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2018年2月13日火曜日

食物アレルギーにおける経口免疫療法(OIT)の機序


Immune mechanisms of oral immunotherapy 

Michael D. Kulis, PhD,a* Sarita U. Patil, MD,b* Erik Wambre, PhD,c* and Brian P. Vickery, MDa
Journal of Allergy and Clinical Immunology
Volume 141, Issue 2, February 2018, Pages 491-498 


はじめに

  • 経口免疫療法(OIT)の機序はまだわかっていない
    • 消化管粘膜の間葉系細胞・免疫細胞、二次リンパ組織、腸内細菌はルーチンでヒトから採取できないため、これらがどのように関与しているかわかっていない
    • 動物モデルからわかることも多くあるが、ヒトの食物アレルギーと異なるため、有用性は限られている
  • OITの目的は、食物アレルギーを脱感作させることである
    • 今回のレビューでは、その機序について、これまでのヒトでの研究にフォーカスを当てて述べていく



INITIATION PHASE
Mast cells and basophils


  • baselineでは、mast cellsbasophilsが、高親和性IgE受容体FcεRIを細胞表面に発現しており、抗原特異的IgEによって刺激されると、IgE介在性アレルギー反応を生じる(figure1)
    • これらの反応は、OITを開始して数ヶ月以内に負荷抗原量を増量させていくごとに低下していく
    • そして、重要なことであるが、この反応性の低下は、抗原特異的IgEの低下を伴っておらず、むしろbaselineよりも増加していることが多いということである
      • しかしながら、OIT開始前にomalizumabによってIgEが低下していると、初期の負荷抗原量を多くすることができるのも事実である
        • これは、おそらく、IgEが低下することでbasophilsのFcεRIがdownregulationするからだと思われる
  • 粘膜組織に局在してlong-livedであるmast cellsはOITの際に採取して解析するのが技術的に難しく、それと比較して、末梢血に循環して解析しやすいbasophilsが研究対象として解析されてきた
    • mast cellsとbasophilsは、そもそも機能が異なる
    • 興味深いことに、OITでは、basophils活性化によるIgEシグナル経路全体を阻害する
      • ピーナッツに対するOITによって、basophilsによるpolyclonalなIgE抗体-卵アレルギー反応が低下することが知られている
    • 急速脱感作のマウスモデルによる研究では、短期間での脱感作は、mast cellsの抗原特異的IgEに対する反復刺激によって、カルシウム流入阻害とアクチンのリモデリングによって誘導されると報告されている
      • 他の報告では、表面結合IgEのendocytotisが、mast cellsの脱感作に重要だった(figure1)
      • しかしながら、これら脱感作されたマウスは、腹膜に抗原を投与すると反応するため、血中での反応性が残存していると考えられる
      • これらの研究結果から、局所(消化管)でのmast cellsの作用が、OITによる変化に関与していると考えられる
T cells
  • T cellsは、eosinophil活性化やB cellsによるIgE産生を刺激する
    • この反応は、主に、thymic stromal lymphopoietin(TSLP), IL-25, IL-33などの可溶性メディエーターによって上皮でTh2反応が生じることによって誘導されると考えられている
    • 逆に、Tregs, CD4陽性T cellsは、抗炎症作用を有するIL-10を産生し、抗原への末梢での免疫寛容に関与している
      • BregもおそらくIL-10産生に関与している
    • 抗原特異的Th2がアレルギー反応において重要であるように、抗原特異的CD4陽性T cellsがOITの効果に重要であると考えられる
  • OITのinitiaton phaseにおいて、抗原特異的IgEの増加が、認められる
    • すなわち、初期の低用量抗原刺激は、Th2反応を促進するのみではなく、Tregを抑制するのだろう(figure2)
    • 動物モデルでの研究によれば、IL-4はTh2反応を促進し、Tregを阻害し、末梢性のFoxp3陽性Tregの産生を抑制する
  • その後、負荷抗原量を徐々に増加させると、Th2活性が低下しTh2のクローナルな増殖が低下し、IL-10産生CD4陽性T細胞が増加する
    • この結果、抗原特異的IgG4抗体の産生を誘導し、IgE介在性アレルギー反応を抑制し、Th2細胞のde novo発生が抑制される
      • しかしながら、この時点ではまだ抗原特異的CD4陽性T細胞が多く存在するため、負荷抗原量を減量 or 中止すると、OITの効果が落ち、徐々に抗原特異的Th2が回復してくる 




Antigen-specific B cells and their antibodies: 

Bridging the initiation and consolidation phases 

  • 高親和性の特異抗体は、獲得免疫のhallmarkであり、IgE介在性過敏反応の特徴でもある
    • 抗原である食物の負荷によって、抗原特異的IgEは増加する(全IgEの中における比率も増加する)
    • 抗原特異的IgE抗体の質(クローナリティ、epitope specificity, 転写後修飾)も、アレルギーにおいて重要である
  • 抗原特異的 B cells の研究によって、ピーナッツOITに対する液性免疫の反応において、これらのクローナルな増殖が重要であることがわかった
    •  ピーナッツOITのinitiation phaseにおいて、memory B cellsとplasma cellsが、Ara h 2特異的IgG4・IgG・IgA増加とともに増加することが報告されている(figure3)




CONSOLIDATION PHASE 

  • この時期では、抗原特異的Th2が減少し、制御系免疫細胞が増加している
    • IgGがIgE-抗原反応を抑制する機序は、2つ考えられている
      • IgEを抗原から隔離する
      • ヒトのbasophilsに存在するinhibitory receptorであるFcγRIIbが、IgG-Fc領域と反応し、basophilsが抑制される

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