George MD, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1743–1746.
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。
背景
- 肥満であると、RAに対する治療反応性が低下し寛解達成率が下がることは、これまで複数の研究で報告されている
- 肥満がRAの治療抵抗性と関連しているという報告や、肥満・肥満による症状・肥満に併存する疾患自体が疾患活動性に直接影響を及ぼしたり交絡したりすることも貴女としていわれている
- MRIは、RAによる関節破壊や炎症を評価するために使用される
- MRIでの骨炎(骨髄浮腫)・滑膜炎は、治療効果判定や、疾患活動性とは独立して進行する関節破壊を予測することができる
- MRIでの低疾患活動性の基準として、RA MRI scores(RAMRIS)が開発された
- RAMRISでの低疾患活動性の基準を満たしていれば、臨床的に寛解基準を満たしていなくても、構造的変化は起こりにくいとされている
- 今回の研究では、肥満が臨床的・画像的な低疾患活動性・寛解にどういった影響を与えるのか調べた
方法
- 今回の研究は、ランダム化多施設二重盲検プラセボ比較試験である、RAに対するゴリムマブ+MTX、ゴリムマブ単剤、MTX単剤を比較したGO-BEFORE (Golimumab Before Employing Methotrexate as the First-Line Option in the Treatment of Rheumatoid Arthritis of Early Onset)とGO-FORWARD (Golimumab in Active Rheumatoid Arthritis Despite Methotrexate Therapy) の二次解析である。
- 前者はMTX naive, 後者はMTX治療抵抗性の患者を組み込んでいる
- MRIはbaseline, 24週目、52週目で撮影
- 有意側の手関節・第2-5MCP手指関節を撮影
- 1.5T、造影剤あり
- 2人の読影者によってRAMRISを評価
- low synovitis, low osteitis:score ≦ 3
- low inflammation score(synovitis score+2×osteitis score):score ≦ 9
- BMIに関して
- BMI <20 :underweight
- BMI 20 to <25:normal weight
- BMI 25 to <30:overweight
- BMI ≥30:obese
- 臨床的寛解
- DAS28-CRP < 2.6
- Boolean寛解
- すべてが1以下
- 腫脹関節数
- 圧痛関節数
- 患者疾患活動性全般評価(VASで0~10cm)
- CRP(mg/dl)
- HAQ ≦ 0.5
- baseline characteristics(table1)
- overweight~obese群
- より高齢
- 白人が多い
- 圧痛関節数が多い
- HAQ score悪い
- しかしながら、DAS28-CRPは他の群と同等
- 骨炎、骨びらんは少ない
- 24週時点、各群、DAS28-CRP remission率
- underweight:28%
- normal weight:28%
- overweight:27%
- obesity:17%
- 年齢、性別、人種、CCP抗体profile、治療アドヒアランスで調整した後の24週時点、各群、DAS28-CRP remission率(figure1)
- normal群と比較し、obesity群で有意に達成率が低い
- OR 0.47
- 95%CI 0.24 to 0.92, p=0.03
- 上と同じように調整した後のHAQも、normal群と比較してobesity群で低い
- OR 0.49
- 95%CI 0.28 to 0.89, p=0.02
DAS28(CRP) remission
OR (95% CI)
|
SJC ≤1
OR (95% CI)
|
TJC ≤1
OR (95% CI)
|
PTGL ≤1
OR (95% CI)
|
CRP ≤1 mg/dL
OR (95% CI)
|
HAQ ≤0.5
OR (95% CI)
|
|
BMI
< 20
|
1.32 (0.61-2.87)
|
1.44 (0.73-2.84)
|
0.83 (0.38-1.82)
|
0.86 (0.38-1.93)
|
0.60 (0.27-1.30)
|
0.72 (0.36-1.44)
|
BMI
20-25
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
BMI
25-30
|
0.86 (0.50-1.48)
|
1.09 (0.68-1.77)
|
1.03 (0.62-1.73)
|
0.68 (0.39-1.18)
|
0.66 (0.36-1.21)
|
0.66 (0.40-1.07)
|
BMI
≥30
|
0.47 (0.24-0.92)*
|
1.01 (0.58-1.75)
|
0.82 (0.45-1.48)
|
0.47 (0.24-0.92)*
|
0.44 (0.23-0.84)*
|
0.49 (0.28-0.89)*
|
Synovitis ≤3
OR (95% CI)
|
Osteitis ≤3
OR (95% CI)
|
Inflammation ≤3
OR (95% CI)
|
|
BMI
< 20
|
0.94 (0.45-1.96)
|
1.04 (0.50-2.18)
|
0.78 (0.34-1.81)
|
BMI
20-25
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
BMI
25-30
|
0.73 (0.42-1.26)
|
1.23 (0.71-2.11)
|
0.83 (0.52-1.67)
|
BMI
≥30
|
0.94 (0.51-1.72)
|
2.06 (1.10-3.84)*
|
1.02 (0.53-1.96)
|
- SDAI, CDAI, Boolean寛解に関しては有意差なし
- obesity群では、24週時点での低patient global scoreも少なく、低CRPも少なかった
- patient global score ≦ 1
- OR 0.47
- 95% CI 0.24 to 0.92, p=0.03
- CRP ≦ 1mg/dL
- OR 0.44
- 95% CI 0.23 to 0.84, p=0.01
- 上記の結果はDAS28-CRPで調整しても変わらず(データなし)
- しかしながら、MRIでの low synovitis ≦ 3, low inflammation score ≦ 9 達成率は、それぞれBMI群間で有意差なし。
- low osteitis(骨髄浮腫)≦ 3 に関してはむしろobesity群で多かった
- 69% of patients with obesity vs 50% of normal weight patients,
- p=0.02
- 多変量解析でも、MRIでの low synovitis ≦ 3, low inflammation score ≦ 9 達成率は、control群と比較してobesity群でも有意に低いということはなかった(figure2)
- low synovitis scores
- OR 0.94
- 95% CI 0.51 to 1.72, p=0.84
- low inflammation scores
- OR 1.02
- 95% CI 0.53 to 1.96, p=0.95
- low osteitis(骨髄浮腫)≦ 3 に関しては、control群よりもむしろobesity群で多かった
- OR 2.06
- 95% CI 1.10 to 3.84, p=0.02
- baselineのosteitis scoreで調整すると有意差なし
- obese vs normal weight
- OR 1.01
- 95% CI 0.40 to 2.51, p=0.99
- 52週時点でも、圧痛関節数 ≦ 1達成率がobesity群で有意に少なかった(OR 0.47; 95% CI 0.27 to 0.82, p=0.01) のと、low HAQ(≦ 0.5)達成率に有意差が消失した以外は、同様の結果だった
DAS28(CRP) remission
OR (95% CI)
|
SJC ≤1
OR (95% CI)
|
TJC ≤1
OR (95% CI)
|
PTGL ≤1
OR (95% CI)
|
CRP ≤1 mg/dL
OR (95% CI)
|
HAQ ≤0.5
OR (95% CI)
|
|
BMI
< 20
|
2.04 (1.02-4.06)*
|
1.95 (0.95-4.00)
|
0.93 (0.47-1.84)
|
1.50 (0.72-3.10)
|
1.23 (0.50-3.01)
|
1.01 (0.51-1.99)
|
BMI
20-25
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
Ref
|
BMI
25-30
|
0.89 (0.55-1.47)
|
1.09 (0.68-1.75)
|
0.56 (0.35-0.91)*
|
0.4 (0.56-1.58)
|
0.82 (0.44-1.53)
|
1.05 (0.65-1.70)
|
BMI
≥30
|
0.54 (0.30-0.97)*
|
1.05 (0.61-1.81)
|
0.47 (0.27-0.82)**
|
0.34 (0.17-0.68)**
|
0.42 (0.22-0.82)*
|
0.65 (0.37-1.15)
|
Synovitis ≤3
OR (95% CI)
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Osteitis ≤3
OR (95% CI)
|
Inflammation ≤3
OR (95% CI)
|
|
BMI <
20
|
1.24 (0.59-2.61)
|
0.89 (0.43-1.84)
|
1.14 (0.51-2.56)
|
BMI 20-25
|
Ref
|
Ref
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Ref
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BMI 25-30
|
0.81 (0.47-1.39)
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1.77 (1.02-3.06)*
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0.94 (0.53-1.67)
|
BMI ≥30
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1.09 (0.58-2.02)
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1.93 (1.02-3.66)*
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1.31 (0.68-2.52)
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まとめ
- DAS28-CRP寛解達成率は、obesity群で低かった
- しかしながら、MRIでの低疾患活動性に関しては、各BMI群の間で同等であった
- これは、obesityがRAの重症度・治療抵抗性とは関係ないことを示唆している
- むしろ、obesityであることが臨床的寛解の評価項目にバイアスをかけているため臨床的寛解に至らないのかもしれない
- obesity群では、patient global score、圧痛関節数、CRP、HAQの項目で寛解基準を満たさなかった
- すなわち、主観的な評価項目でbaselineや治療前後の改善に乏しいという、既報にも合致していた
- CRPに関しては客観的な指標であるが、RAとは独立して肥満患者で増加するかもしれないということは報告されている
- 24、52週時点でのMRIの結果をみると、関節破壊に関しては、肥満はリスクとならないことを示しており、これは既報でも報告されていた
肥満のあるRA患者で臨床的寛解基準を満たさない場合には、主観的評価項目に引っ張られていないか確認し、overtreatmentに気をつけること、診察だけでなく必要に応じてMRIやエコーなどより客観的な評価項目も追加することを検討してもいいかもしれません。
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