Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1400–1406
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1400–1406
急性発症の頸部痛、手関節痛、膝関節痛、X線で石灰化のある高齢者・・・ってかたが緊急入院され、CPDDだねってことで鎮痛しながら経過を見ています。
糖尿病とか冠動脈疾患とかCKDとか、CPDDにかかりそうな背景がたくさんあるなぁ・・・と思っていましたが、優しい指導医の先生がこの論文をプレゼントしてくださり読んでみると、実はそれは単なる自分の偏見かもしれない。。。と思っています。
背景
- Calcium pyrophosphate deposition disease(CPDD)はピロリン酸血症による急性 or 慢性の関節炎である
- 40歳以上では、〜4%の割合でX線でCPDDを認める
- 診断には、関節液中の結晶を顕微鏡で証明することが必要であり、軟骨石灰化はそれを支持する所見である
- CPDDの疫学に関しては大規模な研究がなく不明なことも多い
- これまでの研究では、リスクと報告されているのは下
- 加齢
- 60歳以下では稀
- 代謝異常
- ヘモクロマトーシス
- 副甲状腺機能亢進症
- 低フォスファターゼ症
- 低Mg血症
- CKD
- ループ系利尿薬
- 痛風との関連は議論の余地あり
- 他のリウマチ疾患と併発することもある
- 報告があるのはOA, RA
- 糖尿病、冠動脈疾患、アルコール依存症、喫煙、肥満、頻用される薬剤との関連はあまりわかっていない
- 今回は、CPDDと併存疾患との疫学的な関連を調査することが目的である
方法
- 横断研究
- アメリカ合衆国退役軍人省の医療機関のデータを使用
- 2010-2014年にCPDDと診断された全患者に、質問票を用いて調査
- CPDD群とコントロール群を、年齢、性別をマッチさせて1:1とした
結果
- CPDD有病率:5.2/1000人
- 95% 男性
- 平均年齢 68.1±12.3歳
- 併存疾患に関して
- OR > 1だった項目
- 副甲状腺機能亢進症
- OR 3.35 [95% confidence interval (95% CI) 2.96–3.79])
- 痛風
- OR 2.82 [95% CI 2.69–2.95]
- 変形性関節症
- OR 2.26 [95% CI 2.15–2.37]
- RA
- OR 1.88 [95% CI 1.74–2.03]
- ヘモクロマトーシス
- OR 1.87 [95% CI 1.57– 2.24]
- 骨量減少
- OR 1.26 [95% CI 1.16–1.36]
- 低Mg血症
- OR 1.23 [95% CI 1.16–1.30]
- CKD
- OR 1.12 [95% CI 1.07–1.18]
- OR < 1だった項目
- 甲状腺機能低下症
- OR 0.88 [95% CI 0.83–0.92]
- 冠動脈疾患
- OR 0.76 [95% CI 0.73–0.79]
- 慢性心不全
- OR 0.71 [95% CI 0.67–0.75]
- 糖尿病
- OR 0.79 [95% CI 0.76–0.83]
- 高血圧
- OR 0.77 [95% CI 0.72–0.82]
- 低体重(BMI < 18.5)
- OR 0.84 [95% CI 0.73–0.96]
- アルコール依存
- OR 0.62 [95% CI 0.58–0.65]
- 喫煙
- OR 0.73 [95% CI 0.70–0.76]
- 低フォスファターゼ症は稀な疾患のため解析できなかった
- 治療薬に関して
- OR < 1だった項目
- PPI
- OR 0.58 [95% CI 0.55–0.60]
- サイアザイド系利尿薬
- OR 0.84 [95% CI 0.81–0.88]
- ループ利尿薬
- OR 0.80 [95% CI 0.76–0.84]
- ビスホスホネート製剤
- OR 0.85 [95% CI 0.78–0.93]
- OR > 1だった項目
- Caサプリメント内服
- OR 1.15 [95% CI 1.06–1.24)
- 関節形成術に関して
- 膝関節は有意に関連
- OR 1.64 [95% CI 1.53–1.76]
まとめ
- 副甲状腺機能亢進症に関しては既報と同様、関連する併存疾患であった
- 他にも、痛風、変形性関節症も比較的強い関連であった
- 痛風に関しては、今回の調査では、関節液の詳細な検討をおこなって偽痛風と鑑別した訳ではないので、過剰に診断している可能性もある
- 今回の対象は急性発症のCPDDのみではなく、亜急性、慢性も含んでいるため、以前Rhoらが報告した有病率0.17%より増えたのだろう
- MgはCPP結晶を分解する酵素の補酵素であるため、低Mg血症がリスクとなるのだろう
- PPIは、低Mg血症の原因となるので、疫学的にはむしろOR1未満だったのは合致しない
- PPIは今回の調査において、CPDD患者で最も使用されていた薬剤である
- CPDD患者 60.3% vs. コントロール群 71.9%
- 骨量低下とCPDDが関連しているのは、CPDDがピロリン酸の代謝異常による全身疾患として現れてくることを支持している
- 軟骨マトリックスへのピロリン酸の蓄積はCPDDを起こす
- また、ピロリン酸は、骨マトリックスを形成するのにカルシウムとリンが骨化することが必要であり、ピロリン酸はそれを阻害する
これまでの既報とは結果が異なる項目があり、バイアスの影響なのか気になりますね・・・冠動脈疾患や糖尿病とすでに診断されていると食事に気を使うから今回の調査ではnegativeだった、とか?
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