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2017年9月22日金曜日

SLEによる精神症状:髄液IL-6 > 4.3 pg/ml について


Clin Rheumatol (2009) 28:13191323 
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

NPSLEにおいて、カットオフを髄液中IL-6 > 4.3pg/mlとすることを叩き出した論文。

背景

  • ステロイドサイコーシスなどとSLEによる精神症状(LP)を鑑別するために髄液IL-6の有効性を検討した

方法
  • 対象
    • 1982ACR分類基準を満たすSLE
    • 1999ACRのNPSLE分類にて、5つの精神症状(不安障害、気分障害、認知障害、急性錯乱状態、精神病様症状)のうち、1つ以上を認める
  • LP or 他の原因による精神症状かの診断は、それぞれの研究者で診断し、その診断の妥当性をNPSLE研究グループ(4人のメンバー)でカルテを後ろ向きに判定した

結果
  • 精神症状の内訳(table2)
    • non-LPの内訳
      • 7人:ステロイドサイコーシス
      • 4人:内因性精神障害
      • 1人:SLEに対する精神反応
      • 1人:PML(progressive multifocal leukoencephalopathy)
    • 32人のLP患者のうち、11人は痙攣性異常を併発




  • CSF IL-6のROC曲線(figure1:左)
    • cut-off 4.3 pg/ml:感度 87.5%, 特異度 92.3%
    • AUC = 0.9567
  • non-LP患者における平均CSF IL-6:1.6 pg/ml 
    • 1人(7.7%)のみ上記cut-off以上だった
  • LP患者における平均CSF IL-6:30.95 pg/ml 
    • 4人(12.5%)のみcut-off以下だった
  • 一方で、CSF IgG indexはあまり有効でなかった(figure1:右)



  • 上記を踏まえ、LP診断基準を作成してみた(table3)


まとめ

  • 中枢神経感染症や最近の脳血管障害でもCSF IL-6は上昇しうるので、それらをMRIなども使用して除外すればCSF IL-6は、SLE患者において、LPかnon-LPの診断に有用
  • CSF IL-6は治療によって低下することも報告されており、治療効果指標としても有用である
  • CSF IL-6は、LP以外のNPSLE症状(無菌性髄膜炎、横断性脊髄炎、血管炎によるものと思われる可逆的で局所的な脱神経症状)でも上昇することが報告されている
  • CSF IgG indexに関しては、既報では中枢神経系NPSLE患者において増加することが報告されたが、今回の研究ではそうならなかった
    • 他の報告では、CSF IgG indexが増加している割合が70%に留まる一方で、CSF IgM indexがほぼ大半の中枢神経系NPSLE患者で増加していた
    • しかしながら、IgG indexの評価に関しては、controlの設定や検査方法でも変わりうるので、より的確な検査方法が望ましい
  • 抗リボソーマルP抗体もLPで増加することが報告されているが、血清抗リボソーマルP抗体の感度特異度はそれぞれ24-27%, 80%であり、LPの診断には感度が低すぎる。
  • 髄液中の抗リボソーマルP抗体、NR2抗体はLPにおいてnon-LP of SLEやnon-SLEよりも増加していると報告されている

有名なカットオフ値だったので読んでみましたが、コントロールの大半がステロイド精神病、内因性精神病であるため、他の原因を髄液IL-6でどこまで除外できるのかについてはさらに調べる必要があるし、LP以外のNPSLEである場合のIL-6の適切なカットオフは異なる可能性もありますね。



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