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2017年9月15日金曜日

RAに対するFilgotinib(JAK1選択的阻害剤)の有効性:DARWIN1

Westhovens R, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:998–1008 

背景
  • 近年、RAに対する有効な治療は増え、効果出現が早いとか痛みがとれるとか投与が簡単など、副次的なものを患者と臨床医は治療において考えるようになった
  • cDMARDsは効果出現が遅く、bDMARDsは投与経路が点滴もしくは皮下注に限られていることや免疫原生の点で、効果出現の早い経口薬が望まされている
    • そのような治療が出てくれば、steroid-bridging therapyの必要性は下がるだろう
  • JAK受容体であるJAK1は、RAにおけるサイトカインシグナル経路の一つである。
  • IL-6はRAにおける主要なサイトカインであるが、JAK1/2 heterodimerを介する。
    • 一方で、他のエリスロポエチンなどの他のシグナル経路は、JAK1ではなくJAK2 monodimerを介するものもある。
  • JAK阻害剤は低分子化合物であり、経口で投与可能である。
  • TofacitinibはJAK経路全てを阻害し、MTXが無効の場合の薬剤として承認されたが、他のJAK阻害薬は開発途上である。
  • Filgotinibは、JAK1選択的阻害剤であり、RAや炎症性腸疾患に対する効果を期待されている
    • 効果持続時間も長く、1日1回投与が可能かもしれない
  • 今回のDARWIN1は、MTX併用下で中等度以上の活動性を有するRAに対して、Filgotinibの有効性と安全性を、異なる用量、1回投与か分割投与かで確認するためのものである。

方法
  • 多施設(106施設、21カ国)、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較、phaseⅡb試験である
  • 観察期間:24週間
  • 割付
    • 1:1:1:1:1:1:1=placebo:50mg 分1:50mg 分2:100mg分1:100mg 分2:200mg 分1:200mg 分2
  • 12週目の時点で、腫脹関節数と圧痛関節痛が20%以上改善していない場合には、以下のようにレスキュー
    • placebo群→Filgotinib 100mg 分1or 分2
    • Filgotinib 50mg 分1→Filgotinib 100mg 分1
    • Filgotinib 50mg 分2→Filgotinib 100mg 分2
  • 対象
    • 18歳以上
    • RAと6ヶ月以上前に診断されている
    • 2010 ACR/EULARのRA分類基準を満たす
    • ACR機能分類 1-3
    • 腫脹関節数 ≧ 6/66、圧痛関節数 ≧ 6/68
    • CRP ≧ 正常上限の0.7倍(2014/3より、正常上限の1.5倍以上へと変更)
    • MTXを6ヶ月間以上内服しており、用量が組み入れ前4週間以内はstable(15-25mg/w, 経口 or 点滴)
    • PSL使用していれば10mg以下で、用量が組み入れ前4週間以内はstable
    • NSAIDs使用していれば、用量が組み入れ前2週間以内はstable
    • 妊娠可能な女性は避妊している
  • exclusion criteria
    • MTX以外のDMARDを使用中(6ヶ月以上、組み入れ時点から前にbDMARDsを使用していてそれが有効だった場合はOK)
    • 以前にJAK阻害薬、細胞障害性薬剤の使用歴あり
    • 組み入れ前4週間以内に点滴 or 筋注でステロイド使用歴あり
  • Primary outcome
    • 12週時点でのACR20達成率
  • 解析
    • 治験薬を1回でも使用した患者を全例解析

結果
  • 期間:2013/7-2015/3
  • 1255人のうち、599人が割り付けられ、594人が少なくとも1回は薬剤を投与され解析に組み込まれた
  • 12週時点で、66人のnon-responderが100mg/dayに再度割り付けられた
  • 治療中断率は10.3%と少なかった
    • Filgotinib群とplacebo群で中断率に有意差なし
    • Filgotinibの用量が増えても中断率に有意差なし
    • Filgotinib投与期間が12週間と24週間の間にも中断率に有意差なし



  • baseline characteritics
    • 平均CRPがplacebo群において低い以外は同様



  • Primary outcome(figure 2A)
    • 12週時点でのACR20達成率
      • Filgotinib群がplacebo群よりも有意に多かった
        • placebo (44% (38/86)) 
          • filgotinib 100 mg 分1(64% (54/85), p=0.0435)
          • filgotinib 200 mg 分1 (69% (59/86), p=0.0068) 
          • filgotinib 200 mg 分2 (79% (66/84), p<0.0001)  
  • Secondary outdome(figure 2)
    • 用量依存性に関して
      • Filgotinibの用量依存性が、全てのACR20, 50, 70達成率において認めた
    • 投与法の違いに関して
      • Filgotinibの投与法において、1日1回投与と1日2回投与で有意差なし
    • 効果出現に関して
      • ACR20では、2週目時点で、Filgotinib 200mg分1とFilgotinib 200mg分2で有意に有効(figure 2A)
      • ACR50では、2週目時点で、Filgotinib 100mg分1とFilgotinib 200mg分2で有意に有効(figure 2B)
      • Filgotinib 200mg群において、圧痛関節数と血清CRPなどのACR indexが、1週目時点で有意に改善していた(データ提示なし)
    • 24週時点でも、ACR20達成率は、placebo群よりも、Filgotinib 100mg分1、Filgotinib 200mg分1、Filgotinib 100mg分2、Filgotinib 200mg分2群で有意に多かった
    • 有効性持続に関して
      • 多くのFilgotinib群で、ACR20達成率は8週目でプラトーとなり、その後24週まで有効性を維持した
      • 12週時点でのACR50達成率も、全てのFilgotinib群で有意にplaceboh群よりも多く、24週まで維持した
    • 12週時点で治療失敗のためレスキューされた群も、24週時点で有意にACR20/50/70達成率が改善していた
    • CDAIも、12週時点と24週時点の両者で、全てのFilgotinib群で低下
      • Filgotinib 50mg群のみ12週時点でのCDAI低下がplacebo群と有意差なし
      • DAS28-CRPも同様の傾向
    • HAQ-DIも、2週目時点で、Filgotinib 200mg群で、placebo群よりも有意に会z年していた




  • 副作用
    • 15例で1つ以上の重度副作用を認めた
      • 1人は肺炎による敗血症で死亡(Filgotinib 200mg分2の症例)
      • 2人は心血管系イベント(治療関連とは考えられなかった)
        • 1人は心筋梗塞と心不全
        • 1人は脳梗塞
    • 介入が必要な副作用はFilgotinib群で多かった
      • filgotinib groups (20.9%) vs. placebo (10.7%) 
    • 感染症により治療を中断したのはplacebo群で1例、Filgotinib群で5例
    • 帯状疱疹はFilgotinib群でplacebo群で1例、Filgotinib群で4例
    • 結核、リンパ腫、悪性腫瘍は発生なし




  • Hb増加が12週目までFilgotinib用量依存性に増加し、その後プラトー(Figure3A)
  • 個々で変動はあるものの、平均リンパ球数は低下なし
  • Filgotinib用量依存性に好中球減少を認めた(Figure3B)
    • Filgotinib200mg 分2群以外は、4週目時点で安定した。
  • Filgotinib用量依存性に血小板減少を認めたが、4週目時点で安定した(Figure3C)
  • NK細胞数は用量依存性の変化を認めなかった


  • 生化学に関して
    • Filgotinib用量依存性に、4週目時点まで、Cr増加を認めた。その後はプラトーとなった。
      • Filgotinib 200mg分2群にて、baselineからの平均増加量は0.069mg/dL
    • CTCAE grade3以上のALT増加はなし、1例のみCTCAE grade3以上のAST増加を認めたがbaselineにてすでにgrade2であり治療とは関係ないと考えられた
    • Filgotinib用量依存性に、4週目時点まで、High dose lipoprotein(HDL)とLDLの増加を認めたが、その後は安定した

まとめ
  • MTX併用下で、Filgotinibは用量依存性に有効性を認めた
  • 1日1回投与と分割投与で有効性に違いはなかった
  • 有効性は24週目まで持続した
  • baselineのplaceboにてCRP低値であったが、ロジスティック回帰分析にて解析し、そのことは今回の結果に影響は与えてなかった
  • Hbが増加したのは、炎症が改善したことと、JAK2を阻害しなかったためと考えられる
  • 血小板は低下したが、4周目時点で安定した
    • JAK1/2阻害薬であるバリシチニブが、用量依存性に血小板が増加したのと対照的である
  • limitation
    • 観察期間が24週間と短いため長期の有効性・安全性は不明
    • 関節破壊に関しては評価していない


JAK阻害薬っていろんなサイトカインカスケードに関与しているせいで、副作用が生物学的製剤よりも多様ですね。帯状疱疹は選択的であるおかげか、Tofaよりは低い結果です(以下図、ゼルヤンツ適正使用ガイドより引用)。そして、今流行りの副次的効果として効果発現が早い!



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