ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 12, December 2017, pp 2359–2369
Earliest Phase of Systemic Sclerosis Typified by Increased Levels of Inflammatory Proteins in the Serum
Vol. 69, No. 12, December 2017, pp 2359–2369
Earliest Phase of Systemic Sclerosis Typified by Increased Levels of Inflammatory Proteins in the Serum
Marta Cossu,1 Lenny van Bon,1 Carlo Preti,2 Marzia Rossato,1 Lorenzo Beretta,2
and Timothy R. D. J. Radstake1
- SScは皮膚・内臓の線維化を起こし、病理学的には内皮細胞障害と免疫システムの活性化を認める
- 膠原線維の沈着が広域に拡大する流れはまだわかっていないことも多い
- 微小血管障害と血管周囲への単球浸潤を早期に認めることは報告されている
- Raynaud's phenomenan(RP)は初発症状となることが多く、SSc発症に数年先行することがある
- RP+SSc特異的自己抗体+nailfold videocapillaroscopic(NVC) changesがあれば、そのほかに確定的なSSc所見がなくとも、SSc発症の高リスクであり、early SSc(EaSSc)or SScのリスクがある未分類結合組織病(UCTD)に該当する
- これまで、皮膚硬化がSScへ分類する重要な所見と考えられてきた
- しかしながら、早期の患者を拾い上げるには、皮膚硬化では感度が十分でない
- これに対応するため、ACR/EULAR 2013 classification for SSc では、硬化が必要十分条件ではなくなった
- EaSSc患者のmolecular characterizationに関してはまだデータが不足しており、これによって今後進行していくSScとそうでないSScを見分けることも可能かもしれない
- そのため、今回の試験では、炎症、組織障害、血管障害、代謝、リモデリングの血清マーカーを調べることとした。
方法
- イタリア、the Scleroderma Unit of the Fondazione IRCCS Ca’ Granda Policlinico di Milano から患者をリクルート
- 罹病期間は最初のRP以外の症状発症時から計算
- the discovery step
- EaSSc患者 21例
- ACR/EULAR 2013 classification for SScを満たす硬化性病変のない患者(皮膚硬化なし、ILDなし、PAHなし)15例
- 健常人コントロール
- 性別、年齢をマッチ
- the replication step
- 既報の224例の患者検体を使用
- EaSSc 47例
- non-fibrotic SSc 48例
- 健常人コントロール(年齢・性別をマッチ)43例
- lcSSc 51例
- dcSSc 35例
- progressionの定義
- dcSScの場合
- SScによる死亡
- 肺機能低下(baselineからΔFVC ≧ 10%、ΔDLco ≧ 15%)
- PAH発症
- digital ulcer発症
- lcSScの場合
- 上記dcSScの項目
- 皮膚病変がlimited→diffuseへ進行
- non-fibrotic SScの場合
- 上記lcSScの項目
- 皮膚病変 or 肺病変の発症
- 硬化性病変の発症
- EaSScの場合
- non-fibrotic SScの場合
- telangiectasiasの発症
- puffy fingerの発症
- the discovery cohortのbaseline characteristics(table1)
- the replication cohortのbaseline characteristics(table2)
結果
- discovery cohort
- 88種類の血清蛋白を調べた
- 36例 SSc患者、11例 健常人
- 16種類の蛋白が有意差あり(table3)
- IL -18
- granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF)
- CCL2
- CCL4
- CCL5
- CCL11
- CCL19
- CXCL9
- CXCL10
- CXCL11
- CXCL13
- cathepsin L
- cathepsin S
- TNFRII
- galectin 3
- chitinase 3-like protein 1(CHI3L1)
- 上記16種に関してquality testingをreplication cohortで行なった
- G-CSF, cathepsin L, galectin 3は検出感度以下だったので、これらを除外した13種類で実施(table4)
- 下記4種類が有意にnon-fibrotic SSc、EaSSc> 健常人 で高かった(figure1A)
- CXCL10
- CXCL11
- TNF受容体Ⅱ
- CHI3L1
- non-fibrotic SSc>EaSSc> 健常人の順に線形に増加(figure1A)
- lcSSc, dcSScでも増加している(figure1B, 1C)
- 免疫抑制剤で治療を受けている人もいるが(table2)、免疫抑制剤の有無によって上記蛋白の濃度に差はなかった(データ提示なし)
- セントロメア抗体陽性が大半だったが(table2)、抗体の有無によって上記蛋白の濃度に差はなかった(データ提示なし)
- replication cohortにおいて、41.2%(59/143人)がprogression(最大フォロー期間59.6ヶ月)
- 死亡(8人)
- 肺機能低下(38人)
- PAH発症(4人)
- 皮膚病変進行(10人)
- digital ulcer発症(4人)
- telangiectasias(7人)
- TNF受容体Ⅱ、CXCL10が高い場合、EaCCs & non-fibrotic SSc → other disease subset へ短期間で進行した
- 最も有意なのはCXCL10だった(figure2A)
- TNF受容体Ⅱも有意だった(figure2B)。データでは示していないが、lcSScにおいても有意だった。
- CHI3L1も、dcSScにおいては有意に短期間でのprogressionに関連していたが、EaSSc, non-fibrotic SSc, lcSScでは有意ではなかった
- CXCL11はprogressionとはいずれのsubsetにおいても関連しなかった
まとめ
- SScはheterogeneousな疾患であり、臨床的に上記の様にEaSSc, non-fibrotic SSc, lcSSc, dcSScなどと分類できる
- しかしながら、これらのsubset間におけるpathophysiologicな差はあまりわかっていない
- 最近の報告では、多くのEaSScがdefinite SScへ進行することがわかっている
- そのため、線維性病変がなくてもSScを認識できるような基準を作成することを目指してきた
- これまで、早期のバイオマーカーとなるものはわかっていなかったが、今回の試験で初めて以下の4つがバイオマーカーとなるが発見され、validationされた
- CXCL10
- CXCL11
- TNF受容体Ⅱ
- CHI3L1
- これによって、EaSScとnon-fibrotic SScの患者を、健常人と区別できるかもしれない
- さらに、CXCL10とTNF受容体Ⅱは、SScが進行するかどうかのマーカーとなるかもしれない
- 既報では、炎症性マーカーの濃度によってSScを分類することが試みられてきた
- 血漿のIFN-inducible chemokinesであるCXCL10, CXCL11によるcomposite scoreが、IFN signatureと関連があること、fibrotic SScにおける肺・皮膚・筋病変の重症度と関連があることが報告されている
- 筆者らは、健常人と比較して、non-fibrotic SSc患者はIFN signature scoreが高く、EaSSc, lcSSc, dcSScなどのsubsetにおいてもIFN signatureである割合が高いことを報告している
- CXCL10は血管新生を抑制する作用があり、血管平滑筋の増殖を促進する
- これがSScにおける血管内皮細胞障害と、EaSSc・non-fibrotic SSc → fibroticへの進行を増強していると考えられる
- anifrolumab(IFNα受容体 type1に対するモノクローナル抗体)をfibrotic SSc患者に対して投与することで、血管と皮膚のIFN signatureを抑え、CXCL10濃度を低下させることが報告されている(IFN signatureのdown regulationがCXCL10濃度低下と関連している)
- すなわち、anifrolumabによって、CXCL10濃度が高いEaSSc・non-fibrotic SSc → fibroticへの進行を抑制することができるかもしれない
- CXCL10, CXCL11, CXCL9について
- 筆者らのコホートにおけるnon-fibrotic SSc 患者では健常人よりも高かった(CXCL9は有意差出ず)
- これらは全て、活性化リンパ球(T細胞、NK細胞、NK-T like細胞)と活性化内皮細胞のCXCR3に結合する
- SSc患者の皮膚病変と結成においてCXCL10とCXCL9が高かったが、CXCR3は低下しており、かつ内皮細胞に限局していた
- ブレオマイシンを負荷されたCXCR3欠損マウスでは、wild-typeと比較して重症の肺病変を呈する
- これらの理由として、NK, NK-T like細胞の肺へのリクルートメントが低下し、組織における抗線維化IFNγ濃度が低下したことが考えられる
- ヒトにおけるCXCR3低下に関しては、リガンドと炎症性メディエーターの過剰発現に対するdown-regulation ± 晩期の線維病変における白血球浸潤の低下を反映していると考えられる
- そのため、まだ線維化を認めていないEaSSc, non-fibrotic SSc患者におけるCXCR3発現レベルを疾患の経過(肺病変含む)と並行して調べてみたいところである。おそらく関連しているとしたらCXCL10が高い患者集団であろう。
- TNF受容体Ⅱは、juvenile DMにおける疾患活動性バイオマーカーと最近報告された
- RAにおいては、疾患活動性のみではなく、発症する数年前より濃度が増加していることがわかっている
- 今回、SScにおける発症前subsetであるEaSScにおいても同様に、増加していた。そして、短期間での疾患の進行とも関連していた。
- 既報でもfibrotic SScにおいて増加しており、T細胞活性化の指標であることが報告されている。その報告では、SSc患者の皮膚に存在するT細胞においてTNF受容体Ⅱの発現が増加しており、皮膚の厚みと相関していた。
- 可溶性TNF受容体の量は、TNF受容体Ⅱにおいては、T細胞活性化を反映している
- in vitroでは、T細胞にTNF受容体Ⅱを誘導すると、線維化サイトカインが産生され、線維芽細胞からのコラーゲン産生を刺激した。
- すなわち、これらを考慮すると、T細胞がSSc進行に関与している可能性がある
- 可溶性TNF受容体は、TNFαを巡ってT細胞と競合するのか(他方が他方を阻害)もしくはTNFαを異なる組織へ運搬するキャリアとして作用しTNFα血中濃度を安定させている(リザーバーとしての役割)可能性がある。
- そのため、SSc患者において、循環しているTNF受容体Ⅱ濃度の影響はさらに調べていく必要がある。
- 今回の試験で、CHI3L1がバイオマーカーとして同定された
- 慢性炎症性疾患や悪性腫瘍では、progression, 予後不良と関連する炎症性サイトカインである
- 好中球、マクロファージ、血管平滑筋細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、肝サテライト細胞、腫瘍細胞から分泌され、膠原線維とグリコサミノグリカンに結合し、線維芽細胞の成長を刺激し、組織リモデリングと繊維化進行に関わっている
- SScにおいては、既報では、関節病変と可溶性IL-2受容体α(すなわちT細胞活性化)と関連があることが報告されていた
- 肺生検検体でのマクロファージと好中球における蛋白発現の結果から、肺の線維化とDLco低下にも関連があることが報告されている
- 健常人→EaSSc→non-fibrotic SSc→lcSSc/dcSScの順に高く、dcSSc subsetにおいては短期間での進行とも関連があったことから、疾患の重症度を反映しているかもしれない
- limitation
- 各症例における時系列では、これらの蛋白を測定していない
- 臨床学的情報はretrospectiveに収集している
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