はじめに
- ACPAsは、RA発症初期の診断、予後評価、治療決定において重要である
- しかし、以下のことはわかっていない
- ACPAsが病態に関与しているのか
- どのように、なぜ、シトルリン化抗原の免疫寛容が破綻して自己免疫を惹起するのか
- シトルリン化蛋白に対する自己免疫 → ACPAs陽性RAへ移行させるきっかけはなんなのか
- ACPAを産生するB細胞が、疾患発症に関わっているのか、治療標的となりうるのか
Autoimmunity to citrullinated proteins
- ACPAsがRAにおける炎症病態(主にpro-inflammatory)に関与しているのは、これまでの複数の報告でわかってきた
- in vitroでは、ACPAsは、補体系 or Fc受容体との相互作用を介して、免疫複合体として炎症を惹起する
- ACPAsが、シトルリン化抗原に直接作用することも報告されている
- 人種によるが、peptidyl arginine deiminases(シトルリン化蛋白を産生する酵素) をコードしている遺伝子の多型は、RAの発症リスクである
- シトルリン化抗原は、罹患関節において多く産生されており、RAの滑膜にはACPA産生細胞が存在する
The development of ACPAs in RA
- ACPAsは、RAを発症する数年前より存在しうるため、その存在だけでは自己免疫疾患を発症させない
- ACPAの免疫反応とRA発症の時系列(Figure1)
- first hit(=自己免疫を防いでいる免疫寛容を破綻させる出来事)のあとに、何かしらの免疫反応を伴う出来事が生じて、RAを発症する=‘second hit’ or multiple subsequent ‘hits’
- 関節炎を発症する時点では、通常ACPAが増加することが多く、シトルリン化抗原も増加し、グロブリン isotypesも拡大することが、この考えを支持している
- 関節炎発症前のACPAが成熟していく過程は、ACPAのavidityがやや増加するのみである
- 一般的には、胚中心におけるB cellの成熟によって、クラススイッチやavidityの成熟度が増していくが、ACPAにおいてこの反応は不完全であり、実際に、関節炎発症前のACPAは多種類のシトルリン化抗原を認識してしまう。
- そして、関節炎が発症する直前に、シトルリン化抗原に対する反応がboostされる
HLAs in the evolution of the ACPA response (figure1)
- HLA‐shared epitope (HLA-SE) alleles は、ACPA陰性RAにおいては発症リスクとならない
- また、ACPAの産生にもHLA-SE allelesは関与しておらず、関節炎が発症する直前のACPA responseのboostにのみ関与していることも報告されている
- すなわち、ACPAの産生は、HLA-SE independentに生じていることが示唆される
- protectiveなHLA alleleである HLA-DR13 も、ACPA陽性RAにおいてのみprotectiveであり、ACPA陰性RA & 健常人ACPA陽性とは関連しない
- 一方で、環境因子である喫煙は、健常人ACPA陽性とは関連するので、喫煙はACPAに特異的ではなく複数の自己抗体産生に関与していると考えられる
- B細胞がACPAを産生するようにhelpするT細胞の起源はわかっていない
- 現時点では、微生物など由来の抗原と交差反応を起こすことが考えられている
Glycosylation of ACPAs
- ACPAの"量"ではなく"質"の変化が炎症の惹起により関与している可能性もある
- これは、再燃のときに、ACPA-IgG levelsが関連しないことが支持している
- すなわち、ACPA が転写後に修飾を受けていること(特にGlycosylation)が病態に関与しているかもしれない
- ACPA-IgGは、複数部位にGlycosylationを受け、それによってcheckpoint control mechanismsををescapeし、affinity maturationを起こすことが仮説として考えられている(figure2)
- ACPA-IgG Fc-glycosylationの変化によって、pre-arthritisからinflammatory arthritisへシフトする機序が、マウスの研究から示唆されている
- Th17がFc-glycosylation patternを変化させることで、pro-inflammatory 自己抗体から関節炎発症へとシフトすることが考えられている(figure3)
- しかし、これらの抗体へのGlycosylationが実際にどのように炎症を惹起しているのかはわかっていない
- 仮説としては、以下の3つが考えられている
- 抗原への結合
- 負に荷電している
- B cellの生存促進
- B cell 受容体(BCR)が、Glycosylationを受けることで、シグナル伝達の閾値が変化し、B cellの活性化や分化を促進し、positive selectionを誘導し、non-self antigenへの親和性を低下させることでnegative selectionを回避する
- レクチンとの相互作用
- sialic acid-binding immunoglobulin-type lectins (siglecs) などのレクチンが、ACPA-IgGの糖鎖と結合し、BCRなどを介したりして何かしらの作用を発揮する
Lessons from targeted interventions
- RTXやABTによってRAは改善する
- RTXによる初期のACPA-IgG levelsの低下は、一部のACPAはshort-lived plasmablasts と plasma cells によって産生されていることを示唆している
- これらのCD20陽性細胞は、RTXの治療における有望な治療標的である
- しかし、RTXを投与しても、ACPAは完全には消失しない
- これは、骨髄・脾臓・滑膜組織に存在する long-lived plasma cells が、シトルリン化蛋白に対する安定したmemory response の土台となっており、established disease を誘導ステイルことを示している
- これらのplasma cellsは、B cell depletion therapyには反応しないので、proteasome inhibitors や CD38標的治療が期待される
- そして、アタシセプトは、B細胞の成熟・分化を阻害するが、単剤でもRTXとの併用でもRAに対して有効性を示せなかった
- 興味深いことに、アタシセプトの投与によって、RFは低下したものの、ACPAは低下しなかった
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