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2017年9月22日金曜日

NPSLEにおける髄液中サイトカインについて

Lupus (2016) 25, 997–1003
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • NPSLEは、SLE患者で14-75%の頻度で起き、いずれの時期にも起こりうる
  • NPSLEの症状は多様である
    • 抑うつ、精神病様症状、痙攣、脳卒中など
  • NPSLEの病態が多様なため、単一の検査で診断することは困難である
    • 髄液中のIL-6, IL-1, IL-8, IL-10, TNFα、IFNα、IFNγ、MCP-1/CCL2、IP-10/CXCL10、RANTESが増加していることが報告されており、診断ツールとしても利用されている
    • IL-6, IL-8が、NPSLEでは、NPSLE以外や自己免疫疾患以外の疾患と比較して増加している
    • IL-2, IL-6, IL-10, TNFα, IFNγは中枢神経NPSLEとは相関しないという報告もある
  • 今回は、NPSLEにおける髄液中のサイトカインについて調べた

方法
  • 自治医科大学に入院した、ACR1982分類基準を満たす52例のSLE患者を対象(table1)
    • 45人女性、7人男性
    • 平均年齢 37±14歳(range 15-70歳)

    • グループ分け
      • 中枢神経系NPSLE:30人
        • 16人急性錯乱状態、1人不安障害、4人気分障害、1人精神病様症状、4人無菌性髄膜炎、3人脳血管障害、1人脊髄障害
      • non-NPSLEのSLE患者:22人
    • SLEDAI
      • 中枢神経系NPSLE:平均16.1±8.25、中央値17
      • non-NPSLE:平均10.9±7.89、中央値17
    • 52例とも、感染症(化膿性髄膜炎、結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎)は一般的な検査項目で除外している
    • 精神症状を呈した22例はステロイド増量後に改善したためステロイド精神病ではないと考えた




結果
  • 中枢神経系NPSLE群において、髄液>血清で増加していたサイトカイン
    • IL-6
    • IL-8
    • IP-10
    • MCP-1
    • G-CSF 
    • GM-CSF
  • 上記のサイトカインは、血清と髄液中のサイトカインに相関は認めなかった(データ提示なし)ため、髄液中で産生されているものと考えられた
  • 中枢神経系NPSLE群において、血清>髄液ので増加していたサイトカイン
    • IFN-α
    • IFN-γ
    • IL-1β
    • IL-2
    • IL-4
    • IL-5
    • IL-7
    • IL-9
    • IL-10
    • IL-12 (p70)
    • IL-13
    • IL-17
    • IL-1ra
    • TNF-α
    • FGF basic
    • RANTES
    • eotaxin
    • MIP-1α
    • MIP-1β
    • PDGF
    • VEGF
  • 髄液中IFNαは、中枢神経系NPSLE群の3例のみ増加していた
    • 血清IFNαは、中枢神経系NPSLE患者の15例で増加





  • 中枢神経系NPSLE患者群とnon-NPSLE患者群における、髄液中IL-6, IL-8, IP-10, MCP-1, G-CSF, GM-CSFの比較
    • GM-CSFを除いて、non-NPSLE患者と比較し、有意に中枢神経系NPSLE患者群で増加していた



  • 52例のSLE患者における、髄液と血清の抗リボソーマルP抗体は有意に相関していた




考察

  • 既報では、BBB破壊されていなくても髄液中IL-6は増加していたことと、海馬と大脳皮質でIL-6 mRNA発現が増加していたことを考慮すると、上記と合わせ、中枢神経においてIL-6が増加していることが示唆される
  • 既報では、SLE精神症状の指標として、髄液IL-6は感度 87.5%、特異度 92.3%だった。
    • Clin Rheumatol 2009; 28: 1319–1323. 

  • 髄液中のG-CSF増加を報告したのは今回が初めて
    • 既報では、視神経脊髄炎で髄液G-CSFが増加していることは報告された
    • G-CSFは内皮細胞から産生されて、正常のBBBを通過し、神経栄養因子として神経形成に関与している
  • in vitroにおいて、抗NR2グルタミン酸受容体抗体(抗NR2抗体)によってヒト内皮細胞が活性化され、NFκB pathwayを介して、IL-6やIL-8の産生とELAM-1, ICAM-1, VCAM-1などの接着分子の発現を亢進されることを筆者らは以前報告している
    • Arthritis Rheum 2013; 65: 457–463. 
    • 内皮細胞からIL-6, IL-8, IP-10, MCP-1, G-CSFが産生されることも報告されている
    • これらより、NPSLEでは、抗体NR2抗体もしくは抗リボソーマルP抗体などが内皮細胞と反応し、BBBが障害され、髄液中のIL-6, IL-8, IP-10, MCP-1, G-CSFが増加することが示唆される
    • また、これらのサイトカインは、神経細胞やグリア細胞からも産生される
    • これらのサイトカインによって、BBBの透過性が亢進し、自己抗体や白血球が中枢神経へ移行する
  • 既報では、IFN-α, IFN-γ, IL-1β, IL-10, TNF-α、RANTESもNPSLE患者の髄液中で増加していたが、今回の研究ではIFN-αとNPSLEの相関を示すことができなかった 
    • これは、IFNαの低下が早いため、こういった研究ごとに結果がバラつくのだろう
  • データは上記で示していないが、今回の研究で、NPSLE患者において、non-NPSLE患者よりも、髄液中IFN-g, IL-1b, IL-10, TNF-a, RANTES  が有意に高かった

  • しかしながら、これらのサイトカインは、髄液中よりも血中で高かったので、NPSLEの病態に関連しているとはいえない


  • また、今回測定したサイトカインは、髄液中と血清中の濃度に相関を認めなかったので、髄液中のサイトカインが血清中のサイトカインに影響されるわけではなく、独立であることも示唆される



NPSLEの経過としては非典型的な部分もあるんですけど、髄液中のIL-6が300以上に増加していたので調べてみたんですが、これを呼んでるとBBB内皮細胞が破壊されるような病態であればIL-6は同じように上がりうるのではと考えてしまいます。
もう少し掘り下げて調べる必要がありそう。

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