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2018年1月1日月曜日

ASに対するTNFiによる構造的進行の抑制効果:スイスの10年間のコホートより

Molnar C, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:63–69.
  

背景
  • AS(強直性脊椎炎)において、疾患活動性と将来の構造的進行の関連は示されてきたが、TNFiによる炎症抑制が構造的進行を抑制するかは示されていない
  • 3つのopen-labelのRCT試験では、ASに対してTNFiを2年間使用したが、これまでのhistorical cohortでのnon-biological treatmentと比較して構造的進行を有意に抑制することは示せなかった
    • しかしながら、観察研究では、TNFi治療によって体軸性病変の進行リスクが低下したというデータもある
  • 今回の試験では、10年間において画像フォローを行い、TNFiと構造的進行の関連を調べた

方法
  • 臨床的にaxSpAと診断した、スイスのコホートであるSwiss Clinical Quality Management (SCQM) cohort を使用
    • 2年ごとに頸椎を含む脊椎の画像をフォロー
  • 今回は、上記コホートのうち、mNY criteriaを満たした症例を対象とした
  • modified Stoke Ankylosing Spondylitis Spine Score(mSASSS) にて構造的進行を評価
    • 2年間において、少なくとも2 unit以上の増加を構造的進行と定義
    • 読影は、それぞれ他のデータは盲検化された2人による

※mSASSSAnn Rheum Dis 2005;64:127–9. 
頚椎(第二頚椎下位から第一胸椎上位まで)と腰椎(第十二胸椎下位から第一仙骨上位まで)の椎骨間関節について、下の図のように0-3の4段階でスコア化(合計0-72)。スコアが高いほど骨の変化が進行している状態を示す。

結果
  • 上記コホートにおいて、432人のAS患者が少なくとも1回は2年間のintervalをおいてレントゲンを評価され、解析対象となった
  • baseline(最初のX線撮影時) characteristics(table1)
    • HLA-B27陽性:80.6%
    • 平均年齢:40.3歳
    • 有症状期間:13.8年
    • 疾患活動性
      • BASDAI:4.2
      • ASDAS:2.8
      • CRP:0.8mg/dL
    • baselineの構造変化
      • mSASSS:1.0
      • syndesmophytesあり:34.3%
    • BMI > 25:45.1%
    • NSAIDs使用中:83.9%
    • TNFiに関して
      • 現在も使用中:37.7%
      • 以前に使用歴あり:43.1%
      • 平均投与年数:2.1年
    • 喫煙者:38.4%


  • 平均ΔmSASSS(2年間):0.9
  • 構造的進行あり(2年間でΔmSASSS ≧ 2 units)に関する多変量解析(figure1A)
    • TNFi使用歴あり(過去〜現在)OR 0.50(95% CI 0.28 to 0.88)
    • baseline mSASSSOR 1.06(95%CI 1.04 to 1.09)
    • 男性OR 2.16(95%CI 1.09 to 4.30)

  • 2年間で新規のsyndesmophyte ≧ 1ヶ所 に関する多変量解析(figure1B)
    • TNFi使用歴あり(過去〜現在)OR 0.55(95% CI 0.33 to 0.94)
  • 以下は、構造的進行の有意なリスクにはならず
    • NSAIDs
    • 喫煙歴
    • HLA-B27
    • 末梢関節炎の有無
    • BMI
    • 運動療法の有無


  • TNFiによる構造的進行のリスク低下は、治療開始前のASDASで調整しても、有意であった(table2)



  • TNFiの使用方法をいろいろ変えて解析(table3)
    • より長期間使用している方がリスク低下が大きかった
      • 4年以下 vs. 4年以上(model3)
    • 画像評価のintervalの間にTNFiを開始しても、構造的進行の抑制は有意ではなかった(model4)



  • TNFiの使用によって有意にASDASでの疾患活動性は低下した
    • −0.96 units, 95% CI −1.15 to −0.77
  • GEE modelによって、構造的進行のリスクに関して、経過による疾患活動性の変化で調整して解析(table4)
    • ASDASがより高いと、構造的進行のリスクも増加
      • OR 1.39, 95%CI 1.06 to 1.81
    • TNFi使用歴は、構造的進行のリスク低下を有意に下げなかった
      • OR 0.61, 95%CI 0.34 to 1.08, p=0.09


  • TNFi使用歴ありの群を、ASDASによってグループ分けし、mSASSSを評価(figure2)
  • TNFi治療によるresponder(画像的評価の時点でASDAS ≦ 2.1)、non-responder(画像的評価の時点でASDAS > 2.1)と定義してmSASSSを解析
    • responderのほうが有意に構造的進行が抑制された
      • 平均ΔmSASSS:"responder" 0.31 vs. "non-responder" 1.45 units 
    • inactive disease status(ASDAS ≦ 1.3)を治療開始してから2年後の画像的評価の時点で達成した場合、構造的進行はほぼ完全に抑制された
      • 平均ΔmSASSS:"inactive disease status" 0.01 vs. "2.1 > ASDAS > 1.3" 0.52 units



  • figure2と同じ様に、ASDASの代わりにCRPを使用してmSASSSの経過を層別化したが、ASDASのほうがよりはっきりと分かれた



まとめ
  • 今回の長期間の解析によって、TNFiが、ASにおける構造的進行を抑制(mSASSS、新規のsyndesmophyte formation)することが示された
    • しかしながら、TNFiによる直接的な構造的進行の抑制は有意ではなく、あくまでも今回の解析ではTNFiによって疾患活動性を低下させることでもたらされていた
    • そして、TNFi使用期間も重要であることがわかった
      • table3のmodel4では、画像評価のintervalの間に始めても有意とはならなかった(今回のintervalの平均=2.1年)
      • すなわち、構造的進行を抑制するには、少なくとも2年間以上は炎症を抑制する必要があるだろう
    • ASDAS ≦ 1.3とinactive disease statusを達成した場合には、ほぼ完全に構造的進行は抑制された
      • 2016 ASAS-EULAR recommendationsではT2Tが推奨されたが、その具体的な目標値は示されていなかった。T2Tを行う場合には、ASDAS 1.3 がよいかもしれない

  • NSAIDs単独の構造的進行抑制は、議論の余地がある
    • 既報のRCTでは、特にCRP陽性群で、セレコキシブ屯用 vs. セレコキシブ定時使用において、有意に定時使用群が構造的進行を抑制した
    • しかしながら、同様のデザインにおける最近の報告では、ジクロフェナクでは有意差を示さなかった。いくつかの観察研究では、むしろ反対の結果が出ていることもある。
    • 今回の試験でも、NSAIDsは構造的進行を抑制しなかった(しかしながらどの程度NSAIDsを使用していたのかまでは情報を得ていない)
  • 他には、男性、baselineのmSASSSが、構造的進行のリスク因子だった
  • 人種間、TNFi製剤間の違いは考慮されていない

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