Singh JA, Cleveland JD. Ann Rheum Dis 2017;76:1669–1678.
背景
- 腎障害と高尿酸血症は、長い間、"鶏が先か卵が先か"という議論をされてきた
- 尿酸は腎臓から主に排泄され、腎臓から再吸収される
- 高尿酸血症はCKDの原因となる
- 2つの尿酸降下薬であるアロプリノールとフェブキソスタットは、腎機能を保護する役割について最近は注目されている
- キサンチンオキシダーゼは、ヒポキサンチンをキサンチンへ、キサンチンを尿酸へ変化させる
- アロプリノールは、キサンチンオキシダーゼを阻害するプリンアナログである
- フェブキソスタットは、選択的にキサンチンオキシダーゼを阻害する非プリンアナログである
- 動物モデルでは、高尿酸血症は腎臓の血管障害を起こし高血圧となり、マクーラデンサのNO合成酵素を減少させる
- 酸化ストレス減少効果はフェブキソスタットのほうがアロプリノールより強いと報告されているため、腎保護効果もフェブキソスタットのほうが強いのでないかといわれているがそれは証明できていない
- アロプリノール、フェブキソスタットは観察研究では腎機能改善もしくは腎機能悪化抑制効果があると示されてきた
- しかし、用量が薬剤によって異なることもあり、どちらがより優れているかは答えが出ていなかった。システマティックレビューでは、フェブキソスタットの優位性を示せなかった。
- 今回の研究では、フェブキソスタットのほうがアロプリノールより腎保護効果が優れているという仮説、アロプリノールに関してはより多く長い期間治療したほうが腎保護効果が強いという仮説を検証した
方法
- retrospective cohort研究
- 2006−2012年のメディケアのデータから抽出
- 対象
- 65歳以上(メディケア加入可能年齢)
- 新規にアロプリノール and/or フェブキソスタットで治療開始された
- アロプリノール or フェブキソスタットが前回処方から183日間以上経過している場合は新規とした
- アメリカ在住
- primary outcome
- 観察期間中に発生した最初の腎疾患イベント
結果
- 計31465人、アロプリノール or フェブキソスタットで治療開始された(figure1)
- characteristics(table1)
- 腎疾患の発生率
- アロプリノール:192/1000人年
- フェブキソスタット:192/1000人年
- 腎疾患の発生率は、より長く治療しているほうが低かった
- アロプリノール:431, 166, 129/1000人年(それぞれ治療期間1-180日間、181-365日間、1年以上)
- フェブキソスタット:406, 236, 221/1000人年(それぞれ治療期間1-180日間、181-365日間、1年以上)
- 腎疾患の発生率は、より多い用量で治療しているほうが低かった
- アロプリノール:238, 176, 155/1000人年(それぞれ用量 <200, 200-299, ≧300mg/day)
- フェブキソスタット:341, 326/1000人年(それぞれ用量40, 80mg/day)
- 腎疾患を発症した人たちの中で、アロプリノールで治療していたか、フェブキソスタットで治療していたかによって、人種や民族は統計学的に異なっていたが、平均年齢、性別、Charlson comorbidity scoresは同等だった
- 傾向スコアで調整した結果(table4)
- アロプリノールのほうが、フェブキソスタットより腎疾患発症HRが低い
- 0.61 (95% CI 0.49 to 0.77)
- フェブキソスタット40mgと比較して、アロプリノール用量別に見てもいずれもHRは低い
- < 200 mg/day:0.75 (95% CI 0.65 to 0.86)
- 200-299 mg/day:0.61 (95% CI 0.52 to 0.73)
- ≧300 mg/day:0.48 (95% CI 0.41 to 0.55)
- フェブキソスタット治療期間1-180日間と比較して、アロプリノール治療期間別に見てもいずれもHRは低い
- それぞれの薬剤の中で用量・治療期間によってHRが有意か調べた結果、アロプリノールの用量間のみで多いほうが有意にHRが低下した
- 200–299 mg/day:21%⇩
- ≥300 mg/day:37%⇩
- 多変量調整モデルで解析(table5)
- アロプリノールのほうが、有意に腎疾患発症のHR低下する
- 0.66 (95% CI 0.59 to 0.75)
- 腎疾患のリスク
- 高齢
- 黒人
- β遮断薬
- 利尿薬
- フェブキソスタット40mgと比較すると、全てのアロプリノールの用量でHR低下
- フェブキソスタット80mgでは有意差なし
- 感度分析(table6)
- 以下の項目で行ったが、有意差には変化なし
- 痛風
- 痛風罹患期間
- コルヒチン、プロベネシドの使用あり
- アロプリノールからフェブキソスタットへ変更したことがない人に限定
まとめ
- 予想に反して、アロプリノールのほうがフェブキソスタットよりも有意に腎疾患のリスクを下げた
- 効果は用量依存性、治療期間依存性だった
- フェブキソスタット40mgでは、アロプリノールのいずれの用量でもリスクが低下した
- これに関しては、よりリスクが高い人にフェブキソスタットを使用している可能性がある
- しかしそれに関しては、既報のRCTや、フェブキソスタットのほうが腎保護に有効だったという観察研究の結果とは異なる
- 傾向スコアで調整した873組のアメリカの研究では、アロプリノールとフェブキソスタットの両群で有意に治療前後で腎機能が低下したが、両群間で有意差はなかった
- 日本の単施設の1年間の高尿酸血症とCKD(eGFR < 45ml/min)を有する患者73人を対象とした観察研究では、アロプリノールをフェブキソスタットに変更 or アロプリノール継続したかで、有意にアロプリノール継続群のほうがeGFRが低下した(1.6 vs. 6.3 ml/min)
- これらの既報は、腎機能の違い(正常 vs CKD stage 3 or 4), 年齢(56 vs. 67-73歳)、性別の偏り(男性の割合 85% vs. 61%)、アロプリノールとフェブキソスタットの用量の違い、観察期間の違い(6-7ヶ月間 vs. 1年間)、試験デザインの違い(アメリカ vs. 日本)もあり、アロプリノールとフェブキソスタットで腎機能保護に関してはどちらが優れているか結論が出ていなかった
- 既報では腎機能の推移で評価していることが多かったが、今回は腎疾患で評価していることがより臨床的に意味がある
- アメリカでは、アロプリノール使用者での平均用量は230mg/dayであるが、きちんとtitrationすれば安全に増量できたという既報もあり、もっと多い用量で使うほうが腎保護の面で有利なので、尿酸を指標にしてもっと用量を増やすべきである。400mg/dayまで増やせば大抵は尿酸 < 6mg/dayを達成できることも報告されている。
- limitation
- 観察研究なのでバイアスあるかも
- ベースラインで既に糖尿病や高血圧や心腎関連CKDなどによるCKDがある人は、今回の結果が当てはまらないかもしれない
高齢アメリカ人では、アロプリノールのほうがフェブキソスタットよりも腎保護には優れているかも。アメリカでは尿酸降下薬のシェアをアロプリノールが80%以上占めているようです。安いからでしょう。
しかし、まとめで記載した通り、前に日本で行われた単施設研究ではアロプリノールのほうが腎機能悪化したという報告があるので、日本人では少し異なるかも。
そして、副作用がないようなら、尿酸値に合わせて尿酸効果薬を増量したほうが良さそうですね(日本では、添付文書ではアロプリノール最大量300mg/day、フェブキソスタット60mg/day)。
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