Watanabe et al. BMC Immunology (2017) 18:53
背景
- ANCA関連血管炎(AAV)は壊死性血管炎である
- リウマチ因子(RF)は、IgGのFc領域に対する自己抗体である
- AAVでは 37 - 50%において陽性になる
- しかしながら、AAVにおいてRF陽性であることの意義はまだ知られていない
- 今回はAAVとRFの関連について調べた
方法
- Saitama Medical Center, Jichi Medical University で 2006/1 - 2015/12 の期間にAAVと診断された 81症例をretrospectiveに解析
- これらのうち、47症例はRAを合併しておらず、AAVに対して治療を開始する前にRFを測定されていた
- 診断
- the European Medicines Agency (EMEA) vasculitis classification algorithm に沿ってEGPA, GPA, MPA, 未分類血管炎(UV)に分類
- UVの場合は、MPO- or PR3-ANCA陽性の場合に解析対象とした
- カルテから情報を得た
- 再燃の定義
- 血管炎に関連した症状の新規発症もしくは再燃
結果
- 診断時のcharacteristics(table1)
- 平均 67才
- 女性 64%
- 平均罹病期間 106日間
- type
- EGPA 21%
- GPA 30%
- MPA 34%
- UV 15%
- ANCA
- MPO-ANCA 83%
- PR3-ANCA 6%
- 中央値 BVAS 14
- RF陽性と陰性に分けた
- 以下は有意差なし
- 年齢
- 性別
- AAV-type
- ANCA positivity
- RF陰性において、2/18症例でANCA double positiveがいた
- RF陽性では、ANCA double positiveなし
- RF陽性において、6/29症例でANCA double negativeがいた
- RF陰性では、ANCA double negativeは1/18症例のみ
- 上記はいずれもEGPA
- RF陽性において、2/29例で強皮症を併発
- 1人はセントロメア抗体陽性、もう一方はトポイソメラーぜ抗体陽性
- RF陰性において、1/18例で強皮症を併発
- 強皮症特異抗体は陰性
- CCP抗体は14症例において測定された(10:RF-positive, 4:RF-negative)
- いずれも陰性だった
- BVAS
- RF-positive > RF-negative
- p=0.026
- 関節炎/関節痛、肺線維症
- 有意差なし
- 神経病変
- RF-positive > RF-negative
- p=0.001
- sCr, eGFR
- RF-negative < RF-positive (RF陰性のほうが腎機能が悪い)
- p<0.05
- 腎病変の存在は有意差なし(しかし、傾向としてはRF陰性のほうが多い)
- CRP, ESR
- RF-positive > RF-negative
- p<0.05
- sALB
- RF-negative < RF-positive (RF陰性のほうがALB低い)
- p<0.05
- IgG, IgM
- RF-positive > RF-negative
- IgG: p<0.05, IgM: p=0.054
- C3, C4
- 有意差なし(傾向としてはRF陽性のほうが高い)
- BVASとIgM-RFの相関
- 有意に相関
- r=0.5, p=0.0004
- AAV-type別に解析しても、それぞれ有意に相関していた
- EGPA
- r = 0.72, p = 0.019
- GPA
- r = 0.64, p = 0.014
- MPA
- r = 0.66, p = 0.0059
- IgM-RFとバイオマーカーとの相関
- CRPが最も相関していた
- r=0.41, p=0.004
- ESR, IgM, IgGも有意に相関していた
- MPO-ANCA, PR3-ANCAは相関せず
- 予後とRFの関連
- RF陽性
- 寛解導入におけるPSL用量が多いが、有意差なし
- IVCY併用率が高いが、有意差なし
- 透析、人工呼吸器の使用が多いが、有意差なし
- 3症例死亡した
- 中央値 728日(346-1057日)
- いずれもMPA
- 死因:肺アスペルギルス感染症、腹腔内出血、MPAの活動性
- RF陰性
- 再発が多いが、有意差なし
- RF陽性の7症例において寛解治療後にRFを再検した
- 6/7症例は、IgM-RF titerは低下し、そのうち4症例は正常範囲へ改善した
まとめ
- AAVの疾患活動性とRF titer が有意に相関した
- 透析、人工呼吸器の使用、死亡数などから、RF陽性のほうが予後不良症例が多かった
- しかしながら、再発はRF陰性のほうが多い傾向だった
- これは寛解導入の治療内容に影響されている可能性がある(RF陽性のほうがCYC使用率が高い)
- これまで、RAとAAVの関連を調べられてきた研究は複数あった
- AAVにおけるRF陽性率:37-50%
- AAVにおけるCCP陽性:稀
- Tervaertらは、AAV 133症例において、34症例(26%)でRF陽性となり、そのうち28症例(82%)は移動性関節痛/関節炎を呈したと報告している
- しかしながら、この中でCCP抗体陽性だったのはたったの3症例だった
- そして、この3症例を長期間フォローしても、erosionを認めた症例はいなかった
- Pagnouxらは、5症例のCCP抗体陽性であるP-ANCA陽性AAVにおいて、多関節に滑膜炎を呈したことを報告している
- 関節炎を認めてからAAV発症まで、中央値5ヶ月前
- 4/5症例はACR1987 RA分類基準を満たした
- しかしながら、レントゲンで骨破壊をきたした症例はいなかった
- これらをまとめると、AAV発症早期にRF/CCP抗体陽性の場合に、RAとAAVを鑑別するのは困難であることがわかる
- RFは感染症などでも陽性になりうるが、これらは基本的には一過性で病的ではない
- 感染症で陽性になるRFは低親和性で、複数の微生物に対して反応し、RA発症には至らない
- 低親和性のRFは、微生物とIgGで構成される免疫複合体によって一緒に除去される
- 高齢者で陽性になるRFは、免疫機能の低下が原因と考えられている
- AAVにおいては、今回の研究で7症例でRFを再検したが、6症例は低下していた
- 免疫抑制薬による治療が影響している可能性があるが、AAVにおけるRFも一過性と考えられ、低親和性なのだろう
- 健常人、感染症などで産生される低親和性RFは、CD5陽性B cells(=B1a-B cells )によって産生される
- このRFは、IgG Fc portionのみではなく、bacterial lipopolysaccharidesやEpstein-Barrウイルスなど、多くの抗原に結合することができる
- しかしながら、RAで見られる高親和性RFは、B2-B cellsによって産生される
- この産生には、抗原提示細胞とT細胞によるco-stimulationが必要である
- AAVにおけるRF陽性が、病態にどの様に関与しているかは不明な点が多いが、B1a-B cellsが、AAVに関連する感染症やANCAなどの要因によって活性化されているのかもしれない
- monocyteの活性化は、好中球と同様に、AAVの病態に関与していると考えられている
- ANCAと抗原を含む免疫複合体が、monocyteや好中球のFcγ受容体に結合し、炎症を惹起する
- 既報では、monocyteの活性化とGPA活動性は相関していた
- IL-6などの炎症性サイトカインが GPA患者の活性化monocyteから産生される
- GPAにおいて、IL-6とBVASが相関しているという報告もある
- 今回の研究では、IgM-RFがBVASとCRPに相関していた
- GM-CSFにより誘導されるCD14陽性monocyteは、B細胞によるIgM-RF産生を促進することが知られている
- すなわち、IgM-RF、ANCAを含む免疫複合体が、monocyte/macrophage lineage cellsからのIL-6などの炎症性サイトカインの産生を刺激し、疾患活動性を増強させることが考えられる
- limitation
- サンプルサイスが少ない
- EGPAは10例のみ
0 件のコメント:
コメントを投稿