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2018年1月28日日曜日

RF(リウマチ因子)とAAV(ANCA関連血管炎)の関連:RFとAAV活動性が相関する


Watanabe et al. BMC Immunology (2017) 18:53 

背景

  • ANCA関連血管炎(AAV)は壊死性血管炎である
  • リウマチ因子(RF)は、IgGのFc領域に対する自己抗体である
    • AAVでは 37 - 50%において陽性になる
    • しかしながら、AAVにおいてRF陽性であることの意義はまだ知られていない
    • 今回はAAVとRFの関連について調べた

方法
  • Saitama Medical Center, Jichi Medical University で 2006/1 - 2015/12 の期間にAAVと診断された 81症例をretrospectiveに解析
    • これらのうち、47症例はRAを合併しておらず、AAVに対して治療を開始する前にRFを測定されていた
  • 診断
    • the European Medicines Agency (EMEA) vasculitis classification algorithm に沿ってEGPA, GPA, MPA, 未分類血管炎(UV)に分類
    • UVの場合は、MPO- or PR3-ANCA陽性の場合に解析対象とした
  • カルテから情報を得た
  • 再燃の定義
    • 血管炎に関連した症状の新規発症もしくは再燃

結果
  • 診断時のcharacteristics(table1)
    • 平均 67才
    • 女性 64%
    • 平均罹病期間 106日間
    • type
      • EGPA 21%
      • GPA 30%
      • MPA 34%
      • UV 15%
    • ANCA
      • MPO-ANCA 83%
      • PR3-ANCA 6%
    • 中央値 BVAS 14
  • RF陽性と陰性に分けた
    • 以下は有意差なし
      • 年齢
      • 性別
      • AAV-type
      • ANCA positivity
    • RF陰性において、2/18症例ANCA double positiveがいた
      • RF陽性では、ANCA double positiveなし
    • RF陽性において、6/29症例ANCA double negativeがいた
      • RF陰性では、ANCA double negativeは1/18症例のみ
      • 上記はいずれもEGPA
    • RF陽性において、2/29例で強皮症を併発
      • 1人はセントロメア抗体陽性、もう一方はトポイソメラーぜ抗体陽性
    • RF陰性において、1/18例で強皮症を併発
      • 強皮症特異抗体は陰性
    • CCP抗体は14症例において測定された(10:RF-positive, 4:RF-negative)
      • いずれも陰性だった





    • BVAS
      • RF-positive > RF-negative
        • p=0.026
    • 関節炎/関節痛、肺線維症
      • 有意差なし
    • 神経病変
      • RF-positive > RF-negative
        • p=0.001
    • sCr, eGFR
      • RF-negative < RF-positive (RF陰性のほうが腎機能が悪い)
        • p<0.05
      • 腎病変の存在は有意差なし(しかし、傾向としてはRF陰性のほうが多い)
    • CRP, ESR
      • RF-positive > RF-negative 
        • p<0.05
    • sALB
      • RF-negative < RF-positive (RF陰性のほうがALB低い)
        • p<0.05
    • IgG, IgM
      • RF-positive > RF-negative 
        • IgG: p<0.05, IgM: p=0.054
    • C3, C4
      • 有意差なし(傾向としてはRF陽性のほうが高い)



    • BVASIgM-RFの相関
      • 有意に相関
        • r=0.5, p=0.0004
      • AAV-type別に解析しても、それぞれ有意に相関していた
        • EGPA 
          • r = 0.72, p = 0.019
        • GPA
          • r = 0.64, p = 0.014
        • MPA 
          • r = 0.66, p = 0.0059
    • IgM-RFとバイオマーカーとの相関
      • CRPが最も相関していた
        • r=0.41, p=0.004
      • ESR, IgM, IgGも有意に相関していた
      • MPO-ANCA, PR3-ANCAは相関せず





    • 予後とRFの関連
      • RF陽性
        • 寛解導入におけるPSL用量が多いが、有意差なし
        • IVCY併用率が高いが、有意差なし
        • 透析、人工呼吸器の使用が多いが、有意差なし
        • 3症例死亡した
          • 中央値 728日(346-1057日)
          • いずれもMPA
          • 死因:肺アスペルギルス感染症、腹腔内出血、MPAの活動性
      • RF陰性
        • 再発が多いが、有意差なし
    • RF陽性の7症例において寛解治療後にRFを再検した
      • 6/7症例は、IgM-RF titerは低下し、そのうち4症例は正常範囲へ改善した



    まとめ
    • AAVの疾患活動性とRF titer が有意に相関した
    • 透析、人工呼吸器の使用、死亡数などから、RF陽性のほうが予後不良症例が多かった
    • しかしながら、再発はRF陰性のほうが多い傾向だった
      • これは寛解導入の治療内容に影響されている可能性がある(RF陽性のほうがCYC使用率が高い)
    • これまで、RAとAAVの関連を調べられてきた研究は複数あった
      • AAVにおけるRF陽性率:37-50%
      • AAVにおけるCCP陽性:稀
      • Tervaertらは、AAV 133症例において、34症例(26%)でRF陽性となり、そのうち28症例(82%)は移動性関節痛/関節炎を呈したと報告している
        • しかしながら、この中でCCP抗体陽性だったのはたったの3症例だった
        • そして、この3症例を長期間フォローしても、erosionを認めた症例はいなかった
      • Pagnouxらは、5症例のCCP抗体陽性であるP-ANCA陽性AAVにおいて、多関節に滑膜炎を呈したことを報告している
        • 関節炎を認めてからAAV発症まで、中央値5ヶ月前
        • 4/5症例はACR1987 RA分類基準を満たした
        • しかしながら、レントゲンで骨破壊をきたした症例はいなかった
      • これらをまとめると、AAV発症早期にRF/CCP抗体陽性の場合に、RAとAAVを鑑別するのは困難であることがわかる
    • RFは感染症などでも陽性になりうるが、これらは基本的には一過性で病的ではない
      • 感染症で陽性になるRFは低親和性で、複数の微生物に対して反応し、RA発症には至らない
      • 低親和性のRFは、微生物とIgGで構成される免疫複合体によって一緒に除去される
      • 高齢者で陽性になるRFは、免疫機能の低下が原因と考えられている
      • AAVにおいては、今回の研究で7症例でRFを再検したが、6症例は低下していた
        • 免疫抑制薬による治療が影響している可能性があるが、AAVにおけるRFも一過性と考えられ、低親和性なのだろう
    • 健常人、感染症などで産生される低親和性RFは、CD5陽性B cells(=B1a-B cells )によって産生される
      • このRFは、IgG Fc portionのみではなく、bacterial lipopolysaccharidesやEpstein-Barrウイルスなど、多くの抗原に結合することができる
    • しかしながら、RAで見られる高親和性RFは、B2-B cellsによって産生される
      • この産生には、抗原提示細胞とT細胞によるco-stimulationが必要である
    • AAVにおけるRF陽性が、病態にどの様に関与しているかは不明な点が多いが、B1a-B cellsが、AAVに関連する感染症やANCAなどの要因によって活性化されているのかもしれない
    • monocyteの活性化は、好中球と同様に、AAVの病態に関与していると考えられている
      • ANCAと抗原を含む免疫複合体が、monocyteや好中球のFcγ受容体に結合し、炎症を惹起する
        • 既報では、monocyteの活性化とGPA活動性は相関していた
      • IL-6などの炎症性サイトカインが GPA患者の活性化monocyteから産生される
        • GPAにおいて、IL-6とBVASが相関しているという報告もある
      • 今回の研究では、IgM-RFがBVASとCRPに相関していた
        • GM-CSFにより誘導されるCD14陽性monocyteは、B細胞によるIgM-RF産生を促進することが知られている
      • すなわち、IgM-RF、ANCAを含む免疫複合体が、monocyte/macrophage lineage cellsからのIL-6などの炎症性サイトカインの産生を刺激し、疾患活動性を増強させることが考えられる
    • limitation
      • サンプルサイスが少ない
        • EGPAは10例のみ

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