ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 6, June 2017, pp 1306–1312
Vol. 69, No. 6, June 2017, pp 1306–1312
背景
- SSc患者は、一般集団と比較して悪性腫瘍のリスクが上昇する
- 抗RNA polymeraseⅢ(RNAPⅢ)抗体陽性の場合には、発症から2年以内の悪性腫瘍のリスクが5倍以上高い
- Arthritis Rheumatol 2015;67:1053–61.
- RNAPⅢをコードするPOLR3A遺伝子の変異が、これら悪性腫瘍患者において認められている
- Science 2014;343:152–7.
- また、これらの患者では、変異型と野生型RNAPⅢ蛋白の両者に反応する抗RNAPⅢ抗体とT細胞を認める
- すなわち、これらからは、悪性腫瘍細胞で自己抗原の変異が生じ、それによってに自己免疫が惹起されることを示唆している
- RNAPⅢ抗体を有する患者以外に、SScの初発症状とともに悪性腫瘍が診断される患者の集団がSScにいる
- この患者群は、高齢発症のSSc患者で抗核抗体が陽性であり、3種類のSSc特異的な自己抗体(セントロメア抗体、トポイソメラーゼⅠ抗体、RNAPⅢ抗体)が陰性となると、アメリカのコホートで報告されている
- 筆者らは、免疫沈降法とPLATO (parallel analysis of in vitro translated open-reading frames) を利用して、これらの患者群でなにか抗体が検出されないか調べ、16例のうち4例で、RNA-binding protein–containing 3 (RNPC-3) に対する自己抗体を検出した。この抗体は、the University of Pittsburgh scleroderma cohort では、3.2%で検出された。
- Proc Natl Acad Sci U S A 2016;113:E7526–34.
- 今回の研究では、RNPC-3抗体が悪性腫瘍と関係しているのか、他の新しい関連のある項目がないか、網羅的に調べてみた
方法
- 対象
- the institutional review board–approved Johns Hopkins Scleroderma Center databaseから患者を抽出
- 2013ACR分類基準 or 1980ACR分類基準をみたす or CREST症候群(calcinosis, Raynaud’s phenomenon, esophageal dysmotility, sclerodactyly, telangiectasias) のうち3つ以上を有する
- 自己抗体が陽性になったのは325人だったが、そのうち7人は複数の自己抗体が陽性となった(多くはセントロメア抗体陽性とオーバーラップ、5/7例でRNPC-3抗体陽性で、そのうち3例は中等度以上の力価で陽性だった)ため、除外し、計318人を解析した
- 悪性腫瘍関連のSScの定義は、SScと悪性腫瘍発症の間隔が前後2年以内とした
結果
- 318人を解析
- characterisitcs(Table1)
- 自己抗体profile
- RNAPⅢ抗体陽性:22.0%
- トポイソメラーゼ抗体陽性:17.0%
- セントロメア抗体陽性:30.2%
- RNPC3抗体陽性:3.8%
- 上記4つが陰性:27.0%
- 悪性腫瘍発症との間隔
- RNPC3抗体陽性(平均0.9年)、RNAPⅢ抗体陽性(平均1.0年)例が短い
- RNPC3陽性例に関して
- 全て女性
- 他のSSc特異的自己抗体よりも、アフリカ系アメリカ人が占める割合が多い(25%)
- SSc発症年齢が比較的高齢
- 平均50.1歳
- RNAPⅢ抗体陽性例も同様
- 初発症状から受診までの期間発症から短い
- 平均2.2年
- RNAPⅢ抗体陽性例も同様
- 皮膚症状は比較的軽度
- baseline 平均mRSS:2
- 限局型が多い(75%)
- tendon friction rubs(tendon friction rubsについて)なし
- 拘束性肺障害は重症例が多い
- baselineのFVC, DLcoが低い
- それぞれ66.1%, 64.2%
- 肺高血圧例が多い
- baselineでの心エコーでの右室収縮気圧が高い(平均43mmHg)
- myopathyも多い(33.3%)
- 消化器症状、Raynaud's現象は比較的重度
- 予後は不良
- 平均生存期間 9.0年
- 他の自己抗体陽性例は20年以上
- 悪性腫瘍の内訳
- ほとんど乳がん・婦人科系悪性腫瘍(計66.7%)
- 他は造血器悪性腫瘍、皮膚癌
- RNPC3陽性例12例のうち、11例は抗核抗体陽性で、9例はspeckled pattern
- U1-RNP抗体陽性例と臨床症状が似ていたため同抗体も測定したが、ELISAで同抗体が陽性の患者はいなかった
- 他のSSc特異的自己抗体陰性のSSc患者において、悪性腫瘍の有無によって、RNPC3抗体陽性率は有意差なし
- 悪性腫瘍あり群のRNPC3抗体陽性率:12.2%
- 悪性腫瘍なし群のRNPC3抗体陽性率:13.3%
- RNPC3抗体陽性群で、悪性腫瘍を有する患者と有さない患者の間で、なにか違いがないか調べたが、以下で有意差なし
- SSc発症年齢
- 悪性腫瘍発症年齢
- 初発症状から受診までの期間
- 性別
- 人種
- 皮膚病変のタイプ
- 臓器特異的重症度
- baselineの呼吸機能検査
- 筋症状の有無
- 関節病変のエピソード
- RNPC3抗体陽性で、悪性腫瘍発症の時期とSSc発症の時期がほぼ同時期の例が多かった(figure1で斜めの線に青点が近いほど発症時期が近い)
- RNPC3抗体陽性、RNAPⅢ陽性例で悪性腫瘍発症のリスクが高い(table2)
RNAPⅢ抗体陽性例で悪性腫瘍のリスクが上がることは以前からいわれていましたが、RNPC3抗体陽性例でも同等にリスクが上がるとのこと。
現時点でコマーシャルベースでは測定できないので、強皮症特異的な抗体が3つとも陰性で抗核抗体がspeckled pattern陽性だったら、悪性腫瘍の検索はしたほうが良さそうです。女性に多いのはなんででしょうか?この辺のメカニズムは今後さらに調べる必要がありそうです。
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