Kochi Y, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:602–611. doi:10.1136/annrheumdis-2017-212149
- CADMは、しばしば急速進行性間質性肺炎を起こし、6ヶ月時点での死亡率は50%である
- MDA-5抗体の存在は、自己免疫が病態に関与していることを示唆している
- 特発性炎症性筋疾患のetiologyは不明な点が多いが、ウイルス感染症が主な環境因子なのかもしれない
- 特発性炎症性筋疾患の患者もしくはその家族が、他の自己免疫疾患を発症することもあり、共通する遺伝的要因があることが示唆される
- GWASや、ヨーロッパの候補遺伝子に関する研究では、複数のlociが他の自己免疫疾患と共通していた
- しかしながら、他の自己免疫疾患と比較して、特発性炎症性筋疾患の遺伝的背景に関してはわかっていないことが多い
- これは、疾患自体が稀であることから、検出力が十分な研究が組みにくいことが関係している
- さらに、特発性炎症性筋疾患はヘテロな疾患であり、あるタイプに対する特異的なlociを特定するには、さらなるサンプルサイズが必要である
- そのため、サブセット特異的な遺伝子変異を特定するために、日本人を対象にしたGWASを今回行なった
- 今回の試験は、アジア人を対象にした特発性炎症性筋疾患のGWASとして初めてものである
- また、CADMに関する解析も行なったが、これは世界で初めてのことである
方法
- 対象
- 日本の18施設から、592人の特発性炎症性筋疾患を組み入れた
- 平均年齢:55.5才
- 女性:74.6%
- PM/DM:Bohan & Peterの診断基準にて、definite or probableを満たす
- CADM:Sontheimerらの基準を満たす
- コントロール
- Biobank projectから、自己免疫性疾患の既往のない6270人
- 平均年齢:57.0才
- 女性:48.2%
- ヨーロッパの症例(21例のCADM、84例のコントロール)を、an international myositis genetics consortium (MYOGEN)として組み入れた
- GWAS
- 解析手法
- 症例:HumanOmniExpressExome BeadChip
- コントロール:HumanOmniExpressExome BeadChipとHumanExome BeadChip (Illumina)を使用して解析した
- quality controlのため、以下を除外
- SNPs < 0.99
- MAF < 0.05
- コントロールの中で、Hardy-Weinberg equilibrium(P<1×10−6)となっていないもの
- 2親等以内のサンプルの組み合わせ(IBSで推測)
- CEU, YRI, JPT, CHBのHapMapデータを参照集団とし、PCA解析を実施した
- JPT/CHB clusterに属していないものを特定し、このスクリーニングによって、576 casesと6270 controlsに絞り込み、解析した
- このサンプルサイズは、QUANTOで計算すると、ある程度のeffects(OR > 1.5)を有するvariantsを検出力 > 0.5(MAF > 0.5)で検出できた
- ヨーロッパの検体のgenotypeは、Immunochip(Illumina)で解析した
- WDFY4 locus内のgenotype imputationを、1000 Genome Project Asian Dataを参照して、Minimacでおこなった
- eQTL
- Matrix eQTLを使用して、cis-eQTLとtrans-eQTLの両方を一般線形モデルで解析した
- ヨーロッパのサンプル(n=373)はGeuvadis project dataを使用した
- the gene level eQTL analysis: ‘GD462.GeneQuantRPKM.50FN.samplename.resk10.norm.txt’
- the exon level eQTL analysis :‘GD462.ExonQuantCount.45N.50FN. samplename.resk10.txt’
- Weighted parametric gene set analysis (wPGSA)
- trans-eQTLのtr-WDFY4への影響から観測された遺伝子発現量の変化に関わっている転写因子(TF)の活性を推測するために、wPGSAをいくつか修正して実施した
- 複数のタイプのヒトの細胞のChIP-seq dataはthe GEO databaseのものを利用した
- 合計して、431種類のTFに関わる、3082種類の ChIP-seq data を利用した
- Reporter assay
- WDFY4とtr-WDFY4のコード配列を、EBVによって不死化されたB細胞由来のcDNAを利用して、pcDNA3.1D/V5-His-TOPO vectorに複製した
- ヒトのpattern recognition receptors (PRRs)は、pEF-BOS- FLAG vectorに複製した
- UNC93B1は、pcDNA5/FRT/ V5-His vectorに複製した
- UNC93B1は、TLR7, TLR9をエンドリソソームに運ぶために必須であるため、TLR7とTLR9の実験で同時に導入した
- HEK-293細胞は、牛血清を10%添加されたDulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)の中で培養した
- HEK-293細胞に、the X-tremeGENE HP Transfection Reagent (Roche)を使用して、WDFY4 expression vectors, the pGL4.32 vector (nuclear factor-kappa B (NF-κB) response element and luc2P), the pGL4.74 vector (hRluc/TK) (Promega)をそれぞれ導入した
- 18時間incubationしたあと、poly (I:C) (Enzo Life Sciences), LPS (Sigma-Aldrich), imiquimod (InvivoGen), ODN2006 (InvivoGen), high molecular weight poly (I:C)のいずれかで、4時間刺激した
- その後、これらの細胞を集め、Dual-Luciferase Reporter Assaysを使用して、luciferase activity を測定した
- Immunoprecipitation and western blotting
- HEK-293細胞へ、WDFY4 isoformとPRRをそれぞれ導入し、24時間培養した
- 細胞をradioimmunoprecipitation (RIPA) bufferの中で溶解し、 anti-FLAG-antibody (Sigma-Aldrich)でコーティングされたDynabeads protein-G (Life Technologies) でインキュベートし、その後4℃で30分間インキュベートした
- 電気泳動の前に、beadsをウォッシュし、SDSでboilした
- タンパク質をpolyvinylidene fluoride (PDVF) membranes (Millipore)を移動させ、anti-V5 antibody (Invitrogen)でプローブし、ECL reagent (GE Healthcare)で可視化させ、LAS-3000 (Fujifilm)で同定した
- Apoptosis assay
- the Lipofectamine 3000 reagent (Invitrogen)を使用して、HepG2細胞へ、WDFY4 isoformを導入した
- 複製LacZを導入したvectorをmockとして導入した
- 細胞は24時間インキュベートし、5μg of poly (I:C)で刺激した
- CaspACE FITC- VAD-FMK (Promega)とanti-His-Alexa 647で、permeabilisedと染色をおこなった
- アポトーシスした細胞を特定するために、His-positive細胞のカスパーぜ活性は、the BD Accuri C6 flow cytometer (BD Biosciences) を使用して評価した
- Immunofluorescence staining
- HEK-293細胞をカバーガラスで育て、WDFY4 isoformとMDA5のベクターを導入した
- 細胞を4% paraformaldehydeで固定し、0.25% Triton X-100でpermeabilizedし、anti-V5 と antimouse IgG Alexa488(Invitrogen)でWDFY4とanti-FLAG-Cy3 (Sigma-Aldrich)(MDA5特定のため)を染色した
- 画像は、共焦点顕微鏡を使用した
- MDA-5抗体の測定
- 免疫沈降法で測定
- 統計
- SNPsは、Plink 1.9を使用して関連を解析
- the genome-wide significance threshold:α=5×10−8
- 集団の構造化(population stratification)による潜在的な影響を評価するために、quantile–quantile plotを使用した
結果
<GWAS for IIM>
- 日本人のサンプルのgenotypeを、960,000のSNPを含むIllumina SNP arrayで解析
- quality controlによって、サンプル数は、以下に絞られた
- 576 IIM cases
- 6270 controls
- 496,819 SNPs
- genomic inflation factor (λGC)は1.024であり、population stratificationの影響は無視できる程度だった
Supplementary
Figure S1 Q-Q
plot
of
GWAS for IIM
in
Japanese.
All
IIM, all idiopathic inflammatory myopathies; PM, polymyositis; DM,
dermatomyositis; CADM, clinically amyopathic
dermatomyositis
The
observed (y axis) and the expected (x axis) P
value is plotted for each SNP (dot), and the red line indicates the null
hypothesis of no true association. Genomic inflation factor (λGC)
was indicated. Deviation from the expected P-value
distribution is evident only in the tail area in CADM, suggesting that
population stratification was adequately controlled.
- Caseの内訳
- PM:236
- DM:340
- CADM:33
- 上記caseに対して、GWASをおこなったが、統計学的に有意なSNP(p<5×10−8)はどのサブタイプのなかでも見つからなかった
Supplementary
Figure S2 Manhattan
plots
of
GWAS for IIMs in Japanese.
All
IIM, all idiopathic inflammatory myopathies; PM, polymyositis; DM,
dermatomyositis; CADM, clinically amyopathic
dermatomyositis
The
image was created using the R package qqman.
The red line indicates the genome-wide significance level (P =
5×10−8).
Three SNPs (rs7919656, rs3747872 and rs3747874) satisfied the genome-wide
significance level in CADM and were in strong LD with each other (r2
> 0.95).
- しかしながら、CADMのみに絞ると、イントロン領域のSNPであるWDFY4が有意に関連していた
- WDFY Family Member 4; rs7919656
- OR=3.87; 95% CI 2.23 to 6.55
- P=1.5×10−8
- ヨーロッパのCADM症例では、rs7919656に関しては明らかな関連(r2 < 0.2 )はなかった
- しかしながら、rs7919656のneighbouring genesであるSNPに、有意に関連があった
- rs11101462
- P=0.0092
- rs2889697
- P=0.0058
Supplementary
Figure S3.
Association
of WDFY4
locus with CADM in Europeans. Regional association plot was drawn by LocusZoom.
The recombination rate estimate is based on European genotype data from the
1000 Genomes project (hg19 coordinates). The GWAS SNP for CADM in the Japanese (rs7919656) was colored in
purple. The LD index (r2)
for each SNP with rs7919656 was also colored as presented in the left panel.
The dot line indicates the significance level of P =
5×10−8
and P =
0.05.
<splicing QTL effect of WDFY4 variant on truncated isoform>
- WDFY4 locusが、この疾患における原因となるような病態を明らかにするために、まず最初に、候補となるようなfunctional variantsを調べた
- 1000 Genome Project Asian Dataのサンプルなかで、rs7919656と強く連鎖不均衡(LD)にある(r2 > 0.8)variantsでは、有意なcoding variantはneighbouring genesに存在しなかった
Supplementary
Figure S4 Candidate
causal variants searched from the 1000 genome data by using HaploReg.
All
the variants in LD (r2 >= 0.8 in Asian samples) with the GWAS SNP
(rs7919656) were shown. No missense variant was identified.
HaploReg,
http://archive.broadinstitute.org/mammals/haploreg/haploreg.php.
- 次に、Geuvadis project dataのlymphoblastoid B cellsに関するeQTL dataを調べた
- rs7919656 genotypeと遺伝子発現量(geneとexons)の間の相関を調べたところ、alternative exonにて有意なeQTL effectが認められた
- whole geneとneighbouring exonsには、遺伝子発現量への明らかなeQTL effectはなかったので、このLDにおけるvariantもしくはvariantsは、WDFY4 isoformに対するsplicing QTL effectを有していると考えられた
Supplementary
Figure S5 Cis-eQTL
analysis of WDFY4 variant (rs7919656) with the expression levels of exons using
the Guevadis
project samples (N= 373). The line in the middle of the box is the median, and
the box edges are the 25th and 75th percentiles.
- このようなvariantのなかで、intron 35の中に存在する2つのSNPs(rs10776647/rs10776648 )がcausal variantsの候補と考えられた
- しかしながら、これらは、関連するmotifのclassical splicingに影響するものではなかった
- このalternative exonは、WDFY4のexon 36まで延長しており、これによってalternate stop codonが入り、タンパクが短くなる
- 筆者らは、EBVによって不死化されたB細胞由来のcDNAで複製し、HEK-293細胞内の発現量を調べることで、この短縮したタンパク(tr-WDFY4)の存在を証明した
- WDFY4は、WDFY4 family member 4をコードしている
- WDFY4 family member 4は、上記Dで示している通り、C末端側でBEACH domain と5つの WD domains を予測している
- WDFY4は、知られている限りでは、樹状細胞、好中球、B細胞、マクロファージで発現しているものの、このタンパク質の機能についてはあまり知られていない
Supplementary
Figure S6 Expression
levels
of WDFY4 in
immune cells and tissues.
The
expression data of WDFY4
were
extracted from the FANTOM5 database using ZENBU. The transcriptional start site
(TSS) expression was quantified by cap analysis of gene expression (CAGE) and
displayed as relative log expression (RLE).
ZENBU,
http://fantom.gsc.riken.jp/zenbu/.
- 機能を調べるために、同じlymphoblastoid B cells の expression dataを使用して、variantのtrans-eQTL analysisをおこなった
- 合計387 genesがrisk allelesの数と関連したが、どのgeneもgenome- wide significant correlation ではなかった
- 驚くべきことに、これらのうち279のgene(72.1%)はpositiveに相関し、tr-WDFY4の発現が増加することでこれらのgeneが増加する方向に作用することが示唆された
- trans-eQTL effectに関して上位10位であるgenesのなかでは、TYK2とPTPN6がよく知られたB細胞のシグナル制御因子だった
- 次に、tr-WDFY4の下流に位置する転写因子を、wPGSAを使用して特定した
- wPGSAでは、ヒトの様々な細胞から得られた全ての利用可能なChiP-seq dataを使用し、遺伝子発現量の変化の責任転写因子を予測することができる
Supplementary
Figure S7 Application
of the results of trans-eQTL
analysis to wPGSA.
Log-fold change (LFC) of expression data is usually evaluated in wPGSA.
Instead, we evaluated trans-eQTL
effects (b)
of a variant for distal genes and identified the transcriptional factors
responsible for the regulation.
- trans-eQTL effectsをinputとすると、431種類の転写因子の中で、6種類の転写因子が有意な関連を示した
- 免疫系において重要な転写因子であり、NF-κB heterodimerを構成するTF65(RELA/p65)に注目した
- この結果から、WDFY4の下流によってNF-κB経路が活性化されると仮説を立てた
- 実際に、NF-κBのreporter assayでは、WDFY4もしくはtr-WDFY4をHEK-293細胞に導入すると、TNFαによる刺激によって、WDFY4とtr-WDFY4の両者ともNF-κBを活性化した
<WDFY4 augments signals of innate PRRs>
- 最近の別の報告では、WDFY gene familyの他のmemberであるWDFY1が、TLR3とTLR9の経路を活性化したという報告がされていた
- 今回の筆者らのこれまでの結果と合わせて、WDFY4のPRR signallingでの役割を調べることとした
- 病態や推測される役割やNF-κBを活性化させることから、TLR3/TLR4/TLR7/TLR9、MDA5を解析することとした
- まず最初に、それぞれのWDFY4 isoformをそれぞれのPRRへ同時に導入し、NF-κB reporter assayを調べた
- WDFY4 isoformの両者とも、TLR3/TLR4/TLR9、MDA5のNF-κB 経路を活性化したが、TLR7に関しては活性化しなかった
- 注目すべきことに、poly(I:C)で刺激した際に、tr-WDFY4は、著明にMDA5シグナルを活性化した
- また、IL-8を測定することで、WDFY4 isoformの、サイトカイン産生への影響を調べた
- WDFY4 isoformの両者とも有意にIL-8の産生を増加させたが、poly(I:C)で刺激すると、mockとの差は有意でなくなった
- 次に、WDFY4 isoformとこれらのPRRsの間の生理的な相互作用を、共免疫沈降法で調べた
- V5で標識したWDFY4 isoformは両者とも、FLAGで標識されたPRRsと、相互的に作用した
- 最も強い相互作用は、tr-WDFY4とMDA5の間に認められた
- この結果は、reporter assayの結果と一致するものだった
- MDA5によるウイルス感作は、内因性の免疫反応を惹起し、細胞のアポトーシスを誘導してウイルス感染細胞を除去することが知られている
- そのため、MDA5経路における、WDFY4のさらなる機能を調べるために、apoptosis assayをおこなった
- poly(I:C)による刺激によってMDA5が活性化しアポトーシスを誘導することが既報で報告されているHepG2細胞を使用した
- HepG2細胞をWDFY4 isoformに導入し、poly(I:C)で刺激すると、tr-WDFY4を導入した細胞の方がより強くアポトーシスが生じた
- 既報では、MDA5により誘導されたアポトーシスは、type 1 IFNシグナルと独立したもの報告されている
- そのため、WDFY4 isoformのtype 1 IFN産生へ与える影響を、IRF3 reporter assayを使用してMDA5を共導入させることで調べた
- 比較対象として、TLR3シグナルを調べた
- その結果、WDFY4 isoformは、TLR3によるIFN産生には全く影響しなかったが、MDA5によるIFN産生を著明に減少させた
- すなわち、WDFY4 isoformは、MDA5と相互作用を発揮し、細胞内のシグナルを変化させることが示唆された
- これらの結果は、WDFY4 isoformとMDA5を細胞質に共に導入した細胞を免疫蛍光法で観察した結果(A)と、MDA5抗体陽性の患者血清がtr-WDFY4タンパクを共免疫沈降させた結果(B)からも支持された
まとめ
- 今回の結果から、WDFY4 variantとCADM疾患感受性の間に、有意な関連があることが示された
- WDFY4 locusはの関連は、SLEとRAでは既報で報告されていた
- 最近の報告では、SLEのrisk variants(rs2663052)がsplicing QTL effectをWDFY4に対して有することが報告されていた
- しかしながら、rs2663052は、CADM risk variant(rs7919656, r2=0.46 in the Asian samples )とは、tightなLDではなく、今回の結果でもrs2663052はCADMとはより弱い関連(p=0.0012)しか示さなかった
- ミスセンスvatiant(rs7097397)は、 rs7919656と中等度のLDを示し(r2=0.58 in the Asian samples) 、他の報告ではSLEのcausal variantの候補として報告されているものの、CADMとの関連は中等度だった(p=0.0022)
- CADM risk variantが、tr-WDFY4の発現量増加と関連したという結果は、WDFY4が、このlocusにおける強い候補遺伝子であることを示唆している
- WDFY4の他の機能は知られていないが、WDFY4 variantへのtrans-eQTL effectsを用いた今回のwPGSA解析から、NF-kBがWDFY4の下流に存在することが推測された
- 実際に、in vitro assayで示した通り、MDA5を含むPRRsによって誘導されるNF-kBシグナルをtr-WDFY4が増強した
- また、intact WDFY4は、MDA5により誘導されるNF-kBシグナルを増強し、アポトーシスを誘導するが、この効果はtr-WDFY4より弱かった
- この、intactとtr-WDFY4の機能の違いに関しては、さらに調べる必要があるが、predicted WDFY4 protein domains (BEACH and WD domains) の欠失が、tr-WDFY4の機能へ影響していると考えられる
- さらに、IRF3活性を抑制したことから、WDFY4はIFNシグナル経路にも関わっていると考えられる
- WDFY4は、SLEにおいて抑制されていることが報告されているため、WDFY4 isoformは、IFNとNF-kB経路のバランスを支配していると考えられるが、これに関してはさらに調べる必要がある
- rs7919656(eQTL variant)は、ヨーロッパの患者では関連がなかったことは、統計学的な検出力不足が原因かもしれない
- しかしながら、rs11101462は、ヨーロッパの症例で有意に関連したが、risk alleleの発現量が多い症例の末梢血検体では、WDFY4に対するeQTL effectを有していたことから、ヨーロッパの症例でもWDFY4はCADMにおいて関連していると考えられる
- これらの集団の間における遺伝子の多様性は、環境因子によって部分的には説明できるかもしれない
- MDA5シグナルの程度は、リガンド(ウイルスなど)の特徴によって異なるため、WDFY4 isoformのMDA5シグナルに与える影響はそのリガンドによって異なるかもしれない
- そのため、もしウイルスがこの疾患を惹起して、もしこの疾患を惹起するウイルスの種類は集団の間で異なるとすると、この2つの遺伝子variatntとそれに関連するWDFY4 isoformによる遺伝的要因は、それぞれのケースで異なるかもしれない
- アジア人では、急速進行性間質性肺炎が多いことが知られており、これはCADMのetiologyの多様性を示しているのかもしれない
- CADMにおいてはMDA5抗体陽性が特徴的であることから、MDA5に対する自己免疫の反応は、CADM発症の病態においておそらく中心的な部分であると推測される
- 今回のCADM症例において、13/18例(72.2%)がMDA5抗体陽性であり、これらの陽性血清ではtr-WDFY4 proteinが共免疫沈降した
- 興味深いことに、MDA5抗体"陰性"の患者血清でもtr-WDFY4 proteinが共免疫沈降したことから、WDFY4抗体が存在することが示唆される
- アポトーシスした細胞由来の抗原へ暴露し、それに引き続いて炎症状態が生じることが、自己免疫反応を惹起することの誘因であることが、動物モデルでは示されている
- そのため、tr-WDFY4が、炎症シグナルとアポトーシスの両者をMDA5によって誘導するという今回の結果は、tr-WDFY4が、MDA5に対する自己免疫反応の中心的な役割を担っていることが示唆される。そして、おそらくWDFY4に対する自己免疫反応に関しても、tr-WDFY4が関わっている。
- さらに、tr-WDFY4が、PRRsが誘導するNF-kBシグナルを増強したため、tr-WDFY4は、急速進行性間質性肺炎の病態にも関わっていることが推測される
- しかしながら、急速進行性間質性肺を発症したCADMは予後が悪く、今回の試験には参加できなかったため、WDFY4 variantの役割を過小評価(特に急速進行性間質性肺炎における役割)している可能性は否定できない
- WDFY4 variantが急速進行性間質性肺炎を予測するマーカーになるかどうかに関しては、新規発症CADM症例をprospectiveに評価する必要がある
- 一方で、環境要因への曝露を評価(特にウイルス感染)することで、遺伝子-環境の相互作用が調べルことができる
- CADMで併発する急速進行性間質性肺炎は、強力な治療に抵抗性を示すことも多く、tr-WDFY4がCADMの治療標的となる可能性がある
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