①NATURE REVIEWS | RHEUMATOLOGY
Hasan Yazici1, Emire Seyahi2, Gulen Hatemi2 and Yusuf Yazici3
Behçet syndrome: a contemporary
view
doi:10.1038/nrrheum.2017.208
Published online 3 Jan 2018
②McGonagle, D., Aydin, S. Z., Gül, A., Mahr, A. & Direskeneli, H. ‘MHC-I-opathy’ — unified concept for spondyloarthritis and Behçet disease. Nat. Rev. Rheumatol. 11, 731–740 (2015).
②McGonagle, D., Aydin, S. Z., Gül, A., Mahr, A. & Direskeneli, H. ‘MHC-I-opathy’ — unified concept for spondyloarthritis and Behçet disease. Nat. Rev. Rheumatol. 11, 731–740 (2015).
- Bechet病は、etiologyがまだわかっていない
- 地域による有病率の違いや臨床症状によっていくつかのサブセットに分かれそうだというデータとして蓄積されてきているが、それによってむしろ、Bechet病の理解がより難しいものだとわかってきた。
- Bechet病というよりも、症状の多様性から、"Bechet syndrome"の方が適切かもしれない。
診断、鑑別疾患
- Bechet病の所見(左)、その所見における鑑別疾患(中)、Bechet病でのその所見の特徴(右)としては、下のものがあげられる
- 診断の際には、the International StudyGroup Criteria for Behçet Disease (ISBD) criteria という分類基準がよく参考にされる
- しかし、これについても、地域によって有病率が異なっていたり(この基準を作成する際に解析された症例の80%は東アジアからの症例)、コントロール群が他の雑多な膠原病疾患でありChron病や潰瘍性大腸炎でないため炎症性腸疾患との鑑別が困難である、などの問題点がある
- そのため、The International Criteria for Behçet's Disease (ICBD)が新しく2013年に作成された(下図)が、これもまた、地域による有病率を考慮して作成されたものではない
- Bechet病で見られる所見も、Bechet病を強く示唆する項目と、弱い項目に分かれる
- 強い項目
- 眼病変
- 眼科医が診察すれば他の所見がなくともBechet病によるものだと鑑別できる
- 再発性の陰部潰瘍
- 最もBechet病を強く示唆する所見
- 陰嚢、陰唇に多い。
- 口腔内潰瘍に類似するが、それよりも深く、大きく、治癒までに時間がかかる。
- 男性のほうが重度であり、Bechet病患者ではテストステロンが好中球活性化を増強するというデータもある。
- 潰瘍瘢痕も強くBechet病を示唆する
- 血管病変
- 45才以下の男性における肺、末梢血管の動脈瘤は強くBechet病を示唆する
- 脳実質病変
- 脳幹と大脳基底核の病変、脳幹萎縮
- 弱い項目
- 消化管病変
- 炎症性腸疾患と区別するのが難しく、IBD患者の10%程度で針反応が陽性というデータもある
- トルコ、日本、イランのBechet病の症例では、risk lociがCrohn病と共通であった
- そのため、消化管病変はあくまでも弱い所見である
- 他の弱い項目は、地域によっても異なる
- Bechet病は2つのサブセットに分けることができる
- ざ瘡・関節炎・付着部炎のグループ
- seronegative SpAにBechet病を含むのは、上記のような共通する所見があるためである
- 血管病変のグループ
- 画像での評価が重要である
- 逆に、未診断のBechet病疑いで喀血や画像で血管病変の所見があれば、Bechet病を強く示唆する
- 病変による治療反応性の違いが、病態の検討に参考になる
- コルヒチン:関節炎、結節性紅斑には有効。皮膚・粘膜潰瘍にはあまり効かない。
- サリドマイド:口腔内潰瘍には有効。結節性紅斑は、むしろ増悪させる可能性あり。
- エターネルセプト:口腔内潰瘍には著効。針反応には無効。
etiology and pathogenesis
- Streptococcus. SppやMycobacterium tuberculosisのHSPに対するT細胞の反応性、内皮細胞・エノラーゼ・retinal S-antigenに対する自己抗体の存在から、自己免疫疾患と考えられてきた
- しかしながら、組織障害には関与しているものの、直接的な病態ではないと思われる
- 性差や他の自己免疫疾患の併存がないことも、他の自己免疫疾患と異なる
- 興味深いことに、Bechet病において、ヒトとマウスのneurofibrilに対する抗体が、Streptococcus. SppやMycobacterium tuberculosisのHSPと交差反応を示すのがわかり、再びBechet病における自己免疫疾患の要素が注目されている
- 自己炎症性疾患の要素もある
- pro-IL-1βが、眼房水も含め活動性Bechet病では増加している
- MEFV遺伝子のvariant、TLRsをコードする遺伝子の変異も一部のBechet病患者で報告されている
- しかしながら、FMFのようなmonogenicな疾患であり発症も小児期であり血管病変は稀であるが、Bechet病やCrohn病はpolygenicであり発症も成人が多い。
- 実際に、IL-1β阻害は、これまでのところBechet病においては有効ではないようである(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01965145)
- 上記のように、より大きくこの疾患を捉えるために、Bechet "syndrome"というほうが適切であろう
- MHC-1-opathyによるBechet "syndrome"とすると、より包括的に捉えられるかもしれない
MHC-1-opathyの病態
- 当初、SpAにおいてHLA-B27キャリアが多いことがわかると、Bechet病もこれに含まれると考えられていたが、すぐにHLA-B51キャリアがBechet病に多く体軸性関節炎の患者では多くないことがわかり、SpAからBechet病が独立した
- しかし、下の結果から、最近、この独立させる考えが正しいのか、再度検討する必要が出てきた
- ASとPsAにおけるIL-10、IL-23-IL-17経路などの炎症反応経路がBechet病でも関係している
- ざ瘡・関節炎を認めるBechet病では付着部炎も多く有しており、SpAと臨床所見がoverlapしている
- HLA-B51はMHC class 1 alleleである
- そして、HLA-B51は、endoplasmic reticulum aminopeptidase 1(MHC class 1を介してeffector cellに提示する抗原ペプチドを準備する器官であるendoplasmic reticulumに存在する分子)をコードする遺伝子であるERAP1とepistaticであるとわかっている
- 重要なことに、ERAP1の多型は、PsAとASにおける感受性遺伝子であることも報告されている
- すなわち、ペプチド-HLA相互作用が病態において重要ということである
下図のeでは、HLA-B27キャリアの場合、MHC class1が過剰発現してmisfoldingとなり、ER stressとun-folded protein responseを引き起こし、IL-23やIFNを産生する
(NATURE REVIEWS | IMMUNOLOGY VOLUME 12 | AUGUST 2012 | 573 より引用)
Martinon, F. & Aksentijevich, I. Nat. Rev. Rheumatol. 11, 11–20 (2015)より引用
protein misfoldingによるinflammation signal pathwaysについて
下図の様に、3つの経路がある
protein misfoldingによるinflammation signal pathwaysについて
下図の様に、3つの経路がある
下の図は、ERAP、proteasome、MHC class1の関係を示している。
ERAPは、proteasomeと共に、polypeptideを処理して、細胞表面のMHC class1 に抗原提示用のペプチドを供給する。
ERAP、proteasomeの機能が低下することによって、本来MHC class1に供給されるpolypeptideが細胞質 or ER内のいずれかに蓄積し、下流のMHC class 1からの細胞障害性T細胞やサイトカインへの刺激が影響される。
- Bechet病、AS、PsAが、MHC class 1 をコードしているHLA遺伝子のvariantsと関連しており、これらの遺伝子がそのalleleの種類によってdisease-promoting (AS) もしくはdisease-preventing (Behçet syndrome)に作用するのか異なるのは、興味深いことである
- これによって、"MHC-1-opathy"という概念ができた
- HLA遺伝子alleleによって出現する臓器病変が異なる(下図)
- 同じBechet病、同じPsAでも症状、臓器病変が異なるのは、背景にあるHLA alleleの違い原因かもしれない
- MHC-1-opathyでは、HLA遺伝子などに加え、組織特異的な要因も関与している
- 組織特異的因子に関しては、これらの疾患ではその部位に負荷がかかることが自然免疫を惹起するのに重要であることは臨床所見から明らかである
- ASやBechet病における付着部炎
- Bechet病における針反応
- PsAにおける皮膚病変
- そして、その組織特異的な因子とは、(MHC-1に関係していることを考慮すると)その組織ごとの機械的ストレスや蛋白のturnoverが関与しているのだろう(下図)
- 前部ぶどう膜も、毛様体と虹彩が持続的に運動しており、機械的ストレスが多くかかっている部位である。人工レンズに変更すると炎症が改善することから、ぶどう膜から眼全体へ炎症反応が波及しているのだろう。
- 皮膚は機械的microdamage+皮膚常在菌
- 口腔内潰瘍はBechet病において噛むなどの機械的刺激 + cathelicidin とneutrophil defensins 1 and 3 (HNP1 and HNP3) が増加 + 口腔内の菌(Bechet病患者では口腔内細菌の多様性が健常人と比べて少ないことがわかっているが、この変化が結果なのか原因なのかはわかっていない)
- 血管病変に関しては、弁膜症や大動脈基部では機械的ストレスが当然かかっている
- 消化管に関しては、小腸や口腔内の上皮細胞に発現するfucosyltransferase 2をコードしているFUT2遺伝子の変異がBechet病、Crohn病で報告されている。fucosyltransferase 2の酵素反応によって形成される上皮のα1, 2-fucose分子は、消化管細菌叢の形成や病原性微生物からのバリアとして作用するため、この遺伝子に変異があると消化管バリアが障害されることがわかっている
- 上記のこれらがMHC-1-opathyにおける自然免疫反応の惹起に関係しているのだろう
- MHC-alleleがこれらの疾患の重症度とも関連していることがわかっている
- なお、高安動脈炎も、HLA-B52が重症化&早期発症のrisk alleleとして知られており、MHC-1が重症度と関連することを裏付けている
- MHC 1 opathyと自己免疫疾患の違い(下の表)
MHC-1-opathyの病態における免疫の役割
- 疾患を発症させるというよりも惹起された炎症を促進するものであり、自然免疫の方がより重要である
- ASやPsAでは、自然免疫のほうが病態の中心に近い。
- これらでは、細胞障害性T細胞が獲得免疫の要素を担い、MHC class1に提示された抗原がTh1とTh17を活性化させる
- しかしながら、Bechet病では異なる病態も関与している。
- HLA-B51にコードされたMHCを有する患者は、保護的なERAP1多型を有しておらず、これによって組織障害が生じる。そしてこの機序は細胞障害性T細胞に依存したものではなく、主にNK細胞に対して抗原提示を担っている。また、HLA-B51を有しているのみでは、サイトカインの偏りは生じない。
- Bechet病患者のCD8陽性IL-17産生細胞障害性T細胞(Tc17)は、IL-8やGM-CSFを産生し、好中球を活性化する。すなわち、Tc17が自然免疫と獲得免疫の橋渡しをしている。
- Bechet病において、MHC-1 opathy以外に、サイトカインをどのように制御しているのかも重要である
- Bechet病では、JAK-STATシグナルがCD4陽性T細胞、CD4陽性において増加していることがわかっている。
- 筆者は、この増加は、MHC-2関連自己免疫疾患でのTh2活性化と異なり、Th1 & Th17 type サイトカイン(IL-2, IFNγ、IL-6、IL-17、IL-23)の活性を反映していると考えている
Epigenetics
- Bechet病におけるepigeneticsのデータが蓄積されてきている
- 細胞骨格やCD4陽性T細胞の細胞接着に関連する遺伝子のメチル化が異なることがわかっている
- そして、この変化は、治療によって正常化するため、biomarkerとなる可能性がある
- micro RNAsに関しても注目されてきている
治療
- 眼病変
- 免疫抑制剤でダメならIFNα or TNFi
- このいずれかが優れているのかは、head-to-headで試験を行なって評価する必要がある
- IL-1, IL-6, IL-17に対する抗体製剤も試されてきた
- gevokizumab(IL-1抗体), secukinumab(IL-17抗体)はいずれも試験は失敗に終わっている
- TCZは、ケースレポートのsystematic reviewでは、IFNα or IFXに治療抵抗性の場合に有効かもしれないという結果だった
- 動脈瘤
- 高用量ステロイド+CYC monthly → AZA ± 手術
- 上記でダメならTNFi
- DVT
- expert opinionで免疫抑制剤(AZA or CyA)使用すべき
- 抗凝固療法はケースコントロール研究で再発予防にメリットなかったためcontroversialであるが、さらなる検証が必要だろう
- CNS
- 高用量ステロイド+免疫抑制剤(AZAなど)or TNFi
- CyAは神経毒性があるため禁忌
- ケースシリーズでは、IL-6阻害は有望(そのケースでは髄液IL-6高値)な結果
- 消化管
- 軽症なら5-ASA製剤
- 中等度以上ならAZA、難治性ならTNFi、サリドマイドも考慮
- 造血幹細胞移植も有効な成績だったが、GVHDや感染症による死亡もあった
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