ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 8, August 2017, pp 1521–1537
Vol. 69, No. 8, August 2017, pp 1521–1537
背景
- ステロイドによる骨粗鬆症の影響はステロイド開始後3−6ヶ月が最大。その後は徐々に骨粗鬆症が進行
- 特に椎体骨で骨折のリスクが上昇し、より影響が大きいのは海綿骨>皮質骨
- リスクは量、期間の両者による
- しかしながら、ステロイド中止によって骨密度は増加し骨折リスクも改善する
- 他にも人種、性別、骨粗鬆症の一般的なリスク因子などが影響する
- いくつかの骨粗鬆症リスク計算式にはステロイドも考慮されている
- 多くはこれまでの研究に基づいて、PSL > 7.5mg or ≦ 7.5mgで分類される。
- しかし、GCAやSLEなどのように高用量で使用するようなシチュエーションではこの計算式では過小評価となる
- Van StaaらはPSL≧30mgかつ蓄積≧5gmにて著明にリスクが上昇すると報告している
- QJM 2005;98: 191–8.
- 子供や40歳以下ではステロイド性骨粗鬆症のデータは少ない
リスク分類
- Table 1:ステロイド使用患者の骨折リスク
- 既存骨折があればhigh risk
- 他、FRAXなどで分類
評価に関する推奨
- 長期間GCを開始する場合には、全例、なるべく早期に(遅くとも6ヶ月以内に)下記の一般的な骨折リスクを評価すべき
- GCの量、期間、使用方法
- 易転倒性
- 低栄養
- 性腺機能低下、二次性副甲状腺機能亢進症、甲状腺疾患
- 骨折の家族歴
- アルコール摂取量:≧3単位/日
- 喫煙歴
- 他の併存症
- 未診断の骨折の有無:脊椎叩打痛、変形、下位肋骨と腸骨間の短縮など
- 40歳以上であれば下を追加
- FRAXの評価(https://www.shef.ac.uk/FRAX/tool.jsp)
- ステロイド適正量の評価
- 骨密度測定
- 40歳以下の成人であれば、骨折リスクが高い場合(既存骨折あり or 上記のような一般的な骨粗鬆症リスクを有する)に骨密度測定をGC開始6ヶ月以内に行なう
- GC治療を受けている全例において、上記の骨折リスク評価を12ヶ月おきに行なう
- 40歳以上の成人で、CaとvitD以外に骨粗鬆症治療を受けていない場合 or 既存骨折がある場合、可能であればFRAXと骨密度測定を1−3年毎に行なう
- 初期治療量PSL≧30mg、蓄積量≧5gmであれば1-3年毎よりもスパンを短くする
- 現時点では少量のGCのみで他の一般的な骨粗鬆症リスクがなければ1-3年毎よりもスパンを長くしてもよい
40歳以上の成人で、CaとvitD以外に骨粗鬆症治療を受けている場合、下記であれば1-3年毎で骨密度測定を行なう
- 初期治療量PSL≧30mg、蓄積量≧5gm
- 18ヶ月間以上、CaとvitD以外に骨粗鬆症治療を受けている中で発生した既存骨折の既往あり
- 薬剤アドヒアランスに問題がある
- 他の一般的な骨粗鬆症リスクを有する
40歳以上の成人で、以前にCaとvitD以外に骨粗鬆症治療を受けていたが今は受けていない場合、2−3年毎に骨密度を測定する
- 高用量PSLを受けている or 既存骨折がある or 以前の骨密度が低い、などあればスパンを短くする
- 40歳以下の成人の場合は、box内に当てはまれば2-3年毎に骨密度測定する
治療に関する推奨
- 全例、Ca(1000-1200mg/day)とvitD(600-800 IU/day; 血清 level ≧ 20ng/mL)を適正に摂取する
- 40歳以上の成人(妊婦を除く)で、中等度以上の骨折リスクの場合は、経口Bis製剤を投与する
- 経口製剤を内服できない場合は点滴Bis製剤を使用する
- Bis製剤自体が使用できない場合はteriparatideを使用する
- Bis製剤とteriparatideのいずれも使用できない場合はdenosumabを使用する
- 閉経後女性で他の薬剤が使用できない場合は、raloxifeneを使用する
- 既存骨折あり or 6か月間以上のPSL≧7.5mg治療を今も受けている40歳以下の成人(妊婦を除く)で、大腿骨もしくは椎骨の骨密度 Z score<-3 or 10%/年以上のスピードで骨密度が低下している場合は、経口Bis製剤を使用する
- 経口Bis製剤が使用できない場合の代替治療は、raloxifeneを除いて40歳以上の成人と同様
- 中等度以上の骨折リスクがあり、妊娠可能ではあるが妊娠する予定がない場合は経口Bis製剤を使用すべき
- 経口Bis製剤が使用できない場合はteriparatide:点滴のBis製剤とdenosumabは胎児に対するデータが不足している。これらの製剤は骨折高リスクで経口Bis製剤とteriparatide両者が使用できず十分なICをした場合に限る。
- 妊婦に関してはデータが不足しているため、今回の推奨ではCaとvitD製剤のみとする。
- 30歳以上で、初期治療量PSL≧30mg、蓄積量≧5gmであれば経口Bis製剤を使用する
- 4-17歳はCaとvitDとする。既存骨折があり≧0.1 mg/kg/dayを3か月間使用している場合は、経口Bis製剤を使用する
- 経口Bis製剤で初期治療をしたにも関わらず骨折した場合は、アドヒアランスや吸収に問題がある場合は点滴に変更、もしくは他のタイプの製剤に変更する
- 40歳以上で、7-10年間Bis製剤で治療しているにも関わらず中等度以上の骨折リスクの場合は、アドヒアランスもしくは吸収に問題がある可能性があるため点滴Bis製剤に切り替えるか、他のタイプの製剤に変更する
- GC治療が終了した場合、終了時点で骨折リスクが低い場合には、CaとvitD以外の骨粗鬆症治療も終了する
全例CaとvitDは適正量摂取が前提
それに追加する治療として、これまでdenosumabやteriparatideなどのデータも増えてきましたが、2017年ACRの推奨では、とりあえずのところ、第一選択はBis製剤とのことです。
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