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2017年12月6日水曜日

incomplete lupus erythematosus(ILE)の臨床所見、血清学的所見、免疫学的所見の特徴に関する報告



Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 12, December 2017, pp 1780–1788 

Clinical and Serologic Features in Patients With Incomplete Lupus Classification Versus Systemic Lupus Erythematosus Patients and Controls
TERESA ABERLE,1 REBECKA L. BOURN,1 MELISSA E. MUNROE,1 HUA CHEN,1
VIRGINIA C. ROBERTS,1 JOEL M. GUTHRIDGE,1 KRISTA BEAN,1 JULIE M. ROBERTSON,1 KATHY L. SIVILS,1 ASTRID RASMUSSEN,1 MEGHAN LILES,1 JOAN T. MERRILL,1
JOHN B. HARLEY,2 NANCY J. OLSEN,3 DAVID R. KARP,4 AND JUDITH A. JAMES


背景
  • incomplete lupus erythematosus(ILE)は、SLEの要素を有するheterogeneousな臨床所見と血清学的所見を示すが、SLE classificationによってSLEに分類するには十分でないものである
  • 多くのILE患者は比較的軽症で経過するが、20%程度でSLEへ移行するため、SLEの早期段階とも考えられている
    • SLEへ移行しなくとも不可逆的な組織障害を呈したり、lupus関連の合併症によって入院することもある
    • そのため、適切に高リスクなILE患者を選別して治療していくことが必要かもしれないが、その選別方法は確立していない
    • いくつかの単施設コホートでは、抗核抗体(ANA)陽性、関節炎、血液学的所見、免疫学的所見がILEに共通していることを報告しているが、限られた人種での報告であるため、一般化することはまだできない
  • ILEにおける免疫学的所見のpatternに関しては、SLE特異抗体や可溶性メディエーターなどはSLEに類似すると考えられる
    • しかしながら、これらのpatternによってSLEとILEを区別できれば、適切な介入が可能になるかもしれない
    • そのため、今回の試験では、ILEの疫学的情報と治療戦略に関して明らかにすることを目的とし、血清学的所見をSLE患者・健常人(SLEの家族歴なし)と比較した

方法
  • US, Columbia, Puerto Rico, the British Virgin Islands, the US Virgin Islandsとその他6カ国の患者を対象とした
  • すべての対象者は、the SLE portion of the Connective Tissue Disease Screening Questionnaire (SLE- CSQ)  などの質問票に答えてもらい、臨床的情報は電子カルテから採取した
    • SLE-CSQについて
      • 3項目以上陽性:possible lupus
      • 4項目以上陽性:probable lupus
  • 1997ACR SLE分類基準を4項目以上満足する場合をSLEとし、3項目を満たす場合をILEとした
    • その後2012SLICCにも照らし合わせた

結果
  • demographics(table1)
    • ILE 全体
      • 440人
      • SLEと比較して
        • 年齢が高い
          • 46.1才 vs. 42.0才(p<0.001)
        • アフリカ系アメリカ人が少ない
          • 23.9% vs. 32.2% (p<0.001)
    • SLE:3397人


  • ILE患者における、ACR分類基準を満たした項目について(figure1A)
    • ANA(97.3%)>免疫学的異常(61.8%)>関節炎(44.1%)>血液学的異常(25.4%)
  • ILE患者における臨床所見(figure1B)
    • (胸膜炎、心膜炎、尿細胞円柱、タンパク尿、痙攣、精神症状、溶血性貧血、血小板減少のうち)1つ以上を有する割合:19.5%
    • 上記majorな臨床所見を有するILEは、そうでないILEと比較して
      • 若い
        • 42.8 才 vs. 47.0 才  (P=0.0101) 
      • European Americansが少ない
        • 41.9% vs. 57.9% (P=0.0104)



  • ILEにおけるself-reported症状を調べるためにSLE-CSQを調べた(table2)
    • SLE-CSQによってpossible or probable SLEに分類される割合
      • ILE:91.7%
        • 陽性項目数は、上記majorな臨床所見の有無で差なし(6.0 vs. 5.9)
      • SLE:94.6%
      • 健常人:12.1%



  • 治療内容(figure2)
    • ILE患者でもSLE患者でも、HCQ使用率は増加してきている(supple figure2)

    • それでもSLE患者の方が有意に治療している割合が高い
    • 多くのILE患者はHCQ(65.2%), ステロイド(70.7%)で治療されている
      • majorな臨床所見があるほうが免疫抑制剤を使用している割合が高い
        • 42.8% vs. 8.8%



  • 免疫学的所見について
    • ANA titre ≧ 1:1080 の割合:ILEのほうがSLEより少ない
      • 10.5% vs. 19.5% (p<0.0001)
    • ds-DNA抗体などのSLE関連自己抗体陽性率もILEのほうが低い
    • 抗カルジオリピン抗体はSLEとILEにおいて同等の頻度だった(table3)


    • bead-based multiplex assay(人種毎に解析)
      • ILEの55.5%にてSLE関連自己抗体が陽性だった
        • 人種によって陽性率の高い自己抗体も様々であるため(supplement table2)、人種によって調整した結果がtable3
      • majorな臨床所見を有するILEのほうが、そうでないILEよりもSLE関連自己抗体が陽性になりやすいが、SLEよりはなりにくい



  • BLySレベル
    • SLE関連自己抗体の陽性率はSLE>ILE>健常人であるため、BLySも同様の結果と仮説を立てていたが、その通りだった
    • BLySレベルによってROC曲線を描くと、BLySによってSLE, ILE, 健常人を区別するAUCも比較的よかった


まとめ
  • ILEはSLEに移行しうるため、特にnon-European Americansでは、より慎重に経過をフォローしたほうがいいだろう
  • 抗マラリア薬に関しては、既報でもSLEに対して早期に使用を開始することで、臓器障害を少なくしたり、SLE発症を遅らせたり、自己抗体増加を抑制したり、他の治療薬による有害事象を減らすかもしれないことが報告されているので、ILEに対して使用が増えているのは驚くことではない
    • しかしながら、ILEに限ったHCQのデータはないので、今後調べていく必要がある
  • SLICCのほうがACR基準より感度が高いので、より早期にSLEを診断できるかもしれない
    • 実際に、今回のコホートでも、ACRによってILEと分類された1/3は、SLICCでSLEと診断できた
    • SLICCでもACRでもSLEと分類できない場合でも重症の臓器病変を呈する症例はあるので、その場合には積極的な治療が必要だろう
  • BLySはILE患者において増加しており、SLE発症前に先行して増加することがわかった
    • IFN遺伝子発現signatureがBLys産生とANA陽性に関連している
    • 既報ではANA陽性健常人ではBLySは増加していないので、BLySが増加しているILE患者ではSLE発症のリスクが高いといえるかもしれない

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