Molnar C, et al. Ann Rheum Dis 2018;77:63–69.
背景
- AS(強直性脊椎炎)において、疾患活動性と将来の構造的進行の関連は示されてきたが、TNFiによる炎症抑制が構造的進行を抑制するかは示されていない
- 3つのopen-labelのRCT試験では、ASに対してTNFiを2年間使用したが、これまでのhistorical cohortでのnon-biological treatmentと比較して構造的進行を有意に抑制することは示せなかった
- しかしながら、観察研究では、TNFi治療によって体軸性病変の進行リスクが低下したというデータもある
- 今回の試験では、10年間において画像フォローを行い、TNFiと構造的進行の関連を調べた
方法
- 臨床的にaxSpAと診断した、スイスのコホートであるSwiss Clinical Quality Management (SCQM) cohort を使用
- 2年ごとに頸椎を含む脊椎の画像をフォロー
- 今回は、上記コホートのうち、mNY criteriaを満たした症例を対象とした
- modified Stoke Ankylosing Spondylitis Spine Score(mSASSS) にて構造的進行を評価
- 2年間において、少なくとも2 unit以上の増加を構造的進行と定義
- 読影は、それぞれ他のデータは盲検化された2人による
※mSASSS(Ann Rheum Dis
2005;64:127–9. )
頚椎(第二頚椎下位から第一胸椎上位まで)と腰椎(第十二胸椎下位から第一仙骨上位まで)の椎骨間関節について、下の図のように0-3の4段階でスコア化(合計0-72)。スコアが高いほど骨の変化が進行している状態を示す。
結果
- 上記コホートにおいて、432人のAS患者が少なくとも1回は2年間のintervalをおいてレントゲンを評価され、解析対象となった
- baseline(最初のX線撮影時) characteristics(table1)
- HLA-B27陽性:80.6%
- 平均年齢:40.3歳
- 有症状期間:13.8年
- 疾患活動性
- BASDAI:4.2
- ASDAS:2.8
- CRP:0.8mg/dL
- baselineの構造変化
- mSASSS:1.0
- syndesmophytesあり:34.3%
- BMI > 25:45.1%
- NSAIDs使用中:83.9%
- TNFiに関して
- 現在も使用中:37.7%
- 以前に使用歴あり:43.1%
- 平均投与年数:2.1年
- 喫煙者:38.4%
- 平均ΔmSASSS(2年間):0.9
- 構造的進行あり(2年間でΔmSASSS ≧ 2 units)に関する多変量解析(figure1A)
- TNFi使用歴あり(過去〜現在):OR 0.50(95% CI 0.28 to 0.88)
- baseline mSASSS:OR 1.06(95%CI 1.04 to 1.09)
- 男性:OR 2.16(95%CI 1.09 to 4.30)
- 2年間で新規のsyndesmophyte ≧ 1ヶ所 に関する多変量解析(figure1B)
- TNFi使用歴あり(過去〜現在):OR 0.55(95% CI 0.33 to 0.94)
- 以下は、構造的進行の有意なリスクにはならず
- NSAIDs
- 喫煙歴
- HLA-B27
- 末梢関節炎の有無
- BMI
- 運動療法の有無
- TNFiによる構造的進行のリスク低下は、治療開始前のASDASで調整しても、有意であった(table2)
- TNFiの使用方法をいろいろ変えて解析(table3)
- より長期間使用している方がリスク低下が大きかった
- 4年以下 vs. 4年以上(model3)
- 画像評価のintervalの間にTNFiを開始しても、構造的進行の抑制は有意ではなかった(model4)
- TNFiの使用によって有意にASDASでの疾患活動性は低下した
- −0.96 units, 95% CI −1.15 to −0.77
- GEE modelによって、構造的進行のリスクに関して、経過による疾患活動性の変化で調整して解析(table4)
- ASDASがより高いと、構造的進行のリスクも増加
- OR 1.39, 95%CI 1.06 to 1.81
- TNFi使用歴は、構造的進行のリスク低下を有意に下げなかった
- OR 0.61, 95%CI 0.34 to 1.08, p=0.09
- TNFi使用歴ありの群を、ASDASによってグループ分けし、mSASSSを評価(figure2)
- TNFi治療によるresponder(画像的評価の時点でASDAS ≦ 2.1)、non-responder(画像的評価の時点でASDAS > 2.1)と定義してmSASSSを解析
- responderのほうが有意に構造的進行が抑制された
- 平均ΔmSASSS:"responder" 0.31 vs. "non-responder" 1.45 units
- inactive disease status(ASDAS ≦ 1.3)を治療開始してから2年後の画像的評価の時点で達成した場合、構造的進行はほぼ完全に抑制された
- 平均ΔmSASSS:"inactive disease status" 0.01 vs. "2.1 > ASDAS > 1.3" 0.52 units
- figure2と同じ様に、ASDASの代わりにCRPを使用してmSASSSの経過を層別化したが、ASDASのほうがよりはっきりと分かれた
まとめ
- 今回の長期間の解析によって、TNFiが、ASにおける構造的進行を抑制(mSASSS、新規のsyndesmophyte formation)することが示された
- しかしながら、TNFiによる直接的な構造的進行の抑制は有意ではなく、あくまでも今回の解析ではTNFiによって疾患活動性を低下させることでもたらされていた
- そして、TNFi使用期間も重要であることがわかった
- table3のmodel4では、画像評価のintervalの間に始めても有意とはならなかった(今回のintervalの平均=2.1年)
- すなわち、構造的進行を抑制するには、少なくとも2年間以上は炎症を抑制する必要があるだろう
- ASDAS ≦ 1.3とinactive disease statusを達成した場合には、ほぼ完全に構造的進行は抑制された
2016 ASAS-EULAR recommendationsではT2Tが推奨されたが、その具体的な目標値は示されていなかった。T2Tを行う場合には、ASDAS 1.3 がよいかもしれない
- NSAIDs単独の構造的進行抑制は、議論の余地がある
- 既報のRCTでは、特にCRP陽性群で、セレコキシブ屯用 vs. セレコキシブ定時使用において、有意に定時使用群が構造的進行を抑制した
- しかしながら、同様のデザインにおける最近の報告では、ジクロフェナクでは有意差を示さなかった。いくつかの観察研究では、むしろ反対の結果が出ていることもある。
- 今回の試験でも、NSAIDsは構造的進行を抑制しなかった(しかしながらどの程度NSAIDsを使用していたのかまでは情報を得ていない)
- 他には、男性、baselineのmSASSSが、構造的進行のリスク因子だった
- 人種間、TNFi製剤間の違いは考慮されていない
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