ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 109–114
Vol. 70, No. 1, January 2018, pp 109–114
成人IgA血管炎の臨床像に関する、フランスの多施設後ろ向き解析の結果はこちらに上げております
→成人IgA血管炎の臨床像、治療について
背景
- IgA血管炎は、IgA1優位に沈着する全身の小血管炎であり、紫斑、消化管、関節炎、糸球体腎炎を呈する
- 小児においては最も多い血管炎であり、成人では稀である
- 小児発症の場合は予後良好であり、supportive careのみでよいことが多い
- 成人発症では予後が悪く、特に腎病変を併発した場合は予後不良であり、末期CKD or ESRDに至る割合が10-30%である。
Pillebout Eらの報告(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8. )より引用
- 成人発症の場合の治療は確立していない
- 特に重症の場合は、ステロイドと免疫抑制剤が使用されるが、ランダム化試験ではステロイドにCYCを追加することのメリットを示せず、議論の余地がある。
- MMF, AZA, CyAなどの他の免疫抑制剤もエビデンスは限られている
- RTXも同様にケースシリーズのみの限られたエビデンスのみであり、今回は、多施設観察研究にて、既存のステロイド・免疫抑制剤に対する禁忌を有する or 再発・治療抵抗性の成人発症IgA血管炎に対するRTXの有効性を調べてみた
方法
- ヨーロッパの9施設で実施
- 解析対象
- ACR1990分類と2012CHCCに基づいてIgA血管炎と診断されている
- 全例、生検にてIgA血管炎が証明されている
- 18歳以上で発症
- 以下のうち、1つ以上の臓器に重症病変を有する
- 腎生検にてIgA血管炎関連腎炎class3-4(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8.)
- class1 = メサンギウム性糸球体腎炎(糸球体は正常 or わずかな病変)
- class 2 = 巣状 or 分節性糸球体腎炎(分節性の管内 and/or 管外増殖性病変は全糸球体の50%未満)
- class 3 = びまん性管内増殖性糸球体腎炎
- 3a:中等症
- 3b:重症
- class 4 = 管内 & 管外増殖性糸球体腎炎(半月体を形成した糸球体病変が、全糸球体の50%以上を占める)
- class 5 = びまん性糸球体硬化病変が全糸球体の90%以上を占める
- 消化管出血・虚血・穿孔±鎮痛薬にて24時間以上改善しない腹痛
- 肺胞出血
- 上強膜炎
- 心臓病変
- 中枢神経病変
- 他の自己免疫疾患や悪性腫瘍ではない
- 再発性・治療抵抗性として投与されている or ステロイドもしくは免疫抑制剤が禁忌のため使用できないためRTXが投与された症例
- RTX用量
- 375mg/m2 weekly ×4回 or 1000mg/m2 bi-weekly ×2回
- 他の免疫抑制剤と併用も可
- ステロイド、免疫抑制剤の漸減はそれぞれの施設次第
- remissionの定義
- BVAS=0
- 腎機能が安定しており、血尿・蛋白尿が持続するのみであれば、BVAS ≦ 5
- relapseの定義
- ステロイドもしくは他の免疫抑制剤が必要になる血管炎の活動性増加
- PSL ≧ 15mg/dayの場合は50%以上の増量
- PSL < 12.5mg/dayの場合は100%以上の増量
- refractoryの定義
- ステロイド単剤もしくは他の免疫抑制剤と併用にて、治療反応性がみられない
※腎組織や他の所見による分類ごとの腎予後
Pillebout Eらの報告(J Am Soc Nephrol 2002;13:1271–8. )より引用
結果
- 22人の症例を解析
- 男性:12人
- 平均診断時年齢:37.5歳
- 腎病変あり:90.9%
- 平均eGFR:76 ml/m/1.73m2
- 平均蛋白尿:1.9 g/day
- RTX前にステロイドなどの治療歴あり(RTX投与理由がrelapse or refractory):73%
- 他の27%は、RTXをfirst-lineとして投与(ステロイド通常量 or 他の免疫抑制剤が禁忌)
RTXの有効性
- remissionの割合
- 1ヶ月後:45.5%
- 6ヶ月後:72.7%
- 12ヶ月後:72.7%
- RTX後に再発した割合:35%(7/20人)
- 平均12ヶ月で再発
- フォロー期間:平均24ヶ月
- 最終フォロー時点で18/22人がremission
- 項目別
- BVAS, CRP, PSL dose, 24時間タンパク尿は有意に改善
- eGFRは有意差なし(p=0.59)
- baseline:82 ml/m/1.73m2 → last:77 ml/m/1.73m2
- RTX単剤 vs. RTX+ステロイド/免疫抑制剤
- 有意差なし
RTX alone
(n=6)
|
RTX+GCs or other IS
(n=16)
|
P value§
|
|
Baseline (time of RTX
treatment)
|
|||
Age (at diagnosis), median (IQR)
|
45.5 (37.5-53.5)
|
29.5 (21-49.3)
|
0.23
|
Active organ involvement, n (%)
|
|||
Skin
|
5 (83.3)
|
13 (81.3)
|
1.00
|
Gastro-intestinal
|
5 (83.3)
|
10 (62.5)
|
0.61
|
Kidney
|
6 (100)
|
12 (75.0)
|
0.54
|
Joint
|
4 (66.7)
|
12 (75.0)
|
1.00
|
BVAS, median (IQR)
|
21.5 (14.3-25.8)
|
14 (11.5-19.0)
|
0.25
|
eGFR
(CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
|
73.5 (65.0-117.3)
|
82.0 (74.0-101.0)
|
1.00
|
Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
|
2200 (1725-3200)
|
1000 (375-2210)
|
0.16
|
Kidney biopsy¶, n (%)
|
|||
Class I-II
|
2 (33.3)
|
4/9 (44.4)
|
1.00
|
Class III-IV
|
4 (66.7)
|
5/9 (55.6)
|
1.00
|
Month 6 after RTX
|
|||
Active organ involvement, n (%)
|
|||
Skin
|
0
|
1 (6.3)
|
1.00
|
Gastro-intestinal
|
0
|
2 (12.6)
|
1.00
|
Kidney
|
2 (33.3)
|
1 (6.3)
|
0.17
|
Joint
|
0
|
2 (12.6)
|
1.00
|
eGFR (CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
|
72.0 (72.0-80.0)
|
82.0 (66.0-92.0)
|
0.92
|
Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
|
200 (150-4000)
|
679.5 (187.5-2475)
|
0.63
|
BVAS, median (IQR)
|
5 (3-5)
|
5 (4-9)
|
0.24
|
Patients in remission, n (%)
|
4 (66,7)
|
12 (75)
|
1.00
|
Month 12 after RTX
|
|||
Active organ involvement, n (%)
|
|||
Skin
|
0
|
3 (18.9)
|
0.53
|
Gastro-intestinal
|
0
|
1 (6.3)
|
1.00
|
Kidney
|
0
|
3 (18.9)
|
0.53
|
Joint
|
0
|
1 (6.3)
|
1.00
|
eGFR (CKD-EPI), median (IQR)- ml/min/1.73m2
|
82 (60-112)
|
76.5 (63.3-91.8)
|
0.56
|
Proteinuria, median (IQR)- mg/24h
|
140 (100-493)
|
675 (175-1075)
|
0.32
|
BVAS, median (IQR)
|
3 (0-3)
|
5 (2-5)
|
0.22
|
Patients in remission, n (%)
|
6 (100)
|
10 (62.5)
|
0.13
|
まとめ
- RTXは有効だったが、再発も35%と多め
- なぜRTXが有効かはわかっていない
- IgA血管炎の腎病変に関しては、ガラクトース欠損IgA1を含む免疫複合体が沈着することが病態と考えられている
- 今回は17/22人で血清total IgAを測定したが、低下はわずかであり、RTXの有効性を反映していないと考えられる
- 皮膚・腎臓による組織での検討では、B細胞(CD20+)の浸潤はわずかであり、T細胞(CD3+)とマクロファージ(CD163+)の浸潤の方が有意だった
- RTXがIgA産生形質細胞を増殖を抑制した可能性は否定できないが、これらの結果を考慮すると、RTXが有効なメカニズムとしては、B細胞の抗原提示能・T細胞共刺激能を阻害したことが考えられる
- このメカニズムは、すでにAAVや他の自己免疫疾患でも推測されている
- ランダム化されて行なった既報では、ACEi or ARBsを使用しても蛋白尿 > 1g/dayのIgA腎症を対象にしてRTXの有効性を調べたが、12ヶ月時点で蛋白尿を減らすことはできなかった(J Am Soc Nephrol 2017;28:1306–13.)
- 今回の結果では血清total IgA低下がわずかだったが、この既報でも、血清ガラクトース欠損IgA1値 or 血清ガラクトース欠損IgA1に対する抗体価変化していなかった
- 今回の結果と対象的であった原因については、腎病変が慢性病変ですでに進行していたためにRTX有効性が低下したこと、IgA腎症とIgA血管炎は炎症があるかどうかで異なること(遺伝子的にも異なることがわかっている:HLA class2 variantsは両者とも関連しているが、自然免疫に関わるCARD9, ITGAMなどの遺伝子多型はIgA腎症のみに認められている)、が考えられる
- limitation
- サンプルサイズが少ない
- ステロイドや他の免疫抑制剤、ACEiなどの他の治療薬による修飾があるかも
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