<背景>
- GPAとは壊死性肉芽種性の小血管炎であり、ENTを含む上気道症状、結節や肺胞出血などの肺毛細血管炎による下気道症状、糸球体性腎炎による腎障害、眼症状を生じるANCA関連血管炎である。
- 神経系病変を生じるのは末梢・中枢合わせて22-54%といわれているが、そのうちほとんどは多発性単神経炎で末梢性である
- 中枢神経障害は頻度的に少なく、さらに脳神経障害を除けば7-11%程度である。
- 中枢神経障害のパターン
- 肉芽種性病変による頭蓋内外から脳や脊髄を圧迫(脳・脊髄の硬膜炎、頭蓋内の肉芽種、下垂体病変)
- 血管炎(虚血や出血)
- 中枢神経障害を生じた場合のGPAについて臨床的・画像的所見、治療方法、治療への反応性、長期的な予後についてデータが希薄なため調べることとした。
<方法>
- 2012年9月〜2013年7月にフランスとスペインの病院のカルテからFrench Vasculitis Study Groupらによりデータを集めた。
- 中枢神経症状については、他の血管炎症状の活動度や治療反応性により他の疾患による中枢神経症状と区別した。
- GPAの診断は1992年1月〜2012年8月の間についており、25人はACR criteria, 10人はEMA algorithmによる診断であった。
<結果>
- GPA診断時の平均年齢は48歳、はじめて中枢神経病変を生じた平均年齢は51歳
- 49%はGPA診断後に中枢神経病変を生じ、診断後から中枢神経病変を生じる間隔は平均60ヶ月(4-362ヶ月)
- 頭部MRIは全患者が受け、4人が脊髄MRIを受けた。
- 57%が硬膜炎、43%が脳虚血病変、他は出血、下垂体病変(漏斗部腫大とGdで増強)、肉芽種性病変など。
- 15人の虚血 and/or 出血患者のうち、7人はMRIで狭窄などの血管異常があった(逆にいえば8人は脳血管異常なし)
- 4人の脊髄硬膜炎患者のうち、1人は脳・脊髄両方、1人は脳に所見なく脊髄のみに肉芽種性病変・硬膜炎、2人は脳の出血と虚血をともなっていた。
- 中枢神経病変を認めた時点で腰椎穿刺をおこなったのは54%で、そのうち37%は正常所見であった。
- 中枢神経病炎のうち肉芽種性パターン(脳・脊髄の硬膜炎、頭蓋内の肉芽種、下垂体病変)は20人、血管炎性パターン(虚血や出血)は13人、両方が2人(1人が脊髄硬膜炎と脳の虚血・出血性病変、もう1人は脳の出血・虚血病変と肉芽種)だった。
- 中枢神経以外の病変については、血管炎性パターンのほうが腎病変が多かった。
- P-ANCA陽性の場合はすべて肉芽種性パターンだった。
- 肉芽種性パターンのほうが頭痛が多く、血管炎性パターンのほうが運動神経障害や精神異常が多かった。
A:硬膜炎(T1WI-Gd)
B.C:血管炎による白質病変
D:頸髄と胸髄の硬膜炎(T2WI、矢印部位で脊髄内に高信号)
E,F:胸髄と腰髄内の病変(T1WI,
T2WI)
G, H:Gdで増強する髄外肉芽種
<治療について>
- 血管炎性パターンの患者は6/13(46%)が再発、肉芽種性パターンの患者は6/20(30%)が再発した。
- 再びinduction therapy(mPSL pulse)を必要とした因子:脊髄硬膜炎(p=0.01)
- mRS が2以上だった患者は肉芽種性パターンで35%、血管炎性パターンで69%だった。
- 神経学的後遺症の頻度
- 脊髄硬膜炎(100%)
- 血管炎性病変(73%)
- 脳の硬膜炎(31%)
- 下垂体病変(0%)
<Discussion>
- 症状、治療反応性、神経学的予後が、画像による肉芽種性か血管炎性かによって異なった
- 血管炎性パターンもしくは脊髄硬膜炎を生じた場合は神経学的予後が不良
- これらが3/4は神経学的後遺症を残す一方で、脳の硬膜炎もしくは下垂体病変の患者は1/4のみで神経学的後遺症を残す
- リミテーション
- retrospectve
- 4人しか脊髄MRIを施行していない
- 治療反応性に画像的評価を加えていない
- 神経学的後遺症の評価は電話でmRSを聞いただけ
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