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2017年9月17日日曜日

low-dose IVCY2回投与までは、卵巣機能に影響しない?


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 6, June 2017, pp 1267–1271


背景

  • intravenous cyclophosphamide(IVCY)は、NPSLEやLNなど重症のSLEに対して使用される
  • NIHプロトコールの高用量IVCYは、性線に対して毒性があり、積算量と年齢が高ければ高いほど、早期閉経をきたしうることが報告されている
    • Ann Intern Med 1993;119:366–9. 
  • low-dose IVCYとも呼ばれるEuro-Lupusレジメン(500mg/回 2週間毎 ×6回)は、性線への毒性を最小限にしたものである
    • これまで、low-dose IVCYによって早発閉経をきたした例は報告されていない
    • しかしながら、長期の観察期間が必要であったり、年齢など他の交絡因子もあり、詳細には調べられてこなかった
  • 血清のanti– Mullerian hormone (AMH) は、卵巣機能を反映し、リウマチ系疾患における卵巣機能を評価する良いマーカーとされている
    • Arthritis Rheum 2012;64:1305–10. 

  • 今回は、血清AMH値を測定し、SLE患者において、low-dose IVCYの早発閉経に対する影響を横断研究で調べた

方法
  • the Louvain Lupus Cohortを使用したcross-sectional研究である
  • 対象
    • 50歳以下
    • 妊婦やすでに早発閉経を期待している場合は除外

  • AMHを測定した時点でのcharacteritics
    • 平均年齢:35歳
    • 白人 72%
    • 平均罹患年数 10年
    • ステロイドを使用中 54%
    • これまでIVCYを使用した割合 35%
      • 経口CYC使用した人はいない



  • AMH titerは年齢によって低下するため、30歳時点でのAMHを基準として、IVCYを投与されていない患者(101人、18-48歳)のAMH値で年齢によって調整した


結果
  • characteritics
    • BMIは全ての群で同等
    • high-dose IVCY(>6g)を投与した患者群が、IVCYを投与されていない患者群よりも年齢は高めだが、これに関しては既述したように年齢によってAMHを調整した
    • high-dose IVCY(>6g)を投与した患者群が、罹患年数とSDI(→SDI)が高い
    • IVCYを投与された患者群が、IVCY投与されていない患者よりも腎病変の併発が多い(当然ではあるが)



  • 年齢で調整した血清AMH値は、low-dose IVCY(Euro-Lupusレジメン)を投与した患者群において、これまでIVCYを投与されていない患者と比較し、有意差なし
    • 平均 1.46 ng/ml vs. 1.85 ng/ml 
  • IVCY投与量 3 - 6 gの患者群(平均 5.54 ± 0.85g)では、IVCYを投与されていない患者群と比較して有意差なし
    • 平均 2.75 ng/ml
  • IVCY投与量 > 6g(平均 9.49 ± 4.02g)では、IVCYを投与されていない患者群と比較して有意に血清AMH値が低い
    • 平均 0.83ng/ml, p=0.047



  • low-dose IVCY(Euro-Lupusレジメン)を受けた10人の患者において、投与前後で血清AMHを測定したところ、年齢で調整した血清AMH値に変化はなかった
    • 投与前 1.24ng/ml、投与後 2.50ng/ml, p=0.43

考察
  • 今回の研究では、性線に対して毒性を発揮する最小の積算量は 6gと考えられた
    • この結果であれば、2回のlow-dose IVCYは性線機能に関しては安全といえる
    • 以前のMokらの研究でも、30歳以下の場合、血清AMHが検出感度以下となるのは、積算量のカットオフを5.9gとすると、感度 75%/特異度 80%であり、AUC 0.88だった。この研究結果と合わせても、積算量6gが最小であるのは妥当と言える
      • Arthritis Rheum 2013;65:206–10. 

  • しかしながら、血清AMH値が必ずしも生殖能力を反映するとは限らない
    • Morelらが、CYCで治療したSLE患者は血清AMH値が低下したが、妊娠した割合は相関しなかったと報告している
      • J Clin Endocrinol Metab 2013;98:3785–92. 
    • 今回の研究でも、IVCYを受けた患者群におけるIVCY投与後に1人以上妊娠した割合は IVCYを投与されていない患者群(46%)と有意差がなかった
      • 30%, 9%, and 38% in the 3 gm, 3 but 6 gm, and 6 gm groups, respectively
    • また、今回の研究は、患者自身の妊娠希望や腎症など他の妊娠禁忌事項を考慮していない


この領域はRCTできないので観察研究が頼みの綱ですが、様々なバイアス(妊娠希望、妊娠できるかどうかを左右する他の状況)があるとしても、IVCY6gまでは血清AMH値は統計学的有意には低下しないということでした。
この結果を知っていると、患者さんへのICも少し変わりそうです。。。しかしながら、早発閉経自体は感染症みたいに可逆的な有害事象でないので、この結果を受けて安易にlow-dose IVCYをマージンな年齢の女性に使うのはちょっとこわいですね。

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