakを過ぎている可能性がある
- 今回のmodel A, Bはvalidationをおこなっていないため、一般化するにはその段階を踏むのが必要
- progression statusがわからない患者のうち、36.4%が死亡しており、これがバイアスとなっている可能性がある
- model Bでは、自己抗体のデータが欠損しているのが19.6%あり、これによって予測率が低下している可能性がある
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