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2017年9月21日木曜日

23価肺炎球菌ワクチンに対するbelimumabの影響

 2017 Jan 1:961203317703495.

本文中の図やグラフは元論文より引用しております。


背景

  • EULARの推奨では、リウマチ系疾患でも通常と同様に、23価の肺炎球菌ワクチンは強く推奨されている
  • Belimumabは、ヒト化IgG1λmonoclonal抗体で、BLyS(soluble B-lymphocyte stimulator)蛋白に結合し阻害する
    • CD19(+), CD20(+), naive, activated B細胞、形質細胞を減らす。また、一過性にmemory B細胞が増加するが52週には正常範囲まで戻る
    • 理論的には、B細胞の成熟と生存を阻害し、ワクチンに対する効果に影響を与える
    • SLEに対するbelimumabの大規模phase3ランダム化試験では、サブグループ解析で、23価肺炎球菌ワクチンの有効性には影響を与えないという結果であり、belimumabはlong-lived 形質細胞とmemory B細胞には影響しないことが示唆された
    • 13価肺炎球菌ワクチンに関しても、DMARDsやPSLを使用しているSLE患者にbelimumabを投与しても免疫反応に差はなかったと報告している
  • 今回は、SLE患者において、belimumabが肺炎球菌ワクチンの免疫反応に影響を与えるか評価した

方法
  • phase4, open-label, ランダム化試験
  • アメリカの13施設で実施
  • 期間:2012/5−2015/11
  • 23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®︎、サノフィ)接種時期を以下の通り割付
    • 7:9=belimumab投与する4週間前に接種する群(pre-belimumab群):belimumab投与開始してから24週時点で接種する群(belimumab-concurrent群)
    • 脱落率の違いを考慮して上記の比率で割付た
  • belimumab用量:計9回投与
    • pre-belimumab群
      • 10mg/kg IV @week 4, 6, 8 → 4週毎に投与
    • belimumab-concurrent群
      • 10mg/kg IV @day 0, week 2, 4 → 4週毎に投与
  • 対象
    • 18歳以上
    • ACR分類基準をみたすSLE
  • 除外
    • belimumabの投与歴あり
    • 1年以内に生物学的製剤使用あり(TNF阻害剤、IL-1受容体阻害薬、血漿交換、PSL相当 ≧ 100mg/day、IVCYは90日以上経過していればOK)
  • primary outcome
    • 接種4週間後の時点で、23価のうち、1つ以上の株で接種前より2倍以上抗体価の上昇があった割合
      • 接種前に検出感度以下の抗体価だった場合は、接種後に ≧ 0.6 μg/mLとなった場合とする(使用したアッセイでは検出感度下限が 0.3μg/mLだったため)
  • ITT解析
    • 1回でもbelimumab and/or ワクチン接種を受けたら解析対象


結果
  • 79人が以下のように割り付けられた(figure1)
  • 脱落率:12.7%(10/79)
    • 3人は患者希望、3人は副作用、2人はlost、2人は他の理由
  • 計9回のbelimumab投与を完遂した人数
    • pre-belimumab群:27人
    • belimumab-concurrent群:35人





    • baseline(table1)
      • 女性:91.1%
      • 平均年齢:39.6歳
      • 白人:65.8%
      • なんらかの併用治療を受けていた割合:45.6%



    • primary outcome(figure2)
      • 接種4週間後の時点で、23価のうち、1つ以上の株で接種前より2倍以上抗体価の上昇があった割合
        • pre-belimumab群:97.0%(32/33)
          • 抗体がつかなかった症例は、baselineから血清IgG値が正常範囲より低く(539mg/dL)、観察期間中に増加しなかった
        • belimumab-concurrent群:97.6%(40/41)
          • 抗体がつかなかった症例は、baselineから観察期間中破血清IgG値は正常範囲を維持していた(813mg/dL→789mg/dL)
    • 85%以上は、23価のうち、10価以上の株に対して抗体価の上昇を認めた
    • 抗体価が上昇する株の数が70%(≒16/23株)以上だった割合は、belimumab-concurrent群でやや減少する
      • pre-belimumab群:75.8%(25/33) 
      • belimumab-concurrent群:63.4%(26/41)





    • 抗体価がつかなかった症例は、それぞれ1例とも(計2例)、抗マラリア薬と免疫抑制剤を併用しており、PSL > 7.5mgだった
    • pre-belimumab群において、12種類以上の株に対して抗体を得た人たちは、PSL用量が ≦ 7.5mgの割合がそうでない人たちより多かった
      • 90.9% [10/11] vs 77.3% [17/22]





    • 安全性
      • 1つ以上の有害事象があった割合
        • pre-belimumab群:91.7%(31/34)
        • belimumab-concurrent群:86.7%(39/45)
      • 最も頻度の多かった有害事象は関節痛、嘔気
      • 解析者によって、治療関連有害事象と判断された割合
        • pre-belimumab群:23.5%(8/34)
        • belimumab-concurrent群:8.9%(4/45)





    まとめ
    • belimumabを投与するタイミングによって、1つ以上の血清型で抗体を得られる割合は変わらなかった
    • 専門家の意見では、5歳以上であれば、70%以上の株で抗体が上昇すれば正常の反応とされている(2-5歳では50%)
      • 今回の研究でも、多くの症例において50-70%の種類の株で抗体価の増加を認め、それはbelimumabの投与するタイミングで変わらなかった
    • 既報では、RA患者において、RTXとMTX併用している群ではMTX単独よりも肺炎球菌ワクチンの反応が悪かったと報告されている
      • Arthritis Rheum 2010; 62: 64–74. 
    • SLEの既報では、免疫抑制剤によって反応性が低下したが、抗マラリア薬によってそれが緩和されたと報告されている
      • Rheumatology 2012; 51: 1061–1069. 
    • limitation
      • placeboなし
      • サンプルサイズ小さい
      • 免疫抑制剤を併用している患者の割合が半数以下なので、実臨床でbelimumabを追加した場合はまた異なるかもしれない


    belimumabでは肺炎球菌ワクチンの効果はあまり変わらなかったとのこと。
    そのぶん、SLEに対する有効性も低いのでしょうか。。。

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