Gracia-Tello B, Ezeonyeji A, Isenberg D. Lupus Science & Medicine 2017;4:e000182.
背景
- SLEにおいて、長期のステロイド投与と免疫抑制剤は、有害事象と関連する
- SLICC/ACR Damage Index(DI) は、baseline にて平均 0.33 であるが、15年後には 1.9 まで増加するといわれている
- そして、ステロイドによるDIへの影響は、 baselineで 16%、15年後には 49% を占めるといわれている
- 既報によれば、PSL > 6 mg/dayとなると臓器障害に影響する
- DIが 1 増加すると、死亡リスクが 1.32 倍増加する
- SLEの病態には、B cellsが重要な役割を担っている
- 自己抗体、サイトカイン、ケモカインを産生し、おそらく抗原提示細胞としても作用している
- B-cell depletion(BCD)にはRTXが頻用される
- open-label試験やretrospective試験では、多くのSLE患者に対して有用性と安全性が示されている
- これらの試験は、既存の治療に抵抗性の様々な症状を呈する患者を対象としている
- Condonらの報告では、診断時にLNに対してMMF or RTXを投与して有効性を調べたところ、3年間まではPSLを使用せずに再燃のリスクや有効性が低下することはなかったとのことであった
- SLEに対してRTXが有効であるか否かを予測する因子については別途こちらの記事にあげております
- 今回は、主に腎病変を伴わない16例の新規SLE患者に対して、BCD therapy(BCDT)を行い、最大7年間フォローした結果を報告する
方法
- 2008/10 - 2014/10 の期間に、SLEと診断(ACR基準を4項目以上満たす)し、診断後3ヶ月以内にBCDTを開始された16症例を解析
- 臨床・検査データはprospectiveに集めた
- 以前に長期間のステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制剤を使用したことのある症例は除外
- 2症例(Pt. 6 & Pt. 12)は、RTX投与2ヶ月前に、mPSL 120mgを筋注していた
- 1症例は、前医にて未分類リウマチ膠原病疾患として2週間高用量ステロイドを使用していた。そして、BCDT治療を受けるための入院が遅れ、下気道感染症のためERを受診し、抗生剤とmPSL 750mg ×3日間を投与された
- 5症例は、RTX投与前に経口ステロイドを平均 5.8 週間(range 1 -16 週間)、最大積算量 730 mg(Pt. 2)を、BCDT前に前医で投与されていた
- 残りの8症例は、BCDT前に、ステロイドを全く投与されていない
- コントロールは、ステロイドを含むconventional treatmentを行われた症例を、historic cohortから年齢、人種、性別、臨床所見、罹患期間などで調整した患者のデータを使用
- 治療
- PSL(41/48人)
- HCQ(42/48人)
- AZA(21/48人:43.8%)
- MMF(9/48人:18.8%)
- MTX(6/48人)
- CYC(再燃のため。9/48人:18.8%)
- 4人がフォロー中にLostした
- BCDTプロトコル
- mPSL 100mg iv + RTX 1g × day1, day14 + CYC 750mg day2
- 3症例は、RTXのみ(CYCなし)
- 1症例は、好中球減少のためCYC 500mg
- 1症例は、2回目のRTX投与の際にCYC 750mgを追加で投与
- 維持治療:可能な限り少ないPSL(可能なら使用しない)、HCQ(n=14)、AZA(n=11)、MMF(n=3)
- 4症例は、B-cell repopulationを伴う再燃のためRTX再投与された
- 平均初回投与後 21.8ヶ月
- 治療後に、CD19陽性細胞 < 0.005×10^9 /L となれば、BCDTが達成できたとした
- 疾患活動性
- 血清マーカー
- BILAG(A=12点、B=5点、C=1点、D/E=0点)
結果
- 16症例は、first-lineとしてRTXが投与された
- 平均フォロー期間:4.5年(SD=2, range 1-7年)
- コーカサス人:56%
- アフリカ系カリブ人:25%
- 南アジア and/or 中国人:19%
- baseline characteristics(table1, 2)
- BCDT群(n=16)
- 年齢:中央値 34.38才
- 罹病期間:中央値 6週間
- Pt. 2 はdiscoid lupus、Raynaud's phenomenon, 関節痛にて5年間皮膚科にもともと通院していたが、SLEの診断にはいたっておらず、症状増悪にて紹介されて初めてSLEと診断された
- 診断時の症状
- 関節炎:16人
- 皮膚:11人
- 漿膜炎:3人
- 消化管病変、中枢神経病変:なし
- (生検で診断されている)腎病変:2人
- コントロール群
- いずれもBCDT群と同様
- 血清マーカー
- BCDT群
- 6ヶ月後(n=16)
- 15症例が、BCDを維持
- 平均:0.03±0.023×109/L
- 1症例は、B-cells repopulationを認めた(CD19+ count: 0.121×109/L)が疾患活動性は認めなかった
- 12ヶ月後(n=13)
- 2症例は、8ヶ月時点でRTX再投与がflareのため必要だったが、12ヶ月時点ではそれらの症例も含めて疾患活動性を認めなかった
- 2年後(n=9)
- 5症例は、B-cells repopulationを認めた
- そのうち1症例は、RTXを再度投与した
- フォロー期間中に、RTXを再度投与(B-cells repopulation+臨床的再燃)したのは計4人だった
- BILAGスコア
- 診断時
- BCDT群:平均26.28
- コントロール群:平均11.08
- 6ヶ月時点
- BCDT群:平均ΔBILAGスコア -10.8(range 0-34)
- BCDT群にて2症例BILAG増悪あり
- Pt.10:C→B(mucocutaneous), C→A(musculoskeltal)
- Pt.13:C→B(haematologic)
- BCDT群にて3症例BILAG B不変あり(Pt.1, 6, 9)
- フォロー期間中の再発
- BCDT群:0.58 flares/年
- コントロール群:0.85 flares/年
- 有意差なし
- フォロー終了時のSLICC/ACR DI scale
- BCDT群:1.06 (SD 1.4)
- コントロール群:1.35 (SD 1.5)
- 有意差なし(p=0.9)
- PSLについて
- 最初
- BCDT群:11.5 mg (range 0–40 mg)
- コントロール群:29.12 mg (SD 35.2 mg)
- 6ヶ月後の積算量
- BCDT群:842.64mg (SD 854.3 mg)
- コントロール群:4247.93 mg (SD 613.1 mg)
- p=0.02
まとめ
- 主に腎病変を伴わない発症早期SLEに対して、RTX(+CYC)を追加投与することで、conventional treatment(ステロイド、AZA, HCQ, MMF, MTX)よりも、再発を増やすことなく(むしろ減る傾向だった)長期間の(平均4.5年間)ステロイド積算量を減らすことができた
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