まず初めに
- 帯状疱疹は、VZV再活性化によって皮疹と神経痛が生じる
- アメリカでは、成人の1/3が一度は罹患する
- 痛みを伴う皮疹に加えて、20%は帯状疱疹後神経痛を発症し、それにかかるコストやQOL低下は無視できない
- 帯状疱疹の発生率は増加しているものの、CDCの報告では、60歳以上のうち28%しかワクチン接種を受けていない
- 自己免疫疾患を患っている人は帯状疱疹発症リスクは高く、それに対する治療によってさらに高くなる
- どういった人がリスクとなるのか、リスクが高い人にどのようにワクチンを接種するのか、他のリスクを低下させる方法はないのかといったことが重要である
The solution
- 帯状疱疹生ワクチンは、60歳以上の38546人を対象とした試験の結果を受けて、2006年にFDAに承認された(N Engl J Med 2005;352:2271–84. )
- 3年ほどの観察期間にて、帯状疱疹発症率は、生ワクチンを接種した人は1.66%、プラセボ群は3.42%であり、51%リスクを低下させた。また、帯状疱疹後神経痛の発症は、2/3減少した。
- その効果は加齢とともに低下し、60-69歳では64%リスクが低下するも、80歳以上ではリスク低下は18%のみだった
- 有害事象は少なく、帯状疱疹様皮疹が生ワクチン接種群で1.6%、プラセボ群で1.1%だった
- 播種性帯状疱疹は、生ワクチン接種群で0.026%、プラセボ群で0.056%だった
- 眼領域の帯状疱疹は、生ワクチン接種群で0.18%、プラセボ群で0.36%だった
- 帯状疱疹の抗体のスクリーニングは、60歳以上の高齢者ではほぼ全員水痘に対する免疫があり、帯状疱疹に以前に罹患していても再度かかることがあるため、ワクチン接種の前にスクリーニングは不要である
- 帯状疱疹ワクチンの効果は4年以上あるが、徐々にその後は有効性は低下し、5年以降は効果があるか定かではない
- 50−59歳の人に帯状疱疹ワクチン接種が推奨されないのはこれも1つの理由である
- また、帯状疱疹に罹患してすぐの人にはワクチン接種は不要である
What is at risk?
- 大半の帯状疱疹は、VZV再活性化によって生じる
- 帯状疱疹ワクチンを接種すべき人は下記の通り
- 60歳以上
- 60歳以上の変形性関節症の人の帯状疱疹発症率:0.6-1.0/100人年
- 慢性疾患を有する人(CKD、糖尿病、RA、慢性肺疾患など)
- 以前に帯状疱疹にかかったことがある人
- 長期間のステロイド治療中の人
- 用量依存性に帯状疱疹リスクが増加する
- 生物学的製剤を使用している人
- 生物学的製剤使用している人の帯状疱疹発症率:0.78-1.6/100人年
- JAK阻害薬を使用している人
- Tofa使用している人の帯状疱疹率:〜4.5/100人年
- これは普通のRAの人と比較すると3-7倍高い
- JAK阻害薬使用中の人は、年齢関係なく帯状疱疹ワクチン接種が推奨される
Who is at greatest risk?
- 生物学的製剤使用中の人に生ワクチンを接種しないことは、エビデンスに乗っ取っているわけではない
- しかしながら、移植患者や化学療法を受けた子供の様な非常に免疫力の低い患者において播種性帯状疱疹が発症するという報告から、理論上リスクがあるということで、ガイドラインでは推奨していない
- Zhangらは、生物学的製剤を使用しているRA患者で、偶然、帯状疱疹ワクチンを接種した633人について調査し、42日間の観察期間で帯状疱疹を発症した人はいなかったと報告した(Arthritis Res Ther 2011;13:R174. )
- この報告によれば、たいていの成人はワクチン接種のリスクは低い
- しかし、VZVの免疫がもともとなく、ワクチンによって初めてVZVの抗体を得るという場合には、特に若年免疫不全患者においてリスクが高い
When to give zoster vaccination?
- リスクと年齢に応じて、ワクチンを接種すべきである
- ほとんどのガイドラインでは、MTX、他のDMARDs、ステロイド(PSL20mg/day相当)使用中でも帯状疱疹生ワクチン接種してもよいとされている
- 最も問題なのは、生物学的製剤を使用する予定の場合である
- ワクチン接種は、なるべく早期に実施する方が望ましい
- 特に、50歳以上で、生物学的製剤を開始前に接種する方がよいだろう
Timing of zoster vaccination
- 生物学的製剤使用開始は、ワクチン接種後2−4週間が望ましい
- The Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) では、生物学的製剤で治療中の患者は、生物学的製剤を中止して最低4週間あけて生ワクチンを接種し、生物学的製剤再開は生ワクチン接種後2-4週間あけるよう推奨している
- Winthropらは、Tofa使用中の112人の患者における、帯状疱疹生ワクチン接種のタイミングと安全性について調べた
Future vaccine options.
- 実臨床では、生物学的製剤やJAK阻害薬の開始について、帯状疱疹生ワクチンの接種直後 or 2−4週間待つか、選択肢がある
- 幸いなことに、帯状疱疹の不活化ワクチンが近々市場に出るので、その場合には同時に打てるだろう
- inactive recombinant VZV glycoprotein adjuvant-basedワクチンであり、2ヶ月間隔で2回、筋注する
- In the Zoster Efficacy Study in Adults 50 Years of Age or Older (ZOE-50) and the Zoster Efficacy Study in Adults 70 Years of Age or Older (ZOE- 70) trials では、4年間経過したのちも、70歳以上の人に対して90%発症リスクを低下させ、50歳以上の人には発症リスクを98%低下させた。帯状疱疹後神経痛に関しては、70歳以下の人では発生せず、70歳以上の人にも発症リスクを89%低下させた。
- デメリットとしては、2回筋注しなくてはならず、80%の頻度で接種部位の筋痛が生じた
Formal guidance for prevention of HZ.
- ACIPガイドラインでの帯状疱疹生ワクチン接種の推奨対象
- 60歳以上
- 50-59歳は発症率が低く、若年者に対する長期のデータがないため推奨せず
- Xeljanz product label より
- Tofa使用中には生ワクチンは接種しないように
- Zostavax product labelより
- 免疫抑制剤使用中は接種しないように
- 活動性のある未治療結核患者には接種しないように
- 免疫抑制治療中もしくは免疫不全患者に接種すると、播種性帯状疱疹が発症する可能性がある
Zoster vaccination uncertainties.
- 以下のことはまだわかっていない
- 帯状疱疹に罹患した場合、どのタイミングでワクチン接種すれば再発を防げるか?
- 一度帯状疱疹に罹患すると、アメリカのリウマチ専門医の90%は生物学的製剤もしくはJAK阻害薬を中止するが、これは正しいのか?再開する場合、どのタイミングで再開するのがよいのか?
- ACIPガイドラインでは、高齢の健常人に対してのみ推奨が記載されており、自己免疫疾患などの高リスク患者に対しては記載していない
- 今後、市場に出回るだろう新しい不活化帯状疱疹ワクチンのメリット、デメリット
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