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2019年3月21日木曜日

重症感染症のリスク TCZ vs other bDMARDs:TCZのほうがTNFiと比較して皮膚、憩室炎が有意に多い(USコホート)

Pawar A, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:456–464.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214367

<背景>

  • RAの活動性自体が治療に関わらず感染症のリスクになることは知られているが、重要なことはどの治療が感染症のリスクを高めるかということである
    • TNFi vs csDMARDs, nonTNFi(ABT, RTX):システマティックレビューによれば、TNFiのほうが結核や重症感染症のリスクが高い
  • しかし、TCZに関しては、head-to-headの試験も限られており、あまりわかっていない
    • TCZ mono vs MTX:24週間におけるRCTでは、重症感染症がTCZ群のほうが多い(3.6 vs 1.5/100 patient years
    • TCZ 4mg/kg + DMARDs vs TCZ 8mg/kg + DMARDs vs placebo + DMARDs:重症感染症がTCZ群のほうが多い(4.4 vs 5.3 vs 3.9/100 patient years
  • これまで、他のbDMARDsと比較した試験はサンプルが少なく、それぞれの重症感染症ごとに分けた試験はなかった
    • Medicareコホートの試験:ABTと比較して、入院を有する重症感染症のリスクに有意差なし(HR 0.89 - 1.34)
    • 日本の前向き試験:TNFiと比較して、重症感染症のリスクに有意差なし(HR 0.93 - 5.37)
    • Britishの試験:ETNと比較して、TCZの方が有意に重症感染症が多い(HR 1.02 - 1.47)
  • 結果が異なるので、さらに質の高い試験が必要である
    • ということで、今回は重症細菌・ウイルス感染症の割合を、TCZ vs other bDMARDsで、複数のデータベースを利用して比較した

<方法>
  • アメリカの3つのコホートを使用
    • Medicare
    • IMS
    • MarketScan
  • first cohortであるTNFi群・TCZ群は、TCZ・TNFiの使用歴なし
    • second cohortでTCZ vs ABTを比較したが、ABT群はABT使用歴なしという患者とした
  • 罹患年数や重症度といった交絡因子を少しでも少なくするため、bDMARDsやtofacitinib以外の治療歴がある患者を対象とした
  • RTXは、悪性腫瘍の既往のある症例に使用されることが多く患者の背景が異なる可能性があるので、今回の解析に入れなかった
  • 退院時の病名に基づいて、primary outcomeの重症感染症を調べた
    • 細菌感染症、帯状疱疹、日和見感染症(opportunistic infection)、腎盂腎炎、皮膚軟部組織感染症、結核、ウイルス性肝炎、憩室炎、肺炎、敗血症
  • RAの重症度や罹患年数、感染症発症に潜在的に影響しうる因子として、以下のものを考慮した
    • 年齢、地域、併存疾患、combined comorbidity index、主観的RA重症度インデックス、併用治療薬、ワクチン、予防抗生物質の使用、侵襲的処置の既往歴
  • 今回はTCZ群 vs TNFi群 or TCZ群 vs TNFi群で比較する際に、propensity score matchingを行った
    • その際に、70以上の項目をそれぞれのコホートで調節した
    • 検出力を上げるために、TCZ:TNFi =1:3 の比率とした
      • second cohortではTCZ:ABT =1:1


<結果>

  • first cohortは以下のようなflowになった
    • second cohortはonline supple参照



  • Patient characteristicsは以下 (Table 1)
    • コホートごとの違いはあるが、TCN vs TNFiで特に違いはなさそう
    • baselineの使用歴
      • MTX:69-73%
      • PSL:70-79%
  • TCN vs ABTも特に違いはなさそう(online supple参照)



  • 3つのコホートをまとめると、重症感染症リスクはTCZとTNFiで有意差なし
    • TCZ vs TNFi : HR 0.95 - 1.16 (Table 2)
  • second cohortにおけるTCZとABTの比較では、有意にTCZで重症感染症が多い
    • TCZ vs ABT : HR 1.20 - 1.63 (Table 3)




  • 重症感染症の内訳 (Table 4)
    • TCZ vs TNFi:皮膚軟部組織感染症、憩室炎が、有意にTCZで多い
      • 皮膚軟部組織感染症 TCZ vs TNFi : HR 1.47 - 3.86 
      • 憩室炎 TCZ vs TNFi : HR 1.64 - 3.34
    • TCZ vs ABT:憩室炎、肺炎、敗血症が、有意にTCZで多い ()
      •  憩室炎 TCZ vs ABT: HR 1.12 - 2.84
      •  肺炎 TCZ vs ABT: HR 1.04 - 1.80
      • 敗血症 TCZ vs ABT: HR 1.08 - 1.78



  • サブグループ解析では、いずれもTCZ vs TNFiで有意差なし(Table 5)



<考察>

  • アメリカの複数コホートのpropensity score matchingを行ったTCZ vs TNFiの比較における重症感染症のリスクは、全体でみると有意差はなかったが、個別にみると、皮膚軟部組織感染症、憩室炎が有意に多かった

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