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2018年1月19日金曜日

強皮症に対するTCZ:phase 2, The faSScinate clinical trial


Khanna D, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:212–220.  

背景

  • 強皮症は稀な疾患であるが、特に肺・心臓・腎臓に病変がある場合は予後も不良
    • 実際に、肺病変は、強皮症による死因で最も多い
    • 治療法が限られたものしかない
  • SScの病態にIL-6が関与している
    • 内皮細胞や皮膚fibroblastからIL-6産生が増加している
    • 発症早期のdcSSc患者の血清ではIL-6が高い
    • SScにおける進行予測・予後予測マーカーとして使用できるという報告もある
    • 活動性がある場合にCRPが増加している(特に発症早期のdcSSc)
  • TCZをSScに対して使用した試験の既報では、皮膚硬化と多関節炎が改善した
  • The faSScinate clinical trial は、TCZ皮下投与のSScに対する有効性と安全性を評価するための、最初の二重盲検・ランダム化比較試験である
    • 以前に報告されている48週間の盲検期間の結果では、臨床的には効果があったが、統計学的には有意差をもってmRSSがプラセボと比較して改善せず、primary endpointを達成しなかった
    • 今回は、さらにopen-labelで48週間観察し、計96週間の観察期間の結果を報告する

方法
  • 多施設(カナダ、フランス、ドイツ、UK、USA)、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較試験、phase 2
  • 対象
    • 18才以上
    • 1980 ACR SSc criteriaを満たす
    • Raunaud症状以外のSSc症状発症から5年以内
    • mRSS 15 - 40
    • 以下のうちいずれかを満たす、活動性のSSc
      • スクリー二ングの時点で、その時点から1-6ヶ月前の外来と比較して、mRSSが3以上増加(悪化)
      • スクリニーニングから1年以内に発症した新規SScでmRSSにて2以上の新規皮膚病変 or mRSSにて1以上の新規皮膚病変が2つ以上あり
      • 直近6ヶ月間で皮膚の厚みが増加していることがなんらかで証明されている
      • 腱摩擦音が1ヶ所以上 + 検査所見(CRP ≧ 1mg/dL or ESR ≧ 28mm/h or Plt ≧ 33万/uL)
    • 肘、膝よりも近位の皮膚病変を含む
  • 1:1でランダムに割付
    • placebo → 48週間時点でopen labelでTCZ 162mg weekly s.c. 開始
    • TCZ 162mg weekly s.c. → 48週間時点でopen labelでTCZ 162mg weekly s.c. 継続

  • 割付は、baselineにおける関節病変(28関節で4ヶ所未満 or 4ヶ所以上の圧痛あり)によって層別化
  • 24週間目以降から、SSc増悪あれば、escape therapyとしてMTX, HCQ, MMF使用可能
  • exploratory endpoint
    • 96週時点でのmRSSの改善率(≧20%, ≧40%, ≧60%) 
    • mRSSにてminimal clinically important difference(MCID)を達成した割合(baselineから4.7以上改善)
    • %FVC
    • %DLco
    • 医師評価のVAS
    • HAQ-DI
    • 患者評価のVAS
    • FACIT-Fatigue Score
    • Pruritus 5-D Itch Scale


結果
  • 流れ


  • baseline characteristics
    • HAQ-DI score, CRPがわずかにopen-labelへ以降した群で低い


有効性

  • open-labelへ移行後も、TCZ群のmRSS改善は持続
  • 最初の48週間はplaceboを投与されていた群も、open labelでTCZ開始すると、有意にmRSS改善



  • 96週時点でのmRSSの改善率(≧20%, ≧40%, ≧60%)を達成した割合も、TCZ継続群では48週間時点よりも増加
  • 医師評価VAS, 患者評価項目いずれもTCZ継続群で継続的に改善



  • 最初の48週間でplacebo群だった場合は%FVCが増悪した割合は83%だったが、96週間のうちプロトコルを継続できた患者群(=TCZ継続群 or TCZへopen labelへ移行群)では、%FVC増悪率はいずれも同様だった(42%, 46%)
  • open labelへ移行して全例にTCZを投与開始したあとでは、%FVC 10%以上低下した症例はなし



安全性

  • 重症感染症
    • placeno→TCZ群にて、前後で重症感染症を発症した割合は増加
  • open-label phaseでは死亡症例なし
    • 盲検phaseでは死亡症例あり


まとめ
  • 最初の48週間にてplaceboだった症例も、その後48週間TCZを投与することで、TCZ継続群と同等のmRSS改善を示した
  • TCZ継続群では、継続的にmRSSが改善した
    • 72週間あたりで、mRSSの改善はフラットになったが、個々の症例では改善を認めていた
    • 2症例、例外的にmRSSが増悪した(それぞれ+9、+14)
  • TCZによって、患者主観的評価項目でも改善を示した
  • 肺機能の低下も、TCZ投与によってある程度防ぐことができた
  • 有害事象も既知のものだった
    • 最初の数ヶ月で感染症が多かった

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