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2017年9月14日木曜日

axSpA:2016 ASAS-EULAR recommendations

van der Heijde DRamiro SLandewé R, et al
2016 update of the ASAS-EULAR management recommendations for axial spondyloarthritis


introduction

  • axSpAは炎症性リウマチ疾患で、多様な症状を呈する
  • 症状は、慢性腰痛が先行する
    • こわばりがあり、痛みは運動で軽快する
    • 他には関節炎、付着部炎、指尖炎、関節外病変として前部ぶどう膜炎、乾癬、炎症性腸疾患が特徴的である
    • 疾患の終末期としては、レントゲンで骨棘が出現し、かがんだ姿勢で固まってしまう
  • axSpAは、一つの疾患のspectrumを表す言葉である
    • レントゲンで仙腸関節炎の所見を認めないnon-radiographic axSpAが、レントゲンで仙腸関節炎の所見を認めるAS or radiographic axSpAに進行すると考えられている
    • しかしながら、全例が上記のように進行せず、non-radiographicのまま経過することもある

  • 診断には、modified New York基準が最も使用される
    • レントゲンでの仙腸関節炎は診断に結びつく所見であるが、ある程度時間が経ってからの所見であり、早期にはMRIが有用であり、典型的な症状とMRIでの仙腸関節炎があれば診断が可能である
  • 治療としては、TNF阻害薬が主流であり、ASAS recommendationでも、2003年よりTNF阻害剤が記載されるようになった
  • 近年では、IL-17阻害剤も登場した
  • しかしながら、現時点でも、TNF阻害剤などの生物学的製剤が疾患の経過をよくするものだという証明はできていない

推奨

原則
  1. axSpAは、多様な症状を呈する深刻な疾患であり、リウマチ専門医によるマネジメントを必要とする
    • 筋骨格系病変により日常生活がしばしば通常に送れなくなり、40%が1つ以上の関節外病変を認める
  2. axSpAの治療のゴールは、症状と炎症をコントロールし、構造的変化を防ぎ、機能を正常化して社会参加を可能とし、健康関連QOLを最大限にすることである。
  3. 適切なマネジメントには、薬物的治療と非薬物的治療を併用することが必要である。
    • RAやPsAよりも、axSpAでは非薬物的治療がより重要となる
  4. 患者とリウマチ専門医が協力してベストな治療を目指すべきである
  5. axSpAは、個人的、医療的、社会的な負担を要する疾患であり、リウマチ専門医による治療でのマネジメントを考慮すべきである

推奨
  1. axSpAの治療は、個人個人の現在の症状(体軸、末梢関節、関節外病変)、併存疾患、精神的な要素に合わせて治療する
  2. axSpAのモニタリングは、自覚症状、臨床所見、検査所見など適切なものを用いて行う。モニタリングの間隔は、症状や重症度、治療に応じて決定する。
    • モニタリングには、BASDAI, BASFI, 腫脹関節数、脊椎可動性、関節外病変が含まれる
    • 急性炎症反応蛋白は以前よりも重要性が増している
    • ASDASは、比較的新しいスコアであり、自覚症状とCRPが組み合わさっており、その後引き続き生じてくる骨棘変化などを予測することができる(BASDAIでは相関が弱かった)
    • MRIは、早期の仙腸関節炎や後期の椎体変化などを見つけるには有用であるが、現時点では疾患のモニタリングとしての有用性は明らかでない。それは以下の理由からである。
      • 非活動性の患者におけるMRIのみの残存する炎症が病的意義があるのかも明らかでない。
      • 高価である。
    • 仙腸関節のレントゲンは、疾患の経過をモニタリングするには進行が非常に緩徐であるため有用ではなく、撮影スパンは2年以上とすべきであるが、レントゲンの所見は生物学的製剤を開始する基準には含まれている
      • また、レントゲンで靭帯骨棘変化がある場合は、さらなる靭帯骨棘変化の出現のリスクとなり、個人の予後に関する情報も提供してくれる
  3. 治療内容は、治療するターゲットによって決定する
    • 疾患活動性が新規の靭帯骨棘に関わっており、treat-to-targetの原則に従って治療すべきである
  4. axSpAについて患者教育を行い、定期的な運動と禁煙するよう勧める
    • 理学療法は、自宅での運動よりも高価であるが、一部の患者には必要である
    • 喫煙が、疾患活動性とMRIでの炎症所見と靭帯骨棘形成に関連していることは示されているが、禁煙による疾患経過へのメリットは未だ示されてはいない
  5. 痛みとこわばりに関してはNSAIDsを第一選択とし、効果とリスクに応じて最大限まで使用する。NSAIDsへの反応性が良好であればNSAIDsを継続する。
    • 2010年推奨で最も重要とされたこの項目が、引き続き残った。
    • 全てのtask forceメンバーが、NSAIDsを抗炎症作用を有する用量で投与することを同意した
      • これは、疾患早期のaxSpA患者、もしくはpartial remissionのaxSpA患者の35%に、NSAIDsを開始したら、ASAS20 response of >70%, ASAS40 response in >50% を達成した既報に基づいている
    • 長期の投与をする際には、副作用に注意する必要があるが、若年が多いaxSpAでは比較的安全に使用できる
    • CRPが上昇している場合に、屯用よりも、長期に継続してNSAIDsを使用することで、病気の進行を抑制した報告がある
      • しかし、最近行われたRCTでは、この効果は証明されなかった
      • そのため、現状のエビンデンスでは、進行を抑制するかもしれないという曖昧なエビデンスよりも、患者の症状に応じて継続して使用するという絵結論に至った
      • もしNSAIDsを中止 or 減量した後に再燃した場合には、NSAIDsを継続して使用することが推奨される
      • ハイリスクの患者群(靭帯骨棘が既にある、CRP上昇している、時間の経過したaxSpA、MRIで椎体の炎症を認める)に対しては継続的にNSAIDsを使用したほうがよいかどうかは、今後の研究の課題のままである
  6. オピオイドなどの鎮痛薬は、推奨されている治療を行っても残存している痛みがあるときに考慮する
    • この領域に関しては、試験もされていないのでエビデンスはない
  7. 筋骨格系への局所的なステロイド注射を考慮する。体軸性病変に関しては長期の全身性ステロイド投与はすべきでない。
    • 関節炎と付着部炎に対するステロイド局所注射のエビデンスではない
    • 最近の報告では、体軸性関節炎に対する短期間のステロイド(PSL 50mg/day)はわずかに症状改善に効果があるかもしれないというものがあったが、今回の推奨では、少なくとも長期間の使用はすべきではないという結論である
  8. 病変が体軸性のみであれば、csDMARDsで治療すべきでない。末梢関節炎があればSSZを考慮する。
    • axSpAに対するcsDMARDsは、前回の推奨から新しいデータは出ておらず、既存のデータに基づいた推奨である
  9. 生物学的製剤は、既存の治療にても高疾患活動性が持続する場合に考慮すべきである。現状ではTNF阻害剤が第一選択である。
    • 既存の治療とは、末梢関節炎ではステロイド局所注射、体軸性関節炎であれば非薬物的治療も含める
    • この変更で重要なのは、リスクとベネフィットに基づいて、生物学的製剤”検討すべき”と強調されていることである
    • 生物学的製剤を始めるべきタイミングに関しては、Figure2でも説明している
      • リウマチ専門医は、生物学的製剤を使用する前に、他に考えうる鑑別疾患を除外する必要がある。それは、多くのaxSpA患者はASAS criteriaを満たすが、ASAS criteriaを満たす患者の多くはaxSpAとはならないからである。そのため、単純にASAS criteria内の項目を当てはめてaxSpAと診断することは厳に慎むべきである。
    • TNF阻害剤は、radiographic axSpAの場合は多くの国で使用が承認されているが、non-radiographic axSpAの場合は、CRP上昇もしくはMRIで仙腸関節炎がある場合に限られる
    • 最近の研究では、レントゲンの仙腸関節炎の評価を、トレーニングされていない評価者一人で行うことの危険性を指摘している
    • また、radiographic axSpAとnon-radiographic axSpAで生物学的製剤の効果は同等であった報告もある。
      • そのため、レントゲンで仙腸関節炎があることのみで、他に生物学的製剤を使用する根拠となるものがない場合には、不十分かもしれない。
    • 上記を踏まえ、今回のtask forceでは、CRP上昇が最も強いTNF阻害剤反応性因子とした。二番目の因子としては、MRIでの仙腸関節炎である。
    • そのため、生物学的製剤を始めるための評価として、レントゲンでの所見にかかわらず、リウマチ専門医は、CRPとMRIを確認することを検討することが望ましい
    • step3にある、SSZによる治療は、最低3ヶ月間は、3g/dayまで増量し経過をみるべきである
      • 前回の推奨ではMTXも候補だったが、MTXの有効性を示すデータがなく、SSPを考慮するという推奨に戻った
    • step4では、疾患活動性について言及しているが、BASDAIは自覚症状のみであり、ASDASはCRPも含まれている
      • ASDASのほうが疾患活動性と相関が強いこと、ASDASが高いことが靭帯骨棘形成に繋がること(BASDAIのみでは証明されなかった)は、既に報告されている。
      • ASDASが高い場合は、TNF阻害剤を継続したほうがよく、有効性のサロゲートマーカートにもなる
      • また、カットオフに関しても、ASDASに関してはvalidation processを踏んでいるものの、BASDAIに関しては恣意的に決められたものである
    • IL-17に関しては、radiographic axSpAではデータがあるものの、non-radiographic axSpAでは不足しており、有効性・安全性・至適用量や使用期間などのデータが圧倒的に多いTNF阻害剤を第一選択とした。
      • また、IL-17阻害薬はクローン病に対して有効性が示されず副作用が多かったため、活動性の炎症性腸疾患を持っている場合には使用を避けるべきである
    • TNF阻害剤の中でどれが最も有効かというデータは、head-to-headの試験が行われていないので不明である
    • また、TNF阻害剤のバイオシミラーに関しては、コストのメリットもあるので、地域に応じて同等の推奨と考えている
    • Figure2では、いつ、どのように生物学的製剤の有効性を評価すべきか表している
      • 前回の推奨では、”いつやめるべきか”、という記載だったが、今回は”継続”に関して推奨すると変わった
  10. TNF阻害剤が治療効果不十分であれば、他のTNF阻害剤への変更 or IL-17阻害剤を検討すべきである
    • 2回目のTNF阻害剤は、1剤目のTNF阻害剤よりは期待できる有効性が低い
    • IL-17阻害剤は、TNF阻害剤からの変更で有効性を示したが、TNF naiveな場合よりは有効性が低い
    • もし一次無効である場合には、TNF阻害剤から他のクラスであるIL-17へ変更するほうが適切である
      • しかし、こういうことは本当に活動性のaxSpAであれば稀なので、本当に治療失敗なのか、実は診断が異なるのではないかと検討する必要がある
    • IL-17阻害剤からTNF阻害剤への変更に関しては、データがない
  11. 寛解を維持している場合は、生物学的製剤を漸減することを考慮する
    • この推奨は、漸減できる場合があることと再開しても再び有効性が期待できることが報告されたため、今回新しく加わった
    • しかし、完全に中断することは疾患の再燃を誘発することがあるので注意する
    • 今回、寛解の定義はされていないが、ASDASが指標になるだろう
    • ”維持”の定義に関しては決まっていないが、6ヶ月間以上は必要というのがtask forceの意見だった
    • MRIでの炎症所見の残存や寛解の維持期間が再燃と関係しているのか、今後明らかにする必要がある
    • 患者さんと、再燃のリスクやコストの面など、しっかりとshared decisionすることが重要である
  12. 構造的変化がレントゲンで明らかであり、痛みと日常生活に影響があるようであれば、年齢にかかわらず手術を検討すべきである
  13. 疾患の自然経過以外の変化(椎体骨折など)があれば、適切な介入を行うべきである







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