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2018年9月8日土曜日

MTX反応性不良の予測因子

Teitsma XM, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:1261–1267. doi:10.1136/annrheumdis-2018-213035

<abstract>
・目的
MTXに対する治療抵抗性(MTX-IR: inadequatte response)の、baselineでの予測因子を明らかにする
・方法
U-Act-Earlyにて、108人のDMARD-naiveのRA患者がMTXに割り付けられ、remission(DAS28 < 2.6 かつ 腫脹関節 ≦ 4 を24週以上)を目標に治療された。remissionに達しない場合には、HCQを追加し、それでも達しない場合にはTCZへ変更された。IR(bDMARDを必要とした場合と定義)の臨床的予測因子を明らかにするためにregression analysisを行った。 Rotterdam Early Arthritis Cohortのデータをexternal validationに使用した。
・結果
治療開始の最初の1年間で、U-Act-Earlyの 52%(56/108人)がMTX-IRだった。baselineの予測因子として、DAS28 (adjusted OR (ORadj) 2.1, 95%CI 1.4 to 3.2), current smoking (ORadj 3.02, 95%CI 1.1 to 8.0)、飲酒(ORadj 0.4, 95%CI 0.1 to 0.9) が特定された。
・結論
baselineにおけるDAS28高値、喫煙していること、飲酒をしていないことが、新規発症DMARD-naive RAにおけるMTX-IRの予測因子だった。


<背景>
  • MTXはRAのkey drugであるものの、30-50%で追加の治療が必要である
  • 治療開始から治療への反応性が早ければ早いほど長期間のoutcomeがいいことはすでに示されており、MTXに対する治療反応性を予測できれば、治療反応性が悪いと予測される患者には早期からのbDMARDs併用を行うことでclinical outcomeを改善できるかもしれない
  • そのため、今回、baselineにおけるMTX-IR予測因子を同定することを目的に試験を行った

<方法>
  • U-Act-Earlyは、新規発症RA患者において、MTX and/or TCZを使用して、remissionを維持(DAS28 < 2.6 かつ 腫脹関節 ≦ 4 を24週以上)することを評価した、計2年間、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較試験である
    • MTX は10mg/w から開始
      • その後、4週おきに5mgずつ増量し、最大 30mg/wまでremissionを達成するまで副作用なければ増量
    • 20週までにremissionを達成できなければ、HCQ追加
      • さらに12週後に達成できなければ、HCQを注視してTCZ単剤 or TCZ+MTXに割り付け
    • 経口ステロイドは試験開始3ヶ月は禁止だが、その後は1年間で2週間以内かつPSL 10mg/day以下なら使用可
  • Validation sampleとして、the Rotterdam Early Arthritis Cohort (tREACH)を使用
    • 多施設、単一盲検(医師のみ)
    • 18才以上、発症1年以内の1ヶ所以上の関節炎が持続するか否かを評価したcohort
    • RA診断基準を満たした場合には、 MTX開始(week 1, 15 mg/week; week 2, 20 mg/week; week 3, 25 mg/week) 
      • ステロイドも漸減スケジュールを組みつつ併用(weeks 1–4, 15 mg/day; weeks 5–6, 10 mg/day; weeks 7–8, 5 mg/day; weeks 9–10, 2.5 mg/day prednisone-equivalent)
    • 3ヶ月後にDAS ≧ 2.4の場合にはTNFα阻害剤を併用
  • いずれの試験も、最初の1年でbDMARDを開始しなくてはいけない状況をMTX-IRと定義

<結果>

  • characteristics(table1)
    • 2つのコホートの主な違いは、
      • 飲酒
      • 罹病期間
      • TJC28
      • SHS
      • erosion score
      • JSN score
    • U-Act-Early trialでは、52%(56/108人)がMTX-IR
      • TCZ併用を開始した76%(32/42人)でremissionを維持
    • tREACH trialでは、45%(37/83人)がMTX-IRでTNFα併用開始
      • そのうち59%がremissionを達成


  • MTX-IRの予測因子(table2)
    • 単変量解析(統計学的有意を p< 0.15と定義)
      • 年齢
      • 喫煙 
      • 飲酒
      • ESR
      • CRP
      • TJC28
      • SJC28
      • DAS28
      • CDAI
      • SDAI
      • HAQ
    • collinearityを示した項目は除外し、ロジスティック回帰分析を行うと、
      • DAS28 
        • adjusted OR (ORadj) 2.1, 95%CI 1.4 to 3.2
      • current smoking 
        • ORadj 3.02, 95%CI 1.1 to 8.0
        • 用量依存性あり
          • 1–9 cigarettes/day; OR 0.46 (95% CI 0.08 to 2.49)
          • 10–14 cigarettes/day; OR 1.14 (95% CI 0.2 to 6.0)
          • 15–19 cigarettes/day; OR 4.0 (95% CI 0.8 to 20)
          • ≥20cigarettes/day; OR 9.11 (95% CI 1.1 to 76)
      • 飲酒
        • ORadj 0.4, 95%CI 0.1 to 0.9
        • 用量依存性はなかったが、 1-2 glass/week のみが全く飲まない人よりMTX-IRとなるリスクが低かった (OR 0.10, 95%CI 0.02 to 0.50; p=0.005)



  • AUROCによるprediction modelはfairだった



  • DAS28, 喫煙、飲酒でMTX-IRリスクをカテゴリー化した (figure2)
    • DAS28 : 2.6≤3.2 (low), 3.2<5.1 (moderate) and ≥5.1 (high)



  • U-Act-EarlyのTCZ+MTX armにprediction modelを当てはめると、56人はMTX-IRと予測されるが、実際にはそのうち95%(53人)はTCZ+MTX でremissionを達成した
  • tREACHのMTX+SSZ+HCQ armにprediction modelを当てはめると、38人はMTX-IRと予測されるが、実際にはそのうち55%(21人)はTCZ+MTX でremissionを達成した
    • すなわち、今回のprediction modelを用いてMTX-IRと予想される症例の場合、55-95%は併用治療(TCZ+MTX or MTX+SSZ+HCQ)に反応し、残りの5-45%は反応しないということだった
      • 言い換えると、このmodelに従って最初からTCZ+MTXで治療開始もしくはMTX単剤で治療開始すると、 27/108 (25%)が不必要にTCZによる治療を受けることになり、 6/108 (7%)は MTX単剤のみによるundertratmentを受けることになるということ



<考察>

  • 2つの異なるcohortでMTX-IRとなる臨床的予測因子を調べた初めての試験である
  • これまで飲酒をすることがMTX-IRのprotective effectであることを報告した結果はなかった
    • 14 units p/wならおそらく肝毒性もないだろうし、MTX治療を受けるRA患者にとっては好ましいかもしれない
  • limitation
    • before bDMARDsのinitial regimenが2つの試験で異なる(MTX+HCQ or MTX+GC)

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