①European League Against Rheumatism
recommendations for calcium pyrophosphate
deposition. Part I: terminology and diagnosis
W Zhang,1 M Doherty,1 T Bardin,2 V Barskova,3 P-A Guerne,4 T L Jansen,5 B F Leeb,6
F Perez-Ruiz,7 J Pimentao,8 L Punzi,9 P Richette,2 F Sivera,10 T Uhlig,11 I Watt,12
E Pascual13
E Pascual13
- 関節部位、年齢、性別による軟骨石灰化(chondrocalcinosis)の違い
EULAR2011による言葉の定義
- CPP crystals
- calcium pyrophosphate dihydrate crystalsのこと
- CPPD
- CPP crystalによってもたらされる全ての状況の総称
- CC(cartilage calcification)
- 画像もしくは組織学的に軟骨石灰化のこと。CPPDとは限らず、正常組織にも起きうる。
Risf factors
- 関節外傷の既往
- 遺伝的・家族性にCPPDの傾向あり
- 特異的な疾患
- ヘモクロマトーシス
- 副甲状腺機能亢進症
- 低フォスファターゼ症
- 低Mg血症 など
EULAR recommendations
- CCは、OAとは独立もしくはOAによる構造変化とともに認める
- CPPDを伴うOAは、そうでないOAと比較して、osteophytosisの程度が強く、罹患関節も異なり、炎症所見が強い
- 稀だが、腱炎、腱鞘滑膜炎、滑液包炎、体軸関節に関連した症状を起こすこともある
- 単施設研究では、急性のCPP結晶関節炎は、典型的には3−4日以内に改善した
- 関節痛、こわばり、腫脹、圧痛、±紅斑を認める
- 65歳以上の膝、手、肩関節の関節炎は急性CPP関節炎を示唆する。画像による石灰化は診断の可能性を高めるが、確実な診断には結晶を証明することが必要である
- 上記のグラフのように、50歳以下では稀であり、45歳以下(特に多関節病変)で診断される場合には家族性 or 背景の代謝性疾患を考慮する
- 痛風も年齢とともにリスクが増加するが、多くの初発は足である(特に第1MTP関節)
- OA患者ではCPPDが多い
- 非典型的な部位のOAと関連する
- 慢性CPP結晶性関節炎は、mono/oligo関節炎(89%)、多関節炎(11%)と報告がある
- 診断はCPP結晶の証明
- CPPDに関する検査の特性について
- CPPDリスク因子
- 今後の課題
- CPPDの有無によって、OAに違いがあるか(症状、罹患関節、予後)
- 結晶の有無をgold standardとした質の高い臨床研究
- CPP結晶の検査に関するプロトコル作成
- ルーチン検査とできるように、それぞれの画像検査のvalidation
- 関連する代謝性疾患によるCPPDへの影響
OA患者において、軟骨石灰化がどのように関連するかを調べた研究が以下の②
②Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 1651–1658
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 1651–1658
Association of Chondrocalcinosis in Knee Joints
With Pain and Synovitis: Data From the
Osteoarthritis Initiative
BOBBY KWANGHOON HAN,1 WOOJIN KIM,2 JINGBO NIU,3 SHRISTI BASNYAT,4 VENIAMIN BARSHAY,4 JOHN P. GAUGHAN,4 CHARLENE WILLIAMS,4 SHARON L. KOLASINSKI,2 AND DAVID T. FELSON3
With Pain and Synovitis: Data From the
Osteoarthritis Initiative
BOBBY KWANGHOON HAN,1 WOOJIN KIM,2 JINGBO NIU,3 SHRISTI BASNYAT,4 VENIAMIN BARSHAY,4 JOHN P. GAUGHAN,4 CHARLENE WILLIAMS,4 SHARON L. KOLASINSKI,2 AND DAVID T. FELSON3
背景
- calcium pyrophosphate dihydrate (CPPD) crystalsやbasic calcium phosphate (BCP)などのカルシウム含有結晶が、関節のヒアリン軟骨や線維軟骨(→hyaline cartilage, fibrocartilage, elastic cartilageの違いはhttp://www.differencebetween.net/science/health/difference-between-hyaline-cartilage-and-elastic-cartilage/を参照)に沈着し、画像的に線状の石灰化として認める(=chondrocalcinosis:軟骨石灰化)ことはよくあることである
- chondrocalsinosisは変形性関節症(OA)と関連があり、OA重症度と関節液CPPD結晶の有無が関係しているという報告もある
- しかしながら、他の報告では、関節裂隙とchondrocalsinosisの関連はなかったという報告や、前向き試験ではMRI上のOA進行や軟骨消失と関連がなかったという報告もある
- CPPD結晶は、炎症反応と滑膜炎を惹起し、急性or慢性炎症性関節炎の原因となる
- CPPDは、in vitroのヒトの軟骨や滑膜細胞において、nitric oxide, MMP-13, PGE2などの炎症性・異化メディエーターを産生する
- BCP結晶は、in vitroのマクロファージにおいて、NLRP3 inflammasome→IL-1βを分泌させる。マウスの関節に注射することで滑膜炎や軟骨細胞変性を誘導した。
- しかしながら、chondrocalsinosisに含まれるカルシウム含有結晶が、実際に滑膜炎やOA発症に関わるかは不明である
- MRIで測定される滑膜の体積が、膝の痛みの重症度と関連して変化することや、軟骨消失とOA発症を予測することが既報で報告されている
- 今回の試験では、chondrocalsinosisが膝関節痛 or MRIでの滑膜炎に関連するか、the Osteoarthritis Initiative (OAI)のデータから調べた
方法
- the Osteoarthritis Initiative (OAI)
- 4796人のOA患者を対象とした、前向き多施設レジストリーである
- 2004-2010年の症例を調べた
- 60歳以上
- それ以上若いと石灰化が稀なため
- baselineにてKellgren-Lawrence (K/L)grade 0, 1, 2のいずれか
- それ以上進行していると、他の要因による関節痛や関節炎が交絡する可能性が高いから
※K/L classification
Classification
- grade 0: no radiographic features of OA are present
- grade 1: doubtful joint space narrowing (JSN) and possible osteophytic lipping
- grade 2: definite osteophytes and possible JSN on anteroposterior weight-bearing radiograph
- grade 3: multiple osteophytes, definite JSN, sclerosis, possible bony deformity
- grade 4: large osteophytes, marked JSN, severe sclerosis and definite bony deformity
- まず、baselineとその後4年間における膝関節痛とchondrocalcinosisの関連を調べた
- その次に、MRIでの滑膜炎とchondrocalcinosisの関連を調べた
結果
- baseline characteristics
- 膝関節痛とchondrocalcinosisの関連について
- baselineでは、いずれの質問においても、chondrocalcinosisがある場合の方が、膝関節痛が有意に強かった
- 年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後
- 4年後時点では、chondrocalcinosisがあるほうが有意に膝関節痛が強かったのは、"any knee pain, past 30 days"のみ
- VASで評価した膝関節痛重症度に関して
- baselineでは、chondrocalcinosisがあるほうが有意にVASが高かった
- baselineから4年後までの膝関節痛の変化は、chondrocalcinosisに関連しなかった
- 間欠的な痛みはchondrocalcinosisがあるほうが有意に強かった
- MRIでの滑膜炎に関して
- chondrocalcinosisの有無は関係なし
まとめ
- (交絡因子となりうる年齢、性別、BMI、K/L classificationで調整後も)膝関節痛はchondrocalcinosisがある場合の方が有意に強かったが、MRIでの滑膜炎とは関連しなかった
- 当初の仮説としては、CPPDとBCP crystalが関節炎と関連があるのは、滑膜炎のためと考えていたが、今回の結果はそうでなかった
- OA患者の膝関節置換術の滑膜検体からは、組織学的な滑膜炎と血管新生にchondrocalcinosisは関連しなかったと報告されている
- その理由として、カルシウム含有結晶は軟骨内にあることが考えられている
- CPPD結晶は、急速なカルシウム血中濃度低下など限られた状況のみで出現し、それが間欠的であるため滑膜炎も間欠的となり、滑膜体積には反映されないことも理由としてありうる
- さらに、カルシウム含有結晶の形成は、細胞外マトリックスの変化に制御されている
- 筆者らは、軟骨のカルシウム結晶沈着は、(滑膜炎の誘引というよりも) 膝関節のOAによる細胞外マトリックスのdegenerative changeと関節痛のマーカーになるのではないかと推測している
- 軟骨細胞過形成のマーカーであるtype Xコラーゲンの発現レベルと軟骨の石灰化が相関しているという組織学的研究からの報告もある
- さらに、type 2コラーゲンは、ATPが石灰化を促進するのを抑制するが、type2とtype1コラーゲンが共に存在するとATPが石灰化を促進するのを増強するのがvitroで示されている
- プロテオグリカンはtype or type2コラーゲンに加えるとカルシウム含有結晶の形成を抑制する
結晶性関節炎におけるエコーに関するレビューが以下の③
③Emerg Radiol (2016) 23:623–632
Musculoskeletal ultrasonography in the diagnosis of acute
crystalline synovitis
Matt Rheinboldt1,2 & Courtney Scher2,3
- ヒアリン軟骨は低エコーだが(figure1)、線維軟骨は高エコー(figure2)
- 関節液貯留(figure3)
- 非特異的
- 滑膜増殖(figure4)
- 非特異的
- 結晶関節炎でも滑膜内の血流増加は認めうる
- erosion (figure5)
- 非特異的(痛風でもRAでも認める)
- double-contour sign(figure6:痛風)と軟骨内石灰化(figure7:偽痛風)
- 特異的所見
- double-contour signは、無症状の高尿酸血症でも認めることがあり、治療によって消失するため疾患活動性のマーカーと考えられている
- Aggregates(figure8)
- 尿酸結晶、カルシウムピロリン酸結晶ともに、関節液内にて"snowstorm"のように見える
- 滑膜組織、関節外の腱、軟部組織にも結晶形成が起こりうり、その場合にはその部位にechogenicな所見を認める
- 手関節における三角線維軟骨のカルシウムピロリン酸結晶のAggregates(figure9)
- 痛風結節(figure10)
- 形成初期は低エコー、均質な所見
- 時間が経過すると内部が石灰化し、acoustic shadowingを認める
- 肉芽種とfibrovascular組織により、周囲は低エコーとなりハローサインを呈する
- 腱に形成した痛風結節は、軽度の腱の腫脹を認め、fibriallary構造が消失し、acoustic shadowingを認める(figure11)
- 頻度が多いのは膝蓋腱と上腕三頭筋腱であり、その次にアキレス腱と大腿四頭筋腱
- CPP結晶は、肉芽種形成や滑膜・軟部組織の結節形成は稀である
- (肘などの)滑液包にも、痛風結節も認めうる(figure12)
- 関節液貯留していると、ヒアリン軟骨のechogenecityにより軟骨表面が高エコーとなることがあり、これをdouble-contour signと間違えることがあるので、より多くのアングルで観察することをOMERACT definitionでも推奨している
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