このブログを検索

2017年12月8日金曜日

自己炎症性疾患におけるbench-to-bedside

Holzinger, D.et al.Nat. Rev. Rheumatol.11, 573–585 (2015)

inflammasome
  • inflammasome
    • PAMPsやDAMPsを認識した後、細胞質に存在するものから構成され、不活性化状態のzymogenであるpro-caspase-1をリクルートし、それらの足場としてiflammasomeは機能する
    • NOD-like receptor (NLR) protein family members のなかの、N‑terminal pyrin domain(NLRPs)を有するもの or caspase‑recruitment domain (CARD)(NLRCs)を有するものより構成される
    • NLRP3
      • NLRPs(NLRP1, 6, 7, 10, 12)のなかで最も研究されており、PAMPsとDMAPsによって活性化される
    • NLRCs
      • PAMPs(bacterial flagellinなど)を認識する
  • caspase-1
    • pro-IL-1β、pro-IL-18をそれぞれIL-1β、IL-18へ変化させる
    • 細胞死を起こす(pyrotosisと呼ばれる)
  • IL-1βの過剰分泌はNLRP3のgain-of-functionの二次的なものであり、自己炎症性疾患の病態として関与している
(nature medicine VOLUME 21 | NUMBER 7 | JULY 2015   より引用)





自己炎症性疾患における重要な病態
  • 細胞による炎症性反応はPRR(PAMPs, DAMPs)or 細胞内ストレスによって惹起される
  • TRAPS(TNF receptor-associated periodic syndrome) 、MKD(mevalonate kinase deficiency)
    • protein-misfolding or post-translational modificationの欠損がER-stressの原因となり、ROS or IFN遺伝子が増加し、IL-1βが増加する
  • SAVI(STING-associated vasculopathy with onset in infancy)
    • gain-of-function mutationsによって炎症性 or IFN遺伝子の発現が増加する
  • CAPS(cryopyrin-associated autoinflammatory syndromes)
    • inflammasome domains(pyrin, nucleotide-binding:NBDなど)のgain-of-function mutationsによって、ストレスに応じたIL-1R antagonist(IL-1Ra)が欠損しており、inflammasomeが活性化し、IL-1β, IL-18の産生が増加
  • DIRA(deficiency of IL-1Ra)、DITRA(deficiency of IL-36Ra)
    • IL-1R antagonistをコードしているIL1RN(DIRA), IL-36R antagonistをコードしているIL36RN(DITRA)遺伝子のmutationによって、IL-1β、IL-18が増加していても、その内因性アンタゴニスト(IL-1RA, IL-36RA, IL-18BP)が増加しないためにバランスが崩れる(バランスの異常による炎症反応はCAPSも同様)。
    • IL-36R antagonist
      • IL-1R antagonistとhomologyを有しており、IL-1 familyであるIL-36α、β、γを抑制する
      • type1 IL-1Rと構造が炊事しているため、DITRAの患者はアナキンラに反応する



  • 各疾患におけるbench-to-bedsideの歴史




  • biomarker
    • IL-1βとTNFは治療標的となるが、ex vivoでその活性が維持できず正確に測定できないため、biomarkerとしては不適
  • (下図)緑が確立したbiomarker、赤が今後のbiomarkerの選択肢。
    • S100
      • 炎症部位の活性化したphagocyteから放出され、単球上のTLR4に結合してIL-18, IL-6などの炎症性サイトカイン分泌を促進する。
      • CAPSなどunkown originの疾患からsJIA, FMFを診断するのに有用。
      • 疾患活動性のモニタリングしても有用。
      • 滑膜炎にある炎症性細胞から産生されるので、全身症状のない場合の局所の関節炎病態に関与していると考えられている。
    • IL-18
      • IL-1 cytokine familyであり、IL-1β pathwayと類似したシグナルを惹起する
      • 好中球の活性化因子として作用し、好中球の走化・脱顆粒・サイトカイン産生を促す。
      • IL-12とも機能が類似しており、IFNγ産生 NK細胞・マクロファージ活性化にも関わっている
      • sJIAで著明に増加しており、non-systemic JIAや川崎病から鑑別するのに有用。
      • 疾患活動性のモニタリングとしても有用だが、remissionを達成した場合にも高値のことがあり、その場合には今後再燃する可能性がある
      • MASの場合にも他のサイトカインと同様に著明に増加している
    • SAA
      • 炎症性サイトカインによって、肝細胞から産生される。
      • AA fibrilsはSAAのcleavage, misfolding, 異常なβsheet aggregationする過程の際に発生し、これが沈着することで臓器障害をきたす
      • 全身性アミロイドーシスの予後因子として確立しており、正常下限にコントロールすることで予後が改善する



  • 今後の治療標的
    • IL-18
      • MASやsJIAで増加しており、臨床所見の経過とも相関する
      • IL18とIL-18 binding protein(BP)とのバランス異常がT細胞とマクロファージの活性化し、さらにそれらはNK細胞による細胞毒性が欠損しているためimmunoregulatory controlから逃れている
      • NK細胞細胞毒性の欠損とは関係なく、IL-1βとIL-18過剰産生による病的なマクロファージ活性化が起きる
        • steady-state assayだけでなく、kinetic response studyも必要
      • そしてNLRC-MAS(古典的なCAPSはNLRP inflammasome-MAS)の発見は、NLRC4遺伝子mutationによりマクロファージの内因性の機能異常が生じてMASを引き起こすことを示唆しており、これはIL-1阻害ではコントロールできない
    • IFNγ
      • IL-18 axisの一つ
      • 抗IFNγ抗体については、MAS-like HLH(家族制HLH)の遺伝子を有する患者に臨床試験を行なっている
      • しかしながら、sJIAとMASではそれぞれ逆の役割を果たしている
        • 関節炎が著明なsJIAでは関節炎に保護的に作用しているが、MASでは病態に関与している
    • PAMPs, DAMPs, TLRs
      • マクロファージprimingに関して、IFNγはTLR-ligandと協同している
      • PAMP or DAMPによるTLRs活性化は自己炎症性疾患の病態の中心である
      • TLRを標的にした治療はhost-defenceに関する有害事象が懸念されるが、DAMPsのみの阻害であれば大丈夫かもしれない
    • 細胞内シグナル経路
      • IFN signatureの単一遺伝子疾患に関連するデータから、type1 IFN, type2 IFNの過剰産生を治療標的とすることが期待されている
      • SAVIではJAK阻害薬が有効だった
    • それ以外
      • 自然免疫と獲得免疫は強く関連している。IL-1βは自然免疫を活性化するが、sJIAでのデータの通り、IL-6と協同してTh17細胞分化を誘導して獲得免疫も活性化する
        • そのため、疾患のphaseによって異なる治療戦略が有用かもしれない(早期にはIL-1β、IL-6。晩期にはT細胞活性化を阻害するabataceptなど)


0 件のコメント:

コメントを投稿

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...