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2018年2月24日土曜日

ASの靭帯骨棘(syndesmophytes)を評価する方法として、low dose CTを用いたスコアリングシステム = the CT Syndesmophyte Score (CTSS)の有用性


de Bruin F, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:371–377. doi:10.1136/annrheumdis-2017-212553

背景

  • ASは、靭帯骨棘(syndesmophytes)を形成する疾患である
    • syndesmophytesの評価は、頚椎・腰椎の側面レントゲンを撮影し、mSASSSにて評価する
      • しかしながら、側面レントゲンでは、椎体のうち前方の椎体角しか評価できず、胸椎に関しては他の軟部組織陰影が存在するため全ての胸椎を正確に評価することができない
      • さらに、C7は肩関節のため見えないことも多い
      • 撮影者など撮影方法によっても感度が異なってしまう
    • MRIにて全脊椎を撮影する方法もある
      •  しかし、calicificationに関連するsignalがなく、線維輪と靭帯が同じ程度のsignalを示すため、骨形成の評価にはあまり適していない
    • CTが、骨形成には、最も適切な評価方法である
      • しかしながら、被曝の問題もありフォローには適していない
      • 被曝に対しては、low-dose CT(ldCT)を使用することで克服できるかもしれない
      • 以前に、CTを使用して、コンピューターのアルゴリズムに基づいてASのsyndesmophytesを評価した報告もあったが、これらは腰椎のみを対象としたアルゴリズムであり、高解像度CTを使用しているため被曝量も多いものだったため、現実的な方法ではなかった
  • そのため、今回は、ldCTを使用して、AS患者の脊椎におけるsyndesmophytesを評価するためのスコアリング(the CT Syndesmophyte Score [CTSS] )を開発することを目的とした

方法
  • AS患者を対象とした、2年間の観察研究である、the sensitive imaging in ankylosing spondylitis (SIAS) study のデータを使用した
  • 60人の患者が対象
    • 30人:オランダ人
    • 30人 :ドイツ人
  • 組み入れ基準
    • mNY基準を満たす
    • 頚椎・腰椎側面レントゲンにて、syndesmophytesを 1 - 18 認める
    • 全脊椎MRI STIRにて、1個以上の炎症性病変を認める
    • 治療内容、疾患活動性は問わない
  • 頚椎・腰椎側面レントゲンと全脊椎ldCTはbaselineと2年後に撮影する
    • 東芝の64列CTを使用

  • the CT Syndesmophyte Score [CTSS] について
    • figure1A
      • 矢状断では、椎体の前方・後方を評価
      • 冠状断では、左方・右方を評価
    • figure1B
      • vertebral unit(VU)は、椎体の下半分・椎体間・椎体の上半分で構成される
      • C2下縁~S1上縁まで、23個のVUがある

      • figure1C
        • syndesmophytesを伴うVUの模式図。
        • グレーの点線は椎体間の中間を示しており、左側のsyndesmophytesのように中間に達しない場合は score 1, 右側のように中間を超える場合には score 2 , 椎体間をまたぐ場合は score 3 とする
        • 1個のVUに、8つの評価部位(quadrants)があり(下縁の左右、上縁の左右の4つが、冠状断と矢状断でそれぞれある)、評価部位ごとに最大の score が 3 であるために、1人の患者における最大 score = 552(3×8×23 VU)
      • figure1D(冠状断)
        • score 3:T11-12のように(白矢印)、椎体間をまたぐsyndesmophytesの場合は、T11の右側下縁椎体角とT12の右側上縁椎体角にそれぞれ score 3 とする。
        • score 2:T12-L1のように(白点状矢印)、椎体間の中間を超えてT12からsyndesmophytesを認める場合は、T12の右側下縁椎体角は score 2 とする。
        • score 1:左側のT12-L1のように(白矢頭)、椎体間の中間を超えずにsyndesmophytesを認める場合は、T12の左側下縁椎体角は score 1とする。
      • figure1E(矢状断)
        • 冠状断と同様に評価する
      • 上記スコアを、2人の読影者がそれぞれの患者を他の情報を盲検した状態で読影する



    結果

    • 60症例のうち、ldCTを撮影していない(n=9)、画像の質が不良など理由で除外され、最終的には49症例を解析
      • 合計 18 032ヶ所 (23 VUs * 8 quadrants * 49 patients * 2 timepoints)を評価した
    • baseline characteristics(table1)
      • 平均 50才
      • 男性 84%
      • HLA-B27陽性 88%
      • レントゲンによるsyndesmophytesの数
        • 平均 5.7 (SD 4.4)[読影者1]
        • 平均 6.3 (SD 5.1)[読影者2]





    • 各椎体と全脊椎における、baselineと2年後におけるそれぞれの平均CTSSスコアと、2年間におけるΔCTSSスコア(table2)
      • 読影者1と読影者2の間でスコアに有意差なし(ICCにて評価)
      • 全脊椎における、 baseline CTSS 中央値
        • 127 (range 11– 428) [読影者1]
      • 全脊椎における、 2年間の Δ CTSS 中央値
        • 10 (range −11 to 96)[読影者1]
      • 脊椎別にみると、胸椎が最もスコアが高く、構造破壊・骨増殖が強かった





    • 全脊椎のnet changeで評価すると、半数以上の患者が2年間で進行していると判断された
      • 61% [読影者1]
      • 76% [読影者2]
    • 脊椎別にみると、胸椎が、進行性の変化を示した患者の割合が最も多かった
      • 胸椎 63% > 腰椎 55% > 頚椎 49% [読影者1]





    • score 1, 2, 3をつけた椎体の分布(figure2)
      • 読影者間で同様
      • A:baselineにおけるscoreの分布
        • score 3:胸椎に多い
          • 胸椎のVUのうち、45%はscore 3だった
        • score 2:腰椎に多い
      • B:進行性の変化を示したVUの割合
        • 胸椎が、進行性の変化を示した割合が最も多かった



    • baselineにおいて、VUのうち、前方・後方・左方・右方における、scoreの分布(figure3)
      • どの方位(前方・後方・左方・右方)においても、胸椎が最もsyndesmophytesが多かった
      • その中でも最も多いのは、胸椎右方がsyndesmophytesが多かった


    まとめ
    • ASを対象とし、ldCTによってsyndesmophytesを評価する新しいスコアリングシステムであるCTSSの結果を示した最初の研究である
    • 読影者間で結果がほぼ一致する結果となった
      • 全脊椎のICC = 0.99, 脊椎別にみても ICC = 0.97–0.98
      • score分布も読影者間で同様だった
    • 最も構造変化が進んでいたのは胸椎であり、3人のうち2人の割合でなんらかの進行性変化を認めた
    • ldCTでsyndesmophytesを評価する利点は、レントゲンと異なり、妨害しうる構造物(軟部組織など)がないということである
      • そして、今回、ldCTにて最も進行性の変化割合が多かった胸椎が、レントゲンでは最も評価しにくい部位である
      • そのため、ldCTで胸椎を評価するのは非常に重要である
      • そして、ldCTでは、レントゲンと異なり、椎間関節や仙腸関節も評価できる
        • 椎間関節の評価の重要性については筆者らが研究中であるが、椎間関節とsyndesmophytesはそれぞれ別々に評価することができるように今回のスコアには含めなかった
      • mSASSSでは、syndesmophytesは有りか無しかのみで評価しているが、CTSSでは椎体間の50%を超えるか超えないかも評価しており、より詳細にsyndesmophytesの進行を評価できる
      • syndesmophytesの幅も評価に入れることを試みたが、これは再現性に乏しかった
    • 今後、構造変化の評価について、側面レントゲンとldCTを直接比較した研究が必要である

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