Ann Rheum Dis 2017;76:1405–1410.
背景
- 出産後にRA発症リスクが上がる
- Autoimmun Rev2012;11:A437–46.
- Ann Rheum Dis 2010;69:332–6.
- 出産中はRA活動性は落ち着くことが一般的
- 子供を通して父からの抗原がRA発症リスクに関与していることが考えられる
- 出産後も胎児の細胞が母体に少量残っており、それが発症に関与している可能性もある(マイクロキメリズム)
- Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:705–8.
- RA発症に関する最も強い遺伝因子はHLA-DRB1
- ‘shared epitope’ (SE) アレルであり、70-74番にQKRRAとQRRRAというアミノ酸配列をコードしており、RA発症リスクを増加させる
- Arthritis Rheum 1987;30:1205–13.
- Am J Hum Genet 2002;71:585–94
- 同じ部位にコードされているDERAAという配列はRA発症リスクを低下させる
- Ann Rheum Dis 2008;67(Suppl 3):iii61–3.
- 最近の研究で、HLA-DRB1の3つのアミノ酸配列と、HLA-B, HLA-CPB1の同じ2つのアミノ酸配列が最もRA発症リスクに関与していると示した
- Nat Genet 2012;44:291–6.
- DRB1ハプロタイプのなかで、valine/lysine/alanine at positions 11/71/74 が最も RA発症に関係しており、DRB1*04:01アレルに相当する
- 臨床的にもACPA、疾患活動性、予後とSEが関連があることがわかっている
- Arthritis Rheum 2008;58:359–69.
- 2つの研究で、SE-negative妊婦においてSE-positiveマイクロキメリズムが生じることが、 RA群のほうがコントロール群より多かった
- Arthritis Rheum 2009;60:73–80.
- Arthritis Rheum 2011;63:640–4.
- また、胎児においてDERAA陽性の場合には母体のRA発症リスクを下げる
- Proc Natl Acad Sci USA 2007;104:19966–70.
- これらのことを踏まえ、父から遺伝した胎児のアレルが母体のRA発症に影響するか調べることが今回の研究の目的である
方法
- case-control study
- the University of California San Francisco (UCSF) Mother–Child Immunogenetic Study (MCIS) とresearch studies conducted at the Inova Translational Medicine Institute (ITMI), Inova Health System, Falls Church, Virginia.からの1165人の母、1482人の子供のデータを使用
- 母:診断前に少なくとも1人出産している、1987ACR分類基準を満たすRA患者
- 子供:母が診断される前に生まれた子供のみ
- コントロール群:自己免疫疾患の既往がなく、1人以上出産している女性。
- blood donors at the Blood Centers of the Pacific and the Institute for Transfusion Medicine in Pittsburgh, Pennsyl- vania, and from families who enrolled in studies at the Inova Women’s Hospital, Inova Fairfax Medical Center, Falls Church, Virginia から抽出
- 遺伝子検査は1997年〜2010年にUCSFで実施
結果
- 両者とも出産人数は2人程度
- 69%がseropositive
- 既知のriskアレルについて漢籍すると、やはりRA発症した女性群においてSEアレル保有率は高かった(82% vs. 39%)
- この頻度は既報と同様である
- 71番のlysineをコードしているアレルは独立してRA発症リスクであった
- 次に、子供がこれらのアレル陽性である場合に関して解析した
- SEを有する子供の場合は、RA発症リスクであった(OR 3.0; 95%CI 2.0 to 4.6)
- 11番のvaline、71番のlysine、74番のalanineをコードする他のHLA-DRB1アレルもOR 2 程度
- DERAA配列をもつ子供の女性はRA発症リスクが増加した(OR 1.7; 95% CI 1.1 to 2.6)
- DPB1の9番のphenylalanineに関しては、Table2の通り母が有していてもリスクにならなかったが、子供が有している場合は母のRA発症リスクになる(OR 4.0; 95%CI 1.2 to 13.4) 。
- これはseropositiveグループでより顕著であった:in the seropositive group (OR 8.5; 95% CI 1.1 to 63.5) than among seronegative cases (OR 1.9; 95%CI 0.4 to 8.2)
- 母がSE-negativeの場合
- 子供がSE-positiveであることは統計学的に有意なリスクにはならなかった
- 母がSE-positiveの場合
- 子供がSE-positive、DRB1の11/71/74のアミノ酸配列とDPB1の9番のアミノ酸配列が統計学的に有意なリスクであった
考察
- リスクとなるようなHLAアレルに、子供のアレルを通して母が曝露することがindependentlyにRA発症リスクとなる
- DERAAアレルは既報と異なり発症リスクとなっていたが、DERAAをコードしているアレルはRA発症リスクとして知られているDRB1の74番のalanineもコードしているので、DERAAが発症リスクというよりも、DRB1の74番のalanineもしくは他のアミノ酸配列が影響している可能性もある。しかし、今回の研究では母の他のアミノ酸配列に関しては調整しており、微生物のDERAA配列とRA患者の自己抗原のT細胞交差反応も報告されているので、epitope-spreadingによってDERAAが発症リスクアレルとなっていた可能性もある。
母がSE-positiveの場合に、子供のアレルがより大きなRA発症リスクとなるようです。しかしながら、子供のアレルに関しては、それによって結婚相手を変えるわけにもいかないでしょうし、なかなか難しい問題です。
にしてもこのあたりの遺伝子とかが話に入ってくると理解が難しい・・・
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