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2018年1月6日土曜日

SScの新規治療薬としてのNFV


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 115
126 DOI 10.1002/art.40326

The Antiretroviral Agent Nelfinavir Mesylate 
A Potential Therapy for Systemic Sclerosis
Cecilia G. Sanchez,1 Steven V. Molinski,2 Rafael Gongora,1 Meredith Sosulski,1 Taylor Fuselier,1 Stephen S. MacKinnon,2 Debasis Mondal,3 and Joseph A. Lasky1

背景

  • 強皮症において線維化が生じるメカニズムははっきりとはわかっていない
    • TGFβ1は、fibroblasts → myofibroblastsへ分化させ、膠原線維の沈着を促進するため、主要な因子として考えられている
    • 実際に、皮膚硬化病変においてTGFβ1シグナル経路が活性化しており、細胞外マトリックス(ECM)が過剰に蓄積する
    • 炎症を抑制することの治療効果は限定的であり、毒性も考慮すると、新規の治療薬の開発が望まれる
  • Nelfinavir (NFV) は、HIV type1(HIV-1)に対する治療薬として、FDAに1997年に承認された薬である
    • NFVは、HIV-1 & HIV-2 proteaseを阻害することで、HIVの複製を抑制する
    • そして、現在はHIVのみではなく、悪性腫瘍などに対しても臨床試験が進行しており、様々な領域での有効性が期待されている
    • 最近の報告では、NFVは、protein phosphatase 2 (PP-2) 活性化を介した炎症経路の抑制と、マクロファージのMAPKシグナルを阻害する効果があることがわかった
  • 肺の線維化のメカニズムを考慮すると、NFVは、治療抵抗性の肺線維化病変の治療薬としても期待される
  • NFVは、CYP450によって代謝され、半減期は5時間以内である
  • HIVに対する歴史もあり、NFVの安全性はある程度確立されている
  • 今回の研究では、健常人と強皮症患者におけるfibroblastsにおいて、TGFβ1に反応して生じるcollagen, fibronectin, a-smooth muscle actin (a-SMA)の発現を、NFVが抑制したことを示した
    • これは、Smad2/3活性化の抑制、Akt/mTOR経路の抑制、autophagyを誘導することが機序だということもわかった
    • そして、SScの動物モデルの肺病変の拡大・コラーゲン沈着を抑制した
    • そのため、これまでとは異なる機序で、NFVがSScの治療薬として期待されるだろう

結果

Figure1
NFVは、SSc患者と健常人の両者において、肺・皮膚・心室由来のfibroblastsがmyofibroblastsへ分化するのを阻害した
    • 以下の検体を使用
      • 健常人の肺fibroblasts[NHLF]
      • 強皮症専門病院にて採取した、SSc患者の肺fibroblasts[SSc1、SSc2]、4人のコントロール[NL1, NL2]
      • 商業ベースで得られる皮膚fibroblasts[NHDF]
      • 商業ベースで得られる心室fibroblasts[NHVF]
    • 以下にて処置
      • NFVにて前処置(24時間)→TGFβ1 1ng/ml にて前処置(24時間)
    • 線維化マーカーの遺伝子発現の変化は、Western blotとqRT-PCRで評価
    • 実験は3回繰り返し、いずれも同じ結果
  • A:総 & リン酸化されたAkt、type 1 collagen、α-SMAの量をWestern blot解析を行なった
  • B:上記Western blot解析における、type 1 collagenの密度を測定した
    • NFVは、fibroblasts → myofibroblastsの分化マーカーであるtype 1 collagen、α-SMA、plasminogen activator inhibitor 1 (PAI-1) の発現を有意に抑制した(A、B)
    • TGFβ1によるAktリン酸化も抑制された(A)
    • さらに、TGFβ1で前処置した健常人の皮膚・心室のfibroblasts、SSc肺・健常人肺のfibroblastsにおけるtype 1 collagenも抑制した(B)
    • これらの効果は用量依存性であり、最大効果は12μMだった(データ提示なし)
  • NFVによるAktリン酸化抑制のみが、fibroblasts → myofibroblastsへ分化を抑制させているのか調べるために、TGFβ1とAkt inhibitor (API-2)  で前処置したもので実験した(C、D)
  • C:健常人の肺fibroblasts[NHLF]を、control・NFVで前処置・API-2  で前処置したものにわけ、Western blot解析を行なった
    • API-2はAktリン酸化をNFVと同様に抑制したが、α-SMAの発現抑制は十分でなく、NFVの作用機序は、Akt阻害以外にもあることが示唆された
  • D:NFVで前処置したNHLFと、controlで前処置したNHLFのCollagen contraction 解析を比較したもの
    • type I collagen matrix contraction assayは、myofibroblastの収縮機能を評価するものである
    • TGFβ1で前処置されたNHLFは、NFVを加えることで、収縮機能が低下した
    • このassayで用いたfibroblastを分離しWestern blotで解析すると、NFVによってα-SMAが減少していることがわかった
    • すなわち、肺のfibroblastにおいて、NFVは、TGFβ1によるfibroblasts → myofibroblastsへの分化を抑制することで、type I collagen matrix contractionを阻害した

Figure2
NFVは、adipocyte → myofibroblastsへの分化を抑制できない
  • 脂肪組織の消失と、adipocyte → myofibroblastへの分化が、皮膚の線維化の初期段階で生じており、SScによる治療標的として注目されている
  • NFVが上記を抑制できるか調べるために、ヒトの脂肪組織前駆細胞を、adipocyteになるまで10日間培養した
  • A:
    • adipocyteは、下のFigure2において、丸く、細胞質に脂質が蓄積しており、赤く染まっており、perilipin 1とadiponectinを発現している
    • TGFβ1で24時間前処置すると、adipocyteは赤い染色部分が消え脂質の含有量も減少しているが、α-SMAやfibronectinなどのmyofibroblastマーカーは増加している
    • すなわち、NFVは、TGFβ1によるadipocyteの分化を完全には抑制できなかった
  • B、C:上記で用いた、TGFβ1のみもしくはNFVとTGFβ1を加えたadipocyteを抽出し、Western blotで解析
    • NFVは、α-SMAの発現を抑制したが、TGFβ1の存在下でperilipin1の発現を維持できなかった
    • すなわち、TGFβ1は、adipocyteから分化したmyofibroblastに特徴的であるα-SMA陽性 stress fibersの発現を増加させることで、adipocyteマーカー喪失を促進している。そして、NFVは、このTGFβ1による作用を多少抑制するものの、adipocyte phenotypeの消失を防ぐことはできない



Figure3
NFVによって、古典的な(canonical)TGFβ1シグナルの活性化を阻害する

  • NFVによるmyofibroblastへの分化を抑制する機序を解明するために、TGFβ1のcanonical pathwayとnon-canonical pathwayを調べた
    • canonical pathwayは、TGFβ受容体活性化、下流にはSmad2, Smad3を含むものである
  • A:健常人の肺fibroblast(NHLF)をNFVで24時間前処置し、その後TGFβ1で24時間前処置し、それぞれのタイミングで細胞を抽出してWestern blotでSmad2/3発現とリン酸化(活性化の指標)を調べた
    • TGFβ1によってSmad2/3のリン酸化が誘導された。そして、NFVによって、fibroblastsにおいて、TGFβ1がSmad2/3のリン酸化を誘導するのを抑制した
  • B:健常人とSSc患者の肺fibroblastの両者とも、NFVによって、TGFβ1によるSmad3リン酸化を抑制した
  • C:PP-2AによってSmad3は脱リン酸化されるが、このNFVの作用がPP-2Aによるものなのか、PP-2阻害薬であるokadaic acidを、NFVに加えた
    • okadaic acidを加えても、Smad3のリン酸化は起こらなかった
  • D:canonical TGFβ1シグナル経路で発現が増加するPAI-1で調べると、NFVによるPAI-1抑制は用量依存性だった
    • これらを考慮すると、NFVによるcanonical TGFβ1経路の阻害は、PP-2A活性とは独立したものであることが示唆される




Figure4
NFVは、type 1 collagenのautophagic degradationを促進し、fibroblasts → myofibroblastsへ分化する途中の細胞とmyofibroblastsの収縮性を低下させる

  • NFVは、悪性細胞において、mTORを阻害しautophagyを誘導することが報告されている
    • この機序が、肺のfibroblastでも同様か調べルために、NHLFをTGFβ1とNFVで前処置した
  • A:autophagyを制御しているmTORの下流の因子についてwestern blotで調べると、NFVはmTOR経路を阻害した(ribosomal protein S6 kinase 1のリン酸化を阻害している)
  • B:NFVのautophagyでの影響を調べるために、微小管関連蛋白であるLC3の変化(LC3-Ⅰ→ LC3-Ⅱ。autophagosomeの数と相関する。)を調べた
    • fibroblasts → myofibroblastsへ分化する際に、NFVは、用量依存性に、autophagyを増加させる(A, B)
  • NFVの線維化した肺への影響と、NFVがmyofibroblastにおいてautophagyを誘導することの潜在的なメリットを調べるために、NHLFをTGFβ1によって刺激してmyofibroblastへ分化させた
    • type 1 collagen発現へのNFVの影響は、TGFβ1で前処置した後に調べた
    • bafilomycinはautophagic degradationを阻害する
  • C:bafilomycinは、NFVを加えることで、myofibroblastに含まれるtype 1 collagenのautophagolysosomeによるdegradationを阻害した
    • これは、NFVが、myofibroblastにおいてtype 1 collagenのautophagyを促進することを示している
    • 一方で、α-SMAにおいては、変化がなかった
  • また、NFVは、TGFβ1で処置したmyofibroblastの収縮性を低下させた
    • この効果は、Figure1で示したコントロールと比較すると、小さかった
  • C:NFVで処置したmyofibroblastにおいて、~70kdの領域にfragmentを認め、抗type 1 collagen抗体だった



Figure5
コンピュータによる解析で、NFVのoff-target effectsは線維化に対して有効であることを支持した

  • NFVによる、TGFβ1を介したSmad2/3リン酸化の阻害は、non-canonical経路(Akt/mTOR経路、p38 MAPK経路)でも同様だった(データ提示なし)
  • NFVは、悪性細胞において、proteasome阻害薬としても作用することが報告されている
  • NHLFを、コントロール・NFV・bortezomib(これもproteasome阻害薬なので、その指標として)で前処置し、細胞を抽出してWestern blotで解析し、ユビキチン化蛋白の蓄積量を調べた
    • bortezomibと比較すると、NFVは、ユビキチン化蛋白を増加させなかった(データ提示なし)
    • この結果を考慮すると、NFVのproteasome阻害作用は細胞特異的であり、fibroblasts → myofibroblasts分化抑制効果はproteasome阻害作用とは独立したものであることが示唆される
  • NFVの効果をさらに調べるために、HIV-1 proteaseと類似の化合物を調べるため、コンピュータでproteome-wide screening を行った
    • これによって6つのターゲットが特定された
      • ribosomal S6 kinase A3 (RPS6KA3)
      • phosphodiesterase 6C (PDE6C) 
      • epidermal growth factor receptor (EGFR)
      • TGFβ receptor type I (TGFβRI)
      • TGFβ-activated kinase 1 (TAB1)
      • focal adhesion kinase 1 (PTK2)  
    • しかし、上記6つの多くは、DisGeNET scoreを参考にすると、SScではない疾患と強く関連もしくはSScとは弱い関連のみだった
      • TGFβRIがより関連のある候補と考え、ランダムに選択した蛋白200種類とligand–receptor suitabilityを評価したところ、最も有意に高い関連を示していた(Figure5A)
      • 4種類のTGFβRI inhibitorと化学的にNFVは類似しており(C)、結合部位も同様だった(D)
  • これらの結果から、NFvは、TGFβRIを阻害することで作用を発揮しているものと思われる
  • なお、興味深いことに、コンピュータでのproteome-wide screeningでは、NFVは、上記6つの蛋白のうちのEGFRとPDE6C(両者とも肺の線維化の病態に関与している)を阻害することが示唆された
    • また、RPS6KA3は、PTK2と同様に心臓のリモデリングの病態に関与しているが、NFVはこれも阻害することが示唆された
    • PTK2阻害薬は動物モデルでは肺の線維化を阻害し、治療薬として期待されている
  • まとめると、コンピュータでのproteome-wide screeningでは、強皮症に関連した肺の線維化の治療ターゲットの候補となる分子を示した



Figure6
NFVは、SSc動物モデルにおいて、肺の線維化を抑制した

  • 6匹のC57BL/6 male mice  に、3日間NFVを投与
    • コントロールと比較して、有意に膠原線維の沈着を減少させた


1 件のコメント:

  1. 過去3年間のHiv病、特に苦痛で食べ難い、咳が悪夢、特に1年目この段階では、免疫系は著しく弱まり、日和見感染症にかかるリスクははるかに大きくなります。ただし、HIV感染者全員がエイズを発症するわけではありません。私は早期死亡を避けるためにARVを服用し始めましたが、いつか癒されると神に信じていました。Hivの特許として、チャンスを減らすために抗レトロウイルス治療を受けることをお勧めします。ウイルスを他の人に感染させることについて、数週間前、漢方薬によるHiv治療に関する情報が得られるかどうかインターネットで検索しました。検索で、Hivから癒された人の証言を見ました。彼女の名前はAchima Abelardでしたそして、他のヘルペスウイルスの特許であるTasha Mooreも、この同じ男性について証言しています。DrItua Herbal Centerと呼ばれます。私は証言に感動し、彼のEmail.drituaherbalcenter@gmail.comで彼に連絡しました。私たちはおしゃべりをして、彼が私に命じた薬草のボトルを私に送った。彼が私に指示したとおりに飲んだ。薬。私は彼に永遠に感謝しています。Drituaherbalcenter。ここで彼の連絡先番号+2348149277967 ...彼は、彼が次の病気を治すことができると確信しています。緑内障、脳腫瘍、乾癬、白内障、黄斑変性、心血管疾患、慢性下痢、肺疾患。前立腺肥大、骨粗鬆症。アルツハイマー病、
    認知症。 、膀胱がん、自閉症、大腸がん、乳がん、腎臓がん、白血病、肺がん、乳がん、非ホジキンリンパ腫、皮膚がん、ループス、子宮がん、前立腺がん、発作、線維筋痛症、ALS、肝炎、Copd、Parkinson病気。遺伝性疾患、線維異形成症、進行性線維異形成症、フルオロキノロン毒性症候群、脳卒中、Hpv、弱い勃起、肝臓/腎臓炎症、男性/女性不妊症、腸疾患、ハンチントン病、糖尿病、子宮筋腫。

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