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2017年9月17日日曜日

RAに対するsecukinumab(選択的IL-17A阻害剤、コセンティクス®︎)の有効性は限定的:phase3より

ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 6, June 2017, pp 1144–1153

背景

  • RAは全世界で有病率0.5-1%程度の疾患である
  • IL-17Aは、RA治療における新規のターゲットである
    • IL-17Aは、RAにおいて重要なTh17細胞を活性化させる主要なサイトカインである
    • 骨びらん、軟骨破壊を促進することも示唆されている
    • RA患者の滑膜にてIL-17Aが増加していることは知られているが、RAにおける他の炎症経路との違いなどは明らかでない
  • secukinumab(コセンティクス®︎)
    • IL-17A選択的に阻害する完全ヒト化IgG1 monoclonal抗体
    • 中等度以上の活動性を有する乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎には適応がある
    • phase2で、RAに対する有効性を示した
  • 今回の試験は、TNF阻害剤に対して治療抵抗性のRAに対して、アバタセプト or プラセボと比較したのphase3 trialである





方法

  • ランダム化、二重盲検、多施設(121施設、15カ国)で実施
  • 下図のように割付
    • secukinumab群 
      • 10mg/kg div 0, 2w, 4w → 75mg もしくは 150mg s.c. q4w(48周目まで)
    • アバタセプト群
      • loading div → monthly div
        • 500 mg for 60 kg
        • 750 mg for 60–100 kg
        • 1,000 mg for >100 kg
    • placebo群
      • レスキューとして、16周目時点で、腫脹関節数 or 圧痛関節数の改善が<20%の場合は、secukinumab 150mg s.c. q4w or 75mg s.c. q4wへ再び割付
      • レスキューの必要性はない場合も、24周目時点で、secukinumab 150mg s.c. q4w or 75mg s.c. q4wへ再び割付



  • 対象
    • 18歳以上
    • 3ヶ月以上前に、2010 ACR/EULAR RA分類基準を満たし診断されたRA
    • 腫脹関節数 ≧ 6/66, 圧痛関節数 ≧ 6/68
    • CCP抗体 or RFが陽性
    • CRP ≧ 1mg/dL or ESR ≧ 28mm/1hr
    • MTX 7.5-25mg/w or 他のDMARDsで3ヶ月間以上治療されており、割り付けられる前の4週間以内は用量変更なし
      • それぞれのDMARDs毎に、適切な期間をwash out期間として全例設け、そのあとに割り付けた
    • 割り付けられる3ヶ月以上前に、TNF阻害剤を1種類以上使用しており(投与回数は1回以上)、治療反応が不良だったと判断されている
  • exclusion criteria
    • RA以外の関節炎をきたすリウマチ系疾患を併存している
    • 悪性腫瘍や結核を含む活動性感染症がある
    • TNF阻害剤以外のbDMARDsを使用したことがある 

  • Primary outcome
    • 24周時点でのACR20達成率


結果
  • 551人が割り付けられた
  • 52週間の治療を完遂したのは390人(70.8%)


  • baseline characteritics
    • いずれの群も同等
    • 平均年齢:51.6 - 55.9 歳
    • 女性:77.5 - 86.2%
    • 白人≧70%
      • アジア人はいずれの群も2%以下
    • ステロイド使用率:52.2 - 62.8%
    • MTX使用率:5.8 - 13.0%
    • leflunomide使用率:16.7 - 23.4%
    • 平均DAS28-CRP:5.7 - 5.9
    • 平均CRP:0.93 - 1.08 mg/dL  



  • primary outcome(Table 2)
    • 24週時点のACR20達成率(figure3A)
      • secukinumab 150mg群:30.7%
      • secukinumab 75mg群:28.3%
      • アバタセプト群:42.8%
      • placebo群:18.1%
        • secukinumab 150mg群は、placebo群と比較して有意(p=0.0305) 
        • secukinumab 75mg群は、placebo群と比較して有意でなかった(p=0.0916 )
  • secondary outcome
    • 24週時点でのDAS28-CRP(figure3B)
      • secukinumab 150mg群で、placebo群と比較して有意に低下(p=0,0495)
      • CRP ≧ 1mg/dLの場合のほうが、CRP < 1mg/dLよりも、よりDAS28-CRP改善が大きかった
    • HAQ-DI, ACR50など他の項目
      • 有意差なし
    • ACR50, 70
      • アバタセプト群のほうがsecukinumab群よりも高い傾向だった
    • secukinumab群において、有効性は52週目まで維持した




  • 安全性
    • secukinumab群、アバタセプト群において、placebo群よりも有害事象が多かった
      • 頻度が多かったのは感染症
        • インフルエンザ、上気道感染症など
    • 16週間までに、14人が有害事象のため脱落
        • secukinumab群でそれぞれ5人ずつ、アバタセプト群で3人、placebo群で1人
    • 16週目までの特殊な有害事象
      • 心血管イベント
        • 3例ともsecukinumab群
      • 食道カンジダ
        • 7例ともsecukinumab群
      • 好中球減少
        • 5例がsecukinumab群、アバタセプト群で3例、placebo群で1例
      • 1例死亡(secukinumab 150mg群、肺塞栓症)
    • 52週目まで観察した結果
      • 重度の有害事象の頻度
        • secukinumab群:9.7/100人年(13.4%)
        • アバタセプト群:7.7/100人年(6.6%)
      • 52週目までに治療脱落したのは43人
        • 38人がsecukinumab群、5人がアバタセプト群
      • 心血管イベント
        • secukinumab群:0.8/100人年
        • アバタセプト群:0/100人年
      • 食道カンジダ
        • いずれの治療群でも同等の頻度
      • 結核なし
      • 16週目以降に死亡したのは3例
        • 1例は詳細不明、2例は心不全、全例ともsecukinumab 75mg群


  • 抗secukinumab抗体が出現したのは7例
    • 抗体価は比較的低く、中和抗体はなし



まとめ

  • 今回の試験が、phase3において、TNF阻害剤で治療抵抗性を示すRA患者に対して、アバタセプトとともにプラセボに対して有効性を示した初めての試験である
  • しかしながら、24週時点でDAS28-CRPがplacebo群よりも有意に低下したのは、secukinumab群において150mgのみだった
    • secukinumab 75mgにおいては、primary outcomeも満たすことができなかった
    • HAQ-DI, ACR50はplacebo群に対していずれの用量でも有意に改善しなかった
  • アバタセプト群は、他の試験と同等の有効性を示し、secukinumab群と比較してもより改善が大きかった
  • これらの結果より、TNF阻害剤に対して治療抵抗性を示すRA患者に対して、secukinumabが、トシリズマブやリツキシマブなども含めた既存のTNF製剤以外のbDMARDsよりも有効であるとはいえず、IL-17AはRAの病態において主要なものではないのかもしれない
    • この結果は、乾癬性関節炎や強直性脊椎炎を含む脊椎関節炎とは対照的である


IL-17A阻害剤も、RAに対してはあまり有効とはいえないようです。少なくとも、現状のエビデンスでは、次のガイドラインで他のbDMARDsと並列することはないでしょう。

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