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2018年2月23日金曜日

Rheumatic IrAEsと、悪性腫瘍に対するICIsの治療反応性について:フランスの単施設研究より




目的

  • 免疫関連有害事象(IrAEs)の発症率・特徴、免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の治療反応性を調べる

方法
  • フランスの単施設、前向き観察研究
  • 対象
    • 18歳以上
    • ICIs(anti-CTLA-4 [ipilimumab, remelimumab], anti-PD-1 [nivolumab,  pembrolizumab], anti-PD-L1 [atezolizumab, avelumab, durvalumab,  MSB0011359C] )を単剤 or 併用で投与されていた患者
  • 上記投与中に、何かしら筋骨格系の症状が出現した場合には、リウマチ科医に相談するようにしていた

結果
  • 524人が2015/9 - 2017/3の期間にICIsを投与された
    • anti-CTLA-4:n=5
    • anti-PD-1/anti-PD-L1:n=407
    • 両者を併用(同時もしくは違う期間):n=112

  • characteristics(table1)



  • 筋骨格系症状(※この論文ではICIs投与中に生じた全ての筋骨格系症状をRheumatic IrAEsと定義しているようです)を呈してリウマチ科にコンサルトされた症例(table2)
    • 6.6%(35/524人)
      • そのうち2例は自己免疫疾患の既往あり(axial SpA, 乾癬)
  • Rheumatic IrAEs発症までのICIs平均投与期間
    • 70日間(1 - 650 日間)
      • 8ヶ月間以内の症例が80%
  • Rheumatic IrAEsが起きた場合とそうでない場合で、悪性腫瘍の原発部位は差はなさそう


  • もともとanti-CTLA-4 agentのみ投与している症例は5例のみで少ないが、その中でもRheumatic IrAEsの発症なし
    • PD-1/PD-L1単剤:30例
    • 併用:5例
      • IrAEs全体の中で、Rheumatic IrAEsとnon-Rheumatic IrAEsを比較しても、Rheumatic IrAEsにおいて、PD-1/PD-L1単剤の割合が併用よりも多い
  • IrAEsが出現した場合は、そうでない場合と比較して、悪性腫瘍に対する治療反応性は有意に良好であるのは既報と同様
    • Rheumatic IrAEsとnon-Rheumatic IrAEsの間には、ICIsの悪性腫瘍に対する治療反応性に有意差なし(85.7% vs 75.1%, P=0.18) 





  • Rheumatic IrAEsの症状の種類は多様(以下)
    • 上下肢の大関節・小関節ともに症状が出現
    • 関節痛は全例に認められた
      • 関節腫脹:8例
      • 筋痛:5例
      • 背部痛:10例
    • グループ分けすると、以下の通り
      • 炎症性関節炎(RA 7例、PMR 11例、PsA 2例)
        • PMRの症例は、1例を除いて2012 EULAR/ACR criteriaを満たした。残りの1例は、PMR criteriaを満たさなかったものの、急性の両肩関節痛とseronegativeであること、PSL 12.5mgで急速に改善した経過から、PMRと診断
        • PsAは2例いたが、そのうち1例はもともとPsAの既往あり
        • X線で関節破壊を認めた症例はなし
      • 非炎症性筋骨格症状(15例)
    • ※PMRと診断してもエコーが正常の症例もあり、筋炎の除外がどこまでできているかは不明
  • NSAIDsもしくはPSLで改善
    • ICIsは、治験でプロトコールに準じて中止した1例を除いて、全例継続した





まとめ
  • Rheumatic IrAEsを呈した症例のうち、PMR-like syndromes, RA,  PsAが 3.8%, 非炎症性の症状が 2.8%だった
    • 既報では、Rheumatic IrAEsで典型的なのはseronegative RAだった
    • しかしながら、今回のレビューでは、急性発症・両肩関節痛±股関節痛という典型的なPMR症状を呈するものの炎症性マーカーの増加なしもしくはわずかという新しいphenotypeを認めた
  • Rheumatic IrAEsを呈した症例の方が、IrAEsを呈さなかった症例と比較して、悪性腫瘍に対する治療反応性は良好だった
    • Rheumatic IrAEsとnon-Rheumatic IrAEsの間には差は見られなかった
  • 中等量以下のPSLで、ICIsを中断せずに症状軽快したのは既報と同様だった
    • 既報では高用量のステロイドやTNFi、ICIsの中断を必要とした症例もあり、治療に際して国際的な基準を作成することが必要である
  • anti-PD-1/PD-L1 agentがRheumatic IrAEsに多かった
    • 動物モデルにおいて、PD-1 KOマウスでは関節炎が観察されたが、CTLA-4 KOマウスではみられなかった既報は、これを支持する
    • ヒトにおいて、CTLA-4の多型は、血小板減少、低γグロブリン血症、肺・脳・消化管にリンパ球の浸潤を認めたものの、Rheumatic symtomは呈さなかった
    • 最近、PD-1/PD-L1 checkpointの異常がGCAにおいて報告された

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